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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

山口晃展 

京都伊勢丹の山口晃展に行った。文化の日だった。この日は山口画伯のトークショーがお昼にあり、関西だけでなく関東からも多くのファンが訪れていた。
わたしはトークショーには行かず、作品だけを見た。
正直なところ画伯の作品に触れる機会が少なかったので、その魅力の深さを知らないままなのだった。
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数年前、東博の特別展「対決」のときに画伯えがく絵師たちの肖像画を見たのが、実はわたしにとって最初の「山口晃体験」だったのだ。
その後少しずつ意識的に見るようになり、その緻密さ・美しさ、画力のあまりの高さに唖然となった。
また絵の所々に見える日本語の書体の美しさにも衝かれた。
一方で、その作品に漂う批判精神とプチギャグに撃たれ、いつしかその虚実の間に翻弄されるようになった。

チラシに選ばれた「邸内見立 洛中洛外図」も、細かく見るのが楽しくて仕方ない作品だった。
なにしろどこを見ても面白い。
よくここまで描き込めるものだとただただ口を開けて眺めるばかりだった。
この細密描写とアイデア、言葉を尽くしてもまだ足らない。

わたしの好みでいえば、「府立動物園」のところに白ゾウ・唐獅子・孔雀像が並んで置かれてるのがいい。
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小さい頃、グリコやほかのお菓子についていたおまけを集めてこしらえた自分だけの動物園を思い出す。
言葉遊びも多く、一カ所だけ見ても楽しく、全体を見ても面白く、見れば見るほどその世界に引きずり込まれてゆく。

カラフルな作品だけでなく、モノクロの作品にも感嘆する。リモコンのリアルな絵があるなと思ったらその変奏曲が隣にある。その細密描写を見ていると、不意に「男の子でないとこうは描けない」と思った。
女の子はここまで描きこまないだろう。
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それにしてもなんという画力の高さか。
この人が絵を描くことを仕事にしていて本当によかった。
もし万一この才能が世に出なかったら、と思うと怖くなった。
どの作品を見ても凄すぎる。

厩図2004を見る。
武士の乗り物たる馬がつながれているのだが、それが馬型バイクなのだった。馬イクとでもいうのだろうか、凄い画力だから一瞬本当にこんなバイクあるんだなと思ってしまう。
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ちょんまげさんの隣に今の人、未来の姿などが自然に佇むから、ますますだまされてしまう。

画伯の作品のうち、電柱を描いたものが好きだ。
電柱の頂点には擬宝珠が載せられている。
そしてその電力線の流れに優美な名前がつけられ、美しい文字の説明がある。
わたしは電柱と電力線の架空(がくう、というのだ)について、(工事方法の)勉強を多少していたので、ついつい「この工法は知らんなぁ」と真面目に考えてしまった。
そこでハッとなるのだが、なぜだまされたかといえば、やはりその緻密な描写と丁寧な文字にヤラレたとしか言いようがない。

絵の構成にだまされるだけではなく、文字にもだまされる。
先に挙げたように画伯の日本語の書体の美しさが、その虚構を支えている。
その書体は日本語を飛び越えて、実在しない言語を創造している。
それを見ていると、西夏文字を思い出す。
また、宮崎駿「風の谷のナウシカ」の土鬼の言語、富樫義博「HUNTERxHUNTER」のキャラの1人が技を繰り出すときに現れる言語にも通じるとも思う。

わたしはなにしろ山口晃画伯の作品を見るにはあまりに初心者過ぎる。
この展覧会の副題は「~山口晃と申します 老若男女ご覧あれ~」というが、なるほど確かにわたしは思わずアタマを下げて「どうも、初心者です」と言いそうになった。

ドナルド・キーンさんの「私と20世紀のクロニクル」の挿絵、五木寛之「親鸞」の挿絵が多く出ていた。
キーンさんを描いた絵はアタマの鉢が張ったカシコそうなところがよく出ていて、幼いドナルド少年の想いまでがこちらに伝わってくるようだった。

長期連載の「親鸞」の場合だと、ところどころ技法を変えて、絵そのものを楽しませてくれる。
美少女はあくまでも可憐に美しく、まなざしは清けく、また群集は湯気が立ちそうなほどに集う。
連載が長引くにつれ、少しずつ画伯独自の諧謔が現れる。
「結婚しました」葉書にはとても笑ってしまった。確かにこの教団はそうだ。
他にもいきなり歌詞カードみたいなのもあったりで、面白くて仕方ない。

それにしてもこの圧倒的な画力の高さには絶句するばかりだ。
何を描いてもうまいから、なにを描いてもサマになる。
そうしてやはり虚実の皮膜に絡みとられるのだ。

平等院に襖絵が奉納された記念の展覧会と言うことだが、その平等院の襖絵も日を決めて公開されている。
どう工夫しても到底わたしには行けそうにない日時だが、それでも行きたいと思う。
「えき」での展覧会は12/2まで。こちらはデパート内なので、もう一度くらい行けそうな予感がある・・・・・
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