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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

静雅なる仏画 白描図像が生み出す美の世界

大和文華館の秋の特別展は「静雅なる仏画 白描図像が生み出す美の世界」である。
前後期に分かれての展字数は70弱だが、非常に濃密な展示なのだった。

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平安時代の伝・宅間為遠の「金胎仏画帖」が実にたくさん出ていた。
なんでも元は95尊描かれていたが、断簡にされ、各家に所蔵されている。それらがかなりの数集められている。
わたしは仏に詳しくもないし、図像学も学んでいないので、描かれた仏のどこを見て誰であるかを知ることはほぼ無理だ。ここには仏の名称が書かれているが、それであっても知らぬ仏が多い。それだけに知る仏が現れれば嬉しくもある。

金剛波羅密、毘首羯磨、多聞天、大日如来、金剛薩埵菩薩、金剛王菩薩などなど。
いずれもフルカラーの美しい仏画である。
光背もきれいな虹色をみせ、青い髪、緑の肌が映える。
猪顔の金剛面天など面白いものもある。

興味深く眺め歩いた。
所蔵家は個人のほか、東博、東京芸大、奈良博、MIHO、この大和などなど。
いつか一堂に会する日が来るのだろうか・・・

仁王経五方諸尊図 鎌倉時代 醍醐寺 南方・北方が出ていた。
中でも北方の仏の顔の個性的な面立ちにひどく惹かれた。
不思議な美しさがある。
仏と言われれば仏なのだが、妙な艶めかしさが強い。
やや左下を向くその顔は笑みも浮かべてはいない。
山の稜線を思わせる眉の下には、ややはれた瞼が広がり、静かな色をたたえた瞳がある。
口元の官能性は隠せない。
少しばかり横に広い輪郭に、それらが収まっているのだ。
魅惑的な尊顔だった。

戒壇院厨子扉絵図像 平安時代 くっきりと白描で浮かび上がる仏たち。何の木か、その横に鞨鼓を持った飛天たちがいる。非常にしっかりした線で描かれている。

北斗曼陀羅図 久安四年(1148) 玄証本 宋代のを写したそうだ。上部に星宿が多く描かれているのが目に残る。
道教を思いつつ眺める。

この玄証の作品が多く出ている。
平安末期の仏画を描く絵師。丁度源平盛衰紀と同じ時代を生きている。
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伽耶城毘沙門天図像 毘沙門天とその眷属たちが行道する。ゾウと獅子の図像の入り込む建物が描かれ、カラス天狗との確執のような図も見える。

仏たちも様々な構図を生きる。

非常に面白い構図の絵がある。やはり玄証の絵である。
白描だが、これに色がついたらとんでもないかもしれない。
阿弥陀鉤召図 右に阿弥陀と菩薩がいて、左の僧侶の綱を引いて笑っている。僧侶はずるずる引きずられそうだが、踏みとどまろうとする。その僧侶のすぐ脇に口をへの字にした仏がいて、僧侶を押しやろうとしていた。
まるで幕末の浮世絵の戯画である。
こんなに面白い仏画は初めて見た。
文化庁所蔵というが、いったいなにを基準に・・・やはりこの面白さに惹かれたのだろうか。

石山寺の校倉聖教(とは何なのだ?) の不動像が面白い。
立ち不動のそばには二人の童子もいるが、絵によってはまるでジョジョ立ちするようなのもいた。これはしかし解説プレートによると、「良秀様」とある。今昔物語にあるよじれ不動を描く絵師・良秀のことらしい。つまり芥川の「地獄変」・・・

根津美術館から華厳五十五所絵が四点、藤田美術館からも一枚前期に出ていたそうだ。
その根津本をじっくり眺めたが、色白の善財童子よりも、ブサカワな邪鬼たちの愛らしさに大いに惹かれた。
七人のブサカワ鬼たち。わいわいがやがやにぎやかに和やかで活気もある。
堂内にいる鬼たちも可愛い。
女神らしき女より、布施を手に手に持つ鬼たちの方がずっと可愛い。彼らはなかなか働き者で散華もする。
ああ、あんまりにも可愛くて、撫でてやりたくなる。

十二因縁絵巻 こちらも根津所蔵。これは以前にも見ている。
林の中で折托王が羅刹たちを改心させるシーンが出ていた。それを温かく見守る虎や豹たち。可愛いのは羅刹に動物たち。

薬師十二神将像 桜池院 日天月天の眉の濃さが目立つ。額の張り出しも大きい。

大威徳転法輪曼陀羅 南北朝 正平十年(1355) 巌雅 大変派手な絵。花色の枠に神将、明王、童子らがいる。
髑髏の首飾りにトラやウサギに騎乗したり・・・
これは実は南朝が北朝を調伏するために使ったものらしい。

諸尊集会図 鎌倉時代 不動明王のニ童子のうち、コンガラ童子に惹かれた。その色の白さもさることながら、大変優美な顔立ちをしている。
結局大勢の仏たちがいても、ついつい自分の好みの顔を捜してしまうのだった。

涅槃図が三点。高山寺のには蟹がいた。南北朝の個人のには花を銜える孔雀がいて、また別のにはカエルがいると思ったら、猪と鹿が並んでいた。蝶はいない。猿もそっと花を抱いている。

まだまだ仏画には縁の薄いわたしだが、こうして大いに楽しませてもらい、ありがたく思う。11/11まで。
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