FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

つらつら椿 椿絵に宿る枯淡の境地

松伯美術館の特別展「つらつら椿」~椿絵に宿る枯淡の境地~を見た。
作品の多くはあいおいニッセイ同和損保所蔵。
何度か見ているが、久しぶりなのでとても嬉しい。

椿への偏愛は深い。
自分でも椿の絵を集めてここで公開したこともある。
「椿の花」’07.3.28

横山大観 雪旦 薄闇の残る中に白い椿の花が。雀が一羽とまる。綿のような花びら。雪の旦(あした=朝)。
大観のこうした小品にこそ深い味わいというものを感じる。
zen869-2.jpg

川合玉堂 椿花小禽図 紅椿の咲く木に目白が二羽。木は付け立てのような。柔らかく、少しばかり華やかな図。

富田溪仙 春の花籠図 頽れるような花がそこにある。
zen873.jpg
横に広がる姿態は掌でたやすく死んでゆくだろう。そんな風情がある。

園中春暖図 明から清にかけての頃のような雰囲気がある。下に水仙が咲き風に揺れている。白梅も美しい。

小林古径 椿 清冽な椿と、それを生ける瓶の形のすっきりと豊かな美しさ。
家に飾るならやはりこの絵がいい、と思う。zen869.jpg


安田靭彦 椿寿瓶 様式的な紅白の椿。

紅白椿 アイドル風な二つの花。寄り添って仲良さげな椿。可愛らしい。
zen872.jpg

前田青邨 椿 小さくて愛らしい椿が二輪、やはり背の低い瓶に生けられている。
和やかな空気が画面にかもし出されている。

椿 先のとは違い、こちらはまた自己主張の激しい椿たち。こちらもとても美しい。
zen871.jpg


村上華岳 椿花図、紅椿 どちらの椿も血のような朱を画家により選ばれている。
zen874-1.jpg
華岳の大正期のナマナマしい官能性を感じる。そして「紅椿」の葉の肉厚さに墨のぬめりをも感じさせられる。

奥村土牛 紅椿 ハイライトの白が可愛く載り、とても魅力的。つややかで、愛しさが全開。
zen869-1.jpg

椿花 白に赤の鏤めがひどく惹きつける。椿の魅力は深い。

福田平八郎 八重椿 可愛い。とにかく椿への偏愛が深いので、その花びらの一枚を見てもときめく。

山口蓬春 都波喜 ふくよかなタイトルにふくよかな花。

小倉遊亀 椿 師匠とはまた違う形の花だが、花への愛情が受け継がれているのを感じる。

古九谷徳利と白椿 他の花でもそうだが、遊亀さんの古いやきものと花との取り合わせは、異様に魅力的なものが多い。花を生ける瓶は少しばかりいびつな形が艶かしく、花はそこに新たに咲くようだった。
zen867-1.jpg

徳岡神泉 紅椿 エメラルド色の背景に一輪の椿。画面は横長である。
そこに寝そべる花の姿態に魅せられる・・・zen874.jpg


山口華楊 寒椿 雪に目白という道具立て。椿は目白をみつめる。目白はまっすぐに飛ぶ。

上村松篁 椿 これは大正末頃の作品で、まだ後の華やかさは薄い。伏見の御香宮の横の空き地に咲いていたのを写生したそうだ。いまもこの椿があるかどうかは知らない。
宋代の絵を思う。薄い彩色は夕日の中の影のように不確かではあるが、静かな心持にさせる絵。

春園鳥語 紅白の椿が咲き乱れ、その木のあちこちに色んな鳥たちがいる。先の絵のほんの数年後なのに、既にここには松篁さんの華麗な世界が広がっている。鳥たちが松篁さんの迷いを断ち切り、花の美しさを愉しませたのか、と思った。

椿 昭和半ばの絵。いよいよ情感は豊かにふくよかに開く。黒い葉が下向きに咲く。

花椿 これは資生堂の香水のラベルのための絵で、白い空間にぽつんと椿が浮かんでいるのも、そのため。
zen870.jpg
資生堂花椿オードパルファム その絵を使い、文字もまた松篁さんによる、美しい瓶。
資生堂は小村雪岱、山名文夫の時代から、美の本質を掴み、それを世に送り出し続けている。

水温む 黄緑の背景に小鳥が一羽、そして生きる椿と朽ちてゆく椿が描かれている。
朽ちる花にも優しい手を差し伸べる松篁さんの美意識。晩年に向かっていても、その世界は深まり続けていたのだ。
zen875.jpg

高山辰雄 椿 二点の「椿」がある。どちらもぼんやりした空間に花の佇む絵。かつてはその世界にもどかしさを感じていたが、'93年に「聖家族」展を見て以来、意識が変容した。
青緑の靄の中に青磁の角皿があり、そこに椿がたむろする。フィルターのかかった曖昧な空間だが、今はもうもどかしさではなく、自分が高山さんの夢の中にいて、その絵を見ていることを、知っている。
そして、白椿を描いたものには赤布が広げられていた。そこにはやさしい和がある。

洋画がある。
中川一政の椿が二枚。どちらも力強い筆致で描かれている。
花はマヨルカの壷にイキイキと広がっている。

乾山の色絵椿文輪花向付 またとても好きな作品である。
可愛くて仕方ない。緑色に白椿の描かれた可愛い可愛い器。

光琳 紅椿図 団扇絵なのだが、そこからはみだす椿。椿の生命力を感じる。

椿図蒔絵硯箱 img902-1.jpg
これがとても好きで、本物はむろん手に入らないが、画像が手元に来たときは嬉しかった。
わたしなどは思えば実物を手に入れても、上手に保つ法がない。
いくらほしいものがあっても、それを手に入れて愛でることは出来ても、美しく保つことはどう考えても出来ない。だからこうして出かけては、その美を楽しませてもらうのだ。それでいいのだ。

上村家三代の絵をみる。
松園さんは「娘」が出ていた。二人の娘がそれぞれ何かを見る図。これは名都美術館所蔵の「春秋」別バージョン。

松篁さんの「松虫草」「五色桃」は見慣れたものとは言え、だからこその親しみがある。

淳之さんの額装の三幅対をみた。「鳧=ケリ」「杜鵑」「鴫」。鳩のような顔の鳧ケリ(こんな字知らない)、飛ぶホトトギス、一羽佇むシギ。

二羽が言い争う「白鷹」、シギを描く「秋光」を見てすぎると、ハッと胸を衝く絵があった。
「集う」 今年の絵。鴛鴦たちが集まっている図。二羽の雄に三羽の雌。とても楽しそうな和やかな雰囲気がある。
誰と誰がカップルというのでもなく、みんなで楽しく和んでいるような。
とても心が優しくなる図だった。

「つらつら椿」という言葉は万葉集に載る「つらつら椿つら椿」から。
   巨勢山のつらつら椿つらつらに 
      見つつ偲ばな巨勢の春野を
とても優美なタイトルである。
本来の椿は春の花だが、秋の松伯美術館を彩るにふさわしい花絵だと思った。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア