FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

江戸絵画の楽園

静岡県美は江戸絵画の良い展覧会をしばしば行う。
なんで大阪のわたしが草薙まで出向かなアカンねんと思いつつも、毎回その良さにヤラれ、ああ来てよかったと思うのだ。
今回もその例にもれず予想以上にいいのがザクザクザクザク。
ザクの中でも赤ザクは特別だが(なんだ急に)、初公開の洛中洛外図屏風と、コースター大の円紙200枚強に、描かれた色んな作家による愛らしい作品群は大変見応えがあり、それらが栄誉ある赤ザクたちでしたな~
いや本当に見ても見ても終わらない。
こういうものを知らん顔して出す公立美術館はここと千葉市と板橋区しかないのではないか。
いや・・・大阪市立美術館も大概そうか。
なんにせよ参りましたわ。

さてそのほかにも無論良いのが少なからずあり、ものには順序ということで、見て回った順に小さい感想を挙げてゆこう。
なお展覧会タイトルは「江戸絵画の楽園」である。
zen881.jpg

第一章 屏風① 風を屏ぐ調度品

森狙仙 親子猿図屏風 木の上で猿の母子が向かい合うのだが、右の母は歯を剥き出したえぐい顔で、左の子はそれからちょっと距離を取りたい雰囲気がある。
二曲一隻で、開いたときの効果を考えていると解説にあるが、なるほど確かにその通りである。
コザルのキモチになれば、わざと角度を拡げてやりたくなるし、またいぢわるくママ猿に近づけて叱られやすそうにする時もあるだろう。

海北友松 禅宗祖師・散聖図押絵貼屏風 色んな人物がそれぞれの逸話に沿って描かれている。
絵の上に名や逸話が書かれているがあまり読めない。
右6は刃物を振り上げて今しも自分の左手を切り落とすシーン。二祖当年ウ丈夫 と読める賛がある。禅宗で腕切り落とすのは達磨絡みの話があったが、彼なのか。
左4は情けないツラツキで柴を担ぐ六祖。その隣には袖にわんこ入れたのもいるし、最後のはなんかエビらしきものをつまみ挙げている。
蜆子とあるがもうハッキリした話が思い出せない。

狩野山楽 雲門体露金風図 二人の禅僧が風に揺れる木を前に何か語り合う。
この絵も今度の山楽山雪展に出るのかもしれない。

狩野重信 帝鑑図・咸陽宮図屏風 型押しの金雲。右上に始皇帝の焚書坑儒がある。次々に穴に落とされてゆく儒者たち。目の前で書を焚かれがっかりする姿もある。
いつの時代・どんな場所でも独裁者のやらかすことは同じである。
その下には尭の偉業らしきのがあるが、極楽より地獄がイキイキ描かれるのと同様、あんまり面白くはない。
左には夏の幽王かと思われる字がある。糸白糸にムだから字はまともには出まい。ただ寵愛する女の名が女偏に末に喜だから(妺喜)バッキとも読める。幽王には褒似。
この字の女がハッキリ思い出せない。
もし妲妃を言うなら殷の紂王となるか。絵は酒池肉林を描いている。
殷イコール酒池肉林のイメージもあるが、それは本当は幽王だと言う話もあり、重信がどちらを採ったかはわからない。吊られた肉はモモ肉ばかりだが、斑イヌも縛られてそこに置かれているのは、やはり喰われる予定らしい。
左隻は右より人物が大きく描かれている。走り寄る武人たち、上も下も大騒ぎである。これは始皇帝暗殺の逸話を描いた図らしいが、ややわかりにくい。
それにしても細密な絵で金もピカピカ、隣で見ていたカップルがそのことにも感心していたのが面白かった。

言い忘れていたが、今日はフリートークデーとかで喋ってもいい日らしい。

狩野氏信 源平合戦図屏風 これはわらわらと細かいのを描くのではなく大きくワンシーンを描いている。こういうのも面白い。
左は『木曾殿最期』から、巴御前が敵の首を捩切り落とすシーン。力強いのは感じるが凄惨さはない。

守住貫魚 唐子図屏風 フルカラーでちびっこらを可愛く描いている。
噛んだら中からクリームが出てきそうな可愛い子らがわんさといて、それぞれ好きなことをしている。
みんな着飾っているがよく見ればコスプレしているではないか。
蒙古帽や韃靼帽もいれば日本風味なのもいる。虫取り網で他の子を捕まえるのもいれば、足相撲するのもいる。何かを引いてるのにその上に白いわんこが乗っかったり。
左端ではガラスのつぼから鉢へ金魚を移そうとするのもいる。
本当に可愛い。そしてとても丁寧な描き方なのがいよいよいい。

zen880.jpg

第二章 掛軸 床の間の飾り

式部輝忠 富士八景図 八幅対の富士。12ヶ月を8で割る(こともないが)。
何故か偶数奇数と2ガラスケースに分かれての展示。
色んな富士が描かれていて面白い。薄い墨絵でぼわ~と描いているのだが、それが却っていい。あるときは煙を吐き(え゛っ)、満月の時もあれば群雲に隠れるときもある。
室町時代の富士の姿。

英一蝶 屋根葺図 長~~い掛軸で屋根と地上とを表す。葺き替え中の人々がお昼ご飯のヤカンや湯飲みを、小僧が縄で下へ降ろすところ。それを受け取ろうとする子どものはしゃぎっぷりもいい。キモチはよくわかる。

長沢芦雪 月に竹図 先の画が「長~~い」のならこちらは「長―――――――――い」である。京都銀行のコマーシャルのようである。
上のほうにぼんやり月が出て、竹がその光でシルエットになったり実際の姿をみせたりしつつ、ついに下には「芦雪」サイン。ふふふ、わるいやつめ。

フェイルケ 富士山図 オランダ人の絵で実は和紙でなく洋紙で描いた富士。群雲が手指の形に見える。ヘタウマな感じもする。

柳沢淇園 梅小禽図 少しばかり南蘋派風にも見える。青い小鳥は白い羽虫を食んでいる。
梅は紅梅。これは紀州公の売り立てで世に出た絵。残念だったろう・・・

柴田是真 富士山図 今丁度根津美術館で是真展が開催中だが、これを見ても本当に面白い。もあ~と白い富士。これが実は三幅対で富士を構成している。しかも描き表装なのである。緑の地に金の海栗殼のようなものがあちこち・・・
工芸家是真の美意識が心地いい。

鈴木守一 秋草図 鶉、飛ぶ。その下に赤めの秋草が色々咲いている。薄も赤い筋を見せているし、ツタもあり萩も赤い。

葛飾北斎 天神図 今回のチラシ。真正面顔を描くのは日本人は巧くないが(同時代の西洋の画家たちは鼻の描き方の処理がいい)、技法の違いを超えて、これは日本人の描く「日本人の真正面顔」だと改めて実感する。

岩佐又兵衛 伊勢物語東下り図 これがまた勢いのある絵で、騎乗する昔男さんも従者たちも富士を見るのに焦って駆け込んできました、と言う雰囲気があるのがおかしい。

伊藤若冲 垣豆群蟲図 豆も生っている。粒のよろしい豆である。その上にバッタ、キリギリス、カマキリなどがいる。アブは宙にいて蟷螂と対峙し、蝶は白と黒とがそれぞれ舞う。生物と植物のそれぞれの命。それが青々しく生きている。

狩野重信 李白観瀑・双鷺・双鳩図 真ん中の李白は見返り李白。瀧を見終えて帰ろうというところなのか。右の鳩たちが可愛い。ついついわたしもちょいちょいとリストに描いてしまったくらいの可愛さ。鷺もそう。こうした可愛さはやはり東洋絵画の面白さなのだと思い知る。

狩野探信 牛図 15才で描いたとサインがあるが、疑問だという話。なにしろ巧すぎる。ウシでウマすぎるというのもなんだが。

池大雅 高士観瀑図 絵はまだ若い頃のもの。賛に「翆嶂懸泉」とあるのに惹かれる。
表具は千家十職の奥村家の手による。

谷文晁 連山春色図 連山といえば中国だが、むしろルネサンスの画家の描く背景のような趣がある。勉強の成果なのだろうか。

谷文晁 楼閣山水図 81年振り公開。これは徳川家達公の弟君。達孝氏が所蔵していたそうだ。かわぐちかいじ「兵馬の旗」に出てきたのはこの方だったか・・・

浦上玉堂らの寄せ書きがあった。絵と書とがいい配置で描きこまれていて面白い。
中に「一片心」の横書き(本物は無論今と表記の左右が逆である)があるが、小吉五歳とサインが入っているのに驚く。他にも「自溟七歳」もあるからなあ。
小吉といえば思い浮かぶのは勝小吉だが、彼は生涯確か文盲だった。彼の自伝は奥さんが代筆したのだ。そんなことを思い出すのも楽しい。

第三章 屏風② 風を屏ぐ調度品

雲谷等益 琴棋書画図屏風 右は春で梅が咲いている。やたらと豹や虎の毛皮が敷かれている。舟も出ていて鶴にえさをやろうとするヒトもいれば居眠りするじいさんもいる。
左は夏で蓮が咲き誇る。たくさんの蓮。ほぼ白い蓮ばかり。ロバにしか見えない馬もいる。
妙に蓮に惹かれた。もこもこさいている蓮に。

洛中洛外図屏風 東福門院入内図。だからか四条河原に歌舞伎の小屋は描かれていない。
zen880-1.jpg
また珍しいものが色々描かれていた。
右は稲荷山と専入寺(泉湧寺か)に始まり、御影堂もある。大仏殿に三十三間堂はともかく、智積院まである。しかも大仏殿には南蛮人の見学もいる。夏らしく祇園祭なのだが、四条・三条を描くだけでなく寺町までが入ってる。
左は貴船に鞍馬山、金閣寺。千本閻魔堂もあり「きゃうげん堂」は描かれているが至って静か。紫野の大きな寺の様子、御室、北野天満宮。二尊院に小倉山まである。松尾に天守閣つきの二条城!?そして壬生寺では狂言の真っ最中・・・
大変丁寧な描き方で、じっくりみつめて随分時間が掛かった。本当にこれは珍しいものを見せてもらった。因みに雲は型雲。綺麗な屏風だった。

谷文晁 富士山図屏風 これは白と黒の面白さを堪能する屏風。見る方向により、ベタ塗りの黒の陰影が大きくもなり小さくもなる。かっこいい。

葛飾北斎 紅葉筏図屏風 筏師らが川を下る。紅葉は今が絶頂で、川面にも赤を多く散らす。筏の上では煮炊きもしている。散る紅葉の豊かさとヒトの営みと。大胆な構図がいい。

狩野栄信 桐松鳳凰図屏風 フルカラーで鳳凰一家を描いている。父親の鳳凰の目つき、母親の鳳凰の目つき、それぞれ違う。真ん中の子鳳凰の目とくちばしの美麗さにときめく。
息子、美少年な鳳凰。ちょっとこれは流麗過ぎる、ドキドキした。
裏は金地で墨のブドウ柄。

冷泉為恭 鷹狩・曲水宴図襖 藍色の川がうねりながら走る。鳥の形の舟に盃を載せて川に浮かべる貴族たち。優美さが隅々まで行き渡っている。

第四章 巻子と画帖 手元で楽しむ美

渡辺崋山 桃花図扇面 開いたままで収納できる箱まである。桃は開きっぱなしで二百年近くを生きている。

狩野栄信・養信 唐画流書手鑑 手本を写したもの。中でも養信の二匹の牛と帰る牧童図は牧谿風な味わいがある。

書画鑑 諸家による色んな絵の集まり。中でも白地に斑ねこが立ちながら蝶々を狙うのが面白い。これは井伊直朗の依頼で作られたもので、中には抱一の絵もあるそうだ。

狩野探幽 富嶽図巻 東海道往復の間に描いた富士山図。こういうのがまた絵師の息遣いが伝わってくる。さすがにうまいのはうまいが、それよりも興に乗る様子がいい。

岡田半江 住吉真景図 天保12年(1841) 町から始まる。粉浜の商店街・・・ではないが、とにかく町並み。そして松並木が多すぎる住吉へつきにけり、だが燈篭も太鼓橋も松に埋もれている。こんなに松が繁茂していたのか。

岡田半江 岡本梅林図巻 天保八年(1837) 今も梅の名所の岡本。小さい茶店があるらしい。梅はぽつぽつ白いのが咲いている。これは長く絵師の手元にあり、乞われて白ポツをつけて完成したそうな。

橋本青江 岡本梅林図 明治三年(1870) 半江の女弟子で、師の絵をさらに膨らませて描いている。だから白梅だけでなく紅梅も咲いている。30年経って梅も増えた・・・わけではなさそうだ。

リストにはないが、特別出品として、養信の竹雀図屏風があった。
これは右に45羽、左に46羽の雀たちが楽しそうに騒いでいる図。
ほしいような気もするが。さぞやうるさかろう・・・

最後の最後にガラスケースに面白いものが寄り集められていた。
コースター大の円形絵。実に色んな絵師が描いている。
猿の狙仙は他に朝顔を、徹山はコウモリ、南岳は鼠、応瑞は雀たち、芳中は白梅や丸い黄色の菊など、他にサインは読めないがキジに茶色の掛かった白猫が見返る可愛いものもあった。どれを見ても楽しいが、一体これは?という珍しい作品らしい。
全部で219枚だということだった。
zen880-2.jpg

ああ、本当に見ごたえのあるいい展覧会だった。これはもう明日の11/18で終わりなのだ。
なかなか見に行けなかったが、本当に行けてよかった。
やはり静岡県立美術館はすごい・・・
関連記事
スポンサーサイト



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア