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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

清方描く 江戸の残り香

昨日は太田記念浮世絵美術館で「芳年」展の感想を挙げたが、今日は鎌倉の清方記念館の特別展の感想を挙げる。(すると明日はハマ美の「はじまりは国芳」になるかな・・・)
秋季特別展「清方描く 江戸の残り香」

所蔵品だけでなく埼玉近美、秋田近美などからの借り出しもある。
初めに随分古い絵が(しかも歴史画が)出てきた。
小楠公 弁の内侍を救う  明治半ばの作品で、まだ16歳。それでもここまで描くのだから画力の高さは普通ではない。
高師直から逃げ出した弁の内侍を救う少年・楠木正行。倒される悪者たち。そっとのぞく着物の裾。そこに女人がいることがわかる。りりしい小楠公にときめいているに違いない。
後に彼女を下賜されることになったが、小楠公はそれを固辞するそうだ。

この絵から60年後の1954年、数えで喜寿の清方は文化勲章を授与される。
橘の中央に三つ巴のような勾玉が集っている。受賞証というのも初めて見た。
鏑木健一(本名)、臨時国務大臣緒方竹虎とある。

寒月 盲目の三味線引きの母親の手を引く幼い娘。子どもは橋の袂でふと月を見上げる。
わびしい情景である。二十歳になるやならずの清方が実見した情景だろうか。

慶長風俗 大正末の作品。清方の魅力が発揮されるのはやはり大正半ばから昭和半ばかと思う。
これは二曲一双に二人の女の様子を描いたもの。
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右に立つ女の着物は短冊で、眼はフェルマータのように下の線がない。
左の少女も優美。慶長年間は大きな戦争が二つもあったが、一方で華麗な文化が続いた時代でもある。

松と梅 こちらも二人の女。対と言うのは比較もされるのだが、どちらの魅力も深い。
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季節を美人と共にあらわした絵がいくつか続く。
秋の夜 チラシ。大正時代らしいなまめかしさがある。しっとりした美しさにうっとりする。
葡萄 その幹もいい。女の素足の爪先の美しさ。
紅萩 紅葉流るる文様、こんな着物の似合う女の静けさ。
梅月相思 帯は葡萄柄、裾には松ぼっくり。可愛い。
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ためさるる日(右幅) 大正七年前後のこの豊饒さ・・・!妖艶な遊女たち。踏み絵の日。笹紅を下唇に塗り、どこか投げやりで。こんなまなざし、たまらない。

先代萩 芝居のスケッチ。清方だけでなく洋画家の金山平三も牛島憲之も芝居スケッチに非常に良いものが残っている。仁木が実にかっこいい。立派な顔。
五世菊五郎はわが子の六代目が生まれたとき、「仁木が出来るツラか!?」と訊いたというが、いまだかつて仁木弾正を演じる役者で立派な顔でないのはいない。

伽羅(下絵) 赤鉛筆らしきもので修正が施されている。清方がいかに線描にこだわったかの証左である。'96年、当時の目黒雅叙園美術館で「線の芸 鏑木清方」という企画展があった。清方は彩色の取り合わせもいいが、やはり線描の美しさ画家だと思う。それを思い出す。

線と色とどちらに主眼点を置くかで作品のありようは随分変る。
わたしは色の美しさにも惹かれるが、線の美はやはり捨て難く、どちらを選ぶかといわれれば、線の美しさを知る画家に強く惹かれるだろう。
日本画の命はやはり線である。
いま、この「伽羅」下絵を見ていてつくづく清方の線の美しさを感じた。

明治39年に清方は歌麿や春章の模写をしている。歌麿は「当世踊子揃」から材を選び、春章は「婦女風俗十二ヶ月」から。
清方は歌川玄冶店系だが、それとは別に歌麿や春章の画も独習していたらしい。
そして清方美人に比べればやや肉付きもいいが、春章美人の肢体はなるほど清方の画業の参考になるものだとシロートながら思えた。

文化勲章をもらったのは数え七十七の喜寿の年だからか、その年に清方は「喜の字」の略字の七を三つの字を書き、そこに橘の実を置いた軸を拵えている。
また風呂敷もあり、そこにも橘の実。これは文化の日の仕事。
橘は「非時香木実=ときじくのかぐのこのみ」である。

雨華庵風流 抱一上人を描いている。体操座りする抱一。その前には三味線一丁。抱一は河東節の名手だったそうだ。姫路の若様は遊芸ならなんでも出来るひとなのでした。

引き出しには下絵やスケッチが色々収められている。
浮世絵美人独習の成果が表れたスケッチがあり、形は確かに浮世絵だが、すっかり清方らしくなっていた。
別荘での生活を綴った「金沢絵日記」もあれば、「築地明石町」の下絵もある。
完成品を思いつつその下絵を見ると、軌跡や心の移り変わりが伺えて面白い。

明治から大正初めに出た清方の絵葉書が展示されていた。
こういうのは資料としても非常に楽しい。
女歌舞伎、朝顔と駅路の女、芝居のお七、春の夜のうらみ、伽羅、鰯などなど。
中でも梅蘭芳を描いた「天女の舞 悼花の歌」と少女に髪を梳かせる女を描いた「朱華芬芳」はとても欲しかった。

大正期の雑誌口絵・表紙絵も三点。
千代田の大奥「講談世界」は桜の幹を挟んでお女中と身分ある武士とがいる図。
対牛楼の旦開野「演芸画報」は烏帽子姿のアサケノ(実は犬阪毛野)が飛ぶように舞う姿。
濡衣もあった。横顔で手に数珠を持ち、やや俯き加減の美しい横顔を見せている。

小町通の大喧騒から離れて、静かな清方世界を深く味わった。
12/9まで。
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