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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

琳派芸術Ⅱ

出光美術館「琳派芸術Ⅱ」に溺れた。
昨年の中途になった展覧会のリベンジなどではなく、一個の独立した新企画展として眺めたのだが、その美貌に溺れきってしまった。

京の美意識を身につけたものたちから生まれた琳派への、憧憬。
それを百年後に、江戸住まいの大名の子息で文芸・遊芸の達人たる酒井抱一が懐いたことで、江戸において輝ける世界が啓いたのだ。
琳派の中枢人物たる尾形光琳は元禄のヒトであった。
元禄繚乱の只中にあり、贅沢の限りを尽くし、極限の美を世に示した。
それは金色の美であった。
桃山時代に次いで絢爛な時代の空気を形にする光琳。

元禄と化政期の美意識は異なる形をみせている。
粋と粋と。
同じ漢字ではあるが、前者は上方の「スイ」、後者は江戸の「イキ」である。
そして抱一が現れる前に世に江戸琳派の片鱗を見せたのが俵屋宗理だった。
彼の仕事をもここでみることがかない、とても嬉しい。

はじめに、抱一らによる屏風を見る。その本歌は宗達ら先人の屏風。
風神雷神図屏風 むしろ後世の抱一の二人組の方がいい感じに見えてくる。ちょっとばかり親しみやすさの増した風の神様と雷の神様。zen910-1.jpg


秋草図屏風が並ぶ。風の只中にいて、秋草が揺れるのを見るような心持がある。
武蔵野のさらに東の国の人の絵。
琳派の時代の草原などは知らない。想像する。その頃でも街中にはもうないだろうと思う。
京・大坂で秋草をほしいままに眺めようと思えば、淀川の土手くらいしか思いつかない。それもかなり人気のない地で。
あんまり遠くへ行けば寂しくなる。だからきっとそれくらいの地がベストだ。
だが、それが箱根の関を越えると、富士を背景にした武蔵野図の進化系のような秋草になる。銀色の風に揺れながら、赤や青や黄色い穂先や葉を見せる秋草たち。

小さな階段を下りる。出光美術館の中でも特に素敵な空間。階段を下りずとも見えるが、階段を下りてその空間に佇めば、自分と描かれた世界との距離感が変る。
八つ橋図屏風。自分はきっと橋の手前にいる。一歩踏み出せば花菖蒲を愛でるためにしゃがんだり、指先を水につけてみもするだろう。
抱一の描いた八つ橋はきちんと杭と杭とを縛っている。ただしそれは力を感じさせない括り方なので、人の体重に耐えれるかどうかはわからない。
だから少し離れたところから橋と花とを眺める。可愛らしい花々。

紅白梅図屏風 銀地に美しい枝ぶり。白く円やかな梅。清艶な梅の香りが銀屏から漂う。
zen910.jpg

秋となった今、たしかに時期が違うてはいる。しかし紅葉の美が実は退嬰に向かう美だということを思えば、今このときに、暖かな春の日を招く紅白梅の絵を見ることで、迫り来る冬の寒さに耐えることが出来るような気がする。

抱一の作品の中でも、何と言うても好きなのは「十二ヶ月花鳥図」。
多くの美術館や個人があの連作を手元に置きたがるのもよくわかる。
たぶん当時も酒井宗雅候(兄上)は江戸城内で「貴殿の弟御の絵を所望」と、地方大名や官僚らに言われて、家老を通じて弟に伝言していたはずだ。
そしてきっと日記に書いていたろう。ただ、その該当部分だけ消えたに違いない。
兄上は早世したが、こちらもなかなかの風流人で、茶の湯にも自分の好みを反映させて、それをこまごまと日記に書いていた。

十二ヶ月花鳥図貼付屏風 特に好きなのは十月の柿の実にメジロたちが身を寄せ合う図。
丸く赤い柿の実と少しばかりふくらんだメジロたち。可愛くて可愛くてどうにもならない。
愛玩したい。小禽の愛しさがあふれた一枚、それだけでも溺れてゆく・・・

十二ヶ月の前半ではアジサイを描いた月も素晴らしかった。まるで螺鈿のような煌めきがある。トンボもやや大きいのがいい。

「江戸時代」に集約している、と思った。特化した美意識。鎖国して国粋文化の芯に届いた時代、そこにゐる抱一。


今、柿がおいしい。だからというのではないが、柿を描いた絵にどうしても引き寄せられる。扇面に描かれた柿がある。俵屋宗理の柿が。
この柿はきっとあんぽ柿にして食べると甘みが増すに違いない。
葉の形もいいが、甘さはまだこのままでは増してくれまい。
柿、柿、柿。特に昔は秋のスィーツの代表だったろう。
この色遣いをみているだけで、柿の味が想像できるのだった。

中村芳中は「光琳画譜」を世に送った。
ここには扇面貼付屏風がある。ぽあんとした良さがある。

花の美しさを存分に味わう。
四季折々の植物の美しさを描く琳派。
植物の美を愛でるだけでなく、その存在への愛情を込めた絵。
同時代の西洋絵画にはこの美意識は存在しなかった。

雪中竹梅小禽図 其一 雪を重く乗せた竹が不意に雪を落とす。
どこにいたのか雀が二羽飛び出す。
左には雪にまみれた紅梅にとまる一羽の雀。隣の雀たちを見ているのか。頬の円い点が可愛い。

暁桜・夜桜図 其一 ネガとポジのようだ。描いた位置関係もそう。まるで見えない鏡に映るような。
薄い月の光で花の形が見える夜桜。光を受けるが故に影として浮かび上がる花。

歌麿の絵本「詞の花」に「芳き遊び人」抱一の宴席図が描かれていた。まだ若旦那の頃。花の夜の楽しさ。
参考として出たその風景からは、情趣あふれるものが見受けられた。

桜・楓図屏風 其一 右下に広がる桜と左上に広がる青楓。青楓の枝先が伸びているのが、踊りを誘う手のようだ。桜も幹を見せず、盛りの花ばかりを見せて、その誘いを受けるのが見える。

絵ばかりを楽しんだわけではない。
乾山のよいものが多く出ていた。絵替角皿の可愛らしさがいい。
白椿、撫子、百合、菊、山吹、竹、桔梗、水仙などなど。大和の花たち。
日により使いたいものを替えて。

古清水の色絵菊花文六角鉢は二種の青に彩られていた。
藍色と青竹色と。
この色あわせがとても魅力的なのだ。

道八の色絵桜楓文鉢は本当に可愛くて、ほしいといつも思う。

今回はこの美しい世界に溺れるばかりで、なにも考えられなくなっていた。
もう一度訪ねる予定だが、ただただ美しい世界に漂い、いよいよ深く溺れてゆくだけかもしれない。
しかし水面に顔を戻さずともいい、とも思う。この世界から離れたくはない・・・
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コメント
来年
 読んだら ぜったい 見たくなってきます。
 門司に来るといいな。
 3月までの計画には ないのです。
 菖蒲に八橋  そのしばり方にまで思いを寄せる
 そういう見方を おしえてもらえて さいわいです。
 
2012/11/28(水) 06:13 | URL | 小紋 #-[ 編集]
ときめきの琳派
☆小紋さん こんぱんは
琳派、いいですよね~
大好きです。
門司の出光もいいものをよくしてますね。
2013年度にまた形を変えて企画が出るかも。

本当に綺麗で綺麗で、溺れてしまいました。
こういうものを見るとやっぱり気持ちいいです。
2012/11/28(水) 17:18 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
私もです!
私も、あのメジロが可愛くて可愛くてたまりません!同じご意見を初めて拝見し、しかもそれが尊敬する遊行さんだなんて、二重の嬉しさですー。
ああいう感覚、現代の私たちと全く同じだと感じるのですが、250年も昔の男性だというのがつくづく不思議です。やはり女心に通じた抱一だからこそかな?などと思ったり。
2012/11/30(金) 00:22 | URL | みけ #-[ 編集]
かわいいですよね~~
☆みけさん こんばんは

目白押しって言葉もありますが、あの柿の木のメジロたち、丸々しながらギュウ詰めで、本当に愛らしいですよね。なんだか噛みたくなります(コラ)。多分、中からウグイス餡が出るはず(チガウ)。

>250年も昔の男性だというのがつくづく不思議です。やはり女心に通じた抱一だからこそかな?などと思ったり。

もてる男性はやっぱ女心に詳しいんでしょうね。やさしさを感じます。
紀貫之が女心で以って書いた土佐日記。
あれも「女性に仮託して」と評論家はいいますが、女心に通じていないと書けなかったろうなと。
ますますメジロちゃんたちが可愛くなってきます。
2012/12/02(日) 01:03 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
コラ(笑)
もう、どうしてそんなに面白いんですかー!
あの絵はもう「ウグイス餡の絵」としてしか認識できなくなりましたよ。。
確かに平安時代には、和歌は恋を成就させる最大の手段でしたものね。女心の機微をよく知っていたのでしょう、貫之も。
抱一も、女性に絵を見せて「きゃーカワイイー」とか言われていたのかな?
2012/12/05(水) 00:24 | URL | みけ #-[ 編集]
☆みけさん こんばんは

ふふふふふ。

> 抱一も、女性に絵を見せて「きゃーカワイイー」とか言われていたのかな?

それで「お殿さん~~」なんて言われて甘ったれられて本人もヘラヘラして、
今度は飲み仲間らと集まって「イャ実は先日」とか顛末語り、大名の弟だとはいえ、
きっとみんなにポカポカポカッ・・・なら嬉しいなぁ~
2012/12/06(木) 00:56 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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