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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

我ら明清親衛隊 大江戸に潜む中国ファン達の群像

板橋区立美術館の江戸文化シリーズは毎度毎度おもしろい。
今回の「我ら明清親衛隊」展もタイトルからしてわくわくさせてくれる。
最初に版画が出ているが、このチョイスがまたいい。
「明清親衛隊」という気分を盛り上げてくれる。
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蘇州版画 新造萬年橋 大変大きな縦長版画で、そこに町の賑わいが描かれている。
蘇州は「天に天堂、地に蘇杭あり」と、杭州と並んで素敵な場所という諺もある。
わたしなんぞも「蘇州夜曲」のイメージがまず湧いてくるから、この賑わいを見ると、ついつい夢を見る。

田中益信 玉取り竜宮のてい 謡曲「海士」「珠の段」。藤原不比等の命を受けて竜宮に珠を取りに行った海士の女が竜宮の追っ手から逃れようと闘うシーン。
竜宮の建物から竜宮門まで無論海である。門の外も海だが、そちらは人界の海。不比等の手のものが待機している。竜宮の連中もむざむざとお宝を渡すわけにはいかず、必死で追いかける。
なにがいいと言うても、追っ手のタコが最高である。何しろ手足合わせて8本もあるから、弓矢を引く手もあれば剣を振り上げる手もある。タコのデコ皺も三本ともぐねり、大変ムカついてるのがよくわかる。
一方の海女も刃を後ろ手に走って逃げるような体勢ながら、「えーいっしつこい!」というのが伝わってきて、この一枚はとても面白かった。
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西村重長 浮絵海土竜宮玉取之図 これも同材で、構図も似ているが、先の方が面白い。
切り結ぶ相手は魚冠の武人、治外法権ということもあり、日本軍は門外に控える。

西村重長 名月品川の座敷風景 どうも手彩色らしい。のんびりした楽しそうな風景。
品川の海には白帆が見える。俵を積んだり色々。

奥村政信 見立十二段草子 浄瑠璃姫のところへ来る牛若の見立て。江戸時代の風俗。門の外には尺八を吹く御曹司。奥座敷には琴を弾く浄瑠璃姫。広々した邸宅。そう見えるように作られた「浮絵」。手彩色か。

歌川豊春 浮絵浪花天満天神夜祭之図 ・・・・・で表現された☆がよく出ていて綺麗。提灯行列も出ている。

ほかに両国涼み図(花火)、中国室内図(刺繍する女)、和田酒盛り(草摺引)などがある。
これら浮絵は遠近法も面白く、群像図だということもあって、細かい所に面白味がある。

そしていよいよ肉筆画が現れる。
沈南蘋ブームで脂っこい絵が生まれてきたが、並ぶメンバーもその界隈錚々たる絵師たち。
リストを見ただけでも期待感が上昇する。

黒川亀玉 関羽図 三国志の英雄・関羽が愛馬・赤兎馬に乗る雄姿。青竜刀に衣を引っ掛けている様子からゆくと、曹操の手元から旧主・劉備の元へ帰る図だろう。衣は曹操からの餞別で、礼は失するが心は受けたという気持ちを示している。(後に赤壁大敗後の曹操を、関羽はこの恩から、逃すのだった)
表具も朱色とオレンジと言う目に鮮やかなもの。

二代・黒川亀玉 草花図 トロロアオイと朝顔がねとーと絡み合う。描かれた年は「丙子」ということで、宝暦六年(1756)または文化13年(1816)というえらく長いことを・・・

建部凌岱 威振八荒図 鷹に追われる叭叭鳥。南天に雪が積もる。「八荒」というのが昔からナゾの言葉で今も調べてはいない。「修羅八荒」という小説もあるが。

北山寒巖 花鳥図 この絵師はヴァン・ダインのファンらしくヴァン・ダインをもじって「樊泥第」とも名乗ったそうな。寛政三年(1791)の絵師の話。梅に綬帯鳥というなかなか派手な取り合わせ。

諸葛監 松ニ虎図 諸葛監はプライス・コレクションでも可愛いのを見せてもらったが、ここでも丸顔に円い目の可愛い虎ちゃんがいる。尻尾先がくるんとし、ベロが赤いのもいい。なでてやりたくなる。

宋紫石 清影揺風図屏風 宝暦九年(1759) 強い風に揺れる青竹。
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宋紫石 牡丹小禽図 この牡丹の色あいが綺麗。白いやや小さい花は木瓜だろうか。可愛い。とても色合いが綺麗なのが印象的。

宋紫石 一路巧名図 これは取り合わせにより吉祥を示す図。白鷺(には見えないくらいコワモテの奴)、白頭翁(そういう鳥)。一鷺(一路)それがガーとかギャーとか高声で鳴く(高名=巧名)。そして白頭翁は長寿の印という吉祥のとりあわせ。

宋紫石 十八羅漢図巻 13人ほどがいるが、みんないかにもヒマそう。虎もいてのんびりしている。

松林山人 牡丹猫図 白に黒ぶちという、猫絵の王道をゆく猫がいる。たいへん目が大きい。そして牡丹が薔薇科だということを実感させるような、そんな花を大きな目でギロッと見ている。可愛い。

渡辺玄対 白梅キンケイ鳥図 清楚な白梅と派手な色合いの鳥と。

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戸田忠翰 白鸚鵡図 チケットにもチラシにも選ばれた白鸚鵡。この絵について学芸員の面白い解説があった。要約すると、表現するのに執拗なところと簡単なところあり、職業画家では許されない描き方をしている、というようなことだった。
そのアンバランスなところが多分この絵の面白味になってもいるのだろう。

それにしても鳥の絵が多い。わたしはあんまりトリが好きではないので、ちょっと逃げたくなる。

司馬江漢 柳に翡翠図 水面を見下ろす翡翠。鋭い眼で魚を見ている。
藤田錦江 白梅尾長鳥図 ぬめ~~としている。
土方稲嶺 朧月枯木鵲図 最上の画像右から二枚目。鵲が現れるのがやはり「明清親衛隊」ならではか。大和絵にはあまり見ない鳥。

土方稲嶺 麝香花下悠々之図 猫一家のお昼間図。右幅は白牡丹をくんくんする茶系のモコモコした猫がいるが、どうやらこれはパパらしい。
左幅は白にピンクの花の下、斑のママに斑と茶の子ども二匹がお乳をもらう図。ママ猫はけっこう横長の目でゆったりと授乳中。尻尾はモコモコ。

源鸞卿 風竹虎図 トラーーーッがおーーーーっ!眉とのどの白い虎。鼻も爪も髯も白い。
こういうトラもいい。

森蘭斎 福禄図 解説に吹いた。吉祥文様として蝙蝠が描かれているのに対し「ドラキュラの使いというイメージがあるが」WWWWW。ありますねえ。うむ。まぁそれは耶蘇教のハナシで、東洋ではめでたい奴です。とはいえどっちつかずのコウモリ野郎というノノシリもあるが。さて、何がどう「福禄」かというと、上に蝙蝠、下に鹿ップルがいることで、めでためでたの図になっているのだった。このシカのカップルは共に短躯で、カノコが綺麗に浮いていた。

金子金陵 牡丹双禽図 ここでも解説にウケた。牡丹は確かにパステルカラーで「乙女チック」かもしれない。しかし乙女チックというのにわたしはウケてしまったのだが。
話は飛ぶが、少女マンガのカラーで、初めてパステルカラーを使ったのは、わたなべまさこだったという。それまでは原色のわかりやすい絵を使っていたが、わたなべまさこは編集者の意見を退け、パステルカラーを使用し、その当時の少女たちから絶大な支持を受けたそうだ。今も現役作家として繊細美麗な絵で様々な物語を紡ぐわたなべまさこ先生、これからもがんばってください。

金子金陵 枇杷双鳥図 最上画像右端。枇杷がリアル。背景の色も枇杷色。

金子金陵 芥子ニ小禽図 紅白の芥子がうねる。こういう表現が面白い。下に小鳥がいて可愛らしい。

岡田閑林 渓流虎図 作り物のトラのように動かず、瀧を見ているだけ。秋のある日。可愛い虎。どちらかといえば上方下りの細工見世物の一景(ジオラマ)のような。

椿椿山 倣張秋殼花鳥図 本歌の張秋殼の絵は知らないが、花は綺麗で左右幅に飛ぶ雀もかわいい。

椿椿山 君子長命図 笹に青アゲハ、その下には蒲公英。そして白地に三毛の凶悪顔の猫がバッタを狙う。リアルな後姿。映画「バットマン」のジャック・ニコルソンのような顔つきの猫。

鈴木鵞湖 雪山図 三顧の礼を描く。孔明は読書中。木で鼻をくくるような対応の弟と劉備たち。鈴木は明治以降活躍する石井柏亭・鶴三兄弟の祖父だとある。
孫たちの活躍は祖父の代に既に予想されていたのかもしれない。
最上画像左から二枚目は中国の月の女神「嫦娥図」。前期展示なので見れなくて残念。

根本愚洲 白鷺図 くちばしの緑色の白鷺。色の取り合わせが綺麗。安政四年。

鍬形蕙斎 草虫図 朝顔、ひさごと左右それぞれに花を配し、可愛らしい構図。

お大名たちも「明清親衛隊」らしく、作品が並ぶ。

松平定信 達磨図 サインが大きい。「源定信」
大久保忠恒 鶴亀図 殿様の余技ではあるが、いい感じ。

松平乘完 秋叢嚢露図 抱一のオジ。だからなのか、なかなかうまい。青の紫苑、赤のケイトウ、朝顔、ピンクの秋海棠、黄蜀葵(トロロアオイ)といった色の取り合わせ。
ミツバチは黄色のトロロアオイに、クロアゲハは青の紫苑に、蜻蛉はケイトウにキスする。
雀も飛んで可愛い一幅。

狩野派の明清親衛隊もいる。
狩野養信 群鹿群鶴図屏風 沈南蘋の絵を模写したものらしい。シカより鶴が目立つ。

本も展示されていた。共に千葉市美所蔵のラヴィッツ・コレクションより。
建部凌岱 寒葉斎画譜 ウサギ3羽・・・うわ~~~ホラーかっ!というような縮れ線でウサギたちが描かれている。ついついわたしはそれを模写してしまったよ・・・

宋紫石 宋紫石画譜 トラがリアルに描かれていた。細かい描写。

1/3まで休み、1/6までの会期。やっぱり面白い板橋区立美術館なのだった。
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コメント
年賀
あけましておめでとうございます

長く、造詣の深い記事を書いていることに
敬服しています


和歌山についての記述も
的を得ていて参考になります

今年もよろしくお願いいたします
2013/01/03(木) 20:54 | URL | 悠々美術館通信 #-[ 編集]
謹賀新年
☆悠々美術館通信さん こんにちは

今年もよろしくお願いします。
いつも長々と書いておるばかりですが、そういわれるととても嬉しいです。

2013/01/04(金) 09:27 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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