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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

加賀赤絵 /美しき日本の小さな心 豆皿、帯留、ぽち袋

京都のデパートで二つの工芸品展を楽しんだ。
高島屋の「加賀赤絵」と伊勢丹の「美しき日本の小さな心」である。
前者は九谷焼の赤絵「加賀赤絵」をメインにしたもの、後者は「てっさい堂」貴道裕子コレクションから豆皿、帯留め、ぽち袋を集めたもの。
まず「加賀赤絵」の感想から。

最初に筑波大学のコレクションの南京赤絵が出ていた。
近年は萬暦赤絵など明代の赤絵に強く惹かれているので、その数枚の赤絵を大いに楽しんだ。
その後から加賀赤絵が並び始める。
江戸時代後期に加賀藩では京から青木木米ら名工を招き、中国赤絵の写しなどをこしらえようとした。
今でも続くのかどうかは知らないが、多くの窯元の名がここに現れているのが、その証拠か。
下地があるところへそうした外来の知識・技能・刺激が加わったことで、技術が進化し始める。
やがて「加賀赤絵」と呼ばれる一つの作風が生まれ、時代の進歩もあり、赤絵金彩が出現し、ほどなくそれらが海外の万国博覧会で大絶賛されるようになる。
ジャパン・クタニと呼ばれるそれらをはじめ、江戸時代の再興九谷諸窯から現代作家までの作品が一同に集められている。
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随分前に青山にある伊勢半・紅ミュージアムで赤絵ばかり集めた展覧会を見て以来の、加賀赤絵との再会である。
ワグネルの指導により、それまでとは違う赤を手に入れたやきものの世界は、急激な変化をみせ、「空間の美」をいとうような、海外の美意識に沿うような作品が展開されてゆく。
正直なところ、わたしにはあまり好みではない作品が続々と現れるので、多少引いた地からそれらを眺めていた。
とはいえ、全く無関心でいられるはずもない。
なにしろこの1/6からの開催にわざわざ合わせて出てきたのである。
楽しまずしてなんとするか。

九谷庄三「色絵金彩朝顔仔猫平鉢」 これが可愛らしい。大きすぎる朝顔、その蔓と蔓の間に巣をかけるクモ。そしてその様子を眺める小さな仔猫二匹。ニャアとした可愛らしさに満ちていて、思わず「チチチ」と呼びかけそうになる。
白地に斑の猫もこちらに背を向けるグレーの猫も共にリボンをつけられている。
飼い猫がお庭にいる図なのだ。浮世絵顔の猫たち。作者は文化13~明治10年の人。
これは能美九谷焼資料館所蔵。

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他にも猫のいる加賀赤絵があった。
対の花瓶で「猫踊り図花瓶」 真ん中の画像がそれだが、肝心の猫が出ていないので、なんとも腹立たしい。
猫と蝶の取り合わせは中国での吉祥ものである。
蝶は清朝の豆彩を思わせる表現だが、ここにいる「猫踊り」の面々は吉祥もなんのその明るいバケ猫連なのだった。
ほぼ全員が半被乃至着流しスタイルで、縦横無尽に踊りまくっている。その踊りも優美なものではなく、どこかイナセでそしてふざけていて、とても明るい。
戯歌にあわせて踊っているに違いない。それこそ
猫じゃ猫じゃとおっしゃいますが~
という歌かもしれない。戯れ歌の楽しさが花瓶の胴回りに横溢している。
両方の花瓶あわせて60匹くらいの猫が踊ったり、魚を銜えていたりで、にぎやかなことこのうえない。
ああ、こういうところを画像に入れてほしい。

有線七宝のような様相を見せる人物画も多い。
鵺退治、ヤマタノオロチ退治などの物語絵、美人観桜図、美人夕涼み図などなど。
驚くほど繊細なタッチで明治の美人画が現れている。

チラシのあちこちに踊る唐子達もそうで、百唐子、百老人図が次々出てくるのだから、その技量の高さにも呆れるほどだ。

最後にテーブルウェアとしての加賀赤絵。
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ここだけは撮影可能で、飯田さんのアートフラワーが文字通り花を添えていた。
やっぱりこういうところに百貨店ならではの華やぎがある。

自分の嗜好など関係ナシに、すごい技術を見せてもらったと思う。
面白かった。1/21まで京都高島屋。もうこの後は関西には来ないそうだ・・・。


次に古美術商「てっさい堂」の貴道裕子さんが蒐集した小さくて愛らしいものを見に、伊勢丹へ行く。
わたしも大概小さいものが好きだ。西洋のドールハウスは言うに及ばず、我が日の本の小林礫斎を筆頭にした、極小の美麗なものを拵える職人たちへのリスペクトは強い。
そして実用品でもある小さいものへの愛情もとても深い。
小さいやきものを買い集めるのもわたしのささやかな楽しみなのだった。
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会場へ入ると、正月らしく餅花の飾りがあった。これはまた雅なものを見せてもらい、嬉しい。
そして蛸唐草の可愛い豆皿が現れた。色も濃く、やっぱりわたしは染付が好きだとつくづく実感する。
ごあいさつ文のプレートを見てから角を曲がった途端、絶句した。

巨大なガラスケースの中に数百枚もの豆皿が、妍を競うように、あるいは仲睦まじくに、ところ狭しと列べられていたのだ!
これはもう凄い眺めだった。まさに壮観としか言いようがない。

ここだけでも撮影させてもらいたいくらいだ。もぉ本当に素晴らしすぎて唖然とした。
色んなやきものを一堂に会してのこの様相・・・細かいことなど言う必要はない。
ただただ目を見開いて、これら数百枚の豆皿を垂涎のまま眺めるばかりだ。
一枚一枚の愛らしさもさることながら、これくらい集まると、もうただただ「壮麗」な景色だった。
ガラスの向こうでも眺める人がいて、みんながみんな口を開けていた。
わたしもぼーっと口を開けている。その開いた口にこの豆皿を何枚詰めることが出来るか。
窒息するまで詰めても、まだ余っている。
ああ、凄まじいコレクションだ・・・

その後もガラスの棚に種別ごとに豆皿が飾られていたり、ヒノキ板に魚柄・ウサギ柄・昆虫柄・鳥柄・植物柄などがそれぞれ配置よろしく集められていたり、ツタの形・富士山の形のものなどもそれぞれ仲間で寄り集まっていた。
青磁は三田焼のものが多かったのも特徴的で、こうしたところにもそそられる。

ああ、これだけでも見に来た甲斐があった・・・

と、わたしが豆皿に溺れてフラフラになったところへ次の波が押し寄せてきた。
今度は帯留である。

わたしは着物を着ない人なので帯留にさほど関心はないのだが、しかし小さく愛らしいものは斉しく好きである。
しかも日本の職人の技能の高さを愛し、尊敬するものとしては、やはりここでも存分に堪能せずにはいられない。

またこちらのレベルの高さがもぉ・・・!チラシに出ているのは上から、犬張子・百人一首寄せ・櫻寄せ・羽子板・鬼灯・暫だが、これらはホント手始め。
野菜の形をしたもの、おもちゃ尽くし、吉祥文様などなど、無限に可愛いものが湧く湧く・・・
根付や小柄のそばにつけるものなどにも、あれほど情熱をかけていた日本人が、帯留にも気合を入れてないはずがなかった。
本当にただただビックリして眺めるだけ。
中には宝石をそのまま使っているものもあり、指輪やイヤリングに良さそうなものも多い。
実際そのように転用するひともあるらしい。
うーむ、すばらしい。
舞妓さんの帯留が一回り大きいというのも知った。立派だなあ。
季節ごとの花の拵えをみると、必ず思い出すことがある。
櫻の時期に櫻の帯留をした人のこと・・・それはやめましょうと言ってあげられなかった。
本人が喜んでいるので水をさすことになるかと思ったのだが、やっぱり櫻の時期に櫻はあかんがな。
おかしいのはやきもので拵えた帯留で、ベティさんやドナルド・ダックらしいものがあったこと。ふふふ。どういう着物に合わせるんだろう。
富本憲吉のやきものもあった。
本当に帯留は無限にその種族を増やせるのだなあ・・・

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最後にぽち袋がきた。
歌舞伎の留守文様が大変面白かった。
三本杭に数珠・刀・櫛・袋 これは三人吉三だろう。それから松に豆絞りは与三郎か。
他にも外灯(!)・出刃・巻き手紙はお祭佐七。
それから役者絵を描いた周峰という絵師のものもあった。名取春仙風な役者絵で、勧進帳の義経が福助なのは明治の頃のもの。五世歌右衛門の前名。しかし与三郎で十五世羽左衛門があるから、やっぱり昭和初期までのものか。
隈取ばかり集めたものもあるし、花札文様もある。

面白いのはちょっとHくさいぽち袋。シルエットで島田髷のお姐さんのヌードもあるし女給もある、それより何よりも、花魁と客の連作ものがよかった。封のところに時間の経過まであり、表には客と花魁の向きが色々。裏にはその足裏の様子。
ははははは。こういうのも面白い。

それにしてもこの「展示」は誰の手によるものなのだろう。
コレクションの中身が素晴らしいのは当然としても(しかしそれでも見たわたしは仰天したが)、また展示そのものが素晴らしい。
えき美術館の人の手によるのか、貴道裕子さんの指示によるものなのか。
どちらにしろ、本当に楽しめた。
「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」という言葉が浮かんでくる内容だった。
1/20まで。

本もたくさん出ている。
手のひらにのる骨董手のひらにのる骨董
(2013/01/08)
貴道 裕子

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コメント
小さきもの
おおお、豆ザラにポチ袋~大大大好きいいなぁ~~
帯留は私も着物は着ても使わないけれど根付みたいで見るのは好き!

それにしても七恵さんが着物を召さない人とは??
私の頭の中の七恵さんはずっと和服姿でかっ飛ばす
小股の切れ上がったいい女!だったんですよ…
あれ~どこでプロファイリング間違ったんだろう?
2013/01/07(月) 14:09 | URL | 山桜 #-[ 編集]
細部に神は寄り給う
☆山桜さん こんにちは
いや~~もぉ実物のすごさに眼がカッッと見開きましたわ~
こういうものはホント、日本の美意識の生んだお宝ですな~

着物から遠く離れつつも、心は和!ということで日々暮らしております~~
2013/01/08(火) 10:12 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
小さいものクラブ
14日、娘と共に京都地下鉄「青の祓魔師」スタンプラリーを終えてから、
京都駅で見てきました。おじゃる丸達が好きな「小さいものクラブ」の宝物、
そんなイメージで行けば、豪華絢爛多種多様な品々に圧倒されました。
器も好きですが、増えても料理の腕は上がらず、飾るスペースもなく。
・・・どうぞ今年もよろしくお願い申し上げます。
2013/01/15(火) 07:12 | URL | 寧夢 #SiaNZQo6[ 編集]
クロと燐、志摩くん、好きですよ~~
☆寧夢さん 今年もよろしくお願いします。

もう本当に圧倒されて・・・あの小さい可愛い豆皿の大群には本当にやられました。
それにしてもすごいですよね~~
おじゃる丸・・・彼自身も豆皿ぽくて可愛いです。
まろ茶なんかもそうですが、和風の可愛いキャラいいですよね。

わたしはアニメは見ませんが原作は好きです。
2013/01/15(火) 12:39 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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