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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

華麗なるインド神話の世界 神々が結ぶインドと日本/はじまりは国芳 後期

1/14で終了する展覧会をいくつか見たので、その大まかな感想を挙げる。

・華麗なるインド神話の世界 神々が結ぶインドと日本  横浜ユーラシア文化館
19世紀末から20世紀初頭に描かれた、今日までも繰り返し印刷され続けている、あの西洋画の技法で描かれたインド神話絵が集められていた。
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先月まで、大倉集古館で開催されていたインドの細密画はムガール帝国時代までのものばかりで、この近代絵画とはまったく世界観が違う。
実際のところ、この派手目の色彩にハキハキした絵にはなじみがある。
インドの絵といえばこうした絵ばかりを見ていたからだ。
だから横浜ユーラシア文化館に展示されているこれらの絵のほうが、先にわたしの目に飛び込んでいたので、20年ほど前に中世インド細密画を見たときにはかなりの衝撃を受けた。
この断絶はいったい何なんだろう。
その間の空白は。
当時のわたしはこれらの疑問におののかされ、懸命に調べようとしたものだった。
結果として、細密画をよく見るようになったが、却ってあの派手な世界から離れてしまった。だからというのではないが、今回の展覧会はわたしにとっては懐かしいものとの再会という心持にさせてくれる内容だった。

時代から言えばもうふつふつとインド独立の気持ちが全土に沸いてきていたころで、しかしながらそこでこの西洋絵画の影響を強く受けた技法が広まったのはすごい。
シヴァやヴィシュヌ、ラクシュミーそしてゾウの頭のガネーシャなどはすぐにパパパッと浮かぶが、神話の細かいことまではわからないので、今回小さい企画展ながらもメリハリのきいた解説もあって、楽しめた。
「もっと知りたい」とそそられる展示、というべきか。
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インド庶民の人々はこれらの絵が印刷化されて出回ると、自分だけの装飾を施すことも多かったようで、ここにある絵の大半に、ビーズやレースやオーガンジーのような装飾がつけられていた。キラキラしている。明るい色彩をさらに荘厳する、というのはやはり信仰心からの気持ちなのだ。
ドラマティックな構図も多い。
女に赤ん坊を見せられて現実を拒否する修行者、博打に狂い王位も衣も剥奪されて森に追われた王とそれを追ってきた妃、ブランコで遊ぶ美しい姫(実はヴィシュヌの化身で唯一の女性。シヴァの子を産んで後に真の姿を現す)などなど。
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また「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」の紹介もあり、面白かった。

そして明治初期の日本がインドに輸出したマッチラベルのポスターがある。
これらはたばこと塩の博物館などでもしばしば出てくるが、「無国籍」なキッチュで面白い作品群だった。
全部にMADE IN JAPANとあるので、昔からナゾだったが、失業した浮世絵師の仕事だったとは初めて知った。
いやほんと面白い。こういうのが好きなので、昔から集めていた資料もあるが、やっぱりいいなあ。
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ほかのフロアではクメール佛の青銅製のものが出ていた。踊るシヴァなどである。
前日に東博の東洋館でアジアの喜びを堪能したばかりなのに、まだこうして楽しんでいる。
やはり東洋の魅力からは逃れられない。


次に「はじまりは国芳」の後期を見に行った。
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前期もよかったが後期もいい。
好きな絵がいろいろ出ているので、それを眺める楽しみがまずある。

国芳の武者絵では今回は一丈青の姐さんと酒屋の親父でもある朱貴の兄貴が出ていた。
本朝ものでは相撲の天眼礒兵衛、鷺池平九郎。
三枚続きでは武蔵の鯨退治に大物浦の平家の亡霊。

弟子の芳雪の、為朝が猪退治は雪の山中でのことで白縫に喜平次との再会も同時に果たされた場面。ドラマティックで面白い。この弟子は師匠の下絵で菊慈童の彫り物を全身に入れた美男だったそうだ。

芳虎の大星力弥はすらっとしていて、りりしい。
やはり力弥はこうでなくてはならない。

国芳 陰亡堀の場がある。釣りをする伊右衛門とうなぎかきの直助権兵衛、後家お弓のいる岸の下に戸板にむくろを乗せたお岩さんがじぃーっと見ている。恨みよりむしろ妙な笑いまで浮かべている。岸にはお岩さんの家来として働くねずみの姿もある。
卒塔婆でその戸板をかき寄せた直助もびっくり、これでは伊右衛門のいう「業が尽きたら仏になれ」など絶対ムリムリ。

国芳 可愛い鬼灯たちがいい。nec065-1.jpg

芳藤 しんぱん猫とねずみのかたきどおし 忠臣蔵。チュウ臣蔵とならないのは、吉良がねずみで猫が義士だから。四こまが楽しい。

芳員 横浜岩亀楼子供手踊之図 横浜の岩亀楼は外国人の客を多くとったそうだが、今回も小さい舞台をこしらえて外国人客に踊りを見せている。構図は手前が楽屋と舞台を後ろから、そしてこちらを見る外人客。踊りは「関の戸」。子供とあるのでてっきり女郎のことかと思ったら、本当の子供のことで、えらい健全な舞台だったのだ。

芳虎 呉服屋清七nec065-2.jpg
時代が下ると色もこう変わる。

暁斎画帖 牡丹灯篭でお露に泣き口説かれる新左衛門、光氏と女、櫓太鼓を打ついなせな女(両腕に薄い刺青がみえる)、遊女とカムロ。
どれを見ても細かく描きこまれていて楽しい。

暁斎 群猫釣鯰図 八匹もの猫が池の鯰を狙っている。采配振るう猫までいる。こういう戯画は意味もあるのだろうがそれ以上に猫の可愛さにヤラレて、深読みできない。

鰭崎英朋 鑓権三重帷子 女敵討ちの場で、橋の袂におさいが崩れている。橋の上では夫と権三が闘うのがシルエットで描かれる。物語性の濃いところが好ましいが、話を知らない人にはなにがなんだかわからないか。

清方の「刺青の女」「妖魚」が並ぶ状況は、まことに嬉しい。ぞわぞわする。
こういう系統の作品から清方に惹かれたので、あんまり清冽なものにはちょっとばかり目を伏せてしまうのだった。

清方も弟子の多い人で、それがために「国芳一門」は昭和まで命脈をつないだのだった。
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清方と巴水のとりあわせも素敵だ・・・

伊東深水 暮れ方 これは元は目黒雅叙園美術館所蔵の名品だったが、今はどこの所蔵なのか。こうして再会できたことを黙って喜ぶしかない。
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前期では版画についても色々書いたが、今回も多く楽しませてもらった。
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この企画は本当に楽しめた。
好きな作品がたんまり出ている、というのはそれだけで心持が明るくなる。
絵を見る喜びに満ちた展覧会だった。
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