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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ものづくり 上方“酒”ばなし

今日までの展示だったが、大阪大学総合学術博物館では「ものづくり 上方“酒”ばなし」展が開催されていた。
これが実に面白かった。
副題は「先駆・革新の系譜と大阪高工醸造科」とあるが、それは展示を見るうちに腑に落ちるものだった。
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今日はセンター試験の日なので受験生の邪魔をしてはいけないと思って、予定を遅らせて到着すると、さすがに阪大ももう静かになっていた。
中に入ると杉玉が飾ってあるではないか。いいなぁ、いかにもな感じがする。
そして最初に館長の橋爪節也さんからのメッセージ文があり、それを読むだけでも面白い。

序章 古代・中世の酒造り 都の酒・寺の酒 
思えば上古の昔、三輪の酒を拵えたのは人と神とだったが、無論この時代の酒造りの技術は今日とは断絶している。

面白かったのは室町幕府が殆ど酒びたり状態だったということ。
わたしはこの日のミュージアム・レクチャーには参加できなかったが、この日のタイトルはずばり「酔狂の室町時代」だった。なるほど~~

伊丹の諸白、灘の寒造りなど知った言葉が出てくる。
南都諸白が伊丹のそれにつながるということは初めて知った。
歴史を学ぶのは面白い。

伊丹から灘五郷の酒蔵地図を見る。杜氏の出身地もみる。懐かしい。まだ阪神大震災の前は灘も毎年「酒蔵オリエンテーリング」を開いて、蔵開きをしてくれていたことを思う。
わたしは日本酒だけは自分からちょっとだけ飲みたい方なので、二十歳を過ぎてから友人たちとよく通った。そのときにそれぞれの酒蔵の方からお話を色々聞かせてもらったものだった・・・

第一章 江戸を席巻する「下り酒」
幕府は江戸にあったが、依然としておいしいもの・価値のあるもの・面白いものは「上方下り」として重宝された。
浅草奥山での細工見世物も「上方下りの」細工見世物は特に名高かったそうだ。
無論、日本酒も「上方下り」のものが尊ばれた。
「上方下り」でないもの=「下らない」=「つまらない」ということである。
諸国物産の番付を見ながら色々と楽しいことを思う。

こちらは明治10年の「大日本物産図会」である。原本は寛政10年の木村蒹葭堂と蔀関月の出した本で、これはそれに色をつけたようなもの。
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第二章 洋酒製造・普及の最前線
1.大阪の麦酒工場
アサヒビール(朝日ビール)の資料がある。ポスターがレトロでいい。
明治25年の引き札(今で言うチラシ・ビラの類)がある。上方の浮世絵師・中井芳瀧によるもの。彼は国芳の弟子筋にあたる。
おもちゃ蒐集でも著名な川崎巨泉の「第四回内国博覧会」ポスターにはアサヒビールの宣伝も出ていた。
明治は宣伝に力を入れる時代でもあった。

こちらは「大阪吹田村醸造場之図」今のアサヒビール吹田工場のかつての様子である。
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建物は妻木頼黄の実施設計。今は煉瓦の建物はないが、一部のみ保存されているようだ。
残っていればさぞや、と思う。

2.寿屋のワイン販売戦略
寿屋は今のサントリーだが、宣伝に力を入れているのは創業当初からである。日本最初のヌード写真もここの赤玉ポートワインからだった。
そのあたりの資料を見れば見るほど面白くて仕方なくなってくる。
開高健、山口瞳、柳原良平ら錚々たる人々の宣伝がここに展示されているので、それを見るだけでも来た甲斐がある。
サントリーは宣伝のみならず、現在に至るまで文化事業にも熱心な企業である。
改めてそのことに思いを寄せる。そして感謝する気持ちがわいてくる。
しかしそれにしても、新聞広告に落書き風な宣伝とは、すごい・・・記事の上にバッとかいてあるのだから、びっくりする。

第三章 ジャパニーズ・ウイスキーの先駆者
1.最初の事業家・鳥井信治郎
2.最初の技術者・竹鶴政孝
サントリーとニッカの二人。二人の仕事についてはそれまでに本などで読んでいたが、こうして紹介された資料を見ると、本当に偉いと思う。
このあたりの資料を眺めると、かつての日本人の勤勉さ・優秀さ・我慢強さ、そして進取に富んだ気風に拍手を送りたくなる。

第四章 大阪高工醸造科スピリッツ
ここであの副題の意味がよくわかった。非常に多くの優秀な人材がこの学科から輩出されていた。列伝と言う形をとっての紹介である。文を読み資料を見ると、先人たちの偉さがヒシヒシと伝わってくる。
清酒や洋酒だけでなく、ここでは焼酎についても色々と教わった。
現在も使用されている「きょうかい酵母6号」というものを初めて知った。
非常にたいせつなものがここで生み出されたのだ。すばらしい教育があったのだ。

終章 文化に酔う
今も通天閣のそばにあるトリスバーの所有するサントリーのノベルティグッズなどが展示されていて、興味深く眺めた。
またサントリーが出していた「洋酒天国」誌や、戦後すぐに出しすぐに廃刊になった科学雑誌『ホームサイエンス』などもみた。こちらの表紙は小磯良平で、上品な婦人の絵がいい。

一階のカフェでは紹介されていた清酒や焼酎の試飲と販売もあったようだが、さすがにそれは諦めた。わたしはそこまでは飲めないのだ(ホンマでっせ~~)。
酔ったようないいキモチで博物館を出た。
無料でここまで楽しませてくれる大学博物館は他にはない・・・
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