FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

歌川国芳 奇想の絵師による江戸案内

大丸元町店で「国芳」展が開催されている。
これは後に大丸福岡天神店と長崎歴博とに巡回するだけというシロモノで、神戸での開催を逃すと、九州まで出向かねばならなくなる。
関東は巡回なし。

nec090.jpg

チラシの表はワニザメに救われる(掬われる?)のは為朝と家来の八丁礫の喜平次らだった。
「讃岐院、眷属をして為朝をすくふ」図。
ペン画のようなモノクロの異形のものたちは天狗、つまり讃岐院(崇徳院)の手のものたち。

国芳はこのように三枚続きの物語絵を描くときは、大胆な構図を用いる。
巨大な骸骨がいるのは相馬の古御所だが、これも笑ってるように見える骸骨がとにかく目立つ。
宮本武蔵が大鯨と対決する図では、鯨の大きさが目に残り、武蔵がどこにいるのかも気にならない。

このように大きいものをどーんと描き、周辺にヒトビトを配する構図。
こういうのがまたとても巧い。

チラシ裏がいい。ポップな感じがする。
nec089.jpg

☆花のお江戸のファッション・グルメ
今回は浮世美人の三枚続きが色々出ていた。それと団扇絵と。
団扇絵では串刺しうなぎを食べるおねえさんの絵が出ていた。好きな一枚。
高名な花魁たちを並べたものもある。
それにしても団扇絵が多いのには感心した。なかなか残りにくいと聞いているが、それがこんなにも残っている。当時の人でも国芳マニアがいて、大事に守ってきたのだろう。
明治・大正・昭和・平成と連綿とつながる愛情を感じる。

当時一松花の夜涼 おしろい花・紫陽花・牡丹 まるで少女マンガのような構図である。背景にタイトル通りの花をそれぞれ背負った3美人。おしろい花は腰元、紫陽花は町家のお嬢さん、牡丹は多少いなせな風情の女。

松葉屋内代々山・中万字屋内八ツ橋・扇屋内花扇 ものすごい打掛。黒の背景に瑞雲がたなびき、そこにヱビス・大黒・弁天がそれぞれの花魁に向けて小判を振りまく。
立体感あふれる打掛を見て、スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」の熊襲兄弟を思いだした。
しかしこの打掛、豪華絢爛な拵えで、配色もいい。
実際にはこんなものなかったかもしれないが、絵空事の楽しみが横溢している。

連作「国芳もやう正札附現金の男」がある。
野晒悟助は一休の弟子筋ということでドクロ柄の着物に袈裟。着物のドクロは猫で出来ていて袈裟のドクロは敗荷。
梅の由兵衛は白黒の丸紋の着物だが、これは烏鷺つまり碁を指してもいる。
ほかに貫禄たっぷりの幡随長兵衛、手鏡を見ながら毛抜きを手に持つ唐犬権兵衛。
男伊達のかっこいい姿が並んでいる。

シリーズものでは「大願成就有ケ瀧縞」で、洗い髪の美人がおハギを詰めた箱を持つ絵が出ていた。そのコマ絵は菊慈童で、秋を共にイメージする。むろん美人はシマ柄の着物。
コマ絵の菊慈童はなかなか美麗で、国芳の一枚絵の菊慈童を思い出させる。
そういえば彼の弟子で早世した芳雪は、国芳の下絵による菊慈童の刺青を入れていたそうだ。勇壮な好漢を描くのが巧い一方、美人画もわるくない国芳だから、美少年の菊慈童もよいのは当たり前かもしれない。
しかしこのおハギ、白と黄色という珍しさ。なかなかおいしそうである。

春の虹 背後の虹よりやっぱりウナギに惹かれる。
ウナギで思い出したが、岡本綺堂「半七捕物帳」の半七はやたらとウナギを食べていた。江戸の中期からウナギの調理法が一気に進化して、たいへんおいしくなっのだが、高値なのは今も変わらない。

柳桜亭花也摺物 雪月花のうち花 この柳桜亭花也は長州藩主毛利斉元のことで、小唄を好み、こうして豪華な摺物をこしらえている。
描かれているのは三世尾上菊五郎。女のなりをして三味線をつま弾こうとする図。上に小唄の文句があるが、「大丸の包みほどけば新染ゆかた・・・」。
大丸がこの展覧会にこの絵を出したキモチ、わかるなあ~

国芳は企業広告も手がけている。ここには出ていないが現在も使われているのは山本山の海苔が有名か。
双六仕立ての広告ものもある。上野下谷にあった堺屋の扱い商品を集めた双六。こういうのが楽しい。

ほかにも松坂屋(上野広小路)の店先絵がある。大丸・松坂屋の企業共同体だから、いよいよぴったりですな。
深川にあった船橋屋の店先には美人たちとわんころたち。
平和な風景である。

☆季節を楽しむ江戸っ子のレジャー
三枚続きの美人画が多い。
おとそ気分の3美人、隅田川の花見、高輪あたりで虹を見る三人、両国の花火、酉の市などなど。
うちわ絵は「江戸三景」で隅田川・浅草寺・王子。

イメージ (52)

☆国芳の江戸散歩
美人画の次には風景画がくる。
東都名所シリーズがある。改めて眺めると、洋風表現を多用していることに気づく。
嫖客が日本堤をわいわい言いながら歩く絵でも、つい手前の彼らの様子に気をとられるが、背景の満月の光の表現などは、従来の日本の絵にはないものだった。

今戸焼の様子を描いたものも、窯とその煙とが陰影をつけている。手前の人物はいずれも従来ながらの浮世絵キャラなので、その対比が面白い。

スカイツリーだと話題になった櫓もある。舟で大川を行き来する人の様子、橋桁にぶつかるスイカの食べ残しなどなど、東都名所は楽しいところもばっちいところも共に描く。

顔と体の向きが同じで手の動き・着物や小道具のこしらえを変えた「雪中傘持つ娘」と「雪だるまを作る美人」。こういうのを見るのも楽しい。

子どもを描いたシリーズも出ていた。
江戸時代において、子どもが可愛がられている様子を記録した資料もある。角兵衛獅子、曲芸、蜆売りなど懸命に働き、また虐待される子どもらも多い一方、可愛がられることも篤かったのだ。
国芳の前の世代で京の絵師たる芦雪なども、子どもの可愛さ・楽しさを唐子に託して多く描いた。浮世絵にしろ円山派の絵にしろ、江戸時代の子どもを描いた絵は可愛くて楽しいものが多い。
子供遊び絵ではお相撲、いくさごっこ、子とろ、川遊びなどが描かれている。みんなイキイキしていて楽しそう。
nec093.jpg


☆江戸のコミカルワールド
戯画をみる。
初めて見る絵がいくつもある。初公開という話だが、類似品も見ていない。まだまだこんなにもたくさん、世に出ぬ絵があるのだ。

猫の当て字シリーズでは「たこ」があった。蛸を噛むのも可愛い。
「ふぐ」では遠目をする猫がけっこう好きだ。nec089-1.jpg


独楽の戯画もある。なんでも擬人化できるものだなあ。
動物たちの戯画は何度も見ているが、やっぱり面白い。
雨宿りする・麦湯を飲んで一休みする・売り買いする・・・
着物の柄一つにしても国芳はちゃんと行き届いたセンスを見せる。

てるてる坊主の戯画には笑った。ほんと、なんでも擬人化出来るもんやなあ。
久しぶりに「化け物忠臣蔵」も見た。十二段みんなそれぞれ面白い。

「流行猫の曲手鞠」は大阪市立美術館での国芳展で、ガイドキャラとして大いに働いていた。看板になり道案内もし、解説文にはシルエットも出していた。
やっぱり猫はいい。

猫といえば東海道五十三次をパロッた猫飼好五十三匹、芝居をパロッたもの、たとえ尽くしなどなどが出ていた。
どれを見ても楽しく・そして可愛くてならない。

英雄たちの大冒険
武者絵ではこれまた初見があった。
大概わたしも「国芳好き好き」と言うているが、こんなにたくさんの初見が出てきては、反省するほかはない。「好きだ」と言うならもっと深く知らなければならない。
水滸伝の好漢たちの一枚絵はよく見ているが、それでもまだまだ足りていない。

「通俗水滸伝」の連作が出てた。
その中でも「浪子燕青」に撃たれた。
わたしの見知っている「浪子燕青」はこちらの「水滸伝豪傑百八人之一個」のほうだった。
(参考画像。)nec092.jpg

この「通俗」の方の燕青はうかつにも見ていなかった。全くの初見である。
動きはこの「通俗」の方がはるかにいい。なんという躍動感か。
今まで知らなかったことにわたしはショックを受けた。
何故だろう。「通俗」での他の好漢たちの雄姿は見ているのに。
というより、わたしは二十歳になるころに「水滸伝」にのめりこんだのだが、その最初期に見たのが、先に挙げた柱を掴みあげている燕青の絵だったことで、彼のイメージがそこで固定し、ほかを見なくなっていたのかもしれない。
だからこんな今になって、この「通俗」での燕青の美麗さにときめいているのだった。
nec091.jpg

浪子燕青。一枚絵でならこの色白の美青年は背中一面を見せているが、ここでは身体をねじり、闘う様子を見せている。
「雪白の膚」という表現を思い出す。そこに青と朱の花を咲かせる。それを望み、強いたのは彼の主人・盧俊義だった。
この絵を見ているだけで、わたしは自分の細胞や神経がざわめくのを感じる。

こちらは長崎のチラシ。2014.12.28追加。
イメージ (51)

武者絵ではほかにも我が日の本の者たちの雄姿が列んでいる。
俣野五郎、武蔵、新中納言平知盛などなど。
このあたりは丁度十年前に松濤美術館で開催された「武者絵」展にも出ていたように思う。
懐かしいところでは、「本朝三勇士」があった。
古寺にいる不破伴左衛門、名古屋山三郎、高木午之助らの様子。青んブクレした死体を不破があとの二人に投げつけて脅かすシーン。男たちは細面の優男風だが全く動じない。
死体の様子が殆どもうギャグで、妙に面白いのもいい。

ああ、それにしても今回の出品はときめくものが多かった。
昨今の大掛かりな展覧会よりむしろこのほうが好ましい作品が多かったかもしれない。
神戸では1/28まで。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
見てきました!
ここで国芳展が28日までと知ったので、
本日からの近代建築スタンプラリーを済ませて、
大阪市立美術館で杯の中の美を見て、とって返して三宮元町、頑張りました。
楽しかった! 北斎とはまた違って、エネルギッシュで、お洒落でした。
「ぬらりひょんの孫」の好きな娘はお土産のファイルのがしゃ髑髏に大喜び。

さて、今宵はじっくりと蒔絵の杯と粋なファッションの江戸に思いを馳せ
余韻に浸ることにしましょう。
2013/01/26(土) 23:34 | URL | 寧夢 #MOEfyM4g[ 編集]
やったー!
☆寧夢さん こんばんは

動き回られましたね~~w
国芳、楽しい展覧会でしたね。

ところで近代建築スタンプラリー、いいですね。
どこを回る分でした?
最近はなかなか見て回る時間がないですが、また出かけたいです。
2013/01/28(月) 00:25 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
No title
おはようございます。正式名称は「船場レトロ建築スタンプラリー」です。
北浜界隈を中心にいつものビルなのですが、
何年か前にクリスマス時期にやったのは、
5つぐらい回る素朴な台紙だったのに、
今回は協賛するお店も増えて、台紙も豪華なカラー刷り、
台紙の置いてある場所には「船場建築マップ」も置いてあります。
特典・商品ゲットを煽って、界隈を広く知って貰おうという趣旨。
ただ青山ビルの人によると、沢山回るのはしんどいだろうから、
今回はスタンプ3つでおしまいという簡単さ。
実施機関は3月24日までという約2ヶ月間。(全回は1ヶ月なかったのに)
冬枯れの時期、出歩く人を増やそうという魂胆でしょうか。
カメラ片手に歩いている人はけっこう多かった土曜日の午後、初日でした。
2013/01/28(月) 06:43 | URL | 寧夢 #SiaNZQo6[ 編集]
ありがとうございます
☆寧夢さん こんにちは

おお、あの恒例の。何年前か忘れましたが出かけてハンコもらって喜んどりました。
丸福珈琲さんで一休みするのも楽しかったです。

今冬は寒すぎて街中を歩いて回る、ということがしにくいですもんね。
大好きな界隈ですが、確かに出かける気合が欠けてますわ~反省。

久しぶりに参加しなくては・・・
2013/01/28(月) 09:49 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア