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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ベオグラード国立美術館展

京都駅に出ると、紅葉狩りのお客さんでごった返しになっていた。
観光案内所には『本日の宿泊全室満員』と出ている。たいへんだ。

ベオグラードは旧ユーゴスラビアの首都だったか。ユーゴと言うとすぐに思い出すのは、エミール・クリストリッツァの『アンダーグラウンド』と坂口尚の『石の花』だ。
二つとも第二次大戦下のユーゴとその前後の状況などを描いている。
ホーチミンにしろチトーにしろ混乱期の国を立て直そうとしたのは文句なく偉いが、その後の歩みは所詮外国人の我々には細かくはわからない。

印象派からフォーヴ、象徴派、エコール・ド・パリなどへ至る道。
特にルノワールの作品が今回沢山出ている。これは日本人がルノワールファンだから気を利かせて持ってきたというのではなく、ベオグラードの人々がルノワールを愛している証拠でもあると思う。
現に、今回の目玉でもありポスターやチケットにも使われている『水浴する女性』これは一度盗難されたのを四日後に取り戻したという謂れのある作品で、『ベオグラードのモナリザの帰還』と言われたそうだ。
痛めつけられた作品の修復過程をも展示しているが、戻ってきて本当によかったと思う。

以前から思っていたが、バルビゾン派のコローは人物画の方が良いものを残しているのではないか。
『小さな猟人』の少年たち、『ユーディット』、森の中にいる女たち。
今回森の中の人物遠景なので顔立ちはわからぬものの、なんとなく惹かれるのである。一度彼の人物を視点にした展覧会があれば面白いと思う。
モネのルーアンの大聖堂は柔らかなピンク色で描かれていて、セーターにしたら人気が出るだろうと思われた。現に本日のツレはそれが似合いそうなのである。
ルノワールの最初の裸婦が出ている。後年の赤くて健康的な身体ではなく、青白い肉体。何かしら悲劇的な要素さえ感じるほどだが、これはこれで心惹かれる。しかし大家になってからのルノワールの人物画はどれもこれも『ルノワール』で、絶対的な安心感がある。
息子のジャンや末っ子ココの肖像画もある。わたしはジャン・ルノワール監督作品が好きだ。『大いなる幻影』『マッチ売りの少女』・・・
ジャンの写真を見たとき、お父さんのオーギュストは『個性』で絵を描いていたのではなく、実はリアリズム作家だったのか、と思うほどジャンの顔も雰囲気も『ルノワール』絵画だったのには、びっくりした。
わはははは。
ガブリエルの肖像が多いが、黒髪に赤い服の彼女はとても魅力的だ。
コケティッシュなのではなく、なんだか親しみ安いお姉さん、そんな感じ。スケッチもあり、女たちの集まったそれは、もう少し後に展示されているピカソの女たちのスケッチとも共通する軽い明るさがあった。

ドガも多い。エジプトの踊り子はなかなか面白いデッサンだった。当然いつものバレエダンサーたちの絵もある。髪を洗う女もいる。
ふと、フィラデルフィアにある『室内』が見たいと思った。
次にロートレック。彼の二十歳頃の女性像はなかなかきれいだった。
ツレはその絵を見て面白いことを言った。
知人のロシアのクォーターの女の人に似ている。なるほど、そんな頬だろう。

シスレーやピサロに移る。
田舎道の絵の横にテアトル・フランセ広場が並べられている。
私は田園風景に関心がないので、都市風景にばかり眼を向けた。なんとなく、楽しい。
ゴーギャンのタヒチの女たち。版画家山本容子女史の世界のような作品があった。この犬はきっと「ルーカス・クラナッハ」くんのご先祖だろう。山本さんに似ているゴーギャン、と言う逆転現象がある。
ピサロはゴーギャンの肖像画も描いている。・・・・・・気の毒なのはゴッホだな。片想いは実らぬどころか、耳を切ってしまっている。小指ならどうだったろう。

私の愛するキース・ヴァン・ドンゲン。彼の金髪おかっぱ女性。ミントグリーン地を背景に、黒い下着の紐がだらしなく垂れているうなじの細い女。都市の片隅にいる女。いいなあ。たまらなく好きだ。
その横にはキスリングの美人画があるが、半裸の横向き女性が今日のツレとよく似ているのには笑った。あんな胸の形だったっけ?秘かな愉しみ。
ヴァラドンの、身支度をしてもらう女はなにやら彼女ご自身のようで興味深かった。倅の街の片隅の絵が物寂しいのとは裏腹に、彼女は元気だ。ユトリロのアルコール中毒の療養所の絵は、何故か女ばかりがいて、レンガ造りの建物や木々が、妙に気にかかる。八月に森美術館で見たフィリップスコレクションでのゴッホの療養所ともどこか共通している。
ローランサンの白すぎる身体、シャガールの牛、ルドンの描線だけの女の顔、珍しく風景画を描いたパスキン。
それにしても、ボナールに色々と感じるところがあった。マティスの製作過程にも思いを馳せる。モローもある。
ルドンの卵に目鼻のついた不気味な絵は、ハンプティ・ダンプティのようでもあるが、諸星大二郎のようでもある。
ロートのキュビズムな女の顔。ちょっと黒田重太郎を思い出した。

グッズもなかなか知恵を絞っているが、ルノワールのコップの絵はとても可愛くて、グッズでも人気のようだった。雨の中、傘を差して歩く二人の女もグッズになっている。しかし南洋の森の中にいる女たちの絵は絵葉書にもならず、ちょっと淋しかった。

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コメント
こんばんは。
TBありがとうございます。

京都で見たらまた違った印象を
抱いたでしょうねーー私も。
それにしても小粒ながら
見応えのある作品がずらりと
揃えられた展覧会でしたね。
2006/03/01(水) 22:03 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
こんばんは 

去年から今年にかけて海外のお出かけ展の良いのが沢山あり、うれしい限りです。
この展ではルノワールの良いのが色々あり、わたしは嬉しかったです。
2006/03/01(水) 23:13 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんにちは
TB&コメントありがとうございます。
ルノワール、初期の暗めの裸婦からばら色の肌の女性まで、非常の見ごたえがあり良かったですね。

モローの「疲れたケンタウロス」はモロー美術館のレプリカらしいのですが、これはこれで青の色彩が色濃く出ていて素敵でした。でも絵のタイトルがちょっとモローっぽくないですね。(もうちょっとそこら辺考えてもらえれば…なんて思いました。)
2006/03/03(金) 20:18 | URL | アイレ #-[ 編集]
思いがけないような色彩もあり、面白かったです。
東京にもグッズ販売あったのでしょうか。
あのルドンのハンプティダンプティモドキはキモカワイイ系でしたね。
2006/03/03(金) 22:23 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
遊行さん、こんばんは。
東京の三越にて見てきました。いくつか良いものがありました。

>グッズもなかなか知恵を絞っているが、ルノワールのコップの絵はとても可愛くて、グッズでも人気のようだった。

ルノワールはやや苦手なのですが、
あの小品の美しさは素直に良いなあと思いました。
TBさせていただきます。
2006/03/08(水) 22:41 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
こんばんは

はろるどさんもTakさんもルノワールがニガテだとおっしゃいますね。
うちの母もオジもそう言います。←セザニスト

わたしはあの肉付きのよさが『同志よ・・・』と抱擁したくなるので、好きなのです。それから色彩。

デパート展すきです、わたし。
世界唯一ですからね、こうした形式は。
だからデパートもそうそう変な展覧会はしませんし。
2006/03/08(水) 23:49 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
こんにちは。ようやく「フランス近代絵画展」を見てきました。
今回の展覧会は有名画家の意外な一面を見せてくれるような作品が
数多く展示されていたように思えます。
ルノワールの小品「カップ」はとても愛らしい作品で、
あんなカップがあればいいなと思えるような作品でした。
2006/04/21(金) 13:58 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
愛されるルノワール
こんにちは

あのカップは本当に可愛くて、ほしいなぁと思う感じでしたね。
それにしてもベオグラードの人々がどんなに自分たちの美術館を大事にしているか、それがとてもわかる展覧会だと思いました。
何を基準にして集めたのかはよくわからないのですが、それでも一つの意思を感じたりしました。
2006/04/21(金) 14:11 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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