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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

加藤まさをの乙女デザイン

京都駅の美術館えきで「加藤まさをの乙女デザイン」展に溺れた。
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まさをの作品と言えば弥生美術館で見ることばかりだが、千葉の御宿には月の沙漠記念館があり、そこでまさをの詩画集なども販売されているそうだ。
また彼の出身地藤枝町の文学館にもまさを作品の閲覧など可能なよう。

なにしろ可愛らしい。
わたしが知るまさをの絵と言えば、少しメランコリックな目をした少女が多く、ここに現れる幼女たちの姿は殆ど知らなかった。

大正期は童話・童謡の興隆期で、本当にいい作品がたくさん生まれた。
いい読者・いい作家が多く世に出た時代なのである。

新しい童謡を拵えもしたようで、今日にも知られている以外の歌がここにも出ていた。
浦島太郎、桃太郎、さるかに、舌切り雀などなど。いずれもオペレッタ風な装いで描かれている。軽やかでとても愛らしい。

絵葉書シリーズがいい。譜面つきの童謡・童画の世界。
「こどものうた」。
桃太郎は普通は桃から元気よく現れる赤ちゃんの立ち姿だが、まさをはそうは描かない。
桃の果肉のクッションの中で黙って微笑む幼児として桃太郎がそこにいる。
男児にも女児にも見える艶めかしさがある。

雀のお宿では幼女が雀のお面をかぶり、おじいさんのお面をかぶり、学芸会的なスタイルで物語が進む。
ちょっとばかり色っぽい雀踊り、スパローダンスの踊り子たち。
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大正の浅草オペラ、オペレッタを思わせる様子がいい。
思えば宝塚少女歌劇も最初の演目は「ドンブラコ」桃太郎の物語だった。

さるかにでも言ってみればコスプレ少女たちの活躍が絵になっているようで、とても可愛らしい。帽子を飛ばしているのがさる君。しっぽつき。たまごさんが驚かす。そして臼さんにごめんなさいするさる君なのでした。
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浦島ばかりは多少おとなっぽい。エドマンド・デュラックのファンだというのも頷けるまさをの浦島物語。
「哀別」というタイトルがせつなさをまねく。img_04.jpg
玉手箱を開けて老爺になるのも和風なスタイルではなかった。

花をモティーフにした愛らしいシリーズも多い。
そう、大正時代には多くの花が愛されたのです。
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風蘭 うまごやし タンポポの綿毛、桜草。

そして谷間の白百合と名付けられた幼女のあどけなさと妖艶さの同居するまなざし。
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こんな親指姫がいれば、幼女好みのモグラでなくても誰かのわるい手が伸びてきそうだ。

まさをの描く幼女たちはそのまぶたに特徴があった。
幼いくせに妖艶なまぶたをしている。
しかしまさをの少女たちは、その数年前の妖艶さを捨ててしまったように清純である。
憂いがちなまぶたを見せる少女たちはあの幼女たちとは全く無縁な別個の存在としてそこにいるのだった。

ここには出ていないが、まさをの描いた家のない幼女の絵を私は見ている。
幸薄そうな幼女は伏し目がちではあるが、あれがそっと瞼をあげれば…と時々思うことがある。

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まさをは「月の沙漠」の作詞者としても著名だが、絵だけでなく音楽性も豊かだったように思う。かれのえがく少女たちはギターや、大正に流行ったマンドリンを演奏することも多い。
自分の手元にある絵を思い出してもいくつものシーンがある。

まさをには「遠い薔薇」「消えゆく虹」といった少女小説がある。どちらも国書刊行会から出ている。わたしも20年ほど前に手に入れた。
まさをらしい抒情性の濃い物語だった。
特に「消えゆく虹」のせつなさは胸が痛くなるほどで、読み返すのも哀しくなるほどだ。

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うちの母は抒情画にあまり関心がないのだが、それでも少女の頃はまさをの絵が好きだったという。
まさをの主な活動期は大正から戦前だが、昭和30年くらいまでは戦前の本もまだ再版されたり流通していたのだった。

会場にうちの母よりずっとご年配のご婦人がいた。男のお孫さんに支えられながらヨチヨチ歩いて絵を見ている。
懐かしい、という。懐かしさが胸からほとばしり、歌声になる。

月の沙漠をはるばると旅のラクダがゆきました
金の鞍には銀の瓶 銀の鞍には金の瓶

もう声も出なくなっていて音程は外れているし擦れてもいるのだが、まさしくそれは童謡「月の沙漠」だった。

わたしは御宿か藤枝に行きたいと思った。nec372-1.jpg


近年ようやく秘密のヴェールがはがれてきた小林かいちの絵が出てきた。
絵葉書のシリーズもの。
物語性の薄い、しかし魅力的な連作。img_11.jpg


華宵、夢二らの作品もある。華宵の作品は愛媛の方から来ていた。

6/17まで。もう一度見に行く時間はある…
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