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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

四季礼讃 水のながれ

野間記念館で「四季礼讃 水のながれ」を見た。
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近代日本画で水の流れといえば、まず滝に川に海というところか。特に滝と川が「水のながれ」というにふさわしいし、描かれるのもその二つが多いようにも思う。
見慣れた絵も多いが、初見もあり、楽しく眺めて歩いた。

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栖鳳 古城枩翠 千代田城のお堀を藻刈舟が、という図でこの題材を栖鳳は愛し、他にも描いている。泉屋博古館の所蔵品は東京・京都を巡回する「竹内栖鳳展」にも出ている。
大正末の夏のある日の情景。

大観 飛泉 滝のうねりがかっこいい。ざーーーーっという音まで聞こえてきそう。

大観 春雨 湿気を感じさせられる。これは凄いことだ。岡倉天心先生から「お前ら湿気を描け」と言うようなことを言われて、朦朧体にゆきついたが、それがここへ結実しているのだ。一羽の鳥が飛ぶのがいいアクセントになっている。

玉堂 鵜飼 なんだかほっとするのは「やっぱりこれがないと」という気持ちがあるからか。玉堂先生の鵜飼、最高!鵜匠の人が「鵜は鵜飼の弟だ」と言われたのを読んで感銘を受けたが、玉堂の鵜飼は人と鵜とが一緒に懸命に、そして楽しく働くように見えて、そこが好きなのだ。「面白うてやがて哀しき」だけではない、生活の味わいがある。

山村耕花 江南七趣 このシリーズ全編が出ているのは大変嬉しい。
わたしは特にやや退廃的な「秦淮の夕」「留園雨後」が好き。緑色が全面に行き渡り、湿気が感じられる。1921年の江南。わたしも遊びに行きたい。そんな気持ちにさせられるのだ。

田村彩天 雨の白河 これは初見。紫と緑が鮮烈な印象を残す。大きな絵で、そこに桐の花(紫)が咲き、鎮守の森には松と、それにからむ藤(紫)がある。松の緑の鮮やかさは冬にも変わることはない。

蔦谷龍岬 春雨 これも初見。こんなのが現れるから、何度でも野間に来る価値があるのだ。銀紫の木々。繊細妖艶な三種の木。妙な色っぽさがある。鷺もいる。そして空には薄い夕月。

映丘 雨 王朝美人が一人、室内から外を眺める。萩と女郎花が咲いている。雅な午後。

清方 五月雨 いつ見てもいいなあ。どこかの庭を逍遥する美人。高下駄。ゆりも咲く。

清方 夏の旅 これも好き。駕籠から降りて一服つける婦人。江戸時代の旅。滝を見て休む。広重のような趣がある。

靫彦 春雨 「ゼンマイが」と解説にあるが、のびのびと葉を広げているのは蕨だと思う。それもいずれはシダになりつつある。妙に艶かしい。

小川千甕 雨将霽 そう、タイトルどおり、雨が今将に晴れたところ。空には虹も出た。水郷。小さな船を橋にしたところを行き来する人と馬と。

映丘 瀧 市女笠に袴姿の女がいる。足には脚絆。赤松の横で。平安の女の旅。

児玉希望 四季の風景のうち 春は精進湖・夏は華厳・秋は那智・冬は十和田。それぞれの一番きれいな時期を描いている。静けさと大きさと強さと寒さと。

小室翠雲 青緑武陵桃源図 南画な絵。やはり桃源郷を描くには南画か文人画がよいのかもしれない。

野田九浦 十二か月図 色紙シリーズで、昭和3年の東京の町あちこち名所図。野田は九甫とも称して、阪神間の名所図も描いている。異国情緒あふれる絵も多い。
昭和初期の日本の風景は非常に心惹かれるものが多い。
御堀、木下川、隅田川、御茶ノ水、ニコライ堂、千住、不忍、築地、谷中、玉川、吉原、木場。それぞれ風情あるええ絵。細かいことは全てメモに残しているが、ここには挙げない。特によかったのは「ニコライ堂」で、これは満月に照らされたシルエットで描かれている。民家の並ぶ様子や電柱の姿もいい。
大方がこんな風に静かな風情に満ちている。

竹喬 龍峡帰舟 大変細かく描きこんでいる。舟もくっきり。昭和8年だからまだ後年の竹喬の特徴(パブリックイメージ)が出ていず、細かい作画時代の絵。

荻邨 淀の水車 デターッキターーッと思わず。いいですねえ、荻邨の淀の水車はどれを見てもいい。ここにいるのはいつもの鷺だけやなく、カワウもいた。みんな仲良くね。

玉堂 芦間之舟 明治帝の御歌から。玉堂はお正月の歌会始でも召人として宮中に参じ、香淳皇后に歌の指導もされていたそうだ。

曼舟 東山緑雨 にじみ・ぼかしで雨の東山を表現する。風情あるええ絵。下方に八坂の塔。この辺りは今もいい。わたしは普段は中京区ばかり好むが、東山の良さと言うものも捨てがたい。

春挙 白樺の林 山嶽のスケールの大きさを日本画で初めて表現したのは春挙だと思う。
遠くに山脈、馬の影、手前に緑と草と。遠近感がいよいよ大きさを感じさせる。
そういえば「白樺の林」という映画があった。ダニエル・オルブリフスキー主演の1970年の映画。
関係ないが、わたしは彼の出た映画のうち「ブリキの太鼓」「愛と哀しみのボレロ」などを特に偏愛している。

遙邨 十二か月図 昭和5年 こちらも名所図。晩年にいたるまで「美の旅人」として生きた遙邨。ただこの時代はまだ洒脱なところはない。
浜名湖、甲斐猿橋、千代田城、大沼公園、塩原温泉、淡路島、北海道狩膳峠、南総海岸、大井川の富士、十和田湖畔、箱根旧道の富士、松島。
北海道の大沼公園といえば学生の頃に初めて行ったとき、近所の緑地公園にそっくりだなと妙な感心をしたものでした。とはいえ、むこうは大きな沼があり、こちらの緑地公園には小さな池が点在なのだが。
わたしの持ってる「長靴をはいた猫」絵本で、猫が兎を罠にかけるときの森の中の情景に似てる。カラバ侯爵の領地の話。

高島屋の昭和三年の大イベント「富士山」展のために描かれた絵が二点出ている。
深水 富士百趣 おお、美人画家の富士は水色だった。
寛方 富士百趣 なんだか凄い迫力がある。
こうした絵があるのも野間コレクションの面白味。

洋画を少し。
中川一政 修善寺 ロングで捉える風景。昭和四年、修善寺は既に高級な温泉地だったか。むしろまだ保養地だったか。岡本綺堂「修善寺物語」のヒットを思う。

岡田三郎助 下田港 瓦の細密描写!!なまこ壁。びっくりするくらい詳しく細かい。

川村清雄 波 うねる波!!マチエールもうねる!!!

再び日本画。
小杉放菴 川船 生活している。こんな様子も昭和の真ん中まで。宮本輝「泥の河」か、ジャン・ヴィゴ「アタラント号」を思うか。

小川芋銭 釣児童 五人の子供らが板橋で機嫌よく釣りをする。ほのぼのする。

近藤浩一路 蟹 親子の蟹かな。チョッキンチョッキンチョッキンナ♪

揃いものではなく、作家ばらばらの十二ヶ月図を見る。
中でも特によかったものをあげる。

勝田哲 十二月 人買舟 小舟に静かに座す若い江戸時代の娘。「安寿と厨子王」も人買いによる悲劇から物語が進むが、この端座する娘は自身の運命を悟っているように見える。

岩田正巳 八月 蓮舟 若衆と蓮舟。侍たちの娯楽。

狩野光雅 三月 山湖 桃太郎が来そうなところ。

関東大震災の直後に講談社は画家たちを特派員という形で、被災地の絵をルポさせた。
その表紙を大観が描いている。「大正大震災火災」である。そしてその理由として、震災に遭遇したとき展覧会初日に出した「生々流転」の作者である、というようなことが説明されていた。
当時の状況を清方が「続こしかたの記」に詳しく書いているが、本郷の清方は丘の上に避難して、集まった人々と励ましあって過ごしたそうだ。
そして下谷にいた大観は避難民を自宅に受け入れ、尻端折りでその世話をしたそうだ。
やはり自然災害は怖い。しかし大家である二人の画家がそれぞれの方法で懸命に過ごしていたことを知ると、胸が熱くなる。

さて、ここにあるのは「生々流転」の複製である。昭和46年に作られたもの。原寸大とはすごい。
筏師から小舟の三人組まで。コロタイプなのかどうかもわたしにはわからない。
だがさすが講談社だと改めて思う出来だったのは確か。

10/20まで。
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