FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

おみやげと鉄道

旧新橋停車場の鉄道歴史展示室はいつも無料で、楽しい企画展がどんどん出てくるので、嬉しいやら申し訳ないやら、という気持ちがある。
今回は「おみやげと鉄道」という企画展である。
nec648.jpg

こういうの大好き。
大阪の交通科学博物館でも時々こんな企画展が立っていて、そのたびに出かけていた。
もうこの博物館もなくなるので(京都の梅小路の新しい博物館に吸収合併されるのだ)、ここでこうして無料で楽しませてもらえるのは本当に嬉しい。

リーフレットを見ると、昭和初期くらいの可愛らしい双六の絵が出ていて、その下には栗ようかんの箱を担ぐおじさんと犬の洒脱な絵がある。
(最初はてっきり「都こんぶ」中野すこんぶ、かと思った)

なんでも諸外国では日本のような旅先でのおみやげ文化が発達していないそうだ。
「名物にうまいものなし」という言葉もあるくらい、日本全国津々浦々どこでもかしこでも、その地のお菓子を売ったりグッズを売ったり。
昭和の匂いのするみやげ品については、みうらじゅん「イヤゲ物」展で横隔膜が痙攣するほど笑わせてもらったが、思えばそういうものを喜んで買う文化が確実に、日本人にはあるのだ。

鉄道は♪汽笛一声新橋を~の歌通り、明治に新橋ー横浜間が開通して以来、全国に鉄道網が張り巡らされていった。
そして徒歩や馬でなく人々は鉄道に乗り、遠距離の旅に出る。同じ日本とはいえ地方地方に違う味・名物物・伝説があり、それを形にしたものを珍しくも思い、記念にと買ってゆく。

nec647.jpg

先代萩の政岡がお菓子の載った高坏を手に立つ姿。「腹は減ってもひもじうない」の子役の声が聞こえるようだ。そんな絵の描かれたチラシ。芝居では悪者からお菓子をもらい、それを若君のために毒見するように母から諭されているわが子が死ぬ、という痛々しい未来がある。だから実はこの絵のお菓子は毒なのだった。
まぁそれを言っては、お菓子屋さんに気の毒か。せっかく「カステーラ」「雀もなか」などを販売しているのに。

そうそう思い出した。伊予松山を舞台にした「坊ちゃん」ではラスト「おれたちはこの不浄の地を離れた。」とクソミソなのに、その地では「坊ちゃん饅頭」「坊ちゃんせんべい」「坊ちゃん団子」が売られている。

こういうことを言い出すと、いくらでも横道にそれるが、もう一つ。
武田泰淳「富士」には誇大妄想というかなんというか、自分を宮様だと思い込む美青年「一條」がいる。戦時下の富士山麓の精神病院を舞台にした小説の中で、一條が宮様となれば、この地で「一條饅頭」「一條最中」「一條下駄」が販売されるだろう、と語り手に泰淳は言わせている。

わたしはこういうのが大好きなのだった。

閑話休題。
さて鉄道網はどんどん広がってゆき、それに伴い、イベントも開かれるようになった。
それらのポスターがある。
カッスラーのようなかっこよさはないが、どこかほのぼのする絵柄などで鉄道を描く。

絵葉書類もある。わたしは古写真が大好きなので色々見てきたが、名所・名物などの絵葉書は喜ばれたと見えて、大変たくさん刊行され、流通した。今も古書店などでよく見かけるし、比較的安価なものも多い。
ここでも列車に乗る楽しい姿や、行く先々の名所・風物のシーンがある。

赤福のポスターがある。♪伊勢の名物 赤福餅はええじゃないか この歌が耳に残り舌に乗るのは間違いなく昭和の子供。
nec647-1.jpg

駅弁の売り子の絵が描かれたチラシもある。
おすし・弁当・お菓子な口上、とある。楽しい。
そういえば昔は歌舞伎でも大相撲でも「かべす」というものがとても愛された。
それは何かと言うと菓子・弁当・寿司の頭文字をとっての言葉。
弁当と寿司とは別物として支度されているのが面白い。

nec648-1.jpg

名産品といえば、山形の佐藤錦かどうかは知らぬが、さくらんぼの絵葉書もある。
昭和初期の和やかなムードがある。

戦争に突入すれば何にも楽しみはなくなるので、やっぱりこの時代以前の資料が素晴らしい。
徒歩で移動していた時代から日本人は旅の楽しさ・旅の注意書きなどを本にもしたり、それを描いた名所絵を愛してきた。
改めて「旅の楽しさ」を再確認できる、いい企画展だと思う。11/24まで。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア