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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

上海博物館 中国絵画の至宝

東京国立博物館はやはり贅沢なことをする、とつくづく思う。
平成館では「京都」展を開催し、展覧会の新たな地平を切り開くものを行っているにもかかわらず、東洋館では特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」を素知らぬ顔の平常価格で開催している。
こんな贅沢な企画を立てられるのはやっぱりトーハクだからか。
本当にいい心持で見て歩いた。
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近年、関西の様々なミュージアムでは明治から昭和初期にかけて関西に集まった中国書画展を、各ミュージアムがリレー形式で展覧していった。
感想はこちらにいくつか。

中国近代絵画と日本

関西中国書画コレクション展 ・泉屋博古館・大阪市立美術館・黒川古文化研究所

全部を見て回ることは出来なかったが、開催の大方を見て回れて、中国の書画の展開を教えてもらった。中国書画への愛情が湧いてきたところへ今また、この企画展。
本当にすばらしい。
あいにく前期は見ることが出来なかったので図録で楽しむばかりだが、後期を見ているので、その感想を少しばかり挙げたいと思う。
一級文物も実に多い。政治的な日中関係のことを思うと暗い気持ちになるが、こうした文化的な交流はまことに素晴らしいと思う。
そしてこうした作品を見ると、つくづく中国は日本の文化の父、朝鮮は兄だと思うのだった。

第1章 五代・北宋―中国山水画の完成―

幽谷図軸 北宋時代  岩山の松林だけはもあもあと元気そうだが、あとは山も岩も しぃん としている。岩の形のうち、真ん中のザギザギしたあたりは人の横顔にも似ている。

渓山図巻 1巻 南宋時代 右すぐの高い岩、人面岩に見えるのだが。いや人面というより妖怪の横顔ぽい。ベロ出してるようにも見えた。

第2章 南宋―詩情と雅致―

人物故事図巻 1巻 南宋時代  徽宗と言えばわたしは「水滸伝」に現れる姿を思う。
妓女の李師師と仲良くし、政治を高毬らに好き勝手にされても関与せず、ただただ芸術と女との関わりで終わった人だというイメージがある。
ただ芸術家としての徽宗は素晴らしく、またそのパトロンとしても立派だというのも確かなのである。
その徽宗は金の国に皇后ともども拉致され軟禁生活の果てに死去した。宋への帰還が叶ったのはその死後だった。

右側の朱服の人々と緑服の人々は宋の役人たち。
左は徽宗らの棺を運んできた金の役人たち。
棺を見て思い出したのが遼の展覧会でみた公主の棺。
遼にしても金にしても北方の異民族。棺の形に共通するものを感じたが、なにかしらそうしたところがあるのか。
金の使者にヒョウ柄のマフラーをした者がいた。
牛も可愛い目をしている。

西湖図巻 1巻 南宋時代  この絵を1757年に見た乾隆帝が実景とのそっくりさにびっくりした、というのを書きおいている。
ひさご型の中之島と左端の塔は今に変わらぬらしい。

虞美人図頁 1枚 南宋時代  非常に強い赤色。そして薄紫と白と。虞美人草は項羽の恋人の虞美人の自刃した血が地に降り注ぎ、そこから生まれたといわれる花。ココリコ。花びらのリアルなドレープ。少しばかりグロテスクささえ感じる。


第3章 元―文人画の精華―

九歌図巻 張渥 1巻 元時代  呉叡、至正6 年(1346)9月  白描で「楚辞」の「九歌」に現れた神々が描かれている。自由な感性さえ感じる絵。
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雲中君の背後には鬼が、湘君は美人で侍女つき、湘夫人は二人美人、東君は剣を抜いて雲の上に立つが、○型の流星が横をすり抜けてゆく、國觴は柏の大木に包まれそうである。
いちばん可愛いのは山鬼。豹に座り、柏のケープを裸の肩に掛けている。右手には草を握り、左手では霊芝を摘む。そして松の隙間から海へ目を向けている。
可愛い。少年のような体つきがいい。1384656907528.jpg


秋舸清嘯図軸 盛懋 1幅 元時代  小舟に乗って後ろに手を突き、のんびりくつろぐおっちゃん。櫓を漕ぐ小僧ものんびり。蒲鉾型の囲いの中には月琴か胡弓らしきものが見える。
ただの暇人ではないのだった。

瀟湘八景図巻 張遠 1巻 元時代  山水は厳しさを感じさせるが、描かれた人々は三等身で表現され、和やかモード。ほのぼのと風景の中にとけ込んでいる。
最後の雪景色の人々、広重や北斎の描く名所図のような情緒があった。
わたしはやっぱり人のいる風景が好きだ。
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第4章 明―浙派と呉派―

琴高乗鯉図軸 李在 1幅 明時代  鯉の起こす風に吹かれる人々、波も跳ねる。動きのある絵。
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黄鶴楼図軸 安正文 1幅 明時代  思えば「黄鶴楼」といえば李白の「黄鶴楼ニテ孟浩然ノ広陵ニ之クヲ送ル」を第一に思い出す。
李白のいた頃既にこの楼閣は高名だったのだ。わたしは現代の写真は見ていたが、絵で見るのは初めて。
外観をロングでとらえて描いている。屋根の作りが素敵。こんな勾配の屋根はかっこいい。現代の建物とはちょっと違う構造になっている。
大人気の酒舗。大繁盛。ふと右手上空を見ると、鶴が飛び去るところ。それに気づく人もいれば、いない人もいる。

剣閣図軸 仇英 1幅 明時代  3M近い長さの絵。山中の細い道を行く人々。この狭路は成都への道か。ひどい桟道ですな。これを見て二つの道を思い出した。「アギーレ神の怒り」の冒頭のマチュピチュの道、「薮原検校」冒頭の地獄道を行く座頭たち。
仇英は官女たちの絵が好きだが、こんな絵を見るのも興味深い。
白が非常に印象的。衣服の白さ。はっ となる。

花卉図冊(12開) 陳淳 1帖 明時代  12の花のうち、サザンカがいい感じに見える。百合と木蓮もいいか。水仙だけ違う趣がある。輪郭線はやや太い。


第5章 明末清初―正統と異端―

山陰道上図巻 呉彬 1巻 明時代・万暦36年(1608)  淡彩。その薄さはいいんだが、妙な山、妙な風景。奇想というのかな、乾隆帝もびっくりの絵。とはいえ乾隆帝の父上も大概けったいなコスプレ肖像を描かせてたがなあ。へんな空気が漂ってますなあ。
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伏生授経図軸 崔子忠 1幅 明時代  焚書坑儒から逃れた人が90歳の高齢になり、ようやく自由になり、隠し持っていた書を訪ねてきた人に写させる。美人か美少年かわからぬ人がそばに侍る。
手前の岩、クマガイモリカズな岩だった。

花鳥図冊(10開) 朱耷 1帖 清時代・康煕44年(1705)  八大山人の花鳥図。彼の作品といえば泉屋博古館所蔵の「安眠帖」を思い出す。
ふっくら小鳥が可愛い。椿もふんわり。

細雨虬松図軸 石濤 1幅 清時代・康煕26年(1687)  一目見て、目がバッ と開いたわ!! さすが石濤。白さの目立つ画面。薄い色彩がいい。 

花卉図冊(8開) 惲寿平 1帖 清時代・康煕24年(1685)  大阪市立美術館の至宝の一つに惲寿平の花の絵(花卉図冊)があるので、親しい気持ちが湧く。
そして丁度今現在開催中の「再発見!大阪の至宝」展にも出ているので、東西で彼の花の絵を楽しむことが出来るのだ。

やはり東洋絵画の花鳥画というものはいい。
リアルな花の描写であっても、西洋のボタニカルアートと違い、情緒がある。
結局そこなのだ。
西洋の静物画との大きな違いは。
ここにある秋海棠、朝顔、牡丹、菊、白桃などなどすべてがやさしく柔らかい。

ああ、素晴らしいものを見た。11/24まで。
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