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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「井戸茶碗」 ト 「志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部」後期ヲ楽シム

三井記念美術館で「志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部」展が開かれ、根津美術館では「井戸茶碗」が集められている。
どちらも桃山時代から江戸時代に偏愛されたうつわ。
この二つの美術館と五島美術館の「光悦 桃山の古典」の三つの展覧会を回り、半券を出せば、嬉しいプレゼントがあるそうな。
わたしは二つのやきもの展を見たが、五島へはまだ出向いていない。
来月早々に行く。

三井の展示は前後期に分かれている。
前期展示の感想はこちら

根津は多少の期間限定はあるが、出品はほぼ一定している。
先にその「井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ」展の感想を挙げる。
特に心に残った井戸茶碗についての、偏愛の言葉を。
nec690.jpg

ここにあるものは全て16世紀の朝鮮王朝で生まれたものばかりである。
日本で生産されたものはない。

大井戸茶碗 銘 喜左衛門/本多 大徳寺孤篷庵蔵  枇杷色肌に細い魚型の景色が見える。歪みが強い。高台の梅花皮(カイラギ)が凄い。
不昧公の「雲州蔵帳」には大名物と記されていて、当時から大事にされてきた。
後に夫人の手で大徳寺に寄贈という来歴を持つ。

この天下の国宝の大きめの井戸茶碗・喜左衛門は昭和の映画界の大巨匠・溝口健二をも魅了した。
「西鶴一代女」を製作中、プロデューサーの児井英生との雑談の中で「喜左衛門」の話が出たとき、児井の伝手でなら喜左衛門と間近で接することが出来ると知った溝口は、どうしても引かない。
この監督に手を焼いていた児井は、しかし旧友の伝手をたよりに、とうとう大徳寺へ向かう。庵の外には警備が数人。仰々しさに固くなる溝口。
やがて立会いの僧侶の許しを得て、溝口はこの喜左衛門を手にする。
「感無量です」
溝口はそう言って何とも言えない良い笑顔を見せたそうだ。
このことは児井プロデューサーの自伝「伝・日本映画の黄金期」の溝口の章に詳しい。

大井戸茶碗 銘 本願寺  高台にカイラギが現れていない。今は個人蔵だが、銘の由来などを想うのも楽しい。

大井戸茶碗 銘 古織割高台 根津美術館蔵  枇杷色の、と解説にあるがわたしにはむしろ玉子色の肌に見える。 

大井戸茶碗 銘 巌 京都・大光明寺蔵  すごい継ぎ。その景色を巌に見立てたのもわかるが、わたしはついつい「フランケン」と呼んでしまう。

大井戸茶碗 銘 玉水 京都・大光明寺蔵  内側に大きな線が入っているように見えたが、自信はない。

大井戸茶碗 銘 蓬萊山  色が濃い。形全体をそう見立てているのか。

大井戸茶碗 銘 宗及 根津美術館蔵  可愛いようなチッチッチッとしたものが多い。

大井戸茶碗 銘 福嶋 東京・前田育徳会蔵  見込みに二つばかり目跡がある。

大井戸茶碗 銘 佐野 東京国立博物館蔵  口べり近くに雀の柄のようなものが見える。
可愛い。こういうのにそっと歯を立ててみたい。

大井戸茶碗 金地院 静嘉堂文庫美術館蔵  枇杷色。崇伝ゆかりなのか?

大井戸茶碗 銘 上林 三井記念美術館蔵  白色。

大井戸茶碗 銘 さかい 根津美術館蔵  高台に釉だまりが。それが綺麗。小さく綺麗な塊がある。

ふらふらと書かれた解説をたよりに見ていたが、いきなり年配のおじいさんに尋ねられたので、わかりもしないのにカイラギについてグダグダ講義し、「あれ見やはってください、下の台のとこ、チリチリチリッとなってるのがカイラギ言いますねんけど、これあれですわ、出てませんやろ、そやから珍シ思いまして」…
近辺の人数人、「あぁそぉか」という顔をしていたが、ホンマかどーか知りませんでぇ~~

大井戸茶碗 銘 対馬 湯木美術館蔵  枇杷色。これは湯木さんで時々見かける。

大井戸茶碗 銘 美濃 五島美術館蔵  目跡三つ可愛い。

大井戸茶碗 銘 雨雲 北村美術館蔵  開いていない形。ちょっと天目茶碗を思い出したりする。また高台が高い。珍しいような。

大井戸茶碗 銘 毛利 出光美術館蔵  実はこの「毛利」が一番最初に顕れたのだ。
枇杷色でカイラギもチチチッと出ている。

大井戸は実際のところ自分の掌にとっては重たそうだし、ザリザリしているのでニガテ。
鑑賞するばかりでいいよ。とはいえ、わたしは侘びた美と言うものをまだまだ理解していない。

小井戸茶碗 銘 六地蔵 泉屋博古館分館蔵  目跡6つで六地蔵というのはいいねえ。
笠地蔵も六地蔵、宇治の地名も六地蔵、何故「六」なのか。そんなことを思いつつ眺める。

そのもの自体を鑑賞しつつ、そこから向こうに見えるものをみつめ、妄想に耽る。

青井戸茶碗 銘 藤屋  茶溜というのか見込というのか、そこに釉溜。これが青く光り、たいへん綺麗。どきどきする。
指先で撫でてみたくなるのはこうした青さか。

青井戸茶碗 銘 慈照寺 京都・慈照寺蔵  びっくりするくらいの、モノスゴイ継ぎ。あみだくじのような。ああ、凄いな、何があったのだろう。

たくさん並んでいて、みなさんがそれぞれ自分の好きな井戸茶碗を見出していたようだ。
わたしはちょっとばかり距離を置きつつ、いろんなことを思いながら去って行った。

二階に上がり饕餮くんたちに会う。いつみても可愛いなあ。大好き。
上向きに顔を見せる犠首がまた可愛い。心の中で話しかけながらいい気持ちで見て回る。

色んな青銅鏡もあるがこれはやっぱり唐代のがベストか。

最後に茶の湯の部屋へ向かう。入った途端、わたしを招ぶものがあった。
伝とはつくが、ノンコウの赤樂「冬野」。
他の何ものよりも強く呼んでくれた。
小ぶりで可愛い茶碗。

瀬戸黒茶碗 銘 玉むし  ああ、なるほど、チカチカしているのを感じる。

三日月型手鉢 備前  5つ牡丹餅がある。そして「品」の字を思わせるものも。

いいものをありがとうございました。12/15まで。


次に三井記念美術館の後期展示について。
前期でときめいた黄瀬戸の胴紐茶碗は通期展示なので、また再会できて嬉しい。今回もやはり一際綺麗だった。
あとは通期のものは措く。

織部はじき香合 銘 さげ髪  持ち手のついているところがその名を決めているそうな。銘はその形が若衆の下げ髪風だというところから。
桃山時代の下げ髪の若衆を想う。森蘭丸、不破万作、そうした少年たちを。

志野垣根唐草文茶碗 銘 野辺の垣  一見源氏香のようにも見える、いや、もっと言うと何重か重なって見えるが、ハードル越えのように見えて仕方ない。

志野重餅香合  イや、ホンマにおいしそう。これはいつもおいしそうに見えて仕方ない。とはいえ重ね餅やなく、わたしにはホタテの貝柱を焼いたものに思えるのだが。

鼠志野竹文向付  竹、か。むしろ椰子の木に見えます。

鼠志野葦文向付  本当に丸い。足が三つつく。

志野葦文輪花向付  縁に葡萄?

湯木美術館から組み合わせものが来ていた。素敵な合わせ方をしている。これは吉兆翁のセンスか、三井からの指定なのか。どちらにしてもとても素敵。
寄向付。志野飛鳥文向付、織部花筏文向付、黄瀬戸鉢、そしてノンコウの青樂割山椒向付。可愛いなあ。

黄瀬戸六角猪口  これまた小さくて可愛らしい。

織部百合文沓茶碗  前期と表記があるが見た記憶がない。今回の後期に出ているのも延長なのか。

織部菖蒲格子文茶碗 銘 柾垣  マサカキ。面白い構造の垣根。

織部竹鳥文水注 急須型で大きめ。竹と鳥が静かに向かい合う。そんな絵柄を持つ水注。

織部はじき香合  このはじきはなかなか大きい。

織部梟香合  後期展示のものは通期のそれよりやや大きめ。並んで展示されているのは可愛い。

織部菊文手鉢  見込みに豊かに菊の花。

織部切落向付  横から見ると鍋の断面図。見込みには可愛い花柄と五目並べのようなもの。

織部梅文硯  これは大和文華館にもあるのと同工異曲か。

織部飛鳥文向付 ピンクベージュ。うねる絵はウナギにしか見えない。

今回も好きなものを好きなように見ることができ、楽しかった。

11/24まで。
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