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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

早稲田大学會津八一記念博物館で見たもの

本当は変わり目ごとに必ず出かけたいのだが、なかなかそうはいかない博物館がある。
自分の怠惰を責めるべきなのだが、どういうわけか巡りあわせがよくないらしい。
早稲田大学會津八一記念博物館である。
そして早稲田大学演劇博物館もまた。
今回は野間記念館の後に胸突坂を下り、川をこえて、早稲田へ入った。

會津八一記念博物館へ入る。
大観と観山の巨大な「明暗」を見る。実にいい作品である。
nec694.jpg
とはいうものの、妙に重い心になるのは確かで、この絵を見ると宿業とか人間の性サガとかそんなものを思わずにはいられない。

行った日は丁度スタンプラリーをしていたのであちこちチェックして歩いた。
一階では11/16まで2つの展覧会が開催されていた。
池部政次コレクションの中国明清の書画
次に折 帖(富岡重憲コレクション展示室)
これらについて簡単に記す。

まず明清の書画。
サイトによると「池部政次氏は、清朝末期から中華民国への激動の時代に、北京の日本公使館書記官として活躍しました。その様子は清朝最後の皇帝、宣統帝溥儀の自伝『我が前半生』にも記述されています。外交官として、溥儀の側近鄭孝胥、陳宝琛、羅振玉をはじめ、当時の政治家、軍人、文人とも親交があり、それらの人々から自筆の書画を贈られるとともに、池部氏自身も書画の蒐集に努めました。
本企画展では、清朝末期から中華民国へとうつりかわる激動の時代に彼の地にて蒐集されたコレクションの精品と、蒐集者である池部政次氏の業績をご紹介します。」
その時代、中国の書画と文物の多くが日本へ来た。略奪ではなく売買と、また贈り物としてなどでも日本に入ってきた。
現在でも関西を中心に中国書画と工芸品を多く所蔵する美術館や個人コレクターが多いのは、まさに同時代に於いて京都を中心にした一種のサークルが存在したからだった。
池部氏のコレクションを見ると、氏が丁寧な人柄だったことが伝わってくる。

宣統御筆 愛新覚羅溥儀  
対聯 李鴻章
三行書 犬養毅
文章の意味はどれもよくわからないが、こうした人々の名を見る、それだけでも面白く思う。

エジプト壁画拓本 端方 民国時代に現地へ飛んで拓本したようだが、壁画そのものを見ている眼で見ると、全くの別物に見えて、非常に興味深かった。
アンコールワットの遺跡の拓本などは見慣れているので、作品そのものに綺麗とか繊細とか色々思う所があるのだが、これまで見たこのなかったものを前にすると、感心より関心が湧くばかりで、こんなふうな表現になるのかと驚いた。

雲龍図 王逸 乾隆9年(1744) 黒雲の中に湧き立つような龍。ぎろりとした目が印象的。

松林書屋図 王冶梅 清  夢想モードでの絵ではなく、現実にこうした実景があるような気がしてくる。清になると山水画もまた風景画の一つになってくる。

写真を見る。池部夫妻のものと、公的なものと。
溥儀の結婚式に集まった外国公使とその夫人ら ロングで全景を撮る。ラストエンペラーの映画を思いだす。また、李王家に嫁いだ方子さんの記念写真など。

最後に縦書きの文書を見る。
満州語文書である。これは清時代、漢民族の国を支配したのが満州族だということを強く実感させられる。
漢語と満州語との二つが公文書として必要だったのだ。


次に「折 帖」を見る。
サイトの紹介によると「折帖は、厚紙を糊で継ぎながら折本状に仕立てたものです。本展覧会では、旧富岡美術館のコレクションに含まれる折帖と呼ばれる装丁の3作品、手鑑「文彩」、手鑑「ちり蓮」、勝家伝来文書を展示します。
「文彩」は聖武天皇書と伝える紺紙銀字経から始まる手鑑、「ちり蓮」は古写経をあつめた手鑑です。勝家文書は勝海舟の建白書草稿、海舟宛の書簡のほか、江戸時代の文書なども貼りこまれています。」とのこと。

手鑑 銘 ちり蓮 奈良~室町時代  古くから伝わる手鑑は、聖武天皇の書に始まるものが多い。大文字なら大聖武、普通サイズなら中聖武、小文字なら小聖武と呼びならわされているが、どの字も唐様のしっかりした丁寧な文字の綴りで、わたしのようなものには特に見ていて嬉しいような文字ばかりである。 
無論この後には平安時代の書なども続く。やはり多くの名筆を集めたものは魅力的である。

勝家伝来書画帖 
黄石外五十一書画帖勝家伝来/石泉寛外四十八書翰張込帖 キャスティング?が凄い。
山岡鐵舟、勝海舟、大久保一翁といった実際の自分のお仲間だけでなく、伊達政宗、岡本秋暉らの書もある。
時代もその分長い。鎌倉~明治時代に至る。
貧乏御家人で親父の小吉は無筆だったが、倅は優秀だった。字もいい。
しかしわたしなんぞは「夢酔独言」のファンだから、無筆でも語りおろしの粋の良さを感じさせる小吉の方が好きで、「氷川清話」の方は打ち明け話として面白いものの、ちょっと物足りなさも感じたりもするのだった。
これは文章の話で手蹟の話ではないのだが。


二階では「延原・山内コレクションより 茶の道具と風景画」展が開催されている。
江戸後期から明治そして戦前の名品がある。

黒楽茶碗  追銘〈知足〉覚々斎宗左
黒楽茶碗  銘〈清風〉楽弘入
わたしはやっぱり口べりの薄いのが好きだな。

臺牛香合 永楽得全 なかなかいい感じの牛。牛が愛される理由を考える。

鶴香合 森川杜園 奈良の一刀彫ですな。とても愛らしい。彩色もいい。
白菊香合 森川杜園 もこもこした風情は木彫彩色ならでは。

竹の茶杓が色々。
竹茶杓  銘<雪朝> 啐啄斎宗左
竹茶杓  銘<みそさゝゐ> 了々斎宗左
好きだとしか言いようがない茶杓たち。

惺斎宗左の茶杓は三幅対のような風情がある。たぶんそうなのだろう。
竹茶杓  銘<老松> 
竹茶杓  銘<弥栄> 
竹茶杓  銘<君ヶ代> 

色絵日出鶴食籠 永楽正全 そういえば永樂家の日の出鶴の茶碗に魅了された時期があったな。色合いと構図がとても魅力的だったのだ。

青磁象嵌合子 高麗時代 やはりね、この時代の青磁象嵌がね、いちばん愛しい。
青磁角瓜形瓶 元時代 釉薬が濃いのもいい。

日本画は、展示の配置が巧いのを感じた。
菊図 仙厓義凡  ササッと描いたスピーディな菊。
菊花図 小林古径  黄色の鮮やかな菊が三本。その良さを味わう。

富岳春景図 鳥文斎栄之画/太田蜀山人賛 なんだかほのぼの。
山家春色図 寺崎広業  広業の回顧展、どこかでしてくれないかなあ。

初夏観瀑図 冨田渓仙  くねる景色にときめく。
雨中新緑山水図 塩川文麟  大阪青山短大の博物館での回顧展で見た可能性がある…

嵐山図 池田遥邨  好きな画家だけに何を見てもいいようにしか思えない。
清湖情雨図 堂本印象 旅に出ただけの価値がある。

秋色閑林図 望月玉川 玉泉ではなく玉川?こちらは知らない。
武陵桃源図 渡辺秋渓 この画家は知らない。戦中に亡くなっている。広がる空間を閉じ込めたような感覚。

松径霜葉図 木島桜谷  丁度今、京都で回顧展があり喜んでいる。静けさがいい。
秋江群鴨図 今尾景祥  景年の子孫。

奇勝秋靄図(寝覚めの床)川村曼舟 浦島伝説を思いだす。
明月懸清空図 下村観山 彼らしい風情がある。
飛雪図 稗田一穂 一度この画家の回顧展をしてほしい。

簡単に記したが、とても見ごたえのあるものばかりだった。


二階では常設展示として秋艸道人會津八一の蒐集した文物が並ぶ。
青銅器から漢代の人物俑、唐三彩、そしてアイヌの衣裳までがある。
歌人としても素晴らしい足跡を残しているので、その歌碑の写真を見るだけでも楽しい。
また今日としてもすぐれた側面があり、若い学生に向けた言葉が飾られている。
いい言葉だと思う。
かつてはこんな立派な先生と、その先生に愛される学生がいたのだ。

もっとここを盛り上げたいと思うばかりだ。
茶の道具と風景画展は12/21まで。
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