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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

京都でみる「竹内栖鳳展」と「下絵を読み解く 竹内栖鳳の下絵と素描」

いよいよ京都での竹内栖鳳展も12/1で終焉を迎える。
東京国立近代美術館での展覧会は連日大盛況、京都も大繁盛で、まことに結構なことである。
わたしは東京は前後期みたけれど、京都は後期だけ見た。
その京都では下絵を集めた立派な企画展が開催中。どちらも大いに楽しんだが、実のところこの下絵展、これが素晴らしすぎた!!
栖鳳の下絵については随分前にここで「栖鳳・松園-本画と下絵」という企画展が94年の今頃に開催されたが、当時のわたしはジミな下絵に関心がなく、さらさらとしか見ていなかった。
あれから20年。(綾小路きみまろなら「あれから40年」と来るところ)
今のわたしは熱心に下絵を見る人になりました。

ちなみに東京展での感想はこちら。
その1
その2

主に京都展でのみ展示の作品について書きます。

やっぱりなんというても「獅子」ライオンでした。
お客さんも大方はライオンに喜んでた。
明治34年の個人蔵の、右は寝る獅子・左は起きる獅子、ボークス所蔵の肉球舐める獅子、このあたりは東京でも人気だったはず。
前期には藤田から獅子が来てたようで、あれまた大人気。
後期には大阪歴博の、にゃうん~な獅子と走る獅子が人気。

獅子だけじゃなく、ゾウ・サル・ウサギ・クマがまた、皆さんの可愛いもの好きな心を刺激していた。
わたしはやっぱり雀大喜びの「喜雀図」が大好きかな。
「山海評判記」のオシラ様飛びをする雀とかもいて、楽しい。

和暖 三の丸尚蔵館 仲良しな鹿たち。…というか、右の鹿たちはコレ三角関係かな。
鹿ップルにちょっと流し目を送る雌鹿。揺れるまなざし。
左はわるそぉな奴ら。これがほんとのロクでなし。

班猫 おおお~これは山種美術館のお猫さん。実は91年夏にここで「山種美術館展」があったときに、この白キジの大猫さんはみんなの大人気者でした。今回もそう。22年後の今もエエ猫ですわ~~~
思えばわたしが山種でこのお猫さんに会うたのは93年秋の特別展「栖鳳と松園の周辺」展だったと思う。

鯖 前田育徳会所蔵 1925年の青くてビカッッと光るサバ。籠と桶からあふれるサバ群。青々ピカピカした、本当においしそうなサバ。わたしはサバが大好きなのでよくわかるが、これは新しいエエさばです。ああ、おいしそう!

下絵で「アレ夕立に」のが色々出ていたが、濡れ縁または奥庭に茣蓙か蓆ひいた(敷いた)上で舞妓さんが舞う姿があった。写生はそうした場で行われたようだ。
着物も帯も牡丹柄で、色々な手を見せて舞う舞妓の姿がいい。

風薫双塔寺 ツインタワーの下の民家。民国時代の青い服の人々。和やか。

ヨーロッパからの絵葉書は東京都はまた違うような気もする。サンタンジェロは見ているが、娘とリンゴは知らない。アールヌーボーな白雪姫風。

晩年になりました。
東京でもおいしそうやなと見ていたカツオの絵とタイの絵が、京都では並んでますがな♪
松魚 1937年 きりっとした尻尾のカツオ!大1匹に中2匹!
Vs
海幸 1942年 桜色の大タイ1匹に中1匹!
あぁ、おいしそう~~~

若い頃は獅子を描き晩年はトラを描く。
動物園に弟子たちを引き連れてしばしば写生会をしただけに、トラが檻におる写真もあれば、鹿の写真、鷺の色んなポーズ8枚続きなどなど。


いい心持で続いてお隣の下絵展へ行く。
こちらは半券表示で割引をしてくれる。
京都市美術館開館80周年記念展「下絵を読み解く 竹内栖鳳の下絵と素描」
nec703.jpg

下絵を見ていると、栖鳳が円山派の総帥・応挙の道と同じような道をたどっていたのを感じる。
写生の大切さを知る栖鳳と応挙。
弟子のたくさんいた二人。没後も決して忘れられることなく愛され続ける絵師。生きている間に栄誉も受ける。
うむ、ますます似ているような気がする。

大変大きな下絵がある。竹林。リアルサイズなのだなあ。そこにスズメたち。
前にアトリエにいったとき広さを感じたが(東山艸堂)、栖鳳は寝かせて描いたのだろうか。
アトリエの高さはそんなになかったように思う。

本画のためのエスキース。それだけではないのが写生。栖鳳は粉本主義ではないのでたくさんたくさん写生した。
またこの時代の京都画壇の人々は実に大量の写生をし、それを自身の筋肉や細胞質にした。
コレハアレカ、という発見の楽しみがある。

中には先の特別展には出なかった作品の下絵と本画もあり、見比べるのがまた楽しい。
大津絵風の仏画が可愛いし、ウィットも感じられる。

家鴨の集団、グワグワしてる。
箱のわんこはもうそろそろ外へ出たがる年頃。
そしてやっぱり魚菜が本当においしそう。

野菜や魚のおいしそうなのはやはり栖鳳が料理屋さんの息子だからかと思う。

さるが桃を持っていて独り占めしている。そばにいるお仲間に「やらへんぞ!」と歯をむき出している。
こういうのは戯画に近くもみえる。

花嫁 後ろ姿を描く。本画はあるのかどうか。黒に帯だけは華やか。

鹿のスケッチもリアル。間近でよく見ている。それも飛びかかってきそうな勢い。

下絵でもタイやカツオは本当においしそう。わくわくするねえ。

スケッチはいくらでも出てくる。
ウオゼが皿にいっぱいの状況もあるし、野菜もおいしそう。

「組み合わせの妙」というタイトルで集められた下絵、スケッチがなかなか楽しい。

金色界 大津絵風の仏画。上に仏様、下に三カ所の近江八景。堅田の浮御堂、三井寺の晩鐘、石山の塔に月。
下絵と本画が並ぶのもいい。

イタチと稗、納豆とネズミ、犬にネギ、こういう取り合わせが面白い。
それで思い出した。
戸板康二「ぜいたく列伝」の光村利藻の話に栖鳳が出てくる。光村原色版の創立者である。
彼は栖鳳のパトロンの一人で、栖鳳が「たこを描きたい」と言うと、浜辺に無数のタコをばら撒いて、写生してくださいと勧めるようなヒトだった。
昔のことだから明石のタコだろうが、それをまた「タコの頭にモグサして熱がる図とかどうですか」などと言うたそうだから、これはさすがに栖鳳も困ったそうだ。
しかしそうなると「組み合わせの妙」は妙味ではなく「妙な・変な・ケッタイな」の「妙」かもしれない、とついつい思ってしまう。
展示にはないが、「テンがかぼちゃ畑を走る」図を栖鳳が描いたのは光村の別荘でのことなので、やっぱり栖鳳の組み合わせのセンスと言うのはちょっとシュールなところがある。
「アイロン台の上で云々」のレベルかもしれない・・・

わらと子犬、朝顔と子犬、犬にネギ。
可愛いわんころたち。暖かい視線の中で。
寝るわんこも描かれている。
ふくらすずめもいるいる。

栖鳳は潮来の良さを川合玉堂から教わったそうだ。
潮来という地はどこにあるのかも知らないが、二人の日本画家をこんなにも引きつけるよい場所だったことは確かなのだろう。
栖鳳は蘇州での感銘を潮来で再現している。


「下絵とスケッチ」は今度は栖鳳以外の画家たちのそれを集めて見せてくれた。
ここでは京都市美術館が所蔵する本画もともに展示され、その軌跡が確認できる。

幸野楳嶺の「蓮池図」は東本願寺の太子堂や御影堂のためのもので、これは設計図としてみるべきだと思う。たいへんしっかりした図である。

富田渓仙 伝書鳩 本画は右手に伝書鳩の鳩小屋があり、左手は飛び立つ鳩たちをフレスコ画風に描いている。1934年。それが下絵を見てびっくりした。
下絵は鳩小屋と言うより鳩のマンション、クックルー・ハウス!そこの住民(鳩)が顔を出したりおしゃべりしたり、という様相に見える。
すごく面白い。こういうのがもしそのまま本画になってたら、非常に不思議だったろうな。
わたしは下絵のほうがはるかに好み。

菊池契月 交歓 戦場の隙間で再会し、旧交を温めあう若い男二人。手伝い坊やが可愛い。
下絵の段階でほぼ本画と同じ。淡彩も施され、完成品に近い。

榊原紫峰 奈良の鹿 久しぶりに実物を見る。こんなにも大きい絵だったか。このヒトの回顧展も奈良そごうで90年代初頭に見て以来、開催されてないなー。
下絵はあまり本画とかわらない。木の毛羽立ち、鹿のリアルさ、そんなものが下絵から見える。

貴重すぎる下絵が一つ。村上華岳「聖者の死」。なにしろ本画が焼失している。
涅槃に入るお釈迦様の光が丸く拡散されてドーム状になっている。
眠たそうな丸顔のお釈迦様。周囲の嘆く人々もみんな丸顔。大正7年。そう、大正時代は丸顔がモテた時代なのだ。六代目菊五郎の女形がウケたのも、芸の巧さだけでなく、丸顔だということもあったろう。
ところで嘆く人々の顔、何人か「カワウソさん」してる・・・

野長瀬晩花 海近き町の舞妓 本画は背景が青で二人の田舎くさい舞妓の着物もやぼったいカラフルなものだが、下絵はもっと泥臭いものだった。みかんを剥く左の子とじっと静かな右の子。少しずつ画家の望む絵が出来上がってゆく軌跡が見えた。

中村大三郎 女人像 本画は薄紫の上品な着物を着ているが、下絵は選の入った着物。
本画にはしばしば深い親しみを感じるのだが、下絵を初めて見た今、本画の上品さはどこから来たのだろうと考えている。
ナマナマシサに満ちた下絵。

林司馬 舞妓 現物をみてやっぱりと納得。本画もあっさり、下絵もあっさり。いかにも司馬。

色々と知ることもあり、興味深い展示だった。
どちらも12/1まで。
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