FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

皇室の名宝

京都国立近代美術館に宮内庁三の丸尚蔵館から「皇室の名宝」が届き、その名を冠した展覧会が開かれている。
前期後期と分かれての展示で、のべ180点の作品が紹介される。
(わたしが見たのは後期展示)
1388675453456.jpg

わたしはどういうわけか長く三の丸尚蔵館にたどりつけなかなかったが、近年からはしばしば訪ねるようになった。
そこでは無料で皇室のお宝を見せていただける。
シンプルな建物の中で絵画や工芸のキラキラしたものー明治から主に戦前のーを見ては、「ああ、ええものを見せてもらえたなあ」と喜んで帰る。
今回は京都で見れるというから、どんな設えをしているのだろうと期待しながら出かけた。

びっくりした。
三階の会場に着いた途端、そこが明治の宮殿に「なっていた」のだ。
凄い、再現された空間。
千種の間という空間が再現され、そこにガラスケースが置かれ、宮殿の中で名品を眺めるという構造になっていた。
nec762_20140118235858268.jpg

長押(なげし)には蝶と花鳥(鳩やツバメら)の装飾が、折上格天井にはそれぞれ花が描かれている。
壁掛けには横長の木彫り彩色作品がある。芭蕉の大きな緑と白い花と。
牡丹唐草文の壁紙、腰羽目には果実の刺繍が並ぶ。カブラ、タケノコ、松茸、スイカ、桃、柑橘類などなど。
協力に川島セルコンの名があるが、もしかするとこの再現の協力かもしれない、と思った。

素晴らしい空間だった。
しかしこの千種の間は昭和20年の五月の空襲で焼失しているそうだ。
古写真からこの空間を再現したそうだ。

山元春挙の三幅対「晴天鶴」がある。めでたい図。
絵画はここに掛けられていたのか。

三代目川島甚兵衛 綴錦「春郊鷹狩・秋庭観楓図」壁掛 凄いものを見た。一大ペーシェント。竜の鴃首の船を漕ぐ稚児たちに、鳥兜をかぶる舞楽の人たち。とても繊細で濃やかな構成。きらびやか。

七宝焼も西の並河靖之、東の濤川惣助、名古屋の七宝会社の名品が並ぶ。
それぞれ技法が違うが、いずれも美麗な作品ばかり。
黒を背景にした四季花鳥図花瓶の並河、鸚鵡の花喰鳥文様の花盛り器の濤川、これらはどちらも平成を祝っての「皇室の名宝」展で見たものか。

加納夏雄の刻む百鶴、金沢銅器の異様なほど細やかな象嵌花盛り、薩摩焼の華やぎ、香川勝廣の高く盛り上がる高彫り花盛り、藤壷の張り付いたような十二代沈寿官の菊貼付香炉などなど。

工芸の美を堪能した。



第二章 明治期の美術工芸と博覧会
先の第一章としての「宮殿装飾」にもこれらの作品があり、密接な関わりは続く。

森寛斎 古柏猴鹿之図 森の中、鹿の背に乗る猿。猿はその鹿の背の毛づくろいをしてやる。仲良しさん。バンビと小猿が足下にいたり。
鹿も猿も中国での吉祥どうぶつ。

京都府画学校校員画帖 鈴木百年の釣り人、楳嶺の釣り玉などが見える。

富岡鉄斎 和気清麿朝臣図巻 カラフル絵巻。一代記としての絵巻らしく、嵐に遭う人々などが描かれている。「大隈をさすらひ人となつて」と文にある。ラストでは宴会もしていた。道鏡を排除した後の様子か。

川端玉章 群猿之図 サルサルしている。木の引っ張りあいとか賑やかな猿たち。

瀧和亭 花鳥図 タイトルは「花鳥」とあるが、鳥は鷲か鷹で、隠れる猿をじろじろ探す図。猿は怯えて隠れている。なにしろみつかればアウト。優雅さとはちょっと違う図。

下村観山 光明皇后 →向きに祈る姿を捉える。野間やほかにもある絵と構図が似ている。
ナデシコなどの野花が咲き、控える侍女が金色で宝石つきのカップ型器から真珠のような粒を出す。

橋本雅邦 竜虎図 おとなしい竜は影も薄いかして、ガオーーッの竜に苦笑い。竜は金色に光るような。

工芸品をみる。

柴田是真 温室盆栽蒔絵額 写真乾板風なものに見えた。
絵柄は簾をあげる貴女だから「香炉峰の雪」、箒や鳥の止まる木などの絵がリアリスティックに描かれている。

蒔絵も漆画も自在に描く是真。
漆画帖ではカラス、アヤメ、ナス、牛小屋などが描かれている。
先年、三井記念美術館で見たものともまた違うような。
新潟の敦井美術館にも漆画帖はある。

池田泰真 山路菊蒔絵文台・料紙箱・硯箱 もこもこ菊があふれている。こういう作りが明治20年代後半の流行かもしれない。

花瓶のよいものがある。
初代宮川香山 青華氷梅文花瓶 
鹿島一布 布目象嵌花鳥文八角壷
どちらもその時代の工芸技術の高さを示している。

海野勝珉の舞楽をモティーフにした置物が来ている。
太平楽と蘭陵王と。
どちらも三の丸尚蔵館で見ているが、ここで見るとまた趣が違う。特に蘭陵王はあの恐ろしげな面を外し、端正な顔を見せていた。
英語ではどちらもフィギュアと称されるのだろうが、本当にかっこいいフィギュアだった。

九代目伊藤平左衛門 桑木地飾棚 これは単体もいいが、そこにある写真パネルを見ると、多くの工芸品がこの棚に飾られていて、それがとても素敵だった。

11点ばかりの可愛らしい工芸品の内訳がここに並ぶ。
二代目川島甚兵衛・荒木寛畝らによる古今集歌絵画帖、高村光雲らの鶴亀置物は少年像で、濤川の双蝶香合も可愛くて綺麗。
三代目清風与平の桜花白磁香炉、初代香山の龍青華肉池、香川勝廣の蛇籠千鳥水滴など。
海野の牡丹折枝印箪笥鏡板もたいへん丁寧な作りだった。
ボックスの腹に鏡板が張られ、そこに牡丹が浮いている。そして石川光明の鹿鎮子は霊芝を噛む鹿がくつろぐ置物。

これらが飾り棚に置かれていたのだ。
本当に素敵。

ほかにもたくさん小さな置物があった。
牙彫りのフィギュアが特にいい。手遊売はラッパ吹く人、羽箒に子犬、そんなものが作られている。
イタチも可愛くリアルに作られ、餅を売る「お供え売り」もある。
安藤緑山の椿置物は白椿でよく出来ている。とても欲しい。

初代諏訪蘇山の青磁鳳雲文浮彫花瓶に香炉。
二代目の文乃友・・・青磁象嵌硯、色絵筆置き、文鎮、ミニ屏風などなど。

昭和に入ってもよいものはよい。
沼田一雅 陶彫唐獅子 阿吽の門番。
五代目清水六兵衛 御所人形画花瓶 可愛いなあ。

この章の絵は四階に展示されている。
いずれも明治の油絵。
床次正精 噴火山之光景 妙にベタに描かれた風景。明治初頭の油絵。白帆の浮かぶ海。

松岡寿 ベルサリエーレの歩哨 特有の帽子をかぶる。ベルサリエーレについてすぐに思い浮かぶのは、「ヨルムンガンド」のアール。彼は元はベルサリエリ情報担当少尉だった。

山本芳翠の九州・沖縄連作画、百武兼行のバーナード城、二世五姓田芳柳の菅公梅を詠ずる、浅井忠の絵もある。

日本の風土で油絵をいかに根付かせるか苦難していた時代。その頃の洋画を皇室は収集していたのだ。


第三章 皇室と官展
好きな作品がかなり集まっていた。

小室翠雲 春庭・秋圃 色がやや濃すぎる。朝顔、トンボ、白キジ、白モクレン、牡丹などが南蘋風に描かれている。

川合玉堂 雨後 虹が出てる。のんびりする。 

川上曼舟 阿里山の五月 台湾の阿里山。緑濃い林が続く。

上村松園 雪月花 チラシにも選ばれている。優雅な三幅対。

工芸品もいい。
中川哲哉 乾漆盆 ああ、綺麗な塗り。春慶塗りのように綺麗。

加藤土師萌 葱文大皿 白い頭の葱坊主。やはりええお皿。

楠部彌弌 青華甜瓜文菱口花瓶 可愛いわ。盛りがいい。白と青。雷文刻みもある。

1388675434708.jpg

第四章 慶祝の美
めでたいものが集まる。

京都市画帖 大正四年の日本画家の仕事。華岳の牛、小村大雲のうさぎ、観山の福禄寿、契月もある。

瑞彩 大正13年の作。麦僊の大原女、大三郎の少女、耕花のオウム、春挙の薔薇、映丘に吉村忠夫もある。

現代風俗絵巻 昭和三年 紡績工場に捕鯨、法隆寺見物のモガたち、路可のコンサート、雪岱の道成寺の花子などなど。

清方の屏風もいい。これは清方展でも見た。お堀端の緑地でくつろぐ女学生たちと、船に暮らす家族の絵。

力強い青邨の獅子たち。皇居にふさわしい風格のある唐獅子たち。左右それぞれに見ごたえのある獅子がいてあたりを払う力に満ちている。

初代龍村平蔵の錦綾帖、木の象嵌で拵えられた裁縫箱、和の花で飾られたガラス花瓶・・・
象彦の蒔絵、御木本のパール、河合のやきものなどなど。

ああ、皇室がいかに愛されていたかがよくわかる。

第五章 皇室と日本美術院
逆境にあった美術院の作品がこちらに多く収蔵されていた。

ほかの画家たちの画帖は言うに及ばず、大観の名作もいろいろ。
本当に素晴らしい。

第六章 御肖像と大礼
大正と昭和の悠基主基屏風それぞれを前期後期に出し、歴代の銀のボンボニエールが無限なほどに集められている。

キヨッソーネの明治天皇をはじめ、その時代時代の画家による天皇・皇后の肖像画。
明治「大帝」の時代。

京都でこれら皇室の名宝を見ることができて本当によかった。
1/13まで。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
テレビで
この放送がありましてね 並河靖之の名前はここで読んでも 
しらない人だったんですが よくわかりました。京都に行けたら
もっと良かったです。御宿かわせみが好きで読んでいますが 
「蘭陵王の恋」の 蘭陵王のすごい緻密な姿も 放映されたので 
なおさら みたくなりましたよ。
2014/01/06(月) 06:51 | URL | 小紋 #-[ 編集]
いい放送
☆小紋さん こんにちは

これはもうすごい空間展示でした。
三の丸尚蔵館で見るよりドキドキでしたわ。

「かわせみ」はわたしも大好きです。
わたしは特に宗太郎さんのファンなんですよ。
明治の今も面白いです。
2014/01/06(月) 10:15 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア