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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

一月の東京ハイカイ録 2

三日目は普通ではない状況から始まる…
本当は上野の西洋、科博、鶯谷の書道を巡るつもりだったが、まだ間があるからよいか、来月に弥生美術館、都美と共に廻ろうと考え直して、行き損ねた八王子へ向かおうとした。

京王線と乗り入れする都営新宿線で新宿まで来たとき、準特急へ乗り継ぐつもりが、どういう手順間違いか、わたしは快速本八幡行きへ乗っていた。市ヶ谷で乗り換えるしかない。
市ヶ谷で下車して新宿へ向かおうとすると、やたら電車が来ない。
ようやく新宿についたが、どう間違えたか、今度は改札外に出てしまう。
わたしはこの手のミスはすぐにカヴァー出来るし、あるいは回避もできるのだが、なんかおかしい。
ようやく京王八王子行きの特急に乗れたが、妙な感覚が続く。晴天なのにも拘らずもどこか変な気がする。
とうとう府中で下車して新宿へ戻った。どう考えても八王子へ行くのはやめた方がいい気がしていた。
そういえば、とわたしは思いだす。
新大阪で山岸凉子の短期集中連載のホラー作品「艮」のラストには、八王子が出てきていた。とても怖い作品だった。
これは行くなと言うことかもしれないのだ。

気を取り直して六本木一丁目に出た。泉屋分館では先般鹿ケ谷の本館で見た木島櫻谷展の第一期が始まっていた。京都とは多少展示期間が違うようで(なにしろ四期もある)、見に行き損ねた作品もいくつか見ることが出来、満足。やっぱり近代日本画はええわ。
漱石が悪く言うた「寒月」などはそんな評論を知る前々から「ええな~」と思っているが、やっぱり「ええな~~」としか思わない。
極端を言えば、漱石が愛したターナーよりも、わたしは木島櫻谷の方がずっと楽しく見ていられるのだ。
ちなみに京都での櫻谷展の感想はこちら

秋には再び旧木島邸(櫻谷文庫)が一般公開されるそうだ。

大倉集古館では主に工芸品を楽しむ。能関係は備前池田家の由来品。林原美術館の親戚のようなコレクションである。

ミッドタウンでランチにしたが、酸辣湯にトマトごはんにグレープフルーツジュースのセットと言う、どこまで酸っぱいのが好きやねんというチョイスをしてしまった。
わたしは時々こういう揃いものをしてしまう。
全身オレンジ色と黄色でまとめたカッコで店屋に入り、オレンジジュースとオレンジクリームのドーナツを注文した時など、ミスドの店員に笑われてしまったくらいだ。

さて、サントリー美術館で「天上の舞 飛天の美」に再会。前回に詳しく感想を挙げている。
こちら。今回は結縁しない。ものすごい大行列ですな~
仏縁にすがりつつ見て回る。

やっぱりサントリーと言うのは非常にうまい。展覧会もそうだし、宣伝の技能も凄い。
改めてそんなことを思いながら仏の世界を歩いた。

六本木から汐留へ。
南部鉄にカラフルなものがあるなんと初めて知ったぜ。
パリのカフェ用の南部鉄器。ううむ、わたしはどうやろ、使うかな。

まだ明るいうちから銀座うろうろ。
まずはあおひーさん。

あおひーさん、折よく在廊。年初の御挨拶などして、作品のかかる壁面に向いた途端、そこにたくさんの色彩に満ちた、あおひーさんの作品があった。
杉並木の街道を写したものだというが、元の形はまったく想像も出来なくなっている。
ただただそこにはまばゆく丸く発光する光があるばかり。
その光こそがあおひーさんの捉えた、この世で唯一の存在だった。
あおひーさんの、長方形に切り取られた空間に閉じ込められた世界の光たち。
闇の中でその枠から少しずつはみ出して、増殖してゆきそうな予感がある。
綺麗な青はいよいよ青く、深い緑はいよいよ深く発色しながら、誰にも気づかれないうちに増殖。見た人の心の中に増殖。

他の作品も見て回る。誰にも似ていない作品は目に残るが、そうでない作品は印象が薄れてしまう。あいうえお順なのでちょっとお気の毒な作品もいくつかあった。
とはいえ、二つばかり他にも気に入った作品があったので、楽しい。
はろるどさんも来られる。わたしははろるどさんとバッタリ率が高いのだった。

次に井上洋介の個展を見に行く。絵本のためのものではない作品群。いずれも「エログロナンセンス」な作品たち。
猥雑でどこか暴力的なものを感じる。しかし夜の都会にうごめくにはこれくらいの存在感が必要なのだと納得がゆく。

京橋に近いところまで行く。
柴田悦子画廊で田代知子さんの新作を見に行く。今回は堀文子先生の教室の人々の作品展なのだった。
入ってすぐ左手に「あ、魅力的なイラストがあるな」と思ったら、田代さんのだった。
画廊の主の柴田さんとお話しするが、わたしは絵を見ることは好きでも描くことはしないということを言うと、意外だというお顔をされた。そうか、わたしは案外アーチストな顔に見えるのか。ちょっと楽しい。

現在の日本画のありようを眺める。雰囲気の似た絵が二枚あり、一つは桜を一つは梨の花を描いていたが、聞けば作者はご夫婦だとか。こうしたことも面白い。
柴田さんとは音楽の話もし、とても楽しい時間を過ごさせてもらえた。
やはり年長の賢い人のお話を伺うのは、とても刺激になる。

神楽坂に出たが紀の善がまだ18時前でもカンバンで、無念。
ちょっと本屋に寄ってから帰る。

四日目、今月の東京ハイカイはここまで。
この日は月曜祝日の翌日だから多くのミュージアムが閉館しているが、江戸博と出光美術館は開いていた。
わたしは朝の九時前から両国にいた。都合で早く来たのだ。
国技館は丁度今初場所の最中で、幟が風にそよいでいた。
綺麗な染物である。KIMG0602_2014011522392995c.jpg


20年ぶりに安田庭園へ行く。KIMG0603_20140115223932fd0.jpg

あちこちを眺める。20年前はまだそんなに今ほど忙しくもなかったが、路上観察に勤しんでいて、けっこうあちこち出かけていた。
安田庭園に行ったあの時は、蔵前の旅館に泊まり、忠太の復興の建物におびえ、回向院に行ってネズミ小僧の墓とか猫塚にお参りしたのでした。
蔵前の旅館は商人宿で、夜に隣の塀を眺めたらガラスがいっぱい植わっていた。カネモチの泥棒対策かなと思っていたが、翌朝の光の中で、そのトゲトゲは塀越しにのぞく卒塔婆の群れだったことがわかった。
榧寺。石川淳「至福千年」に出てきたので、それでわざわざその近くの宿をとったのだった。

ボケがもう咲いている。KIMG0606_20140115223927faa.jpg

池を眺めると、水仙と氷の張った水面が。KIMG0604_20140115223935c8f.jpg

赤い橋と国技館KIMG0605_2014011522393778e.jpg

ドーム本体と水に映る影と。KIMG0607_20140115224024bf5.jpg

供出したか、像のない台座がある。
獅子が周囲を囲むのが可愛い。
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ブサカワでいいねえ。KIMG0610_20140115224023988.jpg

9時半になり、江戸博へ。
大浮世絵展。これが年代順の総花的なものだが、彦根屏風から始まって川瀬巴水までという網羅振りで、まぁ本当に「大」浮世絵展だと思った。いやー凄いわ。
何しろ2時間おっても「…出口まだかな」と思うくらいのスケールだった。
あの空間が出口なし状態に思えたのだから、ほんまに凄いわ。

次に有楽町へ。
出光美術館の板谷波山展をみる。
むかしむかし大阪の出光で見て以来か。

これはもう本当に素晴らしかったなあ~
ツイッターでそのときのことをこう書いている。
「深い歓びが活きる展覧会だった。ありのままの煌めきを隠さないものと、光るものを薄い被膜で覆いながら黙って微笑むものとが並び、観客はそのどちらをも愉しむことが出来るのだ。波山がどちらの技法を愛したかは知らない。生み出されたひかるものたちは既にその父の手から離れている。」
「波山の残した顔立ちの違う双子はどちらも魅力の深い子らで、到底別々に手放すことなど出来そうにない。同じ柄をまとうこともあれば、違う柄をそれぞれが着ることもある。花やウサギや鳥がとりわけお気に入りらしい。わたしはガラス越しに見続けては心の中で話しかける。その幸せな対話をやめられない。」
「にくまれた子に「命乞い」と名付け、養子にした出光氏。目の当たりにしたその姿はすこやかに思いました。これは出光氏の丹精かと考えています。生み出す工程に心血を注ぐ波山には求道者の姿を見ます。が、当人が気に入らずとも他者により名品に育て上げられる面白さも格別かと」

図録も素晴らしく、本当に目の中に星が飛び込んできたようだった。
眺めて溺れて、歓びに蕩けて、そして足が宙につかぬようなままで駅へ向かった。
鑑賞は幸せだったが、この気持ちをカタチにするのは容易ではなさそうだった。

東博へ入る。
この日は「クリーブランド美術館展」「人間国宝展」の内覧会だった。
多くの方々にお会いし、新年のご挨拶をする。楽しい。
クリーブランド美術館展の内容は98年の時とは違うものの、日本絵画は共通する内容が多かった。98年は奈良国立博物館で開催され、わたしは今も手元に図録を持っている。
だから楽しい再会を味わったりした。

実は人間国宝展、これがすごかったのだ。
正直なところ「なんでトーハクでするのん?」と思っていたのだが、やっぱり東博だからこそ、この規模で・このレベルで・この内容の濃さで、開催できたのだと思い知らされた。
見るに当たり、わたしは強くイヤホンガイドを借りることを勧める。
本当によかった。


この展覧会で1月の東京ハイカイ終了。
わたしは新幹線で新大阪へ。駅弁の會津塗のを買うたが、これが非常においしくて、次回も買いたいと思っている。
ああ、面白かった…。


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コメント
No title
本当に、素晴らしかったですねえ、櫻谷と波山!もうドキドキでした!
櫻谷は今までよく知らなくて、見ていくうちしきりに遊行さんが思い浮かんで、ああきっとずっと前からご存じだったんだろうなあ、いいな~!と。京都画壇の底力を痛感させられた展覧会でした。近代日本画では、東京より断然京都の圧勝だと思いますね。波山も夢をみているようにどれもこれも素敵で、また行きたいと思っています。
2014/01/21(火) 00:39 | URL | みけ #-[ 編集]
綺麗なものが好き
☆みけさん こんにちは

思い出していただき嬉しいですw
なかなか櫻谷は関東では見ることが出来ませんから、この機会は本当に良かったです。
金地屏風に大胆な描写。繊細な細部。本当に素晴らしい。

波山の美も久しぶりに深く味わえて、今の東京は年初から綺麗なものが多くて楽しいですね。
また波山の感想も詳しく書こうと思います。

なお京都の本館で見た櫻谷の感想はこちらです。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-3044.html
2014/01/21(火) 09:18 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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