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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

下村観山展

下村観山の大きな回顧展が横浜美術館で開かれている。
彼の作品をまとめて見るのはまだ北浜に三越があった頃以来で、調べると93年の2月にそこで展覧会を見ている。
もう21年もたったのか。
前後期入れ替えがあるが、ちょっと勘違いで後期の初めに出かけた。前期を見損ねたのは惜しい。
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1.狩野派修行
横浜美術館所蔵品が多い。しかも入江宏氏の寄贈品。入江宏氏はもしや入江波光の息子さんだろうか。どうもそんな気がするが確認していない。
狩野派の修行をしただけに中国の歴史上の人物画が多い。墨絵多数。

十六羅漢図のうち、びんずる尊者かと思う絵がある。アオリのポーズで、絵を見る者に近い。
これはジョージ秋山の描く構図によく似ている。

長恨歌も描く。楽人たちが演奏するシーンが出ていた。手本があるにせよ、巧い。

他にも東方朔、許由、羅漢図がある。
そして11歳で描いたという、めちゃくちゃ巧い鍾馗図が出ていて、びっくりした。
騎虎鍾馗 虎が可愛いのはご愛嬌としても、本当にこれで11歳なのか。凄いなあ。

可愛いのもある。唐子たちを描いたもの。
三人の唐子がいる図が特にいい。真ん中の子が琴を弾くのを、左は寝そべって楽しみ、右は座って聞く図。
友達っていいなあとも感じる絵。

日本を描いたものが二つばかり。
鷹 わっ雀ゲットしてる…
鎌倉武士 前を行く武者を布で顔ふさぎ、留めようとする。これは卑怯なんじゃないの?


2.美校時代
こちらは日本の歴史画がてんこもり。

森狙仙「狼図」模写 ぐわーっとした狼。模写にも迫力がある~~

信実「三十六歌仙絵巻」 佐竹本からの。小町、斎宮女御、山部赤人、敦忠など。

観音菩薩半跏像、文殊之獅子座(模写)、日蓮上人辻説法図などがある。
能にもなった熊野(ゆや)の図など仏画と物語絵が面白い。

闍維 釈迦の火葬に際しての図。燃やす煙から華と香がたなびく。香華という言葉を想う。
嘆く人々。nec769-1.jpg

蒙古調伏曼荼羅授与之図 これは元寇史料館にあるそうで、そんな史料館があるのも初めて知った。
海から遠い国に住むとこんなもんです。
今から出陣する若侍にがんばれというつもりの曼陀羅授与。その場にいる人々の目は下の線を描かぬフェルマータ型。

元禄美人図(三味線図)(弾琴図) どちらも久しぶり。三味線図は石水博物館所蔵か。武二の観花図に共通する、不思議な存在感がある。
古写真に手彩色を施した絵のような風情が面白い。

春日野 鹿ップルのくつろぐ図。これは前回絵はがきを買った。今も手元にある。藤と杉と鹿と。
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鵜鴎図 右と左に分かれている。波しぶきが強い。みんな飛ばず、互いを牽制しあうように向き合う。
なにか今から嵐が起こりそうな。

春秋鹿図 春には三頭の鹿が藤の下にいるが、トリミングされたような構図が面白い。秋は白菊と秋草がすさまじい。何かを見据える鹿ップル。

宇治山 あばら屋がある。川を行く鹿ップル。物語を感じさせる絵。

十六羅漢 カラフルな十六羅漢。虎も小鬼もカラー。

猫牡丹 青磁の玉壷春に白い花が。その後ろにつつましく密やかに白猫。


3.ヨーロッパ留学と文展
いよいよ色彩の美があらわになる。

ヨーロッパ留学の成果としてラファエロやミレイの模写作品がある。
椅子の聖母、ナイト・エラント、巌上の鵜、まひわの聖母・・・
実際に自分が知る作品を思い起こしながら見ていると、微妙な違いがあり興味深く思う。
一方でナイト・エラントでは初めて悟るところがあった。
それは原本からは感じなかったことである。面白いことに気づかされた。

有名どころでは、この横浜美所蔵の小倉山、大原御幸がここにでていた。どちらもカラフルな作品。

応挙、暁斎、栖鳳らも描いた骸骨図もある。美人と舎利。ここでは上臈の姿と骨。

魔障 これは東博でしばしば見るが、白描に金泥の作品。
鰐の僧正が御輿に担がれてやってくる。妙に面白い化け物達。浮世絵のお化け屋敷もびっくりの絵。
本人はまじめに描いているのだろうが、妙に楽しい。

不動 これはまた素晴らしい肉体美。妙な色彩センスでポップな感じもする。若い男の立像。中空に浮かぶ。まだ本当には明王にはなりきっていない、修行中の不動、そんな感じがする。

唐茄子畑 屏風の右には飛んで行くカラス、左端には見返る黒猫。静かな風景。

弱法師 梅はシルエットで描かれる。右幅にはツヅレ姿の俊徳丸、左には夕日が沈みつつある・・・
(これは東博所蔵のものとは違う)

観山は師匠の天心を尊敬すること厚く、高士を描くときはたいてい天心に似せて描いているらしい。

月下弾琴、竹林七賢などといった作品に描かれる高士もみんな天心に似ている。

男舞 烏帽子をかぶり、さぁとばかりの女。この絵は前回絵はがきが出ていた。今も手元にあるので親しい気がする。

寒山拾得 奇矯な二人ではなく、みるからに賢人そうな二人。静かな微笑が広がる。

四眠 ふつうなら豊干、寒山拾得、虎の四睡だが、ここでは羅漢、龍、童、泰山木のヒタキも含めての四眠。みんな気持ちよさそう。

気持ちよさそうなのはその四者だけではない。
酔李白 ぐーっ・・・ああ、気持ちよさそう。

禅関係者達を描く。
達磨を描く絵には「静清」という題を与えているのも特徴か。
舟子、蜆子らのエピソードを思いながら見ると楽しい。

仙人を描いたものもある。
張果老 ヒサゴから取り出した馬ならぬロバの目がきらきらしていた。

寿老人もいるが、これはほかの絵と取り合わせて三幅対にしている。
中でも芍薬を描いたものがほわほわしてきれいだった。

美人を描くにしても上臈や観音の化身など、現実にはいない女が観山の世界には当たり前に立つ。
魚籃観音はモナリザを取り入れたもの。不思議な、ある種の気持ちわるさがある。

最後に後輩の前田青邨による、死の床につく顔があった。
下村観山居士像。般若心経もつけられている。
こんな後輩たちがいたのだ。
なお、青邨も弟子の一人・平山郁夫により、林の中で来迎を待つ図が描かれていた。
こうした心のつながりにも感銘を受ける。

資料もたくさん出ていた。
ヨーロッパからの絵はがき、滞在中に仲良くなったアーサー・モリソンからの書簡と贈られたゲインズボロの素描など。
そして大正四年、大観や小杉放菴らと五人仲良くツアーにでる写真など。

いいものをたくさんみた。
現在は大観が第一等の画家として見なされているが、観山は生存中、大観以上に重きを成す画家だったのだ。
今こそ再評価されてしかるべき画家なのだ。

2/11まで。

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