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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

メイド・イン・ジャパン 南部鉄器

メイド・イン・ジャパン 南部鉄器
こういうタイトルはシンプルだけに印象深い。
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南部鉄器と言えば欲しい気もするが、なかなか買えないような状況にある。
家にある南部鉄器と言えばわざわざ買いに行った風鈴くらいか。
台所用品にはないと思う。持っていればええのだが、案外わたしの手元にはないもんです。
「鉄はなかなか…」
そういう人にとってはこの展覧会は衝撃的だろうと思う。

日本の鉄と言えばまず思い出すのが新日鉄、神戸製鋼、といった製鉄関係で、ついで日本刀、南部鉄器、大西清右衛門の釜。
あとは「鉄は熱いうちに打て」「鉄は国家なり」そんな言葉か。

20年ほど前にその南部に行った。
宮沢賢治の記念館など廻ってからショップで南部鉄の風鈴を買ったのだ。
以前から欲しかったので喜んで買った。今も手元で重厚な音色を立てる。
「うちに囲炉裏があれば南部鉄の鍋を買うのですが」
そうショップの人に言った記憶がある。
つまりわたしにとって南部鉄器とは鉄瓶と鍋と風鈴なのだった。

南部鉄器と言うものを初めて知ったのは、実は横溝正史「病院坂の首縊りの家」からだった。
小中学生のときに横溝に熱狂していたので、あの小説や映画などから学んだことは多々ある。
この南部風鈴も「病院坂」で重要な役目を果たしている。
つい先だって再読したからますます南部鉄への憧れが高まる。
そんなときにこうした展覧会を見ることが出来、とてもよかった。

リストに最初に鉄瓶の主な部位の名称とその図が出ている。
これは勉強になる。なるほどそうなのかというのではなく「ほほー、初めて知ったわ」と言う方。
まあ正直、わかってたのはせいぜい「つまみ」「つる」「注ぎ口」に「胴」「蓋」くらいで、後のことは何も知らなかった。

展覧会の構成はいくつかに分かれている。
そのシーンごとに照明も変わり、ムードが違って、また目新しい気持ちで作品を味わうことになる。
(展覧会を見終えてから、ツイッターでこの空間構成は@srozakiさんによるものだと知り、新たな感興にふけっている)

江戸時代の南部鉄器は4家がその作り手だった。
有坂家、鈴木家、小泉家、藤田家。
現在は一子相伝と言うこともなく、個別の工芸家の手によって生み出される。

第一部 南部鉄器の歴史 伝承される美
江戸から昭和へかけて伝統の型に則った作品が集まっている。
やはりこの辺りが自分の本当の好みに近い。

ツマミがクチナシ型のもの、松ぼっくり型のものが大半を占めている。
獅子でもいいなと思いながらそのツマミを見る。
全体の形も色々で、尻張り、瓢、口元のすぼんだ姥口などなど個性が分かれる。
表面にも鬼霰(これが南部の代表)、牡丹文、葡萄にリス文、鯉に馬に月に時鳥に…
たいへん濃やかな装いを見せる。

福岡の芦屋釜、京の大西の釜なども綺麗な文様を見せている。やはり何かしら装飾がないと淋しい。

富士山型の鉄瓶もある。これは米沢の博労に好まれたそうだ。米沢の博労…明治のころだともう農耕牛ではなくミルクや肉の牛だろうか。

明治時代は旧幕時代の地続きのようでいて、大きな溝もある。
その溝を埋めようと職人たちは努力して、平地よりなお高い山を築くこともあった。
高肉彫の鉄瓶もそんな頃に作られている。眞葛焼のそれもそうだったが、内にひそめる文化が外へ盛り上がる様式に変容していくのは、明治人の精神の高揚にもつながっているのかもしれない。

蝋型形成の鉄瓶もある。一回こっきりしか使えないが、造形は自在になる。
面白い。
鋳鉄技術はやはり日本人に合うのか、素晴らしい作品が少なくない。

鉄で思い出したが、東北から鉄鉱物が出たからこそ、710年の奈良の大仏開眼に結び付いたのだった。
それから民話で一つ、これは黄金の話だが、金掘人夫が鉱山で金のウシ型金鉱を発見し、引きずり出そうとした時、中で炊飯係のウソトキが鳥たちに名を呼ばれ、慌てて鉱山を出た途端、掘り手たちは残らず落盤の餌食になり、金の牛と共に地に消えた。
このように東北には鉱物に関する伝承がいくつか見受けられる。

昭和になり、ブルーノ・タウトが絶賛した亀甲型鉄瓶が作られている。
昨日も記事を挙げたが、タウトは1934年に仙台で(南部ではないが隣ではないか)工芸の指導をしている。
他に面白いのが、編笠型鉄瓶。遊び心があふれている。
月影兵庫、編笠十兵衛がたやすく思い浮かぶ。

1970年代の図案帳もあれば2013年製のツルが色々。

ところで南部鉄器でもう一つ個人的思い出を。
ホテル・グランヴィアのランチバイキングに行った時の話。
途中で南部鉄器の鍋料理が出た。
すると奥様方が一斉に立ち上がり、「鉄よ!鉄分獲れるわ!!!」と叫びながら鍋に殺到していった。
鉄が撮れる、は電車。鉄が採れる、は鉄ひろい。鉄が盗れる、はアパッチ。鉄が獲れる、は奥様方の叫び声。
…うむ、ほんまに。


第二部 南部鉄器の模索・挑戦といま
50年前から現在までの工芸品としての南部鉄器が集まる。

とりわけ目を惹いたのが1960年代の宮昌太郎の各種オーナメント。可愛いなあ。
実はわたし、この作家さんのではないが「魔女の宅急便」の南部鉄器オーナメントを持っている。プレゼントされたもので、風鈴ではないが釣るものなので、風鈴の横に飾っている。

昔ながらの南部鉄器はここには見受けられない。しかし乖離しすぎたものでないことは確かだった。

1980年代以降の宮伸穂という作家の作品は少しばかり懐古趣味も入っていて、わたしの好みに合う。
洋鍋などは特に欲しい。工芸品と言うものはやはり「使いたい」と思わせるものでないとだめだと思う。

それにしても東北は宮という姓が土地の姓として多いのだろうか。
画家の宮芳平も東北の人だった。

2001年のキャンドル立がいい。これなどは江戸時代の燭台の「短檠(たんけい)」に似ている。面白い。

2012年の焼肌磨き仕上げ卵型鉄瓶、満月型鉄瓶などはツマミが楽しい。こけし型、☆型だったりする。楽しいね。

そしてアンシャンテ・ジャポンのカラーポットシリーズがめちゃくちゃ可愛い。
サイトにその商品があるのでついつい買いたくなる。こちら
もう、これにはびっくりした!可愛すぎるがな!

フランス風で人気なんだなあ。二年前の出光美術館「山田常山」展の急須以来の可愛さかな。欲しいわ。
生活には可愛いものがないと淋しいからね。

一方、昔ながらの鈴木家の末裔の方の仕事もここにある。
葛屋釜、富士釜、瓢箪釜、狛犬釜、竜頭舟型釜などなど。
こういうのもいいなあ。


第三部 南部鉄器のよる空間演出
ここで「空間演出」の違いを味わい、オシャレやな~と喜んだのである。
@srzakiさんのお仕事と知らず、「さすがにかっこいい~」と無邪気?無知なわたし。

・柳宗理のモダンデザインとくらしのなかの南部鉄器
カラフルなものばかりが集まっている。それがスタイリッシュな空間に展示されていて、あこがれのショールームの様相をみせている。
佐々木硝子の清酒グラスなんて、これは知らないうちに見ていたものだった。
(会社の近所にかつて佐々木硝子のショップがあり、会社はそこから大量に購入したし、わたしも個人的に喜んで購入していた)
ああ、クール・ジャパンの横顔の一つ。

・茶室 行庵(内田繁)
いい空間が再現されているなあ。取り合わせの美を感じる。
新しいもので構成された茶の湯。いいなあ。
ここでいただくお茶菓子は「萩の月」か「博多通りもん」が合うかな。

・北東北のテーブルコーディネイト(堀井和子)
素敵。わたしとしてはこの空間がいちばん好ましいかな。
先ほどの宮伸穂の洋鍋があるし、シマシマの型染めもあって、和やか。
ああ、いいキモチになりそう。

それにしてもアンシャンテ・ジャポンのカラー製品、どの段階で色付けするのだろう。
そういうことが気になるなあ♪

とりあわせのセンスの良さを感じさせてもくれる、いい展覧会だった。
3/23まで。また再訪します。
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