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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ボストン美術館浮世絵名品展「北斎」

名古屋ボストン美術館浮世絵名品展「北斎」を見てきた。
神戸にも東京にも巡回するのだが、まぁ幸い名古屋に行けたので名古屋で一足お先に。

いい感じにまとまった内容で、時代ごとに展示してある。知る作品と知らない作品もうまい具合の混ざり方で、見飽きなかった。

1.春朗時代の小品
安永から寛政二年までの作品がある。

難波六郎常任 縦の画面に色数の少ない武者絵。平家物語のキャラの一人。岩に足をかけてポーズをキメている。雷鳴もおとなしい。数十年後の国芳になるとまるで別な世界観が開けてくる。北斎自身、まだ若かったのもあろうし、時代の流れもこんな感じまでか。

三世瀬川菊之丞の傾城あづま 障子にその名が書かれている。静かな視線で佇む。妙に艶めかしい。

四世岩井半四郎の戸無瀬 背後に文庫が置かれている。それは百人一首など。教養を感じさせる閑居。

三世瀬川菊之丞のおそめ お高祖頭巾に傘をさす姿。こちらはいかにも少女風。

二世市川門之助の茜屋半七と山下萬菊の三勝 丁度道行の最中。天明年間か。この頃京では応挙らが活躍してたんだなあ。

2.初期の浮絵群
構図的に面白いものが多い。

浮絵一の谷合戦坂落としの図 右手に陣屋と坂、左に海、陣屋の庭も広々。そこへ落ちながら急襲してくる義経たち。こんな構図は他では見たことない。

浮絵源氏十二段之図 例の浄瑠璃姫に会いに行く御曹司。笛を吹いているからそれとわかるが、長者屋敷の女たちはみんな天明年間リアルタイムの風俗。

新板浮絵樊噲鴻門之会ノ図 朱色が目立つ。「項羽と劉邦」の話の中でも特に人気のある場面の一つ。盾を持って入ってくる樊噲、庭でこけてる二人組。緊張感だけでない滑稽味がある。

新板浮絵化物屋敷百物語の図 屋根の上に白ねずみの大きいのがいる。その隣には轆轤首がいて、これはにょろりと長い首を伸ばしている。壁からも何かいるし、三つ目小僧もいる。それで踏み石もちゃんとおばけ。
下村観山「魔障」もおばけ屋敷絵として好きだけど、やっぱり面白みがあるのは浮世絵だわな。(観山は別に面白がらせるためとか怖がらせるために描いたわけやないだろうが)

新板浮絵浦島竜宮入りの図 格天井の宮殿に、頭に魚を付けた美人たちがいて、奥庭には何と鳥までいる。

新板浮絵両国橋夕涼み花火見物の図 左手に花火が上がる。手前に屋台が並ぶ。ぜんざいの店もある。夏でも食べるぜんざい。そういえば北斎は酒が飲めず、甘いものが好きだった。

新板浮絵金竜山仁王門の図 わいわいがやがや。

新板浮絵忠臣蔵 初段から十一段までがある。それぞれの名シーンを描いていて楽しい。つまり芝居の要約をここで次々見ている心持になるのだ。こういうものが手元にあると、義太夫うなりながら紙芝居にするのもええかもしれん、と思った。


3.浮絵から洋風版画へ
かなのタイトルでは書きにくい読みにくいので適度な感じを充てる。

行徳塩浜より登戸の干潟をのぞむ
羽田弁天の図
阿蘭陀画鏡江戸八景
いずれも風景画。どこか絵空事風で乾いた感じがする。


4.壮年期の多彩な作品

瀬川路之助の女房こむめ えにく重ね着である。まるで十二単くらい着ていそう。

澤村源之助の梅の由兵衛 黒に千鳥の粋な拵え、かっこいい。

東海道五十三次もある。ぽち袋サイズのカラフルなものなど。
広重ほどの滑稽味はないが、人々の旅の様子がほんわかと描かれている。

吉原遊郭の景 五枚続きの忙しい&大賑わいの図。ロングでそこを捉えているが、やたらとわいわいしている。帳場から台所から宴会準備のあわただしさが伝わってくる。

団扇絵もある。
芥川 柳が揺らぐ川を行く。
菖蒲に鯉 存在感の強い鯉。色もよく残る。nec783-1.jpg

しんはんくみあげとうろふえ 天岩戸神かぐらの図 こっちの立版古もいい。

浅草寺雷門 おや、盲人たちが大ゲンカ中。この賑わいを立版古(江戸では組み上げ絵ともいう)で。
再現されたものもあり、とても嬉しい。
nec783.jpg

押絵雛形 柿本人麻呂と菊慈童 顔も二面作り、遠近感を生み出す工夫。今のペーパークラフトと同じ。菊も綺麗。美少年ですなあ。


5.為一時代の風景画
ここでは富嶽三十六景、諸国瀧廻り、諸国名橋奇覧、雪月花が出ていた。
色もよく出ていて、好きなものを好きなように見る楽しみがあった。
雪月花は雪の隅田・月の淀川・花の吉野。


6.華麗な花鳥画
天保年間の彩色豊かな花鳥画が集まる。
わたしなどは実物と名前が一致しないものも少なくないから、そちらでも面白く眺めた。

百合 やや薄オレンジ。
檜扇 紫の花。放射線状に細い花弁。
朝顔に蛙 ピンク、青に白混ざりの朝顔。そこに寝ている蛙。
菊に虻 ピンクの菊もある。丸いのや放射線状のや色々菊が咲く。
桔梗にトンボ 翅が白い。薄紫と白の花が揺れる。
紫陽花に燕 こちらも二色。薄青いのと白いのと。燕の丸い頭が可愛い。
牡丹に蝶 カラフル。チリリリと縮れが入る花。
芥子 風にそよぐ。アヘン~~
芙蓉に雀 可愛いなあ。黒目に頬に嘴。しかし発色はいまいち。

ここから字の難しいのが続く。というよりタイトルがなかったものか。
翡翠・鳶尾艸・瞿麥 これはカワセミ・シャガ・ナデシコね。シャガもナデシコも別な字を思うが、こういう字もいいなあ。いずれもカラフル。

鵤・白粉花 イカルにオシロイバナ。赤から青へのグラデーションの背景。顔を上げる鵤。
この字もほかに見ようとすれば、奈良ではなく兵庫の鵤町(イカルガ町)か、大阪夏の陣で散った伏見人形の創始者?鵤幸右衛門くらいしか見ない。

子規・杜鵑花 どちらも「ホトトギス」である。ただし花の方は「サツキ」と読ませている。青空・白雲の下、明るく咲いた花の上を行く時鳥(これもホトトギス。ついでに不如帰もホトトギス)

黄鳥・長春 長春は中国東北部の都市名ではなく、バラ。日本に咲いた薔薇。その赤薔薇に可愛く止まる小鳥。この取り合わせは名古屋の山本梅逸などによくあるように思う。

芍薬・カナリア 藍地に咲く花。優美な姿。

鷽・垂櫻 ウソに枝垂桜。いかにも春らしい取り合わせ。北斎なら亀戸辺りにもよく出かけたろう。

文鳥・辛夷花 ピンクからグレーの色の淡いグラデーション。白い花弁にココア色の裏が見える。

いずれも花博のときの特別展や東博などでもしばしば見ているが、こうして集められると、自分も花の中に立ち、小鳥たちと仲良くしている心持になる。


7.為一期 その他の作品

月宮殿嫦娥之遊 細工物興行のための。文政10年か。浅草奥山でそんなのがあったのかもしれない。

百橋一覧 これが面白すぎる!奇想の絵というのかな。一枚の山水画に100の橋を描きこむ。もう本当に面白い。「お江戸八百八橋」というけど、ほんまにもぉ~~楽しいわ。
こんな小さいのまで!から大橋まで色々。橋梁造りに命を懸ける~~みたいな感じw

天保5年のいい絵が何点か出ている。
牧場 牛馬、仲良し三馬、向こうもわいわい
櫻に鷹 えっへん!!
瀧に鯉 上る奴もいれば下る奴もいる。単に落ちてるだけか。黒い鯉。

信州諏訪湖水氷渡 高島城も見え、人馬も歩く。おみわたり現象は見えない。
なお、この校合摺りも出ていた。なかなかかっこいい。

百物語五点が揃って出ている。改めて眺めたとき、「小はだ小平次」って進撃の巨人の御先祖みたいなもんですなあ。
わたしはこのシリーズでは小平次とそれから提灯のお岩さんが好き。
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8.最晩年の作品
それでもまだまだ枯れることはない。

百人一首うばがえときシリーズが出ている。判じ物だと言っていい。江戸人の教養には毎回驚く。説明を受けないと「…ああ」とならない。


9.華麗なる摺物と稀覯本
却って面白いのはこの辺りか。

金沢八景 これはシュールな風景画で牛島憲之を思い出させてくれる。
2年前に金沢文庫でみた展覧会で初めて見た。
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鎌倉の里 これもシュールだなあ。銅版画風な面白味がある。

江の島遠望 波に空摺!凝っている、実に凝っている。

牡丹に蝶 こちらも空摺。白牡丹の花を表現。

七世市川團十郎の朝比奈と三世市川門之助の月小夜 凶悪顔の魚をさばく図。面白い。

花の兄 すなわち梅なのだが、この風俗はお正月。陰暦だから今とはずれがある。
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その他 肉筆画と版下絵・父娘の作品
あちこちで見受けられたのでこの章はない。

応為の三曲合奏図などがある。これは以前に見ている。
ほかに北斎漫画がある。

柳に烏 これは可愛い丸顔の烏たちが14羽いて、降りたり飛んだり。

名のわからぬ本もある。九曜星を描く。金は孔雀に乗る女、日曜は真正面向きの馬にのるとか。
なかなかかっこいい。


また巡回が長いが、面白い展覧会だったのでぜひ皆さんそれぞれの近場で見ましょう~~
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