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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

人間国宝展 その1

東京国立博物館の特別展「人間国宝展」を再訪した。
生み出された美、伝えゆくわざ
いい副題もついている。

工芸館で見る人間国宝の作品をもっと大がかりにして集めた展覧会なのだろうか、と漠然と思っていた。
だがその考えはすぐに撤回しなくてはならなくなった。
確かにその通りなのだが、ここで見た作品群には常とは違う興奮を見出してしまった。

第1章 古典への畏敬と挑戦
旧き世に生まれた品々に学び、そこから自身の仕事を立脚した人々の作品が集まる。
そのために旧世界で生まれたものと、人間国宝が生み出したものとが並ぶシーンもあった。

奈良三彩壺 奈良時代 九州国立博物館   
三彩花器「爽容」 加藤卓男 1996年 東京国立博物館
ラスター彩の優美な姿を再現した加藤だが、奈良時代の三彩と加藤の三彩とをこうして眺めると、彼のいた世界がいかに広いものか・いかに深いものかを思い知らされる。
1200年の歳月の隔たりは、落胆ではなく、豊かな実りを約束したのだ。

金銅唐花文鋺(興福寺鎮壇具のうち) 奈良時代 東京国立博物館  緑青を吹いているが花が刻まれた美麗なワン。(金物なので石扁でも木扁でもなく金扁のわん)指の腹でその花の咲き乱れる様子を味わいたい。

金彩銀壺「山背」 増田三男 1990年 東京国立博物館  肉付きのよい鹿たちがピョンピョンと跳ねるように野を行く景色が刻まれている。
「山背」とは山を越えてくる強風のことらしい。その風に押されるように走り抜けて行く動物たち。
わたしはついつい「やましろ」と読んでしまった。山背大兄。

唐花文夾纈羅幡残欠 1旒 奈良時代 東京国立博物館 東大寺伝来品。花文様がとても愛らしい。色も退色しつつもよく残り、「残んの香」とでもいうべきものを感じさせてくれる。

上代有文羅(蘇芳小菱羅) 喜多川平朗 1巻 1957年 東京国立博物館   この「羅」の技術を復元したことで人間国宝になられたそうだが、凄いことだと思う。失われた技術を復興させ、自ら実践する。そして古代の様相を現代に蘇らせる。とてもかっこいい。

木画紫檀双六局(正倉院宝物模造) 木内省古 1基 1932年、原品=奈良時代 東京国立博物館   わたしは象嵌がとても好きで特に正倉院宝物などに見られる象嵌にはいつもいつも深いときめきを覚える。この模造品は本当に丁寧で繊細な作りで、天平時代の本物に恥じぬ拵えだと思う。

輪花文縞黒檀印箱 秋山逸生 1合 1981年 東京国立近代美術館  意匠的にはわたしの嗜好から外れるが、とても綺麗な作り。黒檀に埋め込まれた宇宙人の目、あるいは万華鏡。

花籠(正倉院宝物模造) 1口 1875年、原品=奈良時代 東京国立博物館
六合花籃 前田竹房斎(二代) 1口 1997年 東京国立博物館
どうもこのように機能的な形のものを見ると、やはり「道具」を視る眼になり、面白がることが出来なくなる。しかしそれこそが実はこうした作品の本質を視ていることになるのかもしれない。作られたのが近年だということを考えると、新しいものなのだけれど、どうもそうは思えない。意匠がそう見せてしまうのか。
しかしながら、こうした基礎をこそきちんと出来ていないと、その後の展開・進展は望めぬものなのだ。

紅牙撥鏤尺 1枚 奈良時代 東京国立博物館  これは法隆寺のもの。正倉院のものではない。色は所々剥落しているが、それでも十分美しい。
花と鴛鴦。雄の鴛鴦には大花、雌の鴛鴦には小花のセット。可愛らしさに嬉しくなる。

紅牙撥鏤尺 吉田文之 1枚 1985年 式年遷宮記念 神宮美術館 こちらは正倉院宝物の模造品。素晴らしい技術がその手に宿っているのを感じる。
近年、この本物のを正倉院展で二度ばかり見ているが、一尺ばかりの空間によくこれだけ繊細で華麗な文様を刻み込めるものだと、改めて感心する。

銅鑼 鎌倉時代 東京国立博物館
砂張銅鑼 魚住為楽(初代)  1947年 東京国立博物館
仏具の銅鑼の大切さと言うものはなんとなくわかるが、実際に銅鑼の音と言うものを聴いたのは、寺院ではなく、たとえばオペラ「トゥーランドット」などでだったりする。
そして人間国宝の作った銅鑼、これが敗戦後すぐの1947年製作だということにびっくりした。鉄も砂鉄も錫も銅もアルミもなくて困ってる時期に、こうした立派なものを拵えているのだ。くらくらした。日本の工芸は死ななかったのだ。

由緒正しい装束を見る。
唐衣 萌黄地亀甲菊花模様二陪織物 / 表着 紅地入子菱菊花模様二陪織物 一式の内、唐衣一領・表着一領 江戸時代 霊鑑寺
黄地入子菱地臥蝶丸文様二陪織物表着 喜多川平朗 1領 1981頃  東京国立博物館
どちらも同時代のものに見えてしまった。
わたしは王朝スタイルに関心がないから、この装束の構造などはわからない。どういったときに着用するのかもわからない。
しかしこうした仕事が現代にも続いているのは素晴らしいことだということはわかる。

続いて日本刀を見る。
正直なところ、あんまり日本刀を見るのはニガテである。
というのは、名刀であればあるほど、うすら寒い恐怖を感じるからだ。
うう、怖い。またこんなところには決してナマクラは出ないが、ナマクラはナマクラで怖い。要するに刃物がニガテなのである。
現代の刀工の打った刀も古刀や江戸の新刀に及ばぬことはない。
しかし、とわたしはフラチなことを思う。
刀はやはり人間を斬るためのものなのだから、斬ることが目的でない刀と言うものは、いったいどういった心持で打たれ、鍛えられるのだろう…

志野茶碗 銘 広沢  美濃  安土桃山~江戸時代 湯木美術館
志野茶碗 荒川豊蔵 1953年  東京国立近代美術館
どちらもとても好きな志野焼。本当の好みでは志野は皿の方が好きなのだが、豊蔵の茶碗を知ってからはその良さに大いに惹かれるようになった。
やきものと言うより、なにか石を刻んだような趣もあり、そこが面白いのかもしれない。

わたしは磁器は好きだが陶器はあまり好まない。
備前焼などは大型のものならよろしいが、小さなものはニガテ。
手に持った時、手首が返ってしまうような重さを感じさせるものが、ニガテなのだ。
萩焼は小さいものでも好きだが、それでも釉薬が完全に掛かり切っていないザリザリ感があるものはニガテで、やはりあくまでも観賞用としてしか、対峙できない。
伝世品の見事なもの、人間国宝の立派な品々を前にして、不遜なことを言うている。

芦屋浜松図真形釜 芦屋 室町時代 東京国立博物館
馬ノ図真形釜 角谷一圭  1985年 文化庁
福岡の芦屋釜というのは可愛らしいものが多い。京都の大西家の釜も大好きだが、芦屋は撫でてやりたくなるような可愛らしさがある。
そういえば文福茶釜はいったいどっちの釜なのだろう。
そうそう、文福自体も「分福」の字をあてるところもあるし。
そんなことを考えるのも楽しい。

一越縮緬地鳳凰桐文振袖 田畑喜八(三代) 1領 1954年 京都国立近代美術館  遠くからでもパッと目に付く、派手で艶やかな着物。田畑喜八らしい明るい着物に気持ちよくなる。

染め物を見て行く。
自分の知らなかったことをここで学ぶ。
仙台平袴、献上博多帯、このあたりは昔から言葉は知っていてもどうしてその名なのか・どんなときに使うのか、そこらがわからなかったので、ここでこうして学べてよかった。

型紙がある。これは近年の三菱一号館での展覧会などで大量に見て、それですっかり意識が変わったものだ。とても面白い。

漆芸をみる。
彩色蒟醤御料紙硯匣 玉楮象谷 1具 嘉永7年(1854) 香川県立ミュージアム
蒟醤龍鳳凰文八角香盆 磯井如真 1枚 1955年 東京国立近代美術館
近年は蒟醤(きんま)が面白く感じられるようになり、その名品を見るのも楽しい。数年前、この東博でたくさんみてから、好きになったのだ。

やきものがたくさん並ぶ。
白釉黒流掛大鉢 濱田庄司 1口 1967年 川崎市市民ミュージアム  濱田の作品は60年+15秒で作られている。60年の精進と、そこから培った技術。それが現れるのが15秒ばかりもない流し掛け。永遠と一瞬、そのコラボレートのような作品。
見事だ。

塩釉象嵌縄文皿 島岡達三 1枚 1999年 茨城県陶芸美術館 ああ、綺麗なブルー。

白磁刻花蓮花文皿 中国・定窯 1枚 中国・北宋時代 東京国立博物館
白瓷唐草文輪花大皿 塚本快示 1枚1978年
二枚並んだ白磁皿の清楚な美しさに招き寄せられてふらふら進むと、そこに北宋の白磁と塚本の白磁とが並んでいた。どちらも薄く刻まれた花に飾られている。
わたしは快示の作品を出光美術館で知って以来、ずっとその魅力に溺れ続けている。
今こうしてこの展覧会で彼の作品に会えて、本当に嬉しい。

型染の美にも惹かれる。
縹色地松皮菱に松梅菊模様衣装 1領 琉球王国第二尚氏時代 芹沢銈介美術館
藍朧型印金芦文「瑲」紬長着 鎌倉芳太郎 1領1964年 東京国立近代美術館
人間の手工芸はいくらでも新しいものを生み出すのだ・・・

火焰型土器(新潟県十日町市笹山遺跡出土) 1口 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市博物館 新潟県十日町出土だと読んで、これが何千年前の本当の土器だとやっと納得した。わたしは岡本太郎の作品だと思ってしまったのである。
「陶芸部門で土器型のこしらえて、それで人間国宝になったのかな」と一瞬想像したのでだ。

色絵月梅図茶壺 仁清 1口 江戸時代 東京国立博物館  ああ、いかにも。親しい人に会えた心持ちがする。

ここから後は昔の、名の伝わらぬ名匠の手により生み出された名品が並ぶ。

小袖 黒綸子地波鴛鴦模様 1領 江戸時代 東京国立博物館 魅力的な寛文小袖。本当にすてき。

片輪車蒔絵螺鈿手箱 1合 平安時代 東京国立博物館  見慣れたものなのに、ここで見るととても斬新な文様に見える。

朱漆脚付鉢 1口 室町時代 東京国立博物館 遠目からでも「根来か」とわかる。

長くなりすぎるので、今日はここまで。
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