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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ラファエル前派 英国ヴィクトリア朝絵画の夢 2

昨日の続き。ラファエル前派展感想その2

4.近代生活

フォード・マドックス・ブラウン 「あなたの息子をお抱きになってくださいな」  女が子供を差し出す。女の後ろにはまるで光輪のような鏡が光り、そこに男が映っている。
これは未完の作らしい。何を意味するのか。個人的体験からのことなのか、別な意味なのか。そんなことを考えるのも面白い。

ウィリアム・ホルマン・ハント 良心の目覚め  最初に見たときタイトルも知らなかったので、恋人の膝から不意に立ち上がりかける娘を描いているのか、と思っていた。
これはそうではなくて愛人のところから立ち上がろうとする娘の絵らしい。とりあえず不義はいかんという感覚がここにあるのか。(わたしとしては賛成)
床には猫と雀が見える。メタファか。ヴィクトリア時代は女には生きづらい時代だった。

ジョン・ロッダム・スペンサー・スタンホープ 過去の追想  裏寂れた娼婦がいる。濃い紫色のガウンを着て手にはブラシ。もう、暮らしも仕事も成り立たない。彼女もかつてはクルティザンだったのかもしれないが、今はもう。
そういえばこの時代、立ちんぼさんは切り裂きジャックにコロされることがあるのだった。

ロバート・プレイスウェイト・マーティノウ 我が家で過ごす最後の日  絵を見る前に先に解説プレートを読んでしまった。曰く「能天気な夫と息子、絵画などにも売り立札が」。
それを踏まえて絵を見ると、なるほどもぉアカンな情景が描かれている。
妻と娘の嘆きも知らん顔であほな夫と息子は楽しそうな話をしている。こんなだから家がだめになるのに。祖母も泣いているが、どうにもならない。管財人もいて鍵を持ってるし、奥には家財チェックする人々もいる。本当にどうにもならない。
正直、身につまされる。もぉウチは終わってしまったことではあるが。

5.詩的な絵画

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ ダンテが見たラケルとレアの幻影  ダンテはあくまでも「見るだけの人」である。旧約聖書に現れる妹と姉。林の中でそれぞれの想いを秘めて佇む。
わたしたちもまた「見るだけの人」である。
ダンテが見たものを・ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティが描いたものを・ただ見ている。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ ベアトリーチェの死の幻影を見るダンテ  死の天使がベッドの女にくちづける。二人の女は上から花飾りつきの布を掛けようと、あるいはそれを引き上げようとしていた。ここでもまたダンテは見るだけの人である。半ば地下でのこと。

教養文庫の「神曲」を高校の頃少しだけ開いて挫折して以来、まだ読んでいない。
これも西洋絵画を理解するためには必読書なのにも関わらず、わたしは本当に至らない。
美術を愛する以上は好悪を超えて「伊勢」「源氏」「旧約」「新約」そして各国の神話、「史記」「水滸伝」「神曲」このあたりは何が何でも読んでおかないといけない。

ラファエル前派を愛するには聖書の他にギリシャ神話とアーサー王伝説も必読である。
わたしがラファエル前派にのめった理由の一つに、神話の絵画化とアーサー王の絵画化があったからだ。絵に文芸性があるもの、わたしはそこにのめり込んでしまう。
その意味で、彼ら<兄弟団>はわたしの理想でもある。

エリザベス・エレノア・シダル 「サー・パトリック・スペンス」より淑女たちの哀歌  朽ちる運命の人たるスペンスとスコットランド王。海に沈むスペンス。
この物語はこちらに詳しい。
シダルもまたロマンティックな絵を描いていたのだ。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ アーサー王の墓  アーサー王の眠れる姿を象った墓のその真上で、身を乗り出す騎士と、くちづけを止める貴婦人。湖水のランスロットと王妃グィネヴィアかもしれない。
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エドワード・バーン・ジョーンズ クララ・フォン・ボルク  足下に黒猫がいる。それがとても印象的。やはり絵に猫がいると、それだけで嬉しい。

エドワード・バーン・ジョーンズ シドニア・フォン・ボルク  対の絵。この絵の方がよく見ている。柄物のドレスを着た豪奢な女。横顔を見せているが実は魔女らしい。
邪悪な笑顔だが、それこそが魅力的なのだった。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 薔薇物語  キスしている二人をみんながそっとのぞく。薔薇も見ている。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ サー・ガラハッド、サー・ボース、サー・パーシヴァルは聖杯から聖体を拝領する。しかしパーシヴァルの姉は道中でなくなった  百合の咲く中、聖杯をうける。鳩と背の高い天使たちと。
タイトル原題は"How"で始まるが、アーサー王と円卓の騎士の物語の挿し絵には必ずその言葉から始まり、絵の大事さを感じさせる。

シメオン・ソロモン ミティリニの庭園のサッフォーとエリンナ  エリンナにキスするサッフォー。しかし相手のエリンナはどこか遠くを見ている。
サッフォーの恋は成就することはない。

6.美

ジョン・エヴァレット・ミレイ 谷間の安息「疲れし者のの安らぎの場」  要するに墓穴である。尼僧がその墓穴を掘っている。座る尼僧もいるが、その二人を夕暮れが包み始めている。誰を入れるかは知らない。墓掘りといえば「ハムレット」か「桜姫東文章」。誰を埋めるにしろ本当に「安らぎの場」になるかどうかは不明。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ モンナ・ポモーナ 緑のドレスが綺麗。胸元のレースもいい。背景も緑、そして女の目も緑。とてもシック。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ ベアタ・ベアトリクス  これも好きな一枚。光るような顔がいい。絵を構成する細々した背景もいい。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 最愛の人(花嫁)  この絵を最初に見たとき「花嫁」とかそんなこと一切考えなかった。今になって「そうか、花嫁だったか」と初めて知り納得する。
黒人の少女召使いが印象的。14022601.jpg


ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ プロセルピナ  今回のチラシ。ザクロ持つ美女。ヨモツヘグイは洋の東西を問わず冥土にその身を拘束することになる。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 聖なる百合  金色の美しい絵。金の背景、金のドレス、金の百合、金色の美人。
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7.象徴主義 

三点すべてエドワード・バーン・ジョーンズ。

愛の神殿 未完の作とはいえ描き込みの多い絵。天使が全裸の男に花冠を授けようとする。女たちは彼に衣を着せかけようとする。多くの人々がいる。絵の背景がなんなのかはわからないが、音楽が聞こえてきそうな情景。

夕暮れの静けさ  赤い手すりにもたれる女。ナデシコだろうか、群生している。どこかシュール。

「愛」に導かれる巡礼  天使に手を引かれる。雀もいる。茨の道。天使の頭上にも小鳥たち。
構図を見ていると、「アーサー王」の魔法使いマーリンが女を追いかける絵を思い出す。

随分前、ラファエル前派に熱狂した当初、従姉妹がイギリスにゆくことを知り、テイトギャラリーを勧めた。
彼女からは大量の絵はがきのみやげをもらった。
今回、ここに来なかったウォーターハウスの絵もあった。
それらの現物を今ここでたくさん見ることができたのはやはり嬉しい。
この展覧会はこれまで見てきたラファエル前派展の中でも特に大きな展覧会だった。本当にいい。

昨日も少しばかり書いたが、lapisさんとは絵画の好みがたいへん近く、嬉しい交流があった。
中でも小村雪岱、ラファエル前派に関しては本当に話が合い、わたしはlapisさんのブログにあげられた作品にときめき続けた。
今、lapisさんがまだこの俗世においでならば、この時期必ずやこのラファエル前派展、三菱一号館の唯美主義、そして日本のアールヌーヴォー工芸を生み出した、出光美術館の板谷波山展をご覧になったに違いない。
それともlapisさんの自由な魂はとっくにご覧になっていて、あの静かな筆致で感想を綴られているかもしれない。
その文章は宙に書かれているので、わたしたちの目にはなかなか見えないのだけれど。

4/6まで。
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