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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

富士と桜と春の花

山種美術館へ行った。
毎回すてきな展覧会が開催されるが、今回は「富士山世界文化遺産登録記念」と銘打って「富士と桜と春の花」展である。
今が桜の盛りなので、本来なら咲く前に話題にしたかったが、出遅れてしまった。
そういえば数年前、京都の美術館「えき」で山種所蔵品での「富士と桜」展があったことを思い出した。あれもいい展覧会だった。
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・日本画にみる富士
富士山の絵だけで展覧会が開催できる。すごいことだ。まだ寒い頃に日本橋の三越か高島屋で富士山の展覧会があったが、それを思うとやはり富士山は偉大なのである。

大観の富士はやはり明治初期に生まれた「明治の人」らしさが出ていると思う。
どの富士にも日本第一という力強さ・立派さがあるからだ。
絵の嗜好を越えて、そこには「日本一」という観念がある。

古径 不尽 雄気堂々たる富士ではなく、これは木花咲耶姫の富士である。楚々とした美しさのある富士。青く、ほっそりと美しい。姫の後姿を拝むような心持がする。

深水 富士 美人画の深水が南画風な富士山を描いている。こういうのも面白い。手前の松との遠近感の取り方に浮世絵の味わいもある。吉原からの眺めらしい。

遊亀 霽れゆく 旅行に出てふと見た景色を素晴らしい絵に出来る。画家だけの特権ですなあ。精進湖からの眺め。雨後の富士山。

・名所絵のなかの富士
静岡やサントリーから名品が来ている。

式部輝忠 富士八景図 1530 500年ほど前の富士山。富士には本当に物語も多く、思い入れも多い。場所の特定はわたしには出来ないが、絵の中の富士が少しずつ場所を変えているのが、その形から推察できる。雄大な富士ではなく、ほっそり富士。ちょっとニョロニョロに似ていて、なんとなくのほほんとしている。
どっちをむいても富士、どこまでいっても富士。
建仁寺の常庵龍崇の賛がある。「昔孝霊帝一四海…琵琶湖」という字が読めた。一天四海かと思うが天が脱字になっているのか。

厳島三保松原図屛風 のうち 「三保松原図」 緋毛氈に座って船の行き来を見たり、鼓を打ったり、なかなか楽しそうである。長煙管でたばこを吸い、のんびり。汐汲みの人もいる。左手には清見寺。近くには蘇鉄の生える村もある。

司馬江漢 駿河湾富士遠望図  虎造の浪曲がアタマの中に流れ出す。

わたしはどうしても武田泰淳「富士」を思い出す。
様々な富士を「見る」人々のことを。
富士の絵を描かせたのに「そこに富士はなかった」といった状況を。

歌川芳藤 開化旧弊富士山参詣之図 1878 明治になり西洋化が押し寄せてきて、古き良き日本の美や文化を否定されてしまう。開化を象徴するグッズは山を上り、旧幕時代のものは山を下りてゆく。和の中には金神、矢、などと言ったものも含まれていた。しくしく。

・富士と桜と春の花
広重 不二三十六景 東都隅田堤 桜満開。しばしばその時期にわたしも墨堤を歩くことがある。いいキモチ。桜橋まで歩き、そこからちょっと町中に入り、言問団子を食べるのだ。

春挙 裾野の春 民家がある。釜やなんだかんだと生活用品が見える。アルムの小屋のようではないか。ハイジが現れそうな家。

球子 めでたき富士 球子の絵はこの「富士山」の連作以外はみんな非常にニガテだが、その反動でか、富士山が花まみれになってピカピカになった絵はとてもいいと思う。
元気が出てくる。富士のデコレート。えらいもんです。きらきら。わいわい。


☆桜 さくら
・名所の桜
土牛 吉野 のびやかな風景。吉野の桜の美は遠目にはよいが、近づくと怖い。

石田 武 吉野 桜の色の濃淡に溺れる。

京洛四季(合作)のうち
国井 応文 御室境内之花 「わたしゃおたふく」という古い戯れ唄を思い出す。
中島 有章 嶋原郭道菜花 ぽつりぽつりと行き交う人々。

土牛 醍醐 この醍醐の桜を切手にしたものがあるが、わたしの従妹はそれを見て実際に醍醐に花見に行ったのだった。そんな気持ちを芽生えさせ、背中を押す力がこの絵にはある。

元宋 湖畔春耀 淡い色彩が乱舞しているようである。

・桜に魅せられて
特に好きな絵が並ぶ。
春草 月四題 のうち 「春」 空気まで気持ちいい。
御舟 夜桜 艶めかしい。
稗田 一穂 朧春 月が溺れるのは桜のせいに違いない。
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夜桜の狂気とでもいうものが二点。しかも同じ2000年の製作。
石田 武 春宵 月下繚乱とでもいうしかない。
千住 博 夜桜  安井金毘羅宮のおみくじの木を思い出した。あの凄まじいあふれ方を。

渡辺 省亭 桜に雀 可愛いなあ、雀たち。ういやつよのう、という感じ。

菊池 芳文 花鳥十二ヶ月 のうち 「桜」 桜に雉というのも古い世の取り合わせ。しみじみ眺める。

龍子 さくら でんとした太幹。立派だなあ。

・桜とともに
玉堂 春風春水 この絵は以前から好きなもので、川にかかるワイヤーを手繰り寄せながら急流を行く小舟の姿がいい。働く人たちの真上に桜が咲く。

春草 桜下美人図 幔幕から出てくる四人の美人。一番最後は少しおちびさんで、彼女の後を慕うてか、顔の幅広なイタチにも見える小動物が顔をのぞかせる。
何度も見ていたはずなのに、この動物に気付かなかったなあ。

映丘 春光春衣 王朝美人たちに桜花が舞い散る…

☆春の花
・花の王
桜ではなく牡丹だというのは「石橋」からだったか。
其一 牡丹図 さまざま咲くうち、右下の青い牡丹が特にいい。

平八郎 牡丹 まだ若い頃のこの牡丹は裏彩色で表現され、幻想的な様子をみせる。
2007年の回顧展で初めて見た牡丹。あれ以来の再会。
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・春よ春よ
御舟 桃花 柔らかく咲かず、厳しい寒さの中で咲いたような桃。いい絵。

土牛 ガーベラ 現代の花の絵だということを思う。その一方で、古い陶磁器が長く地中に在って、それがガラス化したような瓶、その美を見たことも嬉しい。それを描く土牛。

龍子 花の袖 白いアイリスの群れ。大きく前進するような。

石本 正 罌粟 近年、京都において毎年の新作を見る機会に恵まれているが、この罌粟の花は1989年のものだと思いつつも、新作のようにも見える。
石本の年々の進化を見ているからそう思うのかもしれない。
幻想的な美しさ。どきどきした。
石本画伯、いつまでもお元気でいて新作を送り続けてください。

小茂田 青樹 四季草花画巻 白椿の絵がたくさん出ていた。他には白ツツジと赤ツツジ。
可愛いなあ。

花に囲まれ、富士山に守られたような気がする。
5/11まで。
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