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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

やきもの動物園

東京でよいやきものをいくつも見たが、いずれも「動物」と密接な関わりを持つものばかりで、楽しく眺めた。

戸栗美術館などはコレクションから動物が描かれたものばかりをピックアップして「古伊万里動物図鑑」展を開催している。
十年ほど前にたばこと塩の博物館が「たばこと塩の動物園」を開催し、大好評を得ているが、あれを思い出しながら見て歩いた。

そして汐留ミュージアムでは「フランス印象派の陶磁器1866-1886 ジャポニスムの成熟」展が開催中だが、こちらは北斎の絵などからモチーフを得て、動物を作中に招き込んでいる。

最後に菊池寛実記念智美術館では現代の陶工・藤本能道の色絵を特集しているが、こちらは小鳥のオンパレードだった。

ということで今夜は「やきもの動物園」をお送りしたい。

江戸時代は博物学の時代でもあった。
動物園の概念はなかったが、盛り場には必ず見世物興行が打たれたが、その中に見慣れぬ・変わった動物たちがいた。猫も犬も愛され、物語なども少なくはない。

戸栗美術館のやきものに動物たちが多い理由をいくつか考えているうちに思いついたのがそんなことだった。
要するに好きなのだ、動物が。
だから理由を拵えても仕方ないのだった。
イメージ (13)

戸栗美術館のシンボルマークは虎である。この虎は現在の展覧会に現れて大きなしっぽを立てている。

虎一つにしても個体によりシマ柄が違うと言うくらいだから、決して同じ虎はいない。
チラシ右上の虎ちゃんをみる。釉薬がきれいに虎のシマ柄と青い目をみせる。

猫をモデルにしたらしき虎たちは竹と共に描かれることも多く、柿右衛門の様式の一つに常駐しているのもいる。
虎たちはみんな楽しそうだった。

実際のゾウを見た人々と言えば、ベトナムからのアジアゾウを、吉宗の時代に見たことがある、といえた人々くらいか。
だからキクラゲみたいな姿をしていてもゾウはゾウなのである。
仏画に見る象は尊いが、かれらはやきもののモチーフにはならない。
偉すぎるものは敬して遠ざけられたらしい。
とはいえ天からの助け手の象もいて、そちらは出演OKらしい。
中には大舜のために野良仕事を手伝うゾウもいて、そのモチーフごとやきものになることもある。

ウサギも多い。吉祥動物というくくりの中に入っているから、だけではなくやっぱり可愛いと思う人の心にあわせての出現率である。
波ウサギは謡曲「竹生島」の「月海上ニ」から採られていたが、本当に可愛い。

とはいえ圧倒的に多いのは鳥たちだと思う。
めでたい鳥の代表たる鳳凰、鶴、それから親しい鷺、雉、雀、セキレイ、千鳥などなど。鶴に至っては翼を広げたのを丸く囲んだ大きな形のものがあったりもする。
秋の風物に「葦に雁」というのもあり、これまたきれいな皿だった。
ほかにも粟に鶉、「竹に雀」がてんこもりで、日本人がいかに「花鳥風月」を愛してきたかがよくわかる。

獅子と言えば中国の皇帝は獅子を自分の紋章にして、明代の官窯らも獅子を多くやきものの文様に取り込んでいる。
かれらは大抵が竜とにらみ合う位置に置かれる。
竜も「竜虎あいうつ」の言葉がでなければ、のほほんとしていたかもしれない。
(尤も中国の竜は結構のほほん系ではある)

ほかにカニ、蝶の外形そのものをモチーフにしたものもあり、とても可愛かった。

お客さんもかなり多く、みなさんはやはりこうしたテーマが好きなのだと思い知らされた。←まずわたしだな。
6/19まで。

汐留ミュージアムでは「アビランド家の秘蔵コレクション公開」ということだった。
イメージ (12)

ツバメにホトトギスに雀。
絵のモチーフとしてとても愛されている。
フランスではわざわざ彼らを芸術の中に採り込もうとはしなかった。
ところが北斎漫画などがフランスに渡ったことで状況は一変。20年ばかりの間に大量の「花鳥画」が世にあふれ、それらがやきものの世界にものさばりだした。

ツバメと桜の椿。いい取り合わせ。それを楽しむ。
ほかにも、彩色が綺麗だからと選ばれたらしき、インコとハナミズキのとりあわせもある。これなどは特に見事な色合いだった。
イメージ (15)

西洋には花鳥風月の観念はなかった。ジャポニスムで初めてそれを知ったのである。ただ、それは彼らの骨にまでは染み透らなかった。
だが、印象派の画家たちが自然を「愛した」のはやっぱりそこのあたりと関係があるのだ。

白泥で小鳥を表現した皿がある。見事な貫入まで入っていて、本当にきれい。
魚も多く焼き付けられている。みんな目がギロギロしているのが面白い。

これら不思議な動物たちの皿や鉢をテーブルセットにして撮影可能なポイントもあり、そこには本当のルノワールらの絵が飾られている。
今日は絵画は賛助出演あるいは友情出演で、静かににこにことやきものの近くで展示されている。

絵といえばデザイン帳なのだが、コーヒーカップのデザインに「白梅に蝙蝠、白木蓮に猫が箱を開けようとする」構図があり、これはもうフランス人なにするものぞ、なアイデアだった。

こちらもいい心もちで見て回れる。6/22まで。

最後に藤本能道。
加藤土師萌と富本憲吉とに師事し、色絵の粋を追求した陶工である。
この人の作品の大半は鳥がモチーフになり、たまに蝶々が現れもするが、やはり本質的には鳥好きな様子がみえる。
ここはだからバードドームのようなところだった。
イメージ (14)

とにかく釉薬の開発にも心血を注いだ方なので、非常になめらかな色合いを見せている。
そして植物にも詳しいようで、様々な植物と鳥との取り合わせを見せる。
美男蔓に尉鶲、驟雨に小鷺、月下に五位鷺、椿にヒヨドリ、枯葉と百舌鳥…
無限にそんな組み合わせが生まれている。

古伊万里の無邪気な動物たちと違い、現代作家の動物たちは物思いにふけるような、賢い目をしている。
どちらが良いとかよくないというのではなく、その違いがある。

色調が美麗だからか、翡翠が多いのも特徴だった。
そういえばどうして宮沢賢治は「よだかの星」でよだかとかわせみを兄弟だとする設定にしたのだろう。

6/29まで。

書きながらわたしも見て回った時の楽しさが思い出されてきていた。
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