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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

のぞいてびっくり江戸絵画

春から初夏にかけて都内では江戸絵画の花盛りだった。
既に感想を挙げているのは以下の展覧会。
・江戸絵画の19世紀 前期後期
江戸絵画の真髄

最後にサントリー美術館の「のぞいてびっくり江戸絵画」の感想を挙げる。
前後期入り混じっての感想である。なるべく簡素に。
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第1章 〈遠近法〉との出会い
不忍池図 小田野直武  1770 秋田県立近代美術館  親しみのある絵。牡丹か芍薬が手前に描かれ、奥に弁天堂がある図。秋田蘭画の遠近法というより浮世絵の遠近法に近いのではないか。場所で言えばここは今の下町風俗史料館のほん近くになる。あら、テラコッタもあるやないですか。

鷺図 小田野直武 歸空庵コレクション  どうも秋田蘭画になると目が鋭い。というか南蘋派風もそうか。

岩に牡丹図 伝 佐竹義躬 18 世紀  お殿様。そりゃこういうお殿様がいてくれないと秋田蘭画は存在しないわね。白い牡丹が綺麗。

犬のいる風景図 司馬江漢 寛政年間 千葉市美術館  絹本に油彩。横長で犬が海を見ている図。犬の「海を見ていた午後」または「海を見ていたジョニー」。

異国風景図 司馬江漢 寛政年間  アムステルダム界隈らしい。湾というかやはり運河だよな。

南国風景図 司馬江漢 天明年間  こっちはアジア。「アジアの片隅で」描いた絵。

鵞鳥図 司馬江漢 寛政年間  紙本油彩。リアル鵞鳥。王羲之喜ぶと思う。上を見る1羽と下を見る1羽と。

室内男性図 司馬江漢 寛政年間  絹本油彩 洋間やなくて日本の室内に佇む。長押にも絵。リアルタイムの建物というより、戦前の和洋折衷のアパートに似ている。

漁夫図 司馬江漢 文化年間 千葉市美術館 絹本淡彩  魚と共に。浜辺の風景を写生風に。

縁端美人 鈴木春重(司馬江漢)明和 7 年(1770)頃 東京藝術大学  手前に春信の弟子らしい美人二人がいて、その背後に洋風画家らしいずーーーーっとした遠近感のある背景。
随分長い廊下で三十三間くらいありそうである。

皮工図 司馬江漢 銅版筆彩 天明 5 年(1785)  おや、鞣してる。この元ネタの絵を前にどこかで見ている。

江戸城辺風景図 亜欧堂田善  寛政後半~文化年間 東京藝術大学  湾曲したお堀端に並木。散歩する人々。妙な空間になっている。

ゼルマニヤ廓中之図 亜欧堂田善 銅版 文化 6 年(1809) 神戸市立博物館  ゲルマニヤですな、その広場。ヒトラーが確かゲルマニヤという名で世界の首都を構想していたが、これはある意味そのご先祖風景になるかもしれない。

大日本金龍山之図 亜欧堂田善 銅版筆彩 文化年間 歸空庵コレクション  ロングで捉える賑わい。ここはいつでもにぎわっている。昔の提灯には松下幸之助の名前はない。

シノハスノケイ(不忍の景) 亜欧堂田善 銅版筆彩 文化年間  林になってますな、そこを坊さんがゆく。寛永寺の坊さんかもしれないが、この歩く向きから思うと、もしかすると根津の遊郭に行くのかもしれない。

スサキヘンテン(洲崎弁天) 亜欧堂田善 銅版筆彩 文化年間  喧嘩する人もいる。そう言えばここらは戦前から昭和33年3月まで洲崎パラダイスがあったが、江戸時代はどうだっただろう。そのころからあるとしたら、この喧嘩は嫖客同士のそれになるか。

二州橋夏夜図 亜欧堂田善 銅版筆彩 文化年間 町田市立国際版画美術館  両国橋のこと。花火が見えます。ここはやはり花火の名所の橋ですな。

両国橋夕涼見浮絵根元 奥村政信 元文元~延享 5 年 東京藝術大学  遊郭の中で昔風の双六で遊ぶ。

浮絵海士龍宮玉取之図 西村重長 延享年間 千葉市美術館  これは板橋区美術館の展示で見たと思う。外に船がいて海女の孤独な戦いを見ているだけのあれ。

アンボイナ島奇品集成 G.E.ルンフィウス 銅版 1705 年頃 仙台市立博物館  蟹とか…なんだかんだいる。働く女と子供の情景もある。
博物学もどきなのは「どこの世界にこんな風景が」と妄想が膨らむから大好きだ。

浮絵阿蘭陀雪見之図 歌川豊春 明和後期~安永中期 平木浮世絵財団  朱色と緑色がよく使われている。どこか中国風な風情。

浮絵異国景跡和藤内三官之図 歌川豊春 明和後期~安永年間 町田市立国際版画美術館  さすがに和唐内だけに虎に乗っている。それで行列。
石川淳「おとしばなし集」の中に和唐内の話があり、戦争ばかりやりたがる男たちを見捨てて、虎と錦祥女と手下たちがさっさと出て行く話があり、虎も曲馬くらい出来ますぜとノタノタ去ってゆくのだった。

浮絵和国景跡風流和田酒盛之図 歌川豊春 明和後期~安永初期 千葉市美術館  一つの座敷のあっちこっちでワサワサ騒がしい人々。こっちで草摺引き、あっちで女に振られたり、大磯の虎と十郎がいちゃついてたり。
 
忠臣蔵十一段目夜討之浮絵 北尾政美 寛政 3 ~ 6 年  これまた下世話な様子で吉良邸はどうもパーティの後みたいな様子。腰巻一つの女や下帯が下がってるのもいて、緊張感がないない。

どうも「浮絵」というものは真面目な戯画のようなところがあるな。
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江戸近郊図 歌川広重 板橋区立美術館  描き表装で、富士と鶴が記されている。めでたい風景である。

東海道五拾三次之内 御油 旅人留女 歌川広重 天保 4 年(1833)頃 サントリー美術館  これは特に楽しい場面で、階段室のところで巨大な立版古になっていた。
もう本当にこういう江戸滑稽本系の絵は楽しい。

江戸高名会亭尽 白山傾城か窪 萬金 歌川広重 天保 6 年~ 13 年サントリー美術館  奥のカーブに広がりがある。二階の賑わいもわかる。

江戸高名会亭尽 大をんし前 駐春亭 歌川広重 天保 6 年~ 13 年サントリー美術館  大音寺。浮かれた客が芸者にふざけている。

東海道四十一 五十三次 鳴海 歌川広重 嘉永年間 サントリー美術館  これは遠近感ということを考えると、非常に面白い。

名所江戸百景 鎧の渡し小網町 歌川広重 安政 4 年  建物の並び方と視線の形とで距離感が生まれる。燕がいい感じ。

三ツの猿夜の賑ひ 歌川国芳 三枚続 嘉永年間 名古屋市博物館  三美人と犬の喧嘩。庚申待ちだったのかも。

踊形容江戸絵栄 三代歌川豊国 三枚続 安政 5 年 名古屋市博物館  芝居小屋の賑わいを描く。桟敷も平土間もわいわい。演目は「暫」。

飛鳥山花見図 蹄斎北馬   芸する男を眺めるちびっこたち。浮かれた飛鳥山。

虫合戦図 春木南溟 19 世紀  朝顔の大砲がどーんっっ蒲の穂綿が槍になる。敵方はカタツムリ砲。これは他のもみたが、甲虫王者ムシキングの御先祖。
府中市美の「江戸絵画の19世紀」前期にも違うのを見た。

のぞきからくりにもなる作品たちがある。
三十三間堂  伝 円山応挙 宝暦年間頃 町田市立国際版画美術館
賀茂競馬 伝 円山応挙 宝暦年間頃 町田市立国際版画美術館
四条河原図 円山応挙 宝暦 9 年
応挙は京都の名所をこんなふうにおもちゃ絵にもする。
承天閣美術館には光を当てて夜昼を見せる四条河原図がある。

望遠鏡やその類品がある。
そして目のトリックで楽しむ眼鏡絵もある。
尤も目を寄せて視てみれば、筒なしでも絵が楽しめるのだか。

第2章 〈鳥の眼〉を得た絵師たち
鳥瞰図といえば大正から戦前に大活躍した吉田初三郎がいるが、ここにその先達がいた。

江戸一目図 鍬形蕙斎 絹本著色 19 世紀  ああ、お江戸八百八町がコンパクトに。
日本名所之絵 鍬形蕙斎 享和年間頃  すごい構図やな。山口晃の先達という感じ。

木曽路名所一覧 葛飾北斎 文政 2 年 平木浮世絵財団  これまた細かい。琵琶湖周辺。

江戸高名会亭尽 湯嶋  歌川広重 天保 6 ~ 13 年 サントリー美術館  みんな本を開いたり書きつけたり。句会ですかね。

名所江戸百景が続く。
深川洲崎十万坪 例の鷲のぐるっとした絵。下に桶がある。
水道橋駿河台 こっちは鯉のぼりが幅を利かせる。武家社会の町に町人の鯉のぼりを前面に押し出す。
駒形堂吾嬬橋 雨に不如帰飛ぶ。

鷹狩図屏風 狩野養信 二曲一隻 19 世紀 板橋区立美術館  妙に面白い絵。ロングで捉える構図で異時同時図とも言える。カモ、シギ、ハクチョウがいる。小さいので高麗青磁象嵌の水鳥のように可愛い。

異国風景図 司馬江漢 紙本油彩 寛政 9 年  タイかカンボジアらしい。中国人がいて、わんこもいる。

長崎港図 川原慶賀 文政年間頃 千葉市美術館  湾内にオランダ船もある。長崎の夜景は非常に綺麗で、わたしはとても好きだ。

長崎蘭館饗宴図 川原慶賀 19 世紀   ご飯食べてる。みんな日本人ですが。芸者さんらしき女もいる。出島出入りOKの人々。

遠眼鏡 江の島富士 魚屋北溪 文政 4 年 千葉市美術館  胡粉で波がきらきら。

淡路島望遠図  19 世紀   明石から見た風景。藁ぶきの茶店に人々が集まる。
今なら神戸湾クルージング「コンチェルト」ですかね。

色んな望遠鏡があるなあ。感心する。一閑張りまであるがな。
あいにくよく見えないが。
そういえば海賊のお宝をみつけるポーの「黄金虫」の話では、宝の地図の暗号に「ヨキメガネニテ」という一文があったが、それは望遠鏡のことだった。

富嶽百景 三編 葛飾北斎 木版墨摺 / 一冊 天保 6 年 浦上満 氏  おや深天儀。

天球全図 司馬江漢 銅版筆彩 寛政 8 年 神戸市立博物館  すごいなあ。感心するばかり。

地球全図 司馬江漢 銅版筆彩 寛政 5 年 名古屋市美術館  地球は丸かった。

天球図 司馬江漢 銅版筆彩 寛政 8 年  薄くてカラフル。南天球。

新訂万国全図 高橋景保 作 亜欧堂田善 画 銅版筆彩 文化 7 年  これは妙に懸命に見てしまうのだった。香雪美術館にも類品があり、あれも面白い。

第3章 〈顕微鏡〉でのぞくミクロの世界

七ついろは東都富士尽 に 盗賊児雷也 大橋之不二  歌川国芳 嘉永 5 年 仙台市博物館  これは男前やし時代から言うても八世団十郎やな。虫の柄の着物いうのも面白いが、国芳オリジナルだと思う。

雪華図説 土井利位 木版墨摺 天保 3 年 古河歴史博物館
続雪華図説 土井利位 木版墨摺 天保 11 年 古河歴史博物館
中谷宇一郎の以前に、雪の結晶に情熱を傾ける人が、江戸時代にもいたわけです。
渡辺崋山の肖像画で有名な鷹見泉石が跋文を書いている。
97個の雪の結晶。

其姿紫の写絵廿四 三代歌川豊国 弘化4~嘉永 5 年 仙台市博物館  田舎源氏のどこかの場面。光氏、女、赤子。赤子にもにこにこする光氏。雪の日の座敷で。

雪華文蒔絵印籠 原羊遊斎 木製漆絵 天保3~ 11 年 古河歴史博物館  これは鷹見泉石の旧蔵品。雪の結晶がモチーフ。かれは古河藩の家老。

惺々狂斎画帖 河鍋暁斎 明治 3 年以前  でた、巨大猫!!にゃは~としたのがいきなり出現。可愛いなあ。

カンガルーまでいる。

ほかにも魚の本とかあるがみんなリアルでちょっときしょいな。

広重の浮世絵の魚づくしは妙においしそうなのだが。


第4章 〈博物学〉で観察する
とにかくいろんな動物が。

ヨンストン動物図譜 J. ヨンストン 銅版 1660 年 仙台市博物館  いろんな動物をリアルに描いているはずなのに、なんか変である。装甲犀ボーグとでも言うかな。

西洋動物図巻 18 世紀後半~ 19 世紀前半 仙台市博物館 ゾウ、ライオン、ジャコウネコ、犬、ロバ、人魚、タコ・・・
 
本草写生帖 坂本浩然  天保 4 年 西尾市岩瀬文庫  こちらはシマウマ、サイ、カニ、エビ・・・ 
獣類写生 山本溪山 紙本淡彩 19 世紀 西尾市岩瀬文庫  様子しぃのオランウータンの絵。
本草図説 高木春山 19 世紀 西尾市岩瀬文庫  

第5章 〈光〉と〈影〉を描く-影絵・鞘

夕陽人影長図 東東洋 絹本淡彩 18 世紀末~ 19 世紀前半 仙台市博物館  2M大の影が描かれている。
人の影というものは古代から非常に重要なものなのだ。
シャミッソー「影をなくした男」、岡本綺堂「影を踏まれた女」ル・グィン「影との戦い」・・・

すっぽん図 月岡雪鼎 天明元~2年(1781 ~ 82)  シルエットのみで描く。縦に5カ所もしくは5組のスッポンたち。面白い発想だなあ。

広重の戯画も楽しい。国芳ほどの強烈さはなく、庶民の滑稽さがよく出ていて楽しい。
お座敷芸のあほらしさがいい。「即興かげぼしづくし」シリーズ。
根上りのまつ 梅に鶯 サントリー美術館
塩引さけの魚 茶がま、入りふね 茶わんちゃ臺 、ふじの山 らんかんぎぼし、きりことふろう・・・

国芳の人が寄り集まって作られる顔もいくつか出ているが、やっぱりこういう発想はすごいわ。

ほかにさや絵もあり、実際に七面鏡も再現されていたりでいろいろと楽しかった。

5/11まで。
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