FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

恋する美人画

京都市美術館の「恋する美人画」展はたいへん興味深い展覧会だった。
イメージ (37)

親しい作品と初めて見る作品とがいい割合で並び、画家による「美人」の違い、また章ごとに割り振られて、そこにいることになった美人の「意義」などを思ったりした。
なお日本画と油彩とが入り交じる展示である。
そしてわたしが「初めて見た絵」には☆をつける。

第一章 美人画誕生
明治の美人画を中心に

森川曾文 佳人図 ☆ 帯の結びに令嬢らしさを感じる。大きな帯を斜めにしてモッコウバラ柄の着物を着て、狆と仲良し。

芳翠 木戸松子像 ☆ これは所謂「幾松」だな。深紅色の着物で静かな目を向ける。

楳嶺 呉服漢織之図 ☆ 渡来し、機織りの技術を伝えた姉妹。優美な目をして微笑んでいる。

桜谷 和楽 先般の回顧展で初めて見た屏風。農家の表を描く。右端には猫、働き手の女たち。和やかな家族。

翠嶂 広寒宮 色彩の薄い絵で、庭園に八人の官女が楽器を演奏しながら歩く。座る者も舞う者もいる。平和な情景。

栖鳳 絵になる最初 栖鳳の絵を最初に見たのがこれと「アレ夕立に」だったから、てっきり彼を美人画の大家かと勘違いしたのだった。

松園 人生の花 二枚ならび、一は花嫁に口紅なし、一は下唇に笹紅。

松園 待月 後ろ姿美人の代表。首が綺麗。昔は「バックシャン」というた。

松園はかなりたくさん見ているし、画集も複数あるし、また、構図の似たものが多々あるので、初見かどうかわからない作品が少なくない。

松園 春光 おとなしい娘が黙って座っているところに、蝶。

松園 春日長 ☆ 左に舞う美人、右幅にはそれを眺める美人。

浅井忠 漁村の少女 ☆ おとなしそうな二人の少女。ここで大人になるのだ。

伊藤快彦 大奥女中 白地に綺麗な繍をした打ち掛けを着た、おすべらかしの美人。

快彦の二枚の少女図はいずれも同じ少女。どちらも初見。

鹿子木孟郎 新夫人 椅子に凭れる和装の女。向かいの近美の回顧展で見たのが最初だった。

イメージ (40)

第二章 モダン美人画と生活する美人画
知る作品が多数。嬉しい再会。

伊藤小坡 夏 ネグリジェで朝ぼんやりの図。

中村大三郎 ピアノ 真っ赤な着物の令嬢が演奏。最初に見たのは新聞でだった。

菊池隆志 爽夏 ☆ 長い髪を背に流した若い女性が横を向いて、やや難しい表情で上にいる小鳥を見る。
彼女は貝殻柄の着物を着ている。これを見ていると、どうも父の契月がモデルにした「息子の嫁」と同じ人ではないかと思う。父の絵より隆志の絵の方が女はきつい目をしている。

三谷十糸子 独楽 ☆ ちりちりちりちりした編み方のセーターに細プリーツのスカートに黒いハットの娘がぺたんと座って独楽の動きを目を細めて眺めている。
そんな情景を描く。

勝田哲 朝 好きな絵。モダンライフを楽しむ女が寝そべりながらレコードを聴く。クッション、レース、カーテン。自室に好きなものを集めているのだ。戦前の優雅な都市生活者の姿がある。

菊池隆志 少憩 ☆ イスに座る女は全身をグレーでコーディネートしている。帽子も上着もロングスカートも、少しずつ色の違うグレー。たいへんシックでかっこいい。
若くないところがまた素敵だ。

丹羽阿樹子 遠矢 これは去年だったか世に出て、それですっかり京都市美術館の人気ものになった。ワンピースの若い女がどこかへ向かって弓を放つ。たんぽぽの咲いたフィールドで。

北沢映月 娘 ひな祭りの姉妹。有平糖を前にして、おめかしした様子が可愛い。

紫明 九月 泳ぎに行って日焼けが激しい二人の芸者が、熱心に白塗りしているところ。
あんまり日焼けしたら白粉ものらないのだが、ついつい焼いてしまったのだ。こういうのを見ると上村一夫「凍鶴」のエピソードを思い出す。

丹羽阿樹子 奏楽 ☆ 二人の娘がバイオリン演奏。左は群青に金の着物、帯は更紗。右は派手な柄の着物に絞りの帯。二人ともふんわりパーマをかけている。
こういう絵が世にもっともっと出てくることを待っている。

橋本明治 浄心 大仏前にたたずむ三人の女。戦前の明治の絵は後の太線とは違い、存外線が細く、優雅。

秋野不矩 紅裳 これは過去の回顧展でもチケットによく使われる。五人の女それぞれが紅色の着物を着てテーブルについている姿。

由里本景子 望遠鏡 ☆ カラフルな着物を着た三人の若い女たちが望遠鏡をのぞいたりして楽しそう。
座るイスは機能的でかっこいい。
イメージ (38) イメージ (39)


西綾女 襟巻きの女(自画像) ☆ 黒いショール、黒い手袋。顎をショールに埋める。美人ではないし特にいい女というわけでもないのだが、戦前のある時期にしかいない女か、もしくは戦後のパリに現れたような女。そんな風に見える。

堂本印象 婦女 戦後の模索していた時代に描かれた、かっこいい女たち。

千種掃雲 蓮池 この絵を最初にみたのはもう20年くらい前か。母子の小舟。蓮を集める。

掃雲 めざめ ☆ 四条か五条手前あたりの店の二階でムクリと起きあがる女。まだぼーっとしている。窓の外には床を出した店の並び。

栖鳳 日稼 下絵と版画が並ぶ。これは先日の近代美術館での回顧展に本絵は所在不明とか出ていたのではなかったかな。ちょっと忘れたが。ただ、わたしはここでこの下絵などを見ていたので、あの回顧展にも「おお」と思っただけだったのだが。場所はお東さん。

梶原緋佐子の大正期の作品はいずれも社会的リアリズム絵画と言うべきもので「美人画」の範疇に入れるなら、そもそも「美人画」とはなにかということを考えなくてはならなくなる。
暮れ行く停車場、古着市、女芸人。
浮かれてモダンライフなどというてはいけない気がしてつらくなる。

菊池契月 早苗 手に苗を持つ働く農婦。白さの目立つ絵。

佐藤光華 大原の人 ☆ 砧をとんとん打つ女。謡曲の手ぬぐいをかぶる。

石島良則 供饌 ☆ 「北白川」の文字を白抜きした手ぬぐいをかぶる女たち。幼女もいる。彼女らは「白川女」だろう。

丹羽阿樹子 精霊の花 ☆ 手に手に蓮を持つ女たち。彼女らは白川女のような感じがするが、ちょっとわからない。

田代正子 戦捷たより ☆ 丸い火鉢を間に二人の女がいる。綺麗な羽織を着ていた。

服部喜三 灯火管制 ミシンを踏む女学生。
わたしはこの絵と小磯良平「斉唱」とがどうしても1セットになるのだった。

第三章 少女礼賛 
ここはおおかたが初めて見るものばかりだった。

翠嶂 槿花 黄色い着物を着た、眉の濃い少女がしゃがんで花の中にいる。

まつ本武雄 少女の図 ☆ 一洋の息子かと思う。青を背に座す少女。花飾りの薬玉がある。なにかの節句なのだろうか。

十糸子 少女 ☆ 文楽の主人公のような男をモチーフにした紙人形をこしらえる。リアルな顔立ちの少女。

若松緑 少女 ☆ 面白い柄のブラウスを着たモダンな少女。

契月 少女 息子の嫁をモデルにしたもの。貝殻柄の着物を着た少女。のんびりと座る少女。

丹羽阿樹子 セーラー服の三人 ☆ チラシ表。本当にこういう絵がどんどん表に出てくるのはよいことだ。一人が持ってるセカンドポーチ、いい感じ。

十糸子 月の暈 ☆ 三人の少女がいずれも青白くて、宇宙人のようだ。笹飾りがあるので七夕らしいが、なにやらそのまま宇宙の彼方へ向かいそう。

十糸子 春来る(春想) ☆ 山吹色の着物。きれいな色。長いおさげの少女が後ろ手にスミレを持つ。抒情的。

澤部清五郎 絵をかく少女 ☆ うつむいて絵を描く少女のその襟のすごさ。なんだかすごすぎる。

松村綾子 夏庭 ☆ 左側に立つ少女より、右側でしゃがむ着物少女がかなり美人。


第四章 悪魔的肉体か菩薩的肉体か 男性作家の視座
「肉体の発見」というコーナーではすべて既出作品だった。

恒富 浴後 ぼや~とした感じがいかにも明治末の恒富の女。

楠音 青衣の女 両手を重ねてペタンと座る女。肉の充実感が伝わる。

荻邨 太夫 この時代にはこういう絵も描いていたのだ。

里見勝蔵 女 あ゛―っナマナマしい。

太夫と舞妓を描いたものが集まる。
挽花 海近き町の舞妓 青地に気の利かなそうな若い女が二人ぼうっと座っている。洗練されることのない娘たち。

一洋 餞春 ☆ やまと絵を再興させた一人である一洋らしい絵。優美。

板倉星光 春雨 どこかの料亭の中庭の池を見下ろす舞妓。枝垂桜が咲いている。池には鯉もいる。次のお客のところへ行くまでのひと時。

楠音 舞妓 小さい絵で、端正。

林司馬 舞妓 ぽーっとした舞妓が緋毛氈の床几に座る。萩の花が咲く。
私は最初にこの絵をみたとき、てっきり旧幕時代のものかと思ったのだった。

麦僊 歌妓図(未完) ☆ 線しか残っていない。妓生。

小松均 舞妓 ☆ 文楽人形を片岡球子風に描いたらこうなる、みたいな。

・歴史の中の女性像

神坂雪佳 小督 静かな、風情のあるよい絵。

木村斯光 傾く日差し ☆ 萩の咲くころ、桃山風の女たちが布を織ったりして働く様子。

一洋 鵺 これは小舟に三人の女が乗る図で、女たちそれぞれに暗喩が。
こういうものは古典的な教養が必要なので、今ではやはり難しいのかもしれない。

植中直齋 堀川夜襲 眉の濃い静御前が立ち働く様子。

・母と子
秦テルヲ 母子 仏母のようなほほえみ。
向井久万 男児生まる 出産するところ
広田多津 母子 赤ん坊のくりくりした目が可愛い。

第五章 忘れえぬ異国の人
知る絵は少なく、ほぼすべてが所見だった。

太田喜二郎 バルコンの女 ☆ 白人女のかっこよさがある。

澤部清五郎 戸の前に ☆ かっこいいなあ。これは白人かな。ちょっと虚脱したような顔つきだが、センスもいいし素敵。

黒田重太郎 渚に座せる女 胸がこぼれている女。数年前に回顧展で見て以来親しみがわいた。

霜鳥之彦 黒い帽子の女 ☆ これもかっこいい。どこかアンニュイで、物憂げな感じがいい。

川端弥之助 ウクライナの女 ☆ 民族衣装を着た女。ロシアとは違いますよな。

山田新一 読後 ☆ 白人女がにやっとしている。机による女。白い毛皮で首元を飾る。指輪。薔薇の花瓶、なんだかかっこいい。
「サハラ」の薔薇のスージーを思い出した。

麦僊 平牀(下絵) 妓生シリーズ。

森守明 搗麦 ☆ 朝鮮の女三人が懸命に働く様子。

不二木阿古 夏の日 南京路か四馬路か虹口か、大陸のどこかの都市で馬車に乗り込もうとするチャイナドレスの美人たち。

ああ、このあたりまでは非常に好きな世界だった。
申し訳ないが第六章はかけない。パス。

5/11まで。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア