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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

魅惑のニッポン木版画 大正から現代へ / 川上澄生展

さて続いては大正から現代へ向かう木版画の感想について。

第二章 大正から昭和 木版画の復活
自刻自摺の作品が多く集まっていた。

石井柏亭 木場 セピア色というのがかっこいい。それだけでノスタルジーを感じる。

戸張孤雁 玉乗り これもしばしば世に出る名作で1910年代の代表作の一かと思う。
最初に見たのは愛知県美術館での回顧展だったが、今もずっと目に残っている。

織田一磨 裸女5姿より前姿、後姿 どちらもさらっと体の線を描く。一方で布の精密さにも感心する。

恩地孝四郎 ダイビング これはまた大胆な構図。すごくモダン。スク水の女の人のダイビング。その下に広がる空には雲。日焼けした肌と日焼けしたような空。

長谷川潔 踊り「仮面」1914年新年号表紙 黒人ぽいような人間のモダンダンス。

長谷川の表紙絵のうち「水甕」のものが特にいい。分割が巧く、そしてその分割されたものと融合したものとが同居したりもする。

長谷川潔 風(イェーツの詩に寄す) これは京都国立近代美術館で最初に見た長谷川作品だった。長谷川潔再発見は京近美から始まると言うが、後年のマニエール・ノワールという技法を確立する前の木版画作品に魅力を感じた。
わたしは何も知らずにこの絵葉書を買い、特に気に入ったファイルの中に閉じている。

長谷川潔 ギメ美術館での杵屋佐吉演奏会プログラム 1926年に開催されたコンサートか。既に精密な世界が広がっている。大正末年にパリで杵屋の三味線が披露されたのか。
佐吉はポール・クローデルの詩に曲をつけてもいるというから、大変先取の気風を持った作曲家・演奏家だったのだ。
ラヴェルとも交流していたというから、最先端のパリの音楽を聴くことも出来たのだ。
長谷川は既にパリ在住だった。かれもまたパリで長唄三味線を聴いていたのか。

永瀬義郎 サロメ「仮面」挿絵 肉付きの良いサロメである。彼女はヨカナンの首を自分の胸に押し当てている。自分を拒否した男を生首にして、その死んだ唇に自分の胸を押し当てている。

川西英 温室 温室がある。モノクロだが光の差し込みがよくわかる。
色がとてもきれいで魅力的。

川上澄生の作品が出てきた。
ここで既に終了したが吉祥寺で見た川上展についても少しばかり書き加えたい。
「愉しきノスタルジア」と題され、鹿沼市立川上澄生美術館からの巡回だった。
カピタン、南蛮料理、聖母子など南蛮文化の象徴ともいえるものを描いたものが集められているが、いずれもあこがれがみちていて、ふんわり暖かい。
イメージ (3)

南蛮ぶり 黄色い画面にベッドがあって、そこにキセルでたばこを吸う男と女がいる。川上の快心の一作らしい。

マドンナとジュグラー これは聖母の前でジャグリングをして見せるひとのすがた。

もう一本の柱が明治なる時代そのものである。
文明開化を川上は描く。

ランプへの愛着がはなはだしい。それだけを描く作品が多々ある。
確かに明治になって庶民の生活にランプが取り入れられたことで、大いに時代が変わった。
清方は「こしかたの記」で文を綴り、「朝夕安居」でランプのホヤを磨くおかみさんを描いた。
一ノ関圭の幻の作品集は「ランプの下で」だったか。

明治になってから庶民の手元に入るものばかりが集められている。
とても微笑ましい。

牛肉店 まるで御殿のようだ。これはいろは牛鍋店だろうか。木村荘八の父の。
などと想像するのも楽しい。

百貨店の内部 あこがれるなあ。人があふれ、シャンデリアがきらめく。
とてもすてきだ。イメージ (2)

横浜海岸の図 これは1923年の8月に作られたもので、初代のグランドホテルが描かれている。翌9月1日関東大震災によりグランドホテルは倒壊。
赤くて素敵なホテルは今の白いホテルに変わったのだ。
そういう意味ではこの一枚は時代風俗を知る貴重なものとなっている。

ほかにオリジナル千代紙、こけしなどを残している。
吉祥寺での展覧会は5/11までだった。

さて再び横浜美術館。

日本に来た外国人たちによる作品が並ぶ。
非常に懐かしい。それらは初めて横浜美術館を知ったころに手に入れたチラシなどで見たひとびとだからだ。

ヘレン・ハイド 亀戸天神の太鼓橋 わいわいにぎやか。小さい女の子がいい。
彼女は母子図なども大変よく、優しい絵をいくつか前にも見ている。

バーサ・ラム 雪の玉 北欧の絵本を思い出させる画風でとても優しい。子供らが楽しそうに遊ぶ。「蘭夢」とサインを入れるほどの人。

エミール・オルリック 版画に携わる人々を描いた三部作が出ている。
日本の摺り師、日本の絵師、日本の彫師。
そういえばオルリックには日本の手品師という作品もあった。
彼にとって日本の職業人には不思議な人が多かったのだろうか。

ポール・ジャクレー この人ほど日本を、アジアを愛した版画家は他にはいないのではないか。かれは「若礼」と名乗り、戦時中は軽井沢に引っこみ、日本を出ようとはしなかった。日本人の友人知人もかれをかばい、戦中戦後の困難な時期も彼の作品の頒布会などを開いてよく助けたそうだ。

チャモロの女 赤バージョンと青バージョンがある。どちらもきれいな彩色。

オロール島の少年、東カロリン諸島 これは二人の少年が寄り添って座り、こちらを振り向いている図で、どちらも黄金色の目をしている。
少年へ向かう愛情がひしひしと感じられる。

さて自刻自摺ではなく江戸時代のように専門の職人らに彫ってもらい、摺ってもらうのを選んだ絵師たちの作品をみる。
非常に繊細な表現が可能になった、美麗な作品ばかりである。

吉田博 タージマハルの朝霧、夜 連作のうちから二枚が出ている。
配色を変えただけで時間が変わり雰囲気がすっかり違って見えて、とても面白い。吉田はそうした作品が多い。
かれは漱石の「三四郎」にも少しばかり現れる画家で、洋画もいいのがあるが、やっぱり版画が素晴らしい。

橋口五葉 化粧の女、浴後の女、髪梳る女 三点の人気作が出ていた。
五葉は、版画はよく・洋画もよく・商業イラストもよく・挿絵・口絵・装幀もよく、といった才人だったが惜しくも若死にしている。

深水の美人画版画、石川寅治の裸婦連作、山村耕花の風俗画。
そのあたりの名品も並んでいて、見ていて楽しいばかりだった。

夢二は千代紙や絵封筒が選ばれていた。
このあたりのセンスの良さは今も輝いている。
夢二、谷崎らを主人公にした、上村一夫「菊坂ホテル」の作中でも、芥川が夢二のイラストセンスを誉め、谷崎も美人画はどうでもその意見には賛成だというようなやりとりがあったりする。

弥生美術館併設の夢二美術館でなじみの千代紙たちがたくさん出ていて、それだけでも嬉しい。


第三章 1950年代以降 国際的な舞台へ
第四章 現代 新たな木版画の表現へ

清宮彬、畦地梅太郎、斉藤清らの作品がある。このあたりはみていても楽しいのだが、どうも正直面白いものが少なくなる。
棟方志功の特殊さも好きだが、今回は一点のみ。

現代の人では吉田千鶴子がいい。吉田博の一族の人。
「谷間の蝶」などは素晴らしい。これは以前に三鷹で見て大好きになった作品。

柄澤齊の肖像画シリーズも少し出ていた。
この人も今後の追い続けたい作家。

5/25まで。総花的な展示だったが、とても楽しめる。
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