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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

二つの茶道具展 畠山記念館と湯木美術館

茶道具の名品展を二つばかり見た。
どちらも私立美術館でのいとしい展示である。
規模は決して大きくはないものの、どちらもその内容の深さは尋常ではない。

畠山記念館「茶道具の玉手箱 開館50周年記念 名品展」
湯木美術館「海を渡ってきた茶道具 名物記・茶会記に現れた唐物・南蛮・高麗」
この二つの展覧会である。
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茶道具の鑑賞というものは結局のところ、茶道具それ自体の魅力もさることながら、過去にどのような道をたどってきたか、誰がどのように愛したか、どのような場で使われたかといった、その来歴・その逸話をも含めて愛することなのではないか。鑑賞ではなく賞玩ということが本当なのではないか。
むしろそうした過去のない新しいものは、その魅力がまだ足りないということになる。
それは使う側・観る側だけでなく、茶道具そのものも修業中と言うことではないだろうか。
展覧会を見て、つくづくそう思い至った。

見た順から感想を挙げる。

畠山即翁は逸翁小林一三と同じ時代の茶人で、茶友としてたいへん仲良しだった。
二人の好みは少し違うものの、そうしたことを念頭に置いて茶道具を鑑賞すると、在りし日の茶会などがしのばれ、佳い心持になる。

わたしは展示中期に行ったので、軸物は元代の「出山釈迦図」、鎌倉時代の墨跡、そして
「清滝権現図」が出ていた。イメージ (12)

なかでも「清滝権現図」は絵葉書は手元にあるものの実物とは無縁なままで来ていたので、初めてまみえることになり、とても嬉しかった。
巨大な女神としての清滝権現が現れる。室内でのことで、その足元には小さい女がいる。
女を見おろす権現の目は優しい。
色彩もよく残り、美麗な絵である。

仁清の銹絵富士山香炉がある。富士山の形をしている。思えばこの形で煙を吐き出すというのは、「竹取物語」の終焉、帝が不二に不老不死の妙薬を捨てさせることを思い起こさせる。物語での富士は煙を吐いていたのだ…

金襴手六角瓢形花入 明代 形にゆがみのない、堂々たる六角瓢形。くびれた胴には金の花が咲いている。

割高台茶碗 朝鮮時代 この高台を裏から見ると見事な十字型になっている。なかなかこういうのも面白い。そういえば朝鮮半島におけるキリスト教の受容というものについては全く知らないので、いつか調べてみたい。

瀬戸面取茶入 銘・吸江 大型で口も大きいのでその名がついているらしい。ぼてっとした面白味がある。

内朱青海円盆 桃山時代 これは元は八幡名物。あの松花堂の愛したお道具なのか。
…こんな風にそのいにしえの夢を追うことが、茶道具を眺める楽しみなのだ。

黒樂茶碗 道入 ノンコウのこれはやや歪みを見せた形で、やはりキラキラしていた。
愛しくて頬ずりしたくなる。いや、茶碗だから指と唇とで愛すればよいのか。
ガラスの向こうの茶碗一つで、こんなにも妄想が広がる。

芦屋梅花文筒釜 室町時代 少し高めのところに梅花が散らばる。うるさくはなく、可愛さが目立つ。すっきりした筒型。

古赤絵刀馬人文鉢 明代 萬暦以前のもの。明代は文化の爛熟期であり、唐に次いで、宋と共に面白いものが多い。いずれも他民族により滅ぼされるのだが。

萬暦赤絵草花文向付 こちらはまた可愛らしい花柄である。

色絵絵替り土器皿 乾山 乾山ブランドの黒手の方。菊、山桜、芦、笹、梅。華やかでいいなあ。今も販売していれば集めたいと思う、そんな良さがある。

千家十職の塗師・中村宗哲(十世)の利休好み真塗り折敷があり、それに碗などが添えられているのがまた好ましい。
昭和になっても名人は活きていて、佳いものを拵えている。
守屋松亭の蒔絵ものがいい配置にある。
こちらの絵替り蒔絵煮物碗の絵は、中に金で片輪車、梅、木瓜などが描かれている。

青磁鎬鉢 南宋時代 これはまた色の濃淡の綺麗なこと。ここまで釉薬の濃淡の綺麗さを楽しめるのは嬉しい。

夜桜蒔絵四半硯箱 「あたら夜の月と花とをおなじくはあはれ知れらむ人に見せばや」の葦手文様入り。源信明。泰平の江戸の教養人は、平安の歌も室町の絵物語も鎌倉の仏像も、みんな斉しく味わえたのだなあ。

菊枝蒔絵手箱 鎌倉時代 ところどころに螺鈿のきらめき。柄もいい。ああ、ほしい。
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今鏡があった。わたしが見たときは「鳥羽」上皇の文字が出ていた。院政期は面白い。
いよいよ貴族の頽廃は色濃く武家の台頭も当然だと思わせてくれるし。

獅子牡丹図 岡本豊彦 コワモテだけど可愛い獅子が二匹。クンクンするのがいい。

老子出関図 伝・蘇漢臣 元代 牛に乗って西に行った老子。その白牛の目つきが面白い。老子がまた老人ではなく、アフロヘア―でしかもテンクルというスゴい髪型のおっちゃん。
とはいえ見送りにか、松下に美人が立ち、キスゲも咲いていたりする。
元のセンスは面白い。

6/15まで。


湯木美術館では後期を見ることになった。
前述したように茶道具の鑑賞の楽しみにはその「こしかた」を味わうことも含まれる。
過去を愛される美術品、というものはそうそうないのかもしれない。

砧青磁管耳花入 南宋~元 さすがに釉薬が濃い。管耳はまるでみづらのようにも見える。

唐物大海茶入 鴻池家伝来 南宋~元 これもまた口広で、そこから大海と言う。広がる造形を掌で押さえてみたくなる。海を手の中に閉じ込めたような心持がするかもしれない。

朱塗菱形盆 明~清 柔らかな菱形で花びらを寄り集めたようにも見える。枠が入っていた。朱は消えない。

禾目天目(建盞) 建窯製品の盞なのである。吉州窯のではなく。シャッシャッシャッとした禾目が綺麗に走り、高速撮影した星の動きを思わせる。

古銅桔梗口獅子耳花入(東山御物) 明代 これが非常な名品で、なるほど東山御物なのもよくわかる。来歴は主なところで以下のよう。
足利義政―武野紹鴎―利休―佐久間将監―小堀家。
思わずわたしも下手なイラストを描いてしまったくらい、魅力的な花入れだった。
芭蕉饕餮文が丸い胴周りに走る。そのすぐ上には獅子頭が二つ。口と底とは桔梗を象る。こまごまとしたところに繊細な文様が入る、たいへん優美で妖艶な花入である。
イメージ (13)-1

ところでこの所有者の一人に佐久間将監の名があるが、ここでは「大徳寺塔頭・寸松庵を開いた」と肩書があるが、この名前に記憶があるのでもしやと思えば、元祖・猫侍の佐久間将監だった。
先般松濤美術館でみた「ねこ猫ネコ」展で自身の肖像画に猫とともに登場する、あの猫狂いの武家である。なにやら思わぬところでバッタリ会ったような気がして面白かった。

砂張釣舟花入 東南アジア 15~16世紀 これはまた大きな造りである。チラシではその舟にいくつも他の道具を載せている。
関係ないが、今のわたしとしては「五色の舟」を思い出しもする。

南蛮芋頭水指 森川如春庵所持 明 「萬暦己丑年 源泉寶□」とある。□には石偏に灌のツクリで構成されたカンという字がはいる。石製の器の意味らしい。
萬暦で己丑は17年(1589)に当たるはず。ただ、これが本当にその年に作られたかどうかは別問題である。

唐物肩衝茶入 銘・富士山 遠州蔵帳・雲州蔵帳書斎、即翁所持 南宋~元 来歴は冬木家―不昧公―即翁というのが主なところ。不昧公による「富士山」の箱書きもある。
銅の中ほどやや上に景色が現れ、それを富士山に見立てている。
白極緞子、藤言切・漢東織留。鎌倉漢東の仕覆。いずれもハキハキしている。
「壺中ニ有天地 山ハ改ム舊時ノ容」…素敵。

南中国から東南アジアで作られ、日本で茶道具に「なった」ものたちを見る。

南蛮砂張二重青海水指 これの曳家には江西和尚の「磑下霏霏タル雪吹キ翻カエス富士峰」の言葉がある。ガイカ ヒヒたるユキ フキヒルガエス フジノミネ。

砂張合子建水 カンボジアあたりの碗らしい。見事にクリッとした碗で、托鉢に良いだろうとか、これはおりんにもいいだろうとか、そんなことを考えた。口べりは刳られた「樋口」になっている。ヒトサマの名字ですなあ。

独楽盆 これはまた可愛い独楽で、一番外周には梅鉢文がはいり、内側には草文。
東南アジアに梅は咲くのだろうか。

南蛮かめの蓋 大小あり、焙烙に使われたそうだ。茶褐色で赤く剥げているのが全体を地図のように見せている。とても面白い。

軸物をみる。
釈迦三尊十六善神像 鎌倉時代 右下の文殊菩薩は下がり眉にやや釣り目でニッと笑っている。他は色が見えにくいが、この白い顔だけははっきりと見える。

朝鮮王朝と明~清のものを見る。
雲鶴筒茶碗 褐色である。わたしは高麗のそれは好きなのだがなあ。

御本茶碗 高台をひっくり返すと@のような渦巻き型が見える。「ねじぬき」と呼ばれる形。

呉須有馬筆香合 出雲松平家伝来 小さな薄い呉須手の四角い香合の上にぴょこんと人形がいる。立つように見えず体操座りしているように思えた。可愛い。
有馬筆は有馬温泉の土産物。
今東光「悪名」でまだ若い頃の朝吉が有馬に身を隠した後、ほとぼりを覚まして八尾に帰ってきたとき、実家で親父に「有馬筆の作り方覚えましてん」とうそをつくシーンがある。
そんなもん、誰が信じるねんと思いながら読んでいたが、有馬筆は不昧公の頃には世に知られ、大正から昭和初期の頃にはまだ命脈を保っていたが、平成の今はもう本当に廃れてしまった。

交趾黄鴨香合 丸々して可愛い。両羽だけ茶褐色。あとは黄色。

南京赤絵四方鶴丸文茶器 鶴に雲の意匠。南鐐の火屋がついているが、こちらは9世中川浄益の作。
明治の頃、誰かが拵えさせたのだろう。そのことを想うの楽しい。

祥瑞蜜柑水指 縁が面白い。ヘンなリスが四匹ばかり蔓の中にいる。ネコにもネズミにも見えるリス。

6/29まで。

こうして二つの美術館で茶道具の楽しさを満喫した。
またどこかで数奇者のお道具を拝見したいと思っている。
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