FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

東京・ソウル・台北・長春 ―官展にみる― それぞれの近代美術

東京・ソウル・台北・長春 ―官展にみる― それぞれの近代美術
既に福岡アジア美術館、府中市美術館と開催を終え、今は兵庫県美術館でこの展覧会が開かれている。

三者のチラシを挙げる。
イメージ (3) イメージ (7) イメージタイトルも微妙に違う。

イメージ (2)

梅原龍三郎 長安街 1940 油彩・岩絵具、紙 東京国立近代美術館  北京を愛した梅原らしい豊かな風景。眼下に広がる大きなメインストリート。萬暦年間既に成立していたそうだ。ああ、いいものをみた。

小杉未醒 黄初平 1915 油彩、画布 小杉放菴記念日光美術館  中国の仙人の内この「黄初平」と「菊慈童」の二人が最も好きだ。まだ洋画家の時代の作品、羊と石を互換させる技を持った黄初平。明るい表情でその場にいる。

黒田清輝 赤小豆の簸分 1918 油彩、画布 ポーラ美術館  所蔵先のポーラの解説をみると、鎌倉・佐助ケ谷の別宅で描いたとか。奥には鎌倉独特の矢倉がある。少女が小豆の鞘と実とを振り分けてるところ。黒田のこうした実景に基づく絵には、優しさがあるように思う。冷徹な眼でなく温かなまなざし。

辻永 無花果畑 1912 油彩、画布 水戸市立博物館  近年になってから知った画家だが、やたらめったら山羊まみれで、それが面白くて仕方ない。
二年前の「渋谷ユートピア 1900-1945」展でもヤギヤギしていたし、イチジクもたくさん生っていたいたなあ。

竹内栖鳳 揚州城外 1922 着色、絹 静岡県立美術館  墨のぼかしが湿気を感じさせる。みずみずしさ。大気を描いているのだ。

川崎小虎 荒涼 1931 着色、絹 東京藝術大学  黄色い大地、水気のないところ、黒馬にもたれる女。索漠たるなにかが広がる。

土田麦僊 平牀 1933 着色、絹 京都市美術館  短い晩年には妓生にのめりこんだ麦僊。その前には舞妓だったな。白い麻や綿の感触が指先に感じられるようなところがある。

勝田蕉琴 仔牛 1939 着色、紙 福島県立美術館  ナマイキそうで可愛いね。 

松林桂月 春宵花影 1944 水墨・淡彩、紙 下関市立美術館  先般、練馬区立美術館で大きな回顧展があり、新たな喜びを観た人々に与えた画家。薄い彩色で春の宵の空気が表現されていて、とても心地よい。

児島善三郎 蓮花 1939 油彩、画布 福岡県立美術館  力強い!いい絵。

安井曾太郎 京城府 1936-38 油彩、画布 宇都宮美術館  この時代だからこその風景。妙に心がざわめく。
イメージ (28)

安井曾太郎 承徳喇嘛廟 1938 油彩、画布 愛知県美術館  いくつかある連作の一つ。
イメージ (31)-1
わたしは真正面を描いた永青文庫の絵に大きな衝撃を受けたものだ。
この方角からのラマ廟もとてもいい。安井が惹かれたのもわかる気がする、と言いたい。
つまり見るものに「ああ、ええなあ」という感興を起こさせる絵なのだった。

藤島武二 麻姑献壽 1937 油彩、画布 東京国立近代美術館  なかなかこの絵を観ないので嬉しい。
京劇の女形のような風情がある麻姑。
両把頭という髪型にしてから、その上に飾り物を載せて固定する。「大拉翅」というらしい。
清朝後期の宮廷などで流行ったもので、映画などでみる西太后のあれ。

イメージ (32) イメージ (31)

藤島武二 花籠 1913 油彩、画布 京都国立近代美術館  やはり武二は風景より「美人画」の方が魅力的だと思う。
「チャイナドレス」展の主役はやはり武二だと思うし、ここでも忘れがたい美人が多い。花籠を頭に載せた美女は何故その頬にまるで傷のような桃色の影が入るのか、そんなことを思いながら京都でいつも眺めている。

イメージ (8) イメージ (9)

ソウルから。
イメージ (33)キム・ギチャン「ある日」

チャン・ウソン(張遇聖) 帰牧 1935 着色、絹 韓国国立現代美術館  朴訥な少年と温順そうなオレンジ色の牛とがぽこぽこ歩く。丁寧な筆致で描き込まれている。
これを見て御舟「朝鮮の牛」を思い出した。あちらは黒牛だが。

ところで福岡アジア美ではチラシにこんな提案があった。
イメージ (6)
いいね、こういうのも楽しい。

高木背水 朝鮮風景 不詳 油彩、画布 佐賀県立美術館  温泉地を思い出した。なぜだろう。

コ・フィドン(高羲東) 程子冠をかぶる自画像 1915 油彩、画布 東京藝術大学大学美術館  伝統のスタイルで自画像。

キム・グァンホ(金觀鎬) 夕暮れ 1916 油彩、画布 東京藝術大学大学美術館  湖畔に立つ裸婦二人。泳いだ後の気持ちよさ。

イ・ジョンウ(李鐘禹) 人形がある静物 1927 油彩、画布 韓国国立現代美術館  何もかもが白の情景。白い花、白い人形、白のなにか。

イ・インソン(李仁星) カラー 1932 水彩、紙 韓国国立現代美術館  白い瓶に白いカラー、白いばら、白いミモザ。

イ・インソン(李仁星) 窓辺 1934 水彩、画布 リウム三星美術館  観葉植物、レースのテーブルかけ、クッション、日差しが差し込むその窓辺。朝鮮らしさとしてのゴムくつがあるが、最先端の様子を描いている。

チェ・グンベ(崔根培) 農楽 1942 着色、綿・韓国紙 金泰樹氏蔵  朝鮮の人は打楽器が大好きだとよくきくが、ここでもドガドガ演奏中。
サムルノリを思い出す。中上健次が愛した四物出遊。そういえば男寺党の支部が奈良にあるとか。

キム・ジュンヒョン(金重鉉) 巫女図 1941 油彩、合板・絹 韓国国立現代美術館  朝鮮の巫女さんというのはムーダンとよばれてたかな、神がかりするときジャンプして踵から着地することで神がおりやすくなるのだったかな。
皆が集まっている。鈴と扇をもった巫女が舞うところ。

イ・ウンノ(李應魯) 藤の木 1940年代初頭 着色、紙 高麗大学博物館  色調がたいへん静かでありながらも落ち着かず、ざらりとした感覚がある。奥の奥にある藤。

キム・ウンホ(金殷鎬)  看星 1927 着色、絹 リウム三星美術館  妓生が一人で花札遊び。たばこの灰皿、鳥籠、そんなものがこの女の暮らしぶりを見せているように思われる。
イメージ (31)-2

チャン・ウソン(張遇聖) 画室 1943 着色、紙 リウム三星美術館  奥さんはチマチョゴリを着ながらファッション雑誌を眺め、画家の亭主はぼんやりとどこかを見ている。視線の交わらない二人。政治的状況を考えなければただの倦怠期の二人に見えるが、ここには時代という背景がある。一言ではくくれないのだ。

イメージ (5)

台北。
イメージ (30)チェン・チェンボー「初秋」

石川欽一郎 裏町 1945以前 水彩、紙 台北市立美術館  レンガがいい。わびしさよりむしろしっとりしたものを感じさせる。

呂鐵州(リュ・ティエジョー) 鳥語 1935 着色、絹 国立台湾美術館  完全に日本画だな。同時代の日本の花鳥画そのまま。

吳梅嶺(ウー・メイリン) 庭園一隅 1935 着色、絹 嘉義県パフォーミングアーツセンター  チャイナドレスの女と幼い少女と。傍らの花の木がいい。
こうした作品にこそ、ある種のノスタルジーを感じてしまう。

陳進(チェン・ジン) アコーデオン 1935 着色、絹 台北市立美術館  兵庫県美のチラシ。このお姉さんは軽やかにアコーデオンを弾く。1960年代半ばまでアコーデオンは手近な楽器だったのだ。おしゃれをした美人のお姉さんが機嫌よく弾くのは何の曲だろうか。兵庫のチラシ。

陳進(チェン・ジン) サンティモン社の女 1936 着色、絹 福岡アジア美術館 
福岡のチラシ。浅黒い女たちの毅然とした美しさがいい。

蔡雲巖(ツァイ・ユンイエン) 僕の日 1943 着色、紙 国立台湾美術館   こどもの日。坊やが主役になって、色々お楽しみがある。タイ車ひいて可愛いなあ。

倪蔣懐(ニー・ジャンホワイ) 台北郊外 1930 水彩、紙 台北市立美術館  道はまだ舗装されていない。土の道の儘だった。

顔水龍(イエン・シュエイロン) モンスーリ公園 1931 油彩、画布 台北市立美術館  パリの風景である。濃い緑に惹かれる。

呂基正(リュ・ジージェン) 商品陳列窓 1934 油彩、画布 呂玟氏蔵  神戸元町の様子。佐伯風。この時代は元ブラという言葉もあり、とてもおしゃれだったのだ。手塚治虫「アドルフに告ぐ」にも神戸元町のおしゃれさが描かれている。

廖繼春(リャオ・ジーチュン) ヤシの木のある風景 1931 油彩、画布 台北市立美術館 全然違うのだが、西郷孤月の描いた台湾もヤシの木が描かれていた。彼の絵は淋しすぎる風景だったが、このヤシは違った。

イメージ (29)リン・ユイシャン「故園追憶」

李石樵(リー・シーチャオ) 編物 1935 油彩、画布 李石樵美術館  キスリング風な女が二人いる。

劉啓祥(リュウ・ジーシャン) 魚屋 1940 油彩、画布 台北市立美術館  6人の女たち。幻想的な情景。

郷原古統 台北名所図絵十二景 1920-25 着色、紙 台北市立美術館  山口晃の作風に似ている。面白かった。

イメージ (4)

長春

岡田三郎助 五族協和 1936 木炭、画布 佐賀県立美術館  スケッチ。偽の王国か…。安彦良和「虹色のトロッキー」は建国大学を描いていた。

矢崎千代二 ハルピン中央寺院 1938 水彩・鉛筆・色鉛筆、紙 横須賀美術館  ハルピンは非常にセンスの良い街だという。村上もとか「フイチン再見」でもハルピンの美しさが明瞭に描かれている。
ロシア正教会の寺院の美が目を引く。群を抜く高さの塔。
イメージ (30)-1

劉榮楓(リョウ・ロンフォン) 望郷 不詳 油彩、画布 一般社団法人国際善隣協会  ものすごーーーーーーーい夕日。黄金色。
結局この夕日に魅せられて大陸浪人になった人々もいるのだ。
檀一雄「夕日と拳銃」を改めて思い出す。

赤羽末吉 満洲の冬の街頭物売り 1950年代 着色、紙 ちひろ美術館  赤羽は帰国後、独学の日本画による絵本製作を始めた。モンゴルの伝説を基にした「スーホの白い馬」は世界的に知られた名品だが「大工と鬼六」「にげろやにげろ」「春の別れ」などは丹念な日本画の美を見せてくれる。
その赤羽の満州時代の絵、真っ青なのは温度の低さを示しているのだろうか。

甲斐巳八郎 少年 1950 着色、紙 中村菊人氏蔵  モンゴルの少年たち。

なお最後に官展の当時の図録が展示されていた。
非常に魅力的な作品が集まっていた。もう二度とこうした企画展はないかもしれない。素晴らしかった。
そして2014年の現在に、この展覧会が開催されたことの意義と意味とを深く考えている。

イメージ (10) いずれもが美しく、そして真摯な絵である。

7/21まで。
関連記事
スポンサーサイト



最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア