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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

お話し美術館 ストーリーの場面を描く

逸翁美術館の夏期展「お話し美術館 ストーリーの場面を描く」を見に行った。
チラシは蕪村の「牛若丸画賛」
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ここではごらんのようにこんな会話の主従だが、本画は「雪月花 つゐに三世の契りかな」
夫婦は二世、主従は三世のお約束。

左上の異形のものは「是害坊絵詞」の中国の天狗。
展覧会はここから始まる。

1.古典を楽しむ

奈良絵本 是害坊絵詞 曼殊院系の詞とあるが、あいにく読みとれない。
ここに挙げる絵は一巻の術比べする是害坊の姿。
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今回わたしが見たのは、日本の坊さんに敗れて大けがをし、お風呂に入れてもらうシーン。
布に乗せられて寺院の浴室に。もうどう見てもただのおっさん。花頭窓のある浴室はなかなか広く、外では天狗仲間が懸命に湯を沸かすが、生木の柴なのでなかなか火が回らない。水くみもたいへん。右手では別な天狗仲間が薬を拵えていて、薬湯を天目茶碗に入れて浴室へ向かう。
みんな結構文句を言いながらも丁寧に扱うてやる。
わりと是害坊の話は好きでこれまでにもいくつか見てきたが、この絵巻もいい。

白描源氏物語絵巻 墨絵 3つのシーンが出ていた。錯簡が多いそうだ。
図は「宿木」。全体に薄墨の微妙な濃淡が上品。雅楽の支度がされている。
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「椎本」 山寺の阿闍梨から炭や綿衣などが届く。
しっとりした作風。

加茂祭絵巻 残欠 斎宮の後に続く「命婦」の一行と、それを枠外から眺める人々。
今なら観覧席として区分けされているか。

熊野詣絵巻 残欠 山伏等が円座で待機中。お堂からそちらへ高盛りのごはんを運ぶ人々と、そのご飯を恵んでくれと施しをねだる連中と。ムシロを着た賤民。
全部を見てみたい。

西行物語絵巻 残欠 待賢門院璋子への叶わぬ恋心、その璋子から紅衣を賜るところ。御簾ごしに二人。

伝・海田妥女の絵もある。これはもう何十年後かの様子で、久しぶりに再会した娘のために牛車から御簾までの間にも屏風を立て回して気を遣うている図。

めでたい「文正草子」三種が並ぶ。
今や長者となった文正の家を訪れて楽器演奏する中将と、それを御簾越しに見ていた姉妹の姉姫との「出会い」シーン。
各自の描写の違いを楽しむ。
奈良絵本二つでは琵琶演奏の貴公子だが、墨絵では琴を弾いていた。近所の庶民も聴きに来ている模様。
この「文正草子」はめでたいお話なので、とても愛されていたようで、数多く制作されている。

大判旅人愛酒図 田中訥言 畳の上でのんべえなのが機嫌よくくつろぐ。侍女は小さく描かれている。
絵の上部には三枚の和歌色紙も。

ぬき川催馬楽画賛 呉春 機嫌のよい舎人風の男、手には銭を一くくりにしたのを持っている。

鉢かつぎ姫画賛 坪内逍遥 1925年 若君が鉢かつぎをおんぶして川を渡る図。伊勢物語の「芥川」を彷彿とさせる歌問答も二人に交わされる。若君は烏帽子などもかぶらず、髷をさらしている。描き眉がはっきりと見えるが、目鼻はわからない。

1907年、自宅劇場開きで四人の子供が余興に演じてみせたのが好評で、それから新劇への道が開いたそうだ。

白描枕草子絵巻 松岡映丘 14世紀初めの絵詞を原本にしたもの。二条帝が石清水に行幸され、帰るシーン。非常に細かい描写。
映丘はこうした旧い世の絵巻を模写することでその世界の空気を自分の中に取り込んでいた。

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2.武士が主役

奈良絵本 武家繁昌絵巻 綺麗な奈良絵本。古代からの武士の戦うシーンをチョイスした絵巻で、装束は平安時代くらいで統一。
・腕のたくさんある土蜘蛛と戦う神武とその一行。
・下照姫に夢中になり、高天原に帰らない天稚彦の様子を見に来た雉。チクられるとまずいので雉を今しも射ようとする天稚彦とそのそばに座る下照姫。

源満仲像 松村景文 静かに扇を広げて赤衣で座す姿。
顔立ちも穏やかで豊かで、とてもいい感じ。
そもそも住吉明神から「矢を射って、その落ちたところに城を建てよ」とご託宣が下る。
今の川西市多田の「九頭の竜」に矢が当たり、そこを地とする。矢を見つけた孫八郎には「三ツ矢」姓が与えられ、ここからの平野鉱泉からの炭酸水で「三ツ矢サイダー」というのが何百年後かに生まれた。

後三年合戦絵巻 模本 1760年 東博本が原本。フルカラーと白描と色指定、それから血しぶきだけ彩色されたもの・・・

呉春にも牛若丸がある。
鞍馬の大天狗が背を向けて座るところへそっと牛若丸が来る図。蕪村のそれと並んでいると、師弟の協同もののようにも思われる。

ほかに源琦の義家図、芳園の宇治川戦陣図対幅、容斎の忠度図、西鶴の鉢の木図、勿来の関などがある。

桃太郎図扇子 鳥居清忠 桃太郎のアップと、犬張り子、はじき猿、雉の郷土玩具の絵がある扇子。

露殿物語絵巻 天下の孤本。これは随分前に当時あったナビオ阪急美術館でも展示されている。
また逸翁でもかなりの部分を展示されたこともあった。
えーかげんな露殿という青年の恋愛遍歴物語。吉原の太夫あづまと仲良くしていたが、あづまが行方不明になり、それを探して江戸から京へ上る。京では天下の名妓・吉野太夫とも恋仲になり、途中また様々なもつれがある。
ようやくあづまと再会したが、吉野もいて、東西二大美女の間でとうとう遁世してしまう。
情けない。

チラシは女を捜す露殿を異時同時図で描く。
わたしが見たのは露殿があづまの部屋で同キンするところ。一つのフスマにくるまって、今から仲良くするらしい。
次は三河の八橋で故事に倣うか露殿も一休みして、大きな花菖蒲を眺めている。絵はやや雑い。


3.舞台の名場面

禁中御所舞楽絵巻 「御池庭」にかかる橋をわたる赤と緑の装束の二組の楽人たち。
舞楽自体は大きく描かれている。
太平楽、古鳥蘇、蘭陵王。
かっこいい。

能「江口」画賛 呉春 能舞台を描く。呉春らしさを隠したような能の絵。シーンとしている。

大石良雄図 源琦 師匠の応挙のそれの写しだが、こちらの方が抑制が利いている。お軽の着物には小さい小さい蝶々がたくさん飛ぶ。静かな良さがある。

歌舞伎十八番「暫」をモチーフにした絵が二つ。
豊国と南畝のはくっきりした隈取の顔を見せる「暫」。
五世団十郎の画賛はさらりと描かれているが、袖に大きく三升が描かれている。

鳥辺山図 池田輝方・蕉園 岡本綺堂の「鳥辺山心中」の対幅。
右は初々しさの引き立つお染。「清き乙女と恋をして」というのが実感としてにじむ。駕籠から出たか、立ち姿がいい。
薄桃色地にカラフルな丸い松並木の着物。ただ、赤に藍色の取り合わせのハコセコのようなのを胸元に入れているが、それはどう見てもMIKI HOUSEですな。

左は輝方。武士の半九郎はお染を水揚げしてからずっと通い詰めて、もうどうにもならなくなったところへ人殺しまでしてしまい、ついに二人で心中しようと言うところ。
芝居でもここでわたしはついつい微笑んでしまうのだが、折角拵えた二人の晴着を無駄にしたくないからと着直して、死出の旅路に出るという設定がいい。

こちらに背を向ける半九郎は黒綸子の着物、彼に向き合うお染はもうすっかり妖艶な女になって、濃紫に千鳥柄の着物。薄桃色はもう似合わなくなっている。
ここまでいい女にしたのをもう手放せないのはわかるし、女の方も嫌な客を取りたくないのもわかる。
心中ものの中でもこの作品は、まだわたしは納得できるのだった。


4.年中行事を描く

年中行事句画賛巻 呉春 一ヶ月に一句というわけではなく、いい句があれば二句三句と並ぶ。
芭蕉、其角、鬼貫らの句が選ばれて、それに沿う絵が並ぶ。
たとえば・・・
下帯一つでちょんまげもないおっさんの絵。
夏は又 冬がましじゃと 言いにけり 鬼貫
夕涼み よくぞ男に生まれけり 其角
あのドタマ 張ったったらば さぞや気持ちも 七恵
(三句めは今の今、ウチが拵えたものです)

梶の葉に文字を書きつづる女の横顔には七夕の句、のんびり家でくつろぐひともいる。

初雪や 内にいそうな人は誰 其角
・・・けっこうナマナマしくリアルなんは浪速の俳人やからか?

節分図 呉春 人妻に惚れたばかりに鬼のお宝を強奪される鬼の話を描く。
右に髪を布で包んだ女、中に巨大な升に入る豆、左に飛んで逃げてゆく鬼。

端午幟図 芦雪 熊と金太郎の取り合わせを「熊金」と言うて江戸時代の人は喜んでいたらしい。
薄墨と淡彩でさらさらっと二人を描く。
無邪気な熊に肩車される真っ赤な金太郎。仲良しなのがよくわかる。可愛いなあ。


5.江戸時代の絵入り本

絵本拾遺信長記 秋里リ島/丹羽桃渓・多賀如圭  名所案内で有名なリ山の著書。叡山焼き討ち図。

絵本太閤記 武内確斎/岡田玉山  三木を兵糧責めで落城させた秀吉。城主や奥方等の様子がこわい・・・・


椿説弓張月 馬琴・北斎 大人気リーズの一つ。
山中で大蟒蛇が狙うのを知らせようと、一味に加わった狼の山雄が吠えまくり、真意を理解できない仲間に斬られても、その首は飛んで大蟒蛇に喰らいつくシーン。
大迫力。

絵本徒然草 西川祐信の絵による本 雨の日でもきちんと綺麗にする女の良さを説いているところ。
川△男爵家寄贈のはんこがある。

やっぱり文芸性のある絵を見るのはとても楽しい。
ただ、この続きを見たいという気にさせられて、しかし叶わないので、それだけはせつないか。

9/15まで。

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