美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

月を愛でる

逸翁美術館で「月を愛でる うつろいと輝きの美」展をみて、揺蕩うていた。

イメージ (19)

一見したところ「月の沙漠」のようだが、純然たる和の世界を表現した蒔絵ものである。

ここでわたしは「月の繭」の曲を思い出す。

月への偏愛を持つ人も少なくない。
月を詠う人も多くいた。
ここではその人々の心をカタチにした工芸品が主に展示されている。

以前の雅俗山荘時代は邸宅美術館だったから、それだけで優雅さがあったが今の逸翁はそうではない。
しかし、だからこその演出がある。
入り口や曲がり口にススキの群れを配し、見立て武蔵野に調える。
そして周囲の月をモチーフにした作品を際立たせる。

最初に現れるのは佐竹本の藤原高光さん。
お久しぶり~♪根津でお仲間にお会いしましたよ~
などとひとりごちながら眺め、そこからはやはり和歌の切を見る。 

月を歌う。
さまざまな歌人たちの想いを追う。
これは「うた・ものがたりのデザイン」展でも同じ鑑賞態度。

光悦の綺麗な色紙もいいが、南畆の和歌に目が惹かれた。蜀山人の和歌。

与謝蕪村 渡月橋画賛 さらりとよろしい。

与謝蕪村 晩秋遊鹿図屏風 モノクロ画像しかないが、鹿の背の鹿の子が可愛いのだ。

応挙 嵐山春暁図 周囲の桜もまだ眠り、水面に映る月も揺らぐ。

芦引絵 室町時代の稚児と僧の恋物語。若君が月を見上げ物思いにふける。とうとう屋敷を抜けて恋しい僧のもとへ向かおうと家出する。その姿を見るのは月だけか。

奈良絵本の「伊勢物語」「徒然草」もある。どちらも月に関する情景・思いを描いた場面。
広沢池から月を眺める「十二か月草紙」もあった。

呉春は月見を楽しむ高士を、砧を打つ婦人を描いている。
わびしさと静かな楽しみ、しみじみしたものが心に流れてくる。

猿猴月を捉る。
手に届かぬ月を捕ろうと懸命な猿の絵もある。丸顔の中国のお猿さん。

月下兎図も人気がある。
波の上を走れば謡曲「竹生島」、丘の上で木賊と一緒に描かれることも多い。
蒔絵師・永田友治は見返り兎を描いた。

素敵な蒔絵の硯箱があった。
水滴が三日月形。青貝で二見浦を表す。そして箱には「玉匣」と書かれていた。とても惹かれた。

道八の武蔵野茶碗もいい。色絵とはいえシックなものでそこに芒がさらさらと描かれている。

月兎をモチーフにした透かしの簪もあった。可愛い。

琵琶が二体あった。
平安時代の銘「箕面」と江戸初期の「嘯月」である。
前者は撥面に満月と滝と鹿を描き、後者は月をはめ込んでいる。
どちらも魅力的な装いだった。

一体どんな曲を奏でるのだろう。

他にも月に関わる多くの作品が出ていた。
何を見てもどれを見てもいいココロモチになった。

見に行ったその日。たまたまある催しが開催されていた。
池田市は近年、11月初めの文化の日を中心に「池田文化day」を開催し、シールラリーをしている。
その用紙を見せてラリー参加者だとなれば、有料入場施設が無料になり、更に全制覇でなにやらプレゼントがもらえるそうな。
あいにくわたしはそこまでたどりつけなかった。
この逸翁美術館「月を愛でる」展に長居して、たゆたうていたのだ。
そしていいココロモチの儘、月が出るころに池田を出たのだった。
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