美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

東山御物の美

三井記念美術館で『東山御物の美』展が開催されている。
なにしろ貴重な作品だし数も多いし、ということで頻繁に絵画が展示替えされる。
全部をコンプできる人がうらやましいが、まぁわたしはわたしで観れたものだけ喜んで感想を書いておこうと思っている。
7週の内の5週めを見た。禅の祖師絵とかが出ている。

東山御物とは何か、というのはちょっと調べたらわかることなのでここでは書かない。
一言でいうと室町幕府8代将軍足利義政の所蔵品を指す。
室町時代だから水墨画や中国のよいのが入ってきていた時代である。
義政は政治的にもお人柄にも大いに問題あり(本人談)だが、美意識だけは素晴らしかったようで、日本の美のスタンダードの一つを作ったのだ。
それは凄いことだ。
彼の後、千利休が現れるまで、そんな人は出てこなかった。
尤も、子供向けの美ではなく、ある程度の歳を経ないとその味わいがわからないということもある。

個人の美意識が時代を作る。
何百年後の人々にも強い影響力を及ぼす。
応仁の乱を引き起こし、京の町を灰燼に帰させた。
京都人に「前の戦争で焼けてもて」といわせる元を作った人である。
(実際のところは幕末のトラブルで焼けたのが多い)

さて見たものの感想を挙げてゆこう。
古人の愛したものを現代のわたしが勝手なミソをつけたり、偏愛したりする。
ご本人に聞かれたらどんな顔をするか。
そういうことを考えるのも古美術鑑賞の楽しみの一つなのだった。

茶の湯の名品から展示が始まる。
来歴を見るだけでも面白いし、そこに逸話が加わると最高である。

建盞 南宋時代・12 〜 13世紀 林原美術館  中の綺麗さは油滴に近い。掌の中の宇宙をみつめる感じがする。

青磁中蕪花瓶 銘吉野山 南宋時代・13世紀  鼓型で中に蕪が詰まってます的な形。上部の方が広いか。ああ、綺麗な色。ややオリーブがかっていて…

松鶴蒔絵香箱 室町時代・15世紀   小さくてもきちんと文様が刻まれている。

青磁輪花茶碗 銘馬蝗絆 南宋時代・13世紀 東京国立博物館  おお、来ていたね、やはり。この明るい青さがいい。

灰被天目 銘夕陽 元〜明時代・14 〜 15世紀  「夕陽」と名付けた人の気持ち、わかるな。金色にところどころ光るのが夕陽のありさまだもの。ああ、綺麗なー。
黒いところはもう完全な夕焼けから薄闇が広がってきた時間帯を思わせる。
そのうち残照となり、やがては闇に包まれる…

唐物小丸壺茶入 南宋時代・13世紀 京都・慈照寺  これまたほんまに小さい。小みかんくらいのサイズ。ここに茶を入れるというのはその都度ごとのことにしても、ごく少人数用でないと難しいでしょう。

展示室2の目玉さんのもとへ。

油滴天目 南宋時代・12 〜 13世紀 大阪市立東洋陶磁美術館  あらためて国宝さんだということを思い出しましたわ。気分的には「おう、来てたのか!」という親しみがあるのですよ。そうするとガラス越しにピカリと光って(にやりと笑うわけさ)、「当たり前でしょう」と声がする。
イメージ (27)
 
展示室3 書院飾り

樹下人物文螺鈿長盆 元時代・14世紀  綺麗な螺鈿で、柳の下のヒトのそばの香炉から煙が立つのまで、表現されていた。鳥が静かに飛んでゆく。

青磁蓮池水禽文硯屏 明時代・15世紀  色が濃すぎるな。釉薬がかかりすぎている。もしかするとまだ元の名残りが濃い時代のものなのかも。

古銅雨龍形文鎮 明時代・15世紀 徳川美術館  @形に円く蹲るよう。蟠竜ぽい。イヤ実際そうかもしれない。雨龍ということを考えると、がーっとポーズ取るのが自然かもしれんが、「あ、もう降ったし」と寝てるのかもしれない。

展示室4 絵画を見る。

茉莉花図 (伝)趙昌筆 南宋時代・13世紀 常盤山文庫    白ジャスミンと解説にあったが、実のところあの花が白かそうでないのかは知らない。マツリカ。モーリィファ。
そもそも茉莉花というものを知ったのは名香智子「PARTNER」から。
鮮やかに、しかし、つつましく咲く花に見える。
イメージ (25)

鴨図 (伝)徽宗筆 南宋時代・12 〜 13世紀 五島美術館   今回のチケット。足がリアル。
思えば徽宗という人も絵を描いたり李師師という高級妓女と機嫌よく遊ぶ風流人で、それが太平の世にそれならまだしも、国力が衰えて外敵の侵入がある時期にこれではなあ。
いや、皇帝だったことがまずかっただけかもしれない。

秋野牧牛図 (伝)閻次平筆 南宋時代・13世紀 泉屋博古館   これは李迪の「雪中帰牧図」(~10/26まで展示)の牛と並んで可愛い牛たち。共に国宝というのもいい。
モォモォなのをつれて出た牧童が、ついつい二人でシラミ取りに夢中になるうちに、一頭がふらふらと歩きだす図。もう二頭はぐーぐーと寝ているが、一頭でも消えたらまずいぞ。

鶉図 (伝)李安忠筆 南宋時代・12 〜 13世紀 根津美術館  まぁ本当によく肥えた鶉。堂々たる鶉。目つきがかなり怖いね。

維摩図 (伝)李公麟筆 南宋時代・13世紀 京都国立博物館  遠目からでも一目でわかる維摩居士。理由:自分は寛いで横に綺麗な女の人を侍らせてるから。
あの美人さんは天女らしい。散華用の籠を持っておるのでした。
維摩行というものがある。松葉を口にくわえて無言で行うそうなが、このじいさんはなんか言わずにいられない顔つきをしていた。

梅花双雀図 (伝)馬麟筆 南宋時代・13世紀 東京国立博物館  二羽いるのだけど、妙だなと思ったら、どうやら別な絵を切り貼りしたらしい。それで雀らの距離感がビミョーなのか。

出山釈迦・雪景山水図 梁楷筆 南宋時代・13世紀 東京国立博物館  「こらあかんわ」とばかりに(それでも六年もいたのだ!)苦行林を出て行くお釈迦様。実はまだブッダになってないのですね。色黒で褪色した赤衣を身にまといとぼとぼ。
「魂抜けてうかうかとぼとぼ」というのではない。こちらは強い意志のヒトですから。
やたら耳が長いなあ。
後者は、仲良く二人で馬で行く図。どこか春草ぽい。春草はこの世界を採り入れてた時期もあったのかもしれない。

夏景山水図 (伝)胡直夫筆 南宋時代・12世紀 山梨・久遠寺  ああ、風の強いのを感じる時間帯。
イメージ (24)

秋景山水・冬景山水図 (伝)徽宗筆 南宋時代・12世紀 京都・金地院  松にもたれて眺める。視線の先には何があるのか。松には垂れる蔓もある。白雲に鶴。のどかであり、しかも神秘的でもある光景。
冬は、長い頭巾をかぶって背を向けて、どこかを見ている。

宮女図 (伝)銭選筆 元時代・13 〜 14世紀  この絵を見れなかったのは残念。10/19までだった。男装した宮女。
まぁこうして画像だけでも手に入ってよかったわと思っていたら、東博の国宝展関連展示で模写が出ていた。このように左右反転の絵。本物は→向きです。
イメージ (23) イメージ (26)

竹林山水図 (伝)夏珪筆 南宋~元時代・13世紀 畠山記念館   池の縁をゆく騎馬の人とそのおつき。大きな竹笹が見える。
ところでこのように池のほとりをゆく人を見ると、わたしは澁澤龍彦「高丘親王航海記」を思い出す。
鏡を恐れる王子のために鏡を封じた親王が、池に自分の姿が映らないのを知るところ。

松下眺望図 (伝)夏珪筆 南宋~元時代・13世紀 京都・鹿苑寺  絶景ポイント、お一人様ただいま貸切中。

豊干図 (伝)梁楷筆・石橋可宣賛 南宋時代・13世紀  おーい、と隣の二人に呼びかける。

寒山拾得図 (伝)馬麟筆・石橋可宣賛 南宋時代・13世紀  おしゃべりに夢中で何にも聞いてません。

六祖破経図 (伝)梁楷筆 南宋時代・13世紀 三井記念美術館  ビリビリーッと破いてます。禅の祖師はやることがよくわからない。

六祖截竹図 梁楷筆 南宋時代・13世紀 東京国立博物館  こっちは竹カット中。…こういうことをする人はもしかして…

六祖図 (伝)梁楷筆・無学祖元賛 鎌倉時代・13世紀 正木美術館  あ、やっぱりあの頭巾おじさんでしたか。正木美術館のエース(!)。
外で見るとかっこよく…別に見えないが、足元がどうも「SOU-SOU」ブランドらしい。これはかっこいい。

展示室5
『君台観左右帳記』  室町時代・16世紀 国立歴史民俗博物館  設えの手本・手引書・バイブル。カナのルビが振ってた。

古銅大花瓶 南宋時代・13 〜 14世紀  黒褐色。なんとなくたくましい。

青磁筍花瓶 南宋時代・13世紀 根津美術館  砧青磁。

青磁琮形花瓶 南宋時代・13世紀  ビルディング。算木というよりも。

青磁袴腰香炉 南宋時代・13世紀 中野邸美術館  かなり色が濃い。釉薬が濃いのか。

ぐりぐりを三つばかり。
屈輪文堆黒盆 南宋〜元時代・13 〜 14世紀
屈輪文犀皮長方盆  南宋時代・13世紀 徳川美術館
屈輪文犀皮香合 南宋時代・13世紀
いずれも可愛らしいサイズでグリグリしている。

牡丹尾長鳥文堆朱香箱 明時代・14 〜 15世紀 徳川美術館  モリス商会の関与が疑われ…てもおかしくはない図柄。止め金は獅子と牡丹。可愛い。

独釣文堆黒輪花盆 元時代・14世紀  一人で釣りを楽しむ人がいる。笹の葉も小さいものを包むのにちょうどいい。

展示室7

蘆葉達磨図 (伝)門無関筆・無準師範賛 南宋時代・13世紀   何でも90年ぶりに世に出たらしい。

馬郎婦観音図 (伝)胡直夫筆・浙翁如琰賛 南宋時代・13世紀  おでこが丸くて大きい。働き者で孝行な娘。

布袋図 (伝)牧谿筆 南宋時代・13世紀 京都国立博物館  フクロをマクラに気持ちよさそうに寝入っているその顔がいい。

蜆子和尚図 牧谿筆・偃谿広聞賛 南宋時代・13世紀  文字通り「獲ったどーーーっっっ」の声が聞こえてきそう。

叭々鳥図 (伝)牧谿筆 南宋時代・13世紀 五島美術館  丸い目を見開いてキューンっと急降下。
この絵は三幅対の左にあたるそうで、11/3まで出ていたMOA美術館のが中、今回出なかった右は出光美術館に分蔵されているそうだ。

水月観音図 (伝)呉道子筆 高麗時代・14世紀  遠目からでも高麗の仏画だとわかる配色と観音の身にまといつくレースのヴェール。巨大な観音様。その足元では、濃い色の鬼たちがばたばたと忙しそう。サンゴを抱えて走るもの(むっまさか密漁品!!)、香炉を担ぐもの、女仙らもいるし、仏に比べて小さすぎる人々が懸命な様子が何となくおかしい。白いレースはとても綺麗。

重要文化財 十六羅漢図より 第五 諾距羅尊者、第十二 那伽犀那尊者 陸信忠筆 南宋時代・13世紀 京都・相国寺  白獅子も木に逃げた。下では龍が戦う最中。羅漢のオヤジは「うわーマジやべー」な顔つき。こんなナマナマしい顔、いいなあ。面白かった。

芙蓉図 (伝)周文筆・横川景三賛 室町時代・15世紀 正木美術館  白の清楚さ、薄ピンクの可憐さ。心地よい愛らしさがある。ところで正木で見たとき、特に何も気づかずスルーしていて、今回初めて賛のひとがヨコカワケイゾウではなく、オウセンケイサンだと知ったのだった。。
 
蓮図 能阿弥筆・自賛 室町時代・文明3年(1471) 正木美術館  これも正木の中では特に好きな蓮の一つ。薄墨でスタンプを押したような蓮。

琴棋書画図屏風 小栗宗継筆 室町時代・16世紀  松の下にテーブルを置いたところが支度場所らしく、そこで二人の少年が相談中。「まだ飲ましていいのかな」「飲みたがってるからなー」「でももぉ酒も水もわからないよな、きっと」
そんな会話をしているようにしか見えない。
実際彼らの左側に展開するオジサンたちの様子はもおぐでんぐでんの図。
「わしゃーのぉ」とかなんとか言いそうなのもいる。
ちょっと素面らしいのは囲碁をしているが、岡目八目どころか何人の見学者がいるのか、口々に自説を出していそう。
滝で頭を洗え!な人らもいる。
左はこちらはまだましか。絵を見て楽しそうな様子。崖の上には月に松。
巻物も開いている。あちこちに蔦も可愛く生えている。
働く少年たちはみんな小さいお団子を二つ頭頂部の左右に。角隠しの髪型にも見えるかも。

ああ、いいものを見て気持ちいい。
またこんな機会があれば、と思った。
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