美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

輝ける金と銀 琳派から加山又造まで

山種美術館の「輝ける金と銀」展は予想以上に興味深い展覧会だった。
ただ単に美麗な金と銀の織りなす世界を見せるのではなく、画家が選択した金または銀の別ヴァージョンを提示して、想像の域を広げてくれた。
サンプル化したものをそこに並べることで画家の選択のあり方、思考・試行・指向・嗜好までをも観客にはっきりと示している。

これはすごいことではないか。
画家の技法を読み説くことで見えてくるものがある。
これまではただただ絵を見るだけで喜んでいたのが、この技法サンプルを見ることで楽しみが広がった。
そのことを非常に面白く思った。
イメージ (32)

第一章 伝統に挑むー近代日本画に受け継がれた金と銀
1.金銀に縛る


戊辰切(和漢朗詠集) これは本体より中廻しの方に気がいった。銀杏風なものや丸くなったウサギなどがセットになったパターン紋。

是真 波に千鳥 凶悪そうな千鳥。まあよくいえば力強そうな千鳥。オレンジの空をゆく。

映丘 春光春衣 王朝の女人たち。いつ見てもほのぼのする。
この絵から技法サンプルの展示が始まるのだが、そのときはただ「ほほう」と思うだけだった。



宗達・光悦 鹿下絵新古今集和歌短冊帖 金銀泥絵で描かれた鹿と植物。銀が酸化して黒くなりつつある。真っ黒にはならず灰黒。椿、朝顔、蔓、白菊の植物。
ここに技法サンプルがある。少しずつその意味がわたしにもわかり始まる。

大観 寿 難しい書体で「寿」を書いてその下絵に松竹梅を金泥で描く。
大観の絵で書を見るのは初めてなので、面白く感じた。

雲霞

五雲 松鶴 白鶴と茶色い鶴と。うう、どうしても大阪人のわたしは「ショウカク」やなく「ショカク」と読んでしまい、あの破天荒の芸人・六世笑福亭松鶴を思い出すのだ。

金地・銀地

抱一 秋草鶉図 チラシでは四羽だが全景では五羽。飛んだり跳ねたりのウズラーズ。金の地に銀の月。酸化した銀は完全な黒ではなく、それが不思議な艶めかしさをみせる。

其一 芒野図屏風 一曲に銀のススキの波。ああ、かっこいいな。
本気で見始めるようになったのはこの作品のサンプルから。


大観 喜撰山  いつ見ても「まんが日本昔ばなし」に出てくるような山だと思う。金の山に緑の木々。その中に一人の杣。彼は「作右衛門」かもしれない。
技法サンプルを見比べると、全体が違う絵に見えてきてくる。それも面白いのだが、やはり大観の選択したものが一番良いものだとも感じる。

御舟 名樹散椿  いつに変わらぬ綺麗な絵だが、この絵の技法サンプルがとても面白く思えた。
いろんな想像が広がりとても楽しい。
唯一無二の絵が多様な展開を見せてゆく……

栖鳳 干し柿 さすがに料理屋の息子だけあって、栖鳳の描く食べ物は何を見てもどれを見てもおいしそうで涎がわいてくる。ええ干し柿である。

イメージ (33)

2.金銀で描く


素明 詩経図のうち「殷其雷」 そう、中華雷神。両手で木琴用のスティックもって、コンコンと太鼓を鳴らす。目はロンパリ。周囲に7人の小鬼もいてよく働く。妙に楽しそうである。

身近な世界

大観 木兎 動物好きな大観は池之端の家でいろんな動物を飼うていたそうだが、こやつも家にいたミミズクさん。可愛い。金の眼が可愛い。

御舟 昆虫二題 これは技法サンプルが雲母と胡粉とで、面白い効果を見せていた。原本は雲母なのだが、胡粉にしても面白いかもしれない。

古径 秌采 柿を描く。秌は秋。この字を最初に知ったのは横溝正史「悪魔が来たりて笛を吹く」からだった。トラブルメーカーの貴婦人・秌子から。
葉に金が使われている。柿にうっすらとタンニンが光るように見えた。

3.摺物に見る輝き
おカネをかけて贅沢な拵えの本なので、浮世絵師も力が入っているのを感じる。

4.漆絵に見る輝き 
是真 墨林筆哥 破れ傘が可愛い。手の込んだつくりで出来ている。

第二章 新たなる試み 戦後の日本に見る金と銀
1.伝統とのせめぎあい

又造 華扇屏風 これなどは銀の美を堪能できる屏風の最たるもので、また又造さんがいかに琳派をよく研究したかが見える作品だと思う。

又造 満月光 闇に浮かぶ山と銀の芒原。秋草が手前にあるが、この冷え冷えとした空間の緊迫感。凄い一枚。

辰雄 中秋 金地に銀の満月。月に照らされる道は銀の道。民家と川も静かに存在する。静寂が辺りを支配する。金と銀も交わることはないが、どちらも対立することなく存在し続ける。

2.金地銀地への意識

土牛 鵜 三羽の鵜がいる風景。アクティブ。
わたしはどうしても須田の名作「鵜」と比較してしまう。洋画でスパニッシュの影響を重く受けた須田の重厚な作品に似合うのは金でも銀でもなく銅だという感じもある。
同時代に生きた「京の三大洋画家」の華・梅原は日本画の金も銀も見事に使いこなすだろう。いぶし銀たる安井、そしてアカガネの重みが似合う須田。
そんなことを妄想するのも楽しい。

3.多彩な試み

遊亀 憶昔 赤絵の綺麗な壺と一重の山吹と。まるで浮かび上がるようなみずみずしさがある。

又造 裸婦(習作) 前歯が二本にょっきりする裸婦がソファに身を横たえこちらを見ている図。この裸婦は豹のようだといつも思う。

下田義寛 白暈 ヒツジ母子。子羊が可愛らしい。笑顔よしの子羊。きらきらする画面。

色々いい絵を見ただけでなく、この技法サンプルに目を見開かされた。
いい試みだったと思う。素晴らしいことだ。
またこんな展示を見てみたいと思う。
11/16まで。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア