美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

華麗なる英国美術の殿堂 ロイヤル・アカデミー展

東京富士美術館に「ロイヤル・アカデミー」展を見に行った。
これは英国のロイヤル・アカデミーの歴史を知る上で非常に有意義な展覧会だった。
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設立したのが1768年らしい。
展示は年代順に並び、英国アカデミーがどのような作風を守り続けてきたか、何を排除してきたかがわかるようになっている。
基本的に物語絵や神話なども多く描かれている。

第一章 設立 名声への道 1768-1837

ジョシュア・レイノルズ セオリー  サマセット・ハウスの天井画。雲に座る美女が「セオリー ネイチャー」とかかれた紙を持つ。

ジョン・シングルトン・コプリ 貢の銭  これはイエスの「シーザーのものはシーザーに」の説話から。コインにシーザーの顔があるお金。イケズなパリサイ人に言うたセリフ。

ヘンリー・フューズリ 大蛇ミズガルズと闘う雷神トール ハインリヒ・フューズリのことか。解説に「エッダ」からとあるのはいいが、アイスランド・サガはもう人間の話だから神話からは離れている。
トール神が大蛇のミズガルズと闘う姿が大迫力で描かれている。
舟の舳先に立つ全裸のトール、マントは既に役に立たない。うねるような動き。兜も飛びそう。舟をこいでいたらしき老人は震えて縮こまっている。白くて綺麗な肉体が懸命に動く。かっこいい。

ゲインズバラ 泉に羊のいるロマンティックな風景  二人の羊飼い。羊たちが水を飲んでいる。犬をなでる手もある。牧歌的。

ウィリアム・ホッジズ ベナレスのガード  キャプテン・クックの旅に同行し、インドへ行ったそうだ。実際に見た風景。
ガンジス川での沐浴のために建てられた建物のその階段が見える。小舟も繋がれている。やや離れた位置からその情景を眺める。それにしてもいい建物。

ソーリ・ギルビン 雷雨の中の馬  木の下に雨宿りする四頭、まだ走り抜ける馬もいるが、その後を追うように稲光が。野馬たちの荒々しさ。イングランドの荒野だからこその強さか。

ヘンリー・レイバーン 少年と兎  白襟の開いたブラウスの初年と菜っ葉を食べる白兎。可愛いね。

ジョン・カンスタブル 水門を通る舟  随分小さな水門。描写が生々しい。光なのか、何かが地上へ差してくる。

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第二章 国家的地位の確立 1837-1867
その1837年、サマセットハウスからトラファルガー広場の東翼部にナショナルギャラリーの移転があった。

リチャード・レッドグレイブ 勘当  私生児を抱えて帰宅した娘を追い出す父と、嘆く家族。母や姉が取りすがるが、祖母や兄らはうつむくばかり。外は雪。家の床には財布と手紙が落ちている。
ヴィクトリア女王の治世下、やかましいわりに隠微な事件も多かったが、私生児を生んで苦しめられることも多々あった。国は母親もその子供たちも決して救済もせず、犯人である男を懲らしめもしない。

エドウィン・ランシア 忠実な猟犬  主人もその愛馬も共に地に倒れ、ただただ犬が遠吠えするばかり。肉球が妙に可愛い。

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アルフレッド・エルモア ヴェローナの2紳士  ヴァレンタインに言い寄られ手にキスされる娘、彼女は父のミラノ大公の様子を伺うが、寝たふりをした父は目を光らせている。
ご用心、ご用心。赤毛で色っぽい娘、ベルベットの赤も似合っている。

ウィリアム・パウエル・フリス 眠るモデル  この時代はとにかく不道徳という範疇が広すぎてやかましく、モデルになるというのもその不道徳になるので、いやがるのが多かったとか。なんとか拝み倒してアトリエに来てもらったものの、この下層階級の娘はぐっすり眠ってしまう。画家は仕方なく笑顔をキャンバスに描くが、本当の笑顔は分からない。
背後のマネキンまでぐったりしている。

ジョン・コルカット・ホーズリ 居心地の良い場所  この画家は世界最初のクリスマスカード製作者だそうだ。
自宅のダイニングでくつろぐ娘。丸顔で可愛い。マツユキソウの鉢、そして金唐革の壁。
英国らしい家の様子。

ジョン・フレドリック・ルイス カイロのカフェの入り口  カイロに十年住んだ画家。日常の目がそこにある。族長フセインがターバンを巻いてそこに立つ。はだしである。
水煙草もあり、キジ柄の猫もいる。女のいない世界。

ディヴィッド・ロバーツ バールベック大神殿入り口  レバノン。この画家は中近東を単独ツアーした初めてのヒト。立派な廃墟。これもまた見たものを描いているのだ。

フレデリック・グドール ヌビア人奴隷の唄  7本糸のハーブを弾くヌビア人。漆黒の膚。通りがかる三人の女たちがそれに聴き惚れている。遠くにモスクが見える。素焼きの壺があちこちに転がる。

オリエンタルへの憧れがあふれる作品が多く、見るのが楽しい。

第三章 名声と繁栄 1867-1895
レイトンが会長となり、素晴らしい躍進を見せた時代でもある。
ヴィクトリア朝絵画の頂点だったと思う。

チャールズ・ウェスト・コウブ 1875年度のロイヤル・アカデミー展出品審査会  大勢の人々が(実在の)、真摯に絵の品評をしているところ。

アルマ=タデマ 神殿への道  古代ギリシャにおけるディオニュソスの祭りでその巫女たちが道を元気行く闊歩する。それより一本入った建物の門の内側にいて、こちらを見つめる女。羊、ギリシャの壺、様々な小道具が古代ギリシャを感じさせる。

エドワード・ポインター 占い師  そこにいる裸婦の未来を占う。水晶に映るのはどのような姿か。大理石の空間。
オリエンタリズムの魅力にあふれている。

フレデリック・ワッツ レイトンの肖像  個人的に仲良しだったそうな。ワッツの「希望」はフルカラー版も赤の分も共にとても好き。
レイトンはアカデミーの会長らしく威儀を正し、自作の彫刻の足元と共に描かれている。

ルイーズ王女 ヴィクトリア女王  四女。才能があったようで、大理石で綺麗な彫像を拵えていた。
なお母のヴィクトリア女王の絵日記も展示されていたが、こちらもいい絵だったから、母の遺伝かも知れない。

ジョン・エヴァレット・ミレイ ベラスケスの想い出  チラシの一枚。ベラスケスの描いた愛らしい王女をカヴァーしたわけです。スペインからイングランド風に。

フランク・カダカン・クーパー 虚栄  ブドウをバックに豪奢な美人が鏡をチラ見する。
別にいいでしょう、それでも。

エドウィン・オースティン・アビー リュート弾き  赤毛美人が袖の膨らんだ赤いドレスを着て演奏。首には水晶の尖ったネックレスを垂らしている。
中世においてはリュート演奏が出来る・出来ないでモテ度が違ったそうです。

ソロモン・ジョセフ・ソロモン 聖ゲオルギウス  悪竜退治の現場。生贄の女を救出し、担ぎ上げ、龍を踏みにじる。うねるうねる。大変力強い。
彼はイングランドの守護聖人聖ジョージとして敬愛されている。とても力強い壮年男性。

ジョン・ウォーターハウス 人魚  好きな一枚。丁度今「三四郎」が再連載中なので、それに合わせての展示。三四郎と美禰子さん。

ウィリアム・クウィラー・オーチャードスン ノース・フォアランドにて  娘ヒルダが崖の上で風に吹かれて立つ姿を描く。とても気持ちよさそう。

ジョージ・ヘンリー・ボートン 追憶  海の見える位置に残る石垣。それにもたれてイギリス海峡の遠くを眺める、紫ドレスの女。サファイアの海、緑の丘。
ロマンティックな場面。

ベン・ウィリアムズ・リーダー 砂の採取場、バロウズ・クロス  近くにヒースの生えた荒野が。…「嵐が丘」のような情景だな。

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第四章 モダンの受容 黙認と妥協1895-1918
レイトンが会長だったおかげで、ロイヤル・アカデミーは存続できたのかもしれない。
会長は新派を無視するのではなく受け入れ、取り込むことで分裂を回避したのだ。

ジョージ・クラウセンの和やかな絵が並ぶ間はまだその新派登場ではなかったようだ。

ジョン・シンガー・サージェント 庭の女性たち、トッレガッリ城  素敵な対称の庭。そこに人々が少しばかり。
明るく落ち着いた庭。

ヘンリー・テューク 水浴をする人々  イタリア人のプロモデルのニコラ・ルチアーノを描く。かっこいい体。きれいで強そう。第一次大戦でなくったそうだ。いい体。


第五章 アーティスト教育
デッサンやその他の教育。

解剖図像などもあり、またヌードデッサンも多々あった。
それだけでなくオールドマスターの版画なども模写したりいろいろ。こういうのを見ていると、うまいからアカデミーに入る、というだけではなく、アカデミーは教育機関の側面も持っていることを教えてもらったように思う。
いい絵が多く、楽しく眺めた展覧会だった。

また、常設ではこの企画に合わせた展示を展開していて、そちらも併せて楽しめた。
11/24まで。
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