美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

トーベ・ヤンソン ムーミンと生きる

ムーミンを知らない人はいないと思う。
原作を読んだことがなくとも、1970年代初頭のアニメのイメージを持つ年輩者も少なくない。
わたしなども子供の頃に繰り返し見たのはそのムーミンだったから、後にトーベ・ヤンソンの原作でアニメとの様々な違いを知ってびっくりしたものだった。
後に原作に沿った作品が1990年代に製作されたそうで、そちらは観ないまま来ているが、それでもムーミンファンであることに変わりはない。
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そごう美術館でトーベ・ヤンソンとムーミン展が開催されている。
これまでに二度ばかり大がかりなトーベ・ヤンソンにまつわる展覧会を見ている。
「ムーミンと北欧の絵本作家たち」「ムーミンとトーベ・ヤンソン」そして今回の「トーベ・ヤンソン ムーミンと生きる」展である。
先の二つは彼女の生存中の展覧会で、今回は生誕百年を記念したもの。
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トーベ・ヤンソンはムーミンの作者として世に名高いが、彼女の仕事の範囲を広く紹介した展覧会は今回が初めてだと思う。
前回の展覧会で彼女が新聞に風刺漫画を描いていて、サインのそばにムーミンらしきものを描いたのが始まりだと知った。
今回は彼女の私生活にも踏み込んでの展示で、油彩画やほかの絵本の仕事なども紹介されている。

こちらの画像は米子のもの。
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トーベ・ヤンソンのごく初期からの作品を見る。
はじめから物語性の高い作風である。
幼少時の作品は決してうまくはないが面白い絵が多い。
こういう絵を描く子供のアタマがいいのはわかっている。
彼女は実際多才だった。とても納得する。
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風景画がある。舞台装置のようである。これは貶しているのではない。
ドラマティックさが強いというているのである。

冬の夜の狼たち 白い人が狼たちの前に進む。何かしら光る物が地にある。遠くでは竜巻も見える。波乱が起こることを予感させられる絵。

フィンランドからブルターニュに彼女は旅行した。1938年24歳の話。
若いトーベがその地で何を見、何を想い、何を意図して絵を描いたか、本当のところはわからない。
しかしここにあるその当時の絵はいずれも色彩の濃いものたちだった。

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若いトーベは自画像をよく描いた。多くが煙草をふかしている。
わたしは全く喫煙しないので喫煙者の気持ちと言うものが一切わからない。
彼女にとってタバコとはなんだったのだろう。
当時のトーベは学生時代の師と恋愛関係にあったそうだ。
師であり恋人であり友人であった男性からの助言を受けたのか、反発したのか。
絵はあくまでもトーベ一人のものに見えた。

「ガルム」誌上で風刺画を描くトーベ。TOVEのサインのそばに小さなムーミンがいる。1944年にはもうムーミンの存在がはっきりしている。
並行して油彩も怠らない。

ゴム農園 1942年 べた塗で東南アジアのジャングルを描く。アーモンドアイの娘は少しローランサン風。

毛皮をまとった少女 1943年 少しマチスの影響もあると思う。色彩を塗り終えてから上から緑のペンが走り、世界を切り取る。

やがてムーミンが始まる。
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様々な挿絵を見てはどきどきする。
やはり「彗星」の幻想性の高い原画に惹かれる。
「ムーミンパパの思い出」ではニョロニョロたちがボートを漕いでいるのにびっくりした。
そうそう、前の展覧会で「トーベ・トリビュート」コーナーがあり、誰が描いたか忘れたが、ムーミンパパが捨て子にされて箱の中にいる絵を見た。
ムーミンパパは福祉施設「ムーミン子供の家」の出身なのだ。

夜景の絵が特に好ましい。ペン画のモノクロでも夜景の美しさは格別で、トーベも夜景が好きなのかと思ったり。

罠の網袋の中に皆いっぱいつかまっている絵が出ていた。
これは大変好きな一枚。

嵐の中をゆくムーミンの絵があまりに可愛くて、ついついメモ書き。我ながらうまく描けたので保存する。

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今回の展覧会で初めて知ったことがある。
トーベは41歳の時、生涯のパートナーとなる女性・トゥーリッキと巡り合い、彼女の性質を投影したキャラをムーミン谷に出現させた。
おしゃまさんである。
かつて放映を見ながら「不思議な人だなあ」と思ったものだった。
今、このことを踏まえて原作を読めば、あの性質を理解できるかどうか…

会場にトーベとトゥーリッキが夏の間に長年住んでいた小屋の再現と模型があった。再現はギャラリーA’が協力したそうだ。竹中工務店。
この小屋は本当に手作りのもので、女二人が20年以上の夏を過ごせたとは思えぬほど、簡素な作りだった。
しかし簡素だからこそ、二人の精神は充実していたのかもしれない。そうでなければこの無人島でそんなにも長くは暮らせない。

VTRが流れていた。元気なころのトーベたちの映像である。泳いだりしている。二人の女はとても元気でたくましく生を謳歌していた。
小屋との別れについてのトーベの独白がある。
字幕を読み、その声を聴くだけだが、何かが心に深く届く。
全編を流しはしないので、いよいよ気になる。販売もされているようだった。

最後にトーベのその他の仕事の紹介があった。
1962年にはトールキンの「ホビットの冒険」挿絵がある。これはとても魅力的だった。
特にガンダルフはわたしのイメージにぴったり。素敵。

1966年には「不思議の国のアリス」こちらもとてもいい。
ペン画によるひっかき傷のような線描で話が進んでゆく。
山本容子の先達のようだと思った。

こうして見終えた今となっては、トーベの仕事のうち、ペン画が一番いいと思う。印象に残るのもペン画だった。
本人は油彩にも執着があったようだが、やはりペン画の素晴らしさにはかなわないのではないか。

とても充実した展覧会だった。11/30まで。
なおこちらは、ハルカスでのチラシ。
カフェでもいろいろやるらしい。
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