美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

奇想天外!浮世絵師 国芳の世界

11/24までだったが、京都駅の美術館「えき」で国芳展が開催されていた。
近所の「鳥獣戯画」展がメガヒットしてるので話題にならなかったのか、この展覧会について語ってる人をネット上で見ていない。
チラシを見ては「ああ、またか」と思った人も多かったのかもしれない。
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まぁわたしも「宣伝は殆どないし、話題も聞かないし、大抵のは観てるからもぉええけど、でもやはりファンだからやっぱり見ておくか」程度で出かけたのでした。

ところが!と~こ~ろ~が~!!!
やっぱり国芳、さすがの国芳、侮れない…!!!
なんとなんと、凄いラインナップで、初見がバンバン出てるわ・このシリーズからこんなけ出るか・えっっこれあり? の行列で、なめてかかったのがみごとにカウンター喰ろて、きゃんきゃんですがな。
まぁ、こういうサプライズがあるからこそ、展覧会に行かないとあかんわけですね。
ほんまに初心に帰って反省しよう。
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最初は武者絵から。
通俗水滸伝豪傑百八人之一個  このシリーズから国芳の快進撃が始まったのだよな。
文政10-12年までのから前後期合わせて8点と嘉永初期に出たのが2点。
あだ名なしで名前だけ挙げてゆく。
・史進と陳達(前期のみ)・魯知深・李逵・武松・張順・穆春と節永・阮小吾・呉用。
画像は以前に国芳えがく『梁山泊の好漢たち』で挙げているので、ご参考に。
こちら

嘉永年間のは20年後の作なので絵もちょっと変わり、構図も違う。晩年のものだが迫力がずしり。
この辺りは初見、
鬼瞼児杜興 牡丹の下で太湖石に手を掛けたところ。スゴいハレ瞼の一重の怖い目のヒト。このあだ名も納得。この人は刺青なし。

舩火児張横 弟の張順ほどではないがこの人も水練の達者で、その人が水から上がってきたところを描く。水も滴るいい男、とはまさにこれ。下着の水絞る手。ぎゅーっ。男前だなあ。

びっくりしたのが12枚連作の梁山泊の好漢たちを描いたもの。
天罡星三十六星地殺星七十二星の集合図。これはさすが「猫飼好五十三匹」の国芳だけある。そうそうかっこいい描き方ではなく、まぁ一枚ものに比べるとやや小さい表現だが、108人を全部描き分けるわけだからなあ。
わりと関係の深い人たちを集めて描いている。
阮小吾は足指に糸をひっかけて、それをぐーっと口で引く。ピンと張った糸。
阮小二は網をつかみ、阮小七は魚の籠を手にする。
張横は布を咥えて刀を見つめ、張順は見るからにいい男。
九紋龍史進が立つ傍らで花和尚魯知深はあぐらをかく。
元は居酒屋を経営していた夫婦たちが集まっている。顧大嫂と孫二娘が向かい合い、それぞれの亭主は黙って座る。
樊瑞はモンキー顔、孔亮はアホ面。
盧俊儀は悠揚に座り、傍らで浪子燕青の牡丹柄の刺青が光る。彼の髪にも牡丹の花が挿される。綺羅を飾るは主人の意向か。
童猛は体操座り、蔡慶は兎柄の膝当てが可愛く、武松は眼光鋭く座る。
首領たる宋江の左右には椅子に座る呉用と林冲。手前には李逵が黒虎のように座る。

うーむ、堪能した。この梁山泊の好漢たちの姿を見ただけでもここに来た甲斐があるというものよな。

しかも本朝水滸伝も何点か出ている。
犬江親兵衛  松のそばで、髪を解いて紗綾の着物に例の数珠をかけた伏姫に抱っこされている赤ん坊の姿。伏姫ゆかりの八犬士のいわば末弟たる親兵衛。
まだまだ赤ん坊とはいえ、将来が楽しみなのでした。

天眼礒兵衛 夜叉嵐  相撲取りの色黒な夜叉嵐を組み伏せた礒兵衛。白肉には桜に駒の刺青。後れ毛やまつ毛が綺麗な男。

尾形周馬寛行  この名にピンときたらあなたも児雷也ファン。大砲で大蛟をズドン!とやろうとするところ。

江戸時代の一番人気は実は牛若丸・御曹司・義経でした。
遮那王の頃の鞍馬山での天狗たちとの剣術修行、彼らが後見となって、弁慶と対決する橋の上、イキイキと描かれていた。
鞍馬山ではのちの家来の鬼三太も見守る。
五条橋では8人もの天狗が弁慶を翻弄。義経は足袋をはいた足をみせる。

頼光絵もある。大江山帰陣の図  凱旋するところ。ここではびっくりするような巨大な鬼首が仰向けにくくられて運ばれていた。家来の鬼たちの首は一籠に数個入り。うおーっという感じ。これも初見。

燿武八景 須磨寺晩鐘  義経と弁慶が並んで須磨寺の満開の桜を眺める図。
「朝櫻楼」と名乗るほどだから桜の絵もおさおさ怠りなく、工夫のこもった表現である。
配色も綺麗。薄紅・萌黄・朱・縹。花弁がはらはらと散る。
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巻狩り図もある。二枚あり、天保年間のものだが、どちらも巨大イノシシがブヒーーッと走りこんでくるところ。

武将の肖像画いくつか。
武田勝頼  美少年すぎて、なるほどあのおやじの倅には見えん、武田家もこれでは滅ぶ、という感じがあった。

真田昌幸 六文銭柄の羽織がいい。若々しい。武田も真田も背後にシルエットで戦闘シーンが描かれている。

真田与一と俣野五郎の闘うシーンがあったが、解説に「ねぶた祭り」の山車のようだとあり、なるほどその通りだと思った。
そういう力強さと派手さが同居している。


妖怪退治・怨霊・幽霊の絵も集まっている。
こちらは夏に三か月続いて開催の太田記念美術館や大阪歴博などで開催された絵がわりに出ていた。有名なものも多い。
土蜘蛛、金毛九尾のキツネ退治、鵺退治などなど。
初見を挙げてゆく。

神我志姫  山中にいる、眉なしの若い女が蜘蛛を倒すところ。
非常に冷静な顔つきの女だった。

楠多門丸正行 竹童丸  小楠公の少年時代、まだ振袖の七歳の春、おつきの竹童丸の掲げる手灯りで見た、大狸の変化ものを倒す。

大物浦、要は海底の住人になった知盛の家来たち御一行図がいくつもある。
亡霊一行とは無縁にスイスイ泳ぐのもおり、面白い。

悪源太の絵も数点。いずれも雷鳴や炎がド迫力でシビれる。
またこの怨霊の悪源太が男前なのが多い。

他に佐倉宗吾絵もある。例の女中たちがみんな化け物なのが好きだ。

オバケ絵と街道シリーズの木曾街道からは「鵜沼」と「細久手」が出ていた。
前者は与衛門の累殺し、後者は細―いてがにゅぅぅと伸びてくるあれ。
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真ん中の白い影が妙に可愛いオバケちゃん。

ダンディ・役者と伊達男
いい男が集まっている。

江戸名所見立十二か月の内6月 山王御祭礼  
見立てもの。団七九郎兵衛。本来は「夏祭浪花鑑」だけど、ここでは江戸のお祭り。遠くをゆく山車には浄妙山の人形が見える。ほかに猩々の姿も。

団七はほかにも「正札附現金男」シリーズのも出ていた。こちらは井戸水かぶるところの顔のアップ。
粋で鯔背な団七。「浪花鑑」の無頼漢の無職ものではありません。

しらぬひ譚の三枚続きもある。これはかっこいいい。
悪少年春之助をしうか、まじめな冬次郎を竹三郎らが演じているのを描く。
ああ、いつか「白縫譚」を読んだり舞台で見たりしてみたい…

空中の籠中で戦うのもある。 
平井保昌。
籠に乗って空中で戦う相手は鬼ならぬ人の身の袴垂。芝居は何でも拵えるからなあ。

忠臣蔵パロディのちょうちん蔵も一枚あった。
空摺で提灯の折のとこを表現などと芸が細かい。

それからこちら。名前は違うけど伊右衛門。
お岩さんの亡魂が提灯に現れて、身をそらすところ。原画では左側にその絵があるけどここではなんもなしにしておこう。
蛇山庵室の場ですわな。夏だからへちまだかかぼちゃだかが生ってるけど、それがまた…

楽しい戯画もたくさん出ていたがこれらはもう有名どころが集まっているので、軽く楽しんだ。

鉄火肌の女たちを集めたものもいい。
描いた蝶の絵を猫がキャッチするのを楽しく眺める「大納言行成女」や、祇園のお梶を描いたものもある。
初見。お梶があるとは思いもしなかった。
団扇絵で枝豆を食べる女もいた。兄弟子の国貞も団扇絵で枝豆を食べる女を描いていた。
幕末、舟に乗って風に吹かれて枝豆を食べる女、というのが流行だったのかもしれない。

洋風画もある。
それで出てくるのは二十四孝図。大舜のゾウさんなんかがそう。
韓信の股くぐりにも陰翳がある。

三国妖狐図会のシリーズが三点でていた。これは嬉しい。
インドの華陽夫人なのだが、「万国絵」のえげれす婦人のようなドレス姿ではある。

竜宮珠取り、忠臣蔵などの有名なのもある。
日招きの清盛図は一枚もので、これは初見。傲慢からではなく、一日でも長く時間を、という思いがにじむ清盛。

そして再び須磨寺の桜。
今度は平家の薩摩守忠度が歌を詠むところ。
髪がふわりと長く肩にかかる。
桜は爛漫。散りゆく平家の運命を想う。
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最後に国芳自身の現れる絵が集まっていた。本人の顔は見せない趣向のもの。
それから肉筆いくつか。
助六の出端、傘をすぼめるところ、舌切り雀のオバケの葛篭、にんまり大黒、ホトトギスを見る遊女などなど。

最初から最後まで隙間なく面白く興味深い、いい作品が集まる展覧会だった。
これだからやっぱり展覧会へは出かけてなくてはならないのだった。
追記。8月の1ケ月間、横浜そごうで巡回があった。
こちらには「奇想天外」はなし。
チラシを紹介する。
イメージ (7) イメージ (8)
朝比奈と猫の涼みと。

中はこちら。
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イメージ (10)

それから次の巡回先の広島のチラシも。
やっぱり朝比奈。「奇想天外」復活してる。イメージ (11)

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