美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 **なお現在コメント欄を閉鎖中です。

存星 漆芸の彩り

五島美術館で「存星」の展覧会があると言うのでいそいそと出かけた。

存星はこれまで京博などで見ていた。
今の平成知新館になる前の、あの薄暗い空間である。

存星は堆朱、堆黒、鎌倉彫のお仲間だという認識がある。
茶人が好んだというのも知っていた。
しかし、今回五島美術館に集められた存星の群れを見て、自分が「見て知っていた」ものはごくごく一部にすぎないと知った。
イメージ (9)

見に行ったとき、根津・三井・五島の三館連携のチケット集めが丁度終わった。
「ぜひお好きな美術館でおつかいください」と言われ、喜んだ。
そのとき三井で「東山御物の美」を見た後だったか、アタマが中国美術で占められたままだった。
その流れで存星を見た。

第一部 存星をかたる
室町はうるさい。
厳密なことを厳密に言う。江戸になるとゆるくなる。その意味で江戸に親しみがある。
「塗り重ねた色漆を彫り込んだ際に現れる色漆層の断面がそれに見えて、更に魚々子を蒔くようにしたのを<存星>という」らしい。
前々から「色のついた・彫り込んだ・漆芸品」という程度の認識で存星をみていた。

君台観左右帳記 東京国立博物館  見たばかりだなと親近感がわく。自分のノートでもないのに、「そうそう、これこれ」とひとりごちる。達者な先人の教えを書いた数百年前の虎の巻、そういうのは好きなのだ。

名物記三冊物 東京・国立国会図書館  挿絵入り。奈良の松屋という豪商が所蔵していたそうな。後で調べたら元和年間の大茶人で、ああ、と色々頷く。

イメージ (10)

第二部 彩りを彫る漆のわざ
「存星」とは何かということを考え、調査した成果としての展示なのだが、わたしのような観客はそこの苦労を見ずに、喜ばしいところを暴食するばかり。

狩猟図彫彩漆長盆 徳川美術館   横長の盆の上に中国の狩猟風景。左から来て回ってまた左へ向かう一行。
挿絵画家・原田維夫の絵の世界に似ている。
 
網目地日出文香合 出光美術館  円内に絵柄が入るのだが、本当にシブい。うむ。

網目地菊鳥文香合  これは中世の存星らしい。鳥が下りてきて菊に向かう。
この香合には仕覆がついていて、赤い更紗だというのも似合っていた。

網目地茄子文香合  へこませての造形も面白い。

網目地梅鳥文香合  多色の彫漆ではなく単色に彩色した。後塗の梅がいい。

網目地水仙文香合  花は赤く葉は緑。それにしても色合いは子供には向かないものばかり。楽しめる年ごろでよかった。

柚香合 永青文庫  その容器の方も螺鈿で綺麗。

蒲公英蜻蛉文彫彩漆香合 九州国立博物館  タンポポにキスするトンボ。いいなあ。

花文彫彩漆香合 孤篷庵  不昧の箱書きがあるそうな。可愛がったのだろうな。椿に梅に薔薇に菊に牡丹に全てが紅。

牡丹唐草文犀皮筆筒 九州国立博物館  「犀皮」とは表層が黒塗りのものを言うらしい。

牡丹唐草文堆黒盆  なんという繊細さ!驚くほど繊細かつ濃やかな…

孔雀牡丹唐草文堆黒方盆  飛ぶ二羽の孔雀。その羽の中に花。

松皮文彫彩漆盆  この文様は何か見たことが…あ、キース・ヘリングだ。

楼閣人物図彫彩漆香炉台 徳川美術館  雲に乗る仙人、舟に乗る人など、どこか妖しい。

楼閣人物図彫彩漆食籠 林原美術館  小さい鯉が気を吐く。何の説話だろう。

玉取獅子文彫彩漆軸盆  根津美術館  横長の盆で二頭の獅子がいるが、相当深く彫り込んでいる…

第三部 絵をうめる、耀きを描く
改めて見渡すと、「存星」を名乗るもの・名付けられたものは一つもない。

魚々子地百子図填漆箪笥  みんな頭を剃りこぼられた唐子たちで、楽しく遊ぶ様子が描かれている。ところが怖いことに全員、誰も彼も目鼻がついてない。ううむ、なんだろう。
ついていそうなのがあるが、それは剥落しているようで、不気味さというかシュールな趣がある。

魚々子地菊文填漆香合  鴻池家伝来。けっこう厚いもの。

草花文沈金香合  真っ黒。縁に牡丹が咲き乱れる。

楼閣人物図填漆箪笥 山形・蟹仙洞  これが凄い。
「凄い」という文字が本当に合う。
本当に物凄い細かい彫の施された箪笥で、それが開けてあるので二度びっくり。
驚くほど手が込んでいる。
悪夢を見そうな、めくるめく感覚。中から何かが出てくる?
何か妖しいような物語がありそう。
箪笥の抽斗で小人たちが耕作する「三娘子」の話を思い出す。
「地獄極楽」のからくりのようにも見える。
凄いものを見たなあ、わたし。
蟹仙洞という所を知らないので調べたら立派な和風建築の邸宅を美術館にしたところで、サイトを見たら「漆塗りの表面に線刻された模様に様々な色漆を埋め込んで仕上げる技法は、この作品で頂点に達したようだ」と書いてある。
納得。

龍文填漆 形盆 東京国立博物館  バットマンの頭部のようなのが。金ヘンに廷の字が出ないな。その字の意味するものの形なのだった。

双龍文填漆軸盆  銀泥で白く光る竜の角や波頭。こういうのもあるわけです。というか、わたしが見てたのはこういう感じの存星だったな。

霊獣動物文填漆小盆 東京国立博物館  上に龍、下に麒麟、ほかに獏もいる。地模様には卍卍卍… イメージ的に「存星」はこれだわな。卍卍卍…

第四部 玉楮象谷と再生する存星
讃岐の職人たまかじ・ぞうこく。職人の名前がわかる作品が並ぶ。

花鳥図衝立 徳川ミュージアム  赤っぽいインコが二羽いる。背中向けあい。妙にコワカワいい。それと石榴。餌ですかね。

存清網代杯 玉楮象谷作 高松市美術館  堆朱が得意だったのかな。そんな感じがする。

存清花鳥図長盆 藤川黒斎作  象谷の弟。蒟醤と存清を得意としたそう。
星ではなく清という文字を使う。その方が和風ぽいか。

存清花果文重箱 藤川蘭斎作 高松市美術館  こちらは甥になる。明るい作品。少しずつ近代性を帯びてくると作品も明るくなる。

存星工程見本 東京藝術大学  竹網を編むところから始まる。麻布をはり、塗に塗に塗に……そして研いで研いで研いで……

松本達弥という人の作品もあった。現代のヒト。すごく綺麗だった。
彫漆緑花文箱  黒地に耀く白緑、緑黒…50回もの塗り重ねと彫。ああ、綺麗だったなあ。

最後にこんな明るい作品が現れるなんて思わなかった。
気持ちも明るくなった。

他に少しやきものを見た。
志野茶碗 銘 梅が香  不昧公による命銘。薄い梅色。
志野茶碗 銘 ときわ  大ぶりなお茶碗。
乾山色絵菊文向付 10菊の集まったもの。よく見ているようでもこの菊が10本ものとは気づかなかった。

ああ、いいものを見た。12/7まで。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア