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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

新印象派 光と色のドラマ

「新印象派 光と色のドラマ」展をあべのハルカスで見た。
こちらはハルカスのチラシ。
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シニャックの「髪を結う女」を使い、そこに「もっと近くで みつめてほしいの。」とある。
点描と配色とを凝視するだけでなく、女の後ろ姿をなめるように視る、というちょっとオトナなことをしなくてはならないのだ。

一方こちらは1/24からの東京都美術館のチラシ。
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スーラの「セーヌ川、クールブヴォワにて」を使い、「小さな点に秘められた、画家たちの物語。」と点にポイントを置くものの、至って穏和な表現である。

これを見て思い出すのが映画「鬼龍院花子の生涯」のポスターと惹句(キャッチコピー)である。
東京では夏目雅子さんが「なめたら、いかんぜよ!」と啖呵を切るカッコいい姿が使われたが、関西では「お父さん、やめとぉせ」と夏目雅子さんが義父・仲代達矢に抵抗する艶めかしい姿だった。
関西ではやっぱりインパクトが強くないと興味を引かないのだ。というより、「面白いか面白くないか」で決まる。

ハルカスはあべのにある。ミナミのまだ向こう。
キタではそこまで「面白さ」にこだわらないが、ミナミ以南は懸命にお客を喜ばせようとアタマをひねったことだろう。
以前の「ミラノ・ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション」展でもチラシの東西の違いは大きかった。チラシどころか、コンセプトが違った。
あの謎の貴婦人自らが作品紹介したり、会場案内したりしていたのだ。
えらい働き者である。そうでないとお客も来てくれない。
そのときの感想はこちら

さて、前書きが長くなりすぎたが、ハルカスで見た「新印象派」展の感想を挙げることにする。
都美での展示とはかなり異なる可能性もあるので、そこのところを念頭に置いていただけたら、と思う。

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プロローグ 1880年代の印象派

モネ 税関吏の小屋、荒れた海 1882 この絵がここにあることで、なるほど新印象派の方向性というか、そんなのが見えてきた気がするようにも思われる。
そういうリードをされているだけかもしれないが、しかしこの絵はいい絵なので、見れて嬉しいのは確か。
荒れた海は水色の集合、手前の小屋は暖色系の毛糸で編んだ何かのよう。浮かぶ雲の桃色風味もいい。

モネ アンティーブ岬 1888 書き割り風な風景。遠くに紫の山。手前に一本の木がある。緑色の海。これは舞台装置に近いかもしれない。それも翻訳劇ではなく歌舞伎の方とか。

アルマン・ギヨマン ラペ河岸 1880 働く馬やボートやおばあさんたち。にぎわう河岸。水色と桃色の隣合う空。

ピサロ エラニーの農園 1885 緑の多い中、女の帽子かかぶりものと、花が赤い。混ざり合うように見えれば色盲なのだったか、色の配分というものを科学的に考え始める画家が現れ始めた時期。

シニャック アニエール、洗濯船 1882 波がたぷたぷ。向こうに橋や煙突が。日常の延長の風景。

スーラ 石割り 1882 働くおっちゃんの背中。やや体を曲げている。緑と白の中での姿。

スーラ 村へ 1883 これは15x25の「クロクトン」と呼ばれるミニサイズのシリーズものの絵画。
絵自体はシンプルなもの。手元にあると嬉しい一枚。

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第一章 1886年 新印象派の誕生
時代が一つ進んだ。
新印象派とは何かということを改めて考える。

モリゾ ブージヴァルの庭 1884 もあもあした風景。バラが咲いている。赤や白の花。

シニャック ピエール・アレの風車、サン=ブリアック 1885 わりとくっきりしてる。四時くらいの夕日を浴びた風車。地の緑がもあもあと生えている。

スーラの大作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の為の習作は70点もあるそうで、それ自体がいい作品だということで、多くの美術館が所蔵している。
ここには四点が出ているが、クロクトンに描いたものなどいろいろ。試行錯誤の中で生まれた作品群は、全体の一部であるだけでなく、独立した情景をそこに浮かび上がらせていた。遠景、近景、様々な風景。とてもいい。

なお、この本画はここには持ってこれないので、実物大の模造が「マッチ針」で製作されて、ハルカス美術館の壁面を飾っている。
これが東京に行くかどうかは知らない。

ピサロ 庭の母と子 1886 幼児の後ろ姿が可愛い。

シニャック クリシーのガスタンク 1886 実はガスタンクがこんな時代に既に稼働していたということにびっくりしたのだった。
民家らしき建物の背後の左右にある低層の円筒形の建造物がたぶんガスタンクだろう。チチチチチと小さい点描で描かれたその風景はひどく静かだった。


第二章 科学との出合い 色彩理論と点描技法
感覚だけで描くのではなく、理論で実証された光の美しさを描く。
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理論的実証の書物があった。
ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルール「色彩の同時対照の法則」では色彩環を示している。
写真があって、この著者は百歳のときにめでたいとパーティを開いたそうな。

ほかに興味深いのはスーラやシニャックのパレット。
こういうのを見るのは画家の仕事だけでなく生涯を追えるようで面白い。

ルイ・アイエ 視覚混合の為の色彩図解 えらいなあ。実践しているのでした。

ルイ・アイエ 灰色の空の習作 光化学スモッグにヤラレてますな。


第三章 1887-1891年 新印象派の広がり
点々が光を生む。湿気まで感じる作品が現れた。

レオ・ゴーソン ラニー=シュル=マルヌの川と橋 1886 湾曲した情景。空と橋と水面と。いい眺め。

ルイ・アイエ 夜の仮設遊園地 1888 アセチレンランプの光がにじむ。パリだという感じがある。

アルベール・デュボワ=ピエ サン=シュルピス聖堂の塔 1887 迫力があるね!点描により、けぶる風景。いい建物がある。屋根の上の眺めがいい。

アンリ・ドラヴァレー 冬の井戸 1887 えらくちゃんとした建物がある。その中に井戸があるのだろうか。
変なことをいうが、家の中に井戸があるのは家相上あんまりよくないそうな。

マクシミリアン・リュス モンマルトルからのパリの眺め 1887 煙と雲とが混じり合う。こうした風景から点描で描こうかと思いついたのかも、などと妄想。

ジョルジュ・レメン ラ・ユルプのフルマリエ家 1888 ベルギー人の画家でスーラに可愛がられたそうな。屋根がイチゴ色で可愛い。森の中へ。

ヤン・トーロップ マロニエのある風景 1889 水面に映る木と空と。木はとても細かい点描で構成されているのだが、光が入り込んでピンクが濃い。構図はとても幻想的。

アルベール・デュボワ=ピエ 白いドレスの女 1886 なかなか綺麗。カレル・ゼマンの世界のようだ。
タイトルはアメリカ映画のそれと一緒。

テオ・ファン・レイセルベルヘ マリア・セート、後のアンリ・ヴァン・ド・ヴェルド夫人 1891 ピアノの前に座り、横顔を見せる女。ドレスの質感がいい。点描は繊維となって、ドレスを組成する。


第四章 1892-1894年 地中海との出合い 新たな展開 

アンリ=エドモン・クロス 農園、夕暮れ 1893 木が面白い。夕暮れを感じる。

シニャック サン=トロペの松林 1892 こういうのをみると、色付きの砂粒で拵える砂絵で描けるのではないか、と思うのだ。やってみたい…

アシール・ロジェ アストル夫人の肖像 1892 大きな絵。白いドレスの女。点描で描かれたリアルな女。


第五章 1895-1905年 色彩の解放

アンリ=エドモン・クロス 地中海のほとり 1895 地中海は左手半ばの一部。こちらは岸の林の中。水浴を楽しんだ女たちの身繕い。きらきらしている。女たちのそばには食べ差しのスイカもある。ブドウとナシも。ピクニックの定番。スイカを洋画でみるのは珍しい。

アンリ=エドモン・クロス 山羊のいる風景 1895 くつろぐ山羊たち。シルエットに角が。この絵は以前から好き。

テオ・ファン・レイセルベルヘ サン=ピエールの岬、サン=トロペ 1896 熱海に似ている。海と細い幹の松のようなのが続く丘。

アンリ=エドモン・クロス マントンの眺め 1899 オレンジ色や青やピンクや水色がとても綺麗に配置されている。現実ではありえない配色なのだが、好きな色を思い切りよく使った、という感じ。楽しい風景になっている。現実と同じである必要性はない。
 
シニャックの着物の写真があった。1900年頃のもの。
座頭市というか「残念!」の波田陽区というか、坊主頭に髭で着流しに刀という姿。

そういえばボストン美術館と縁の深いビゲローに至っては三度笠の股旅姿の写真があるし、英国人たるコンドルは上下姿の写真がある。
明治の外人和風コスプレーヤーたち。

マクシミリアン・リュス シャルルロワの高炉 1896 夜、すごい輝き。工場と白煙とがカッコいい。工場萌えだわー。


エピローグ フォーヴィズムの誕生へ

シニャック ヴェネツィア 1908 正直に見たものをかくと、メロンアイスの上にゴンドラが乗り、塔がある…という風に思いました。

アンリ=エドモン・クロス 水浴の後、または身体を拭く水浴の男、サン=トロぺにて 1907 この絵は随分前に大丸でスイス、プティ・パレ美術館展で見て以来かな。紫色の絵でおっちゃんです。

アンリ=エドモン・クロス スカラベ 1907 カブトムシ=スカラベというのなら、ここにはおらんように見える。わたしにはみつけられない。二人の裸婦が林の中にいる。それくらいしかわからない。

アンリ=エドモン・クロス 裸婦習作 1906-1908 肌に青灰色を使う。こういうのも計算されての配色なのか。不思議な色合い。

マティス 日傘の女性 1905 大方は点で作られてるが、ところどころに線が入る。点と線で構成された美人。緑色の海。密集した点ではなく、要点だけの点描。
もう一歩時代が進んだのを感じる。

マティス ラ・ムラード 1905 マティスらしさを感じる色彩。

ドラン コリウール港の小舟 1905 ヨットの帆の赤が目に飛び込むが、青い海、緑の木々などもはっきりと存在する。これも密集ではなくザリザリした感じで、それが明るさを呼ぶ。
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ドラン ウォータールー橋 1906 大花火の真下にいるようだ!舟も行く。ぱっ と目が見開いた感じがする。


「光と色のドラマ」新印象派展はハルカスでは1/12まで。
次は東京都美術館へ巡回。
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