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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

東山魁夷 わが愛しのコレクション展

次は日本橋三越での「東山魁夷 わが愛しのコレクション展 美しきを知り、美を拓く」
この展覧会がめざしたものは何か。
「画伯が集めた古美術品と、そこから拓けた東山芸術の世界」
深い喜びを味わえる展覧会だった。

最初に魁夷が手描きした打掛が現れた。
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六世歌右衛門のために描いた「助六」の「揚巻」の打掛である。1966年、歌右衛門の美貌は絶頂を迎えていた。
その三年前には史上最年少で日本芸術院会員となり、この三年後には日本俳優協会会長代行(1971年に会長)に就任した。人間国宝になったのは68年だった。
この松島の絵は後の「涛声」の系列にあると思う。

先に古美術品をいくつか。
伝・宗達 伊勢物語図色紙 #98「梅の造り枝」 イメージ (21)
上部にさらさらと「梅乃つくり枝 云々」とあり、下ではそのシーンが描かれている。
この色紙類は一揃え鈍翁が所蔵していたのだったか、今は散逸している。
何年前か、和泉市久保惣美術館でこの伝・宗達の伊勢絵を集めたものを見たが、そのときにこれがあったかどうか、ちょっと思い出せない。

イメージ (38)

伝・光悦 黒茶碗 重いばかりではない黒。

伝・乾山 梅花図黒茶碗 白抜きで表現された梅が可愛い。シックでいい感じ。
イメージ (24)

魁夷は25歳の時、絵画修行のために海外へ自費で出た。
「スエズ紀行」はそのときに生まれたもの。
1933年のスエズの風物をみる。
・月夜 ラクダとピラミッド
・オアシス ファンタジックな緑のオアシス
・驢馬 可愛い
・砂漠 遠くに白いモスク
・街 黄色い壁が続く
・港 舟が停泊。バナナを乗せている
・水汲み 三人の少女が頭に荷物を置いている
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この三年前には大倉男爵による「日本画羅馬展」が開催され、多くの画家が海を渡りローマに行った。展覧会終了後にはたとえば御舟などが世界各地を写生して歩いた。
魁夷はその頃はまだただの青二才であり、修行中の身だったのだ。

それにしても、この「スエズ紀行」はまだ魁夷芸術の完成にはほど遠いながらも、可愛らしさが全体からあふれている。師であり後の岳父になる小虎の画風とよく似ているのも興味深い。

魁夷は熱心な修行者だったろうと思う。
今回、滅多にみない若い頃の作品をいろいろ見ることが出来て、後の完成された作品を知る観客として、とても嬉しい気がしている。

ここで少し話がずれるが、わたしは魁夷が東山新吉時代に手がけた童画の数々を愛している。彼はそれを今風にいうと「黒歴史」と見なして封印したがったようだが、市川市の記念館で見た東山新吉青年の童画はとても良かった。
身すぎ世すぎの手段と思っているのかもしれないが、優しい温かな佳い作品群だった。
それを隠すことなどないし、いやがることは魁夷の心得違いだと思っている。

魁夷の修行時代が続く。

秋思 1934 灰色の中に立つ一本の木。
ホドラー「ミューレンからみたユングフラウ山」模写 1934 どちらの絵もホドラーの絵を元にしたもの。
そしてこの絵の本歌はどちらも西洋美術館で開催されていた「ホドラー」展に出ていた。

マリアの祭壇 1934 きらきらしている。

窓辺に寄せて 1934 スイスにありそうな家。いくつかある窓から人々の姿がのぞく。開放された窓もあれば閉じたままの窓からの人もある。
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1941年に「自然と形象」という連作があった。
早春の麦畑 視点は中空からのもの。やや斜め上からの。
秋の山 色がきれい。
雪の谷間 地を斜めから。

郷愁 1948 綺麗な青で統一された山道。

そしてここからは完成された「東山魁夷」の作品が現れる。

「道」の試作や「スオミ」がある。どちらも静かに美しい作品。
魁夷の中での「青」は北欧を旅したことで生まれた深い青と、中国古代青銅器を思わせる「青」とがある。

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青い沼 1963 デンマークの湖面に映る木々。青と黒の効果的な絵。

早春のディアハーヴェン 1963 こちらは茶系統でまとめられている。コペンハーゲンの中で。

魁夷の北欧への旅は舅となった小虎の勧めによるものらしい。ファンタジックで愛らしい絵の多い小虎は弟子であり、娘婿である魁夷の成長をとても喜んでいた。

二つの月 1963 中空に浮かぶ月と水面に映る月。並木もそのまま水面に映る。
ほかの画家にもこのように二つの月を描いたものがあるが、なによりも水灰色のこの絵はとても静かだった。
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魁夷のコレクションボックスがあった。
ガラスや木で造られた小さな人形たちやおもちゃが数段の棚に飾られていた。
可愛いなあ。旅行先で買い集めたものだろう。
二つのコレクションボックスいっぱいの懐かしい記憶。
いいものを見た。イメージ (37)


冬支度 1975 薪を集めたもの。丸いままのもの、分割したもの。キュビズムではないが、ちょっと面白い。
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星の夜 1985 一本の木を取り囲むように星がたくさん。☆☆☆☆☆。小虎を思わせる幻想的で愛らしい絵。
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古美術品が並ぶ。
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緑耳付瓶 ローマ 2-3世紀 銀化して赤や緑も現れた綺麗な瓶。虹色の美。

梨型細瓶 シリア 1-2世紀 こちらは青緑の変化を見せている。綺麗。

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ほかにペルシャの鉢、ギリシャの壷、エジプトのトキ像などもあり、いずれもとても愛らしい。
エジプトの板絵にはアヌビスも描かれている。
漢の加彩馬頭もかっこいい。
ガンダーラ仏の素敵なお顔。
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別なのも。イメージ (40)

ラッパ型の青銅器、鳳凰のついた高句麗剣把頭などなど。
本当に素敵なものばかり集めたのだった。

中尊寺経 金字が綺麗。見返しはお掃除する人々などのいる絵。

童子像経絵巻断簡 赤いせいたか童子が五つの髷をつけた姿で描かれている。白馬に乗ったのがかっこいい童子。

魁夷は川端康成から硯をもらっている。
その川端の「古都」のための挿絵もある。風景画。
桜や散り紅葉のいいのがある。
小磯良平の挿絵を見ているが、あれはまた別物なのだろうか。
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魯山人の菓子鉢、唐九郎、豊蔵、彌弌らのやきものもある。わたしは特に彌弌が大好きなので、この山帰来の香炉が愛しくてならない。

魯山人の鉄製秋草文行灯、これがとてもいい。切り絵風な秋草図でシックな置き行灯。
芹沢けい介の拵えた行灯をちょっと思い出した。

魁夷はほかの画家達の作品も愛して手元に置いていた。

清方 寒風 お高祖頭巾をぎゅっと掴む女。着物の柄は折り鶴、寒さしのぎのケットはバーバリー。古さとモダンさの入り交じる女。

梅原龍三郎 桜島 ちょっと色がぼやけているというか滲みすぎてはいないかな。

長谷川利行 赤い道 工場らしきものが描かれている。
魁夷が長谷川を複数手元に置いていたのも新鮮な感じがあった。

華岳 十一面観音菩薩図 丸顔の観音さんがこちらを見ながら左右に揺れているようだった。

ほかにルドンの光の横顔、ロダンの彫刻、ガレのガラスを茶入れにしたものなどを見た。

この展覧会ではほかに本画と下絵との比較もあり、楽しかった。
イメージ (29)

最後に旅先でのスケッチがいくつも出ていた。
モンゴルのパオなどである。

そして絶筆「夕かげ」のスケッチ。こちらも美しい青だった。

心楽しい展覧会だった。
1/19まで。 
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