FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ホイッスラー

横浜美術館へホイッスラー展を見に行った。
先に京都国立近代美術館で見たのだが、あのときよりも今回の横浜の方が感銘を受けた。
京都ではリストがなかったということもあり、横浜で観るまで感想を挙げるのをやめていたが、実際に観た今、こうして感想を挙げれる喜びがある。
京近美も京博もリストなしでサイトを見てくれというが、先にそれを知らしてくれないと、現地で知ってからでは手遅れ感が強いので困る。
イメージ (12)

ホイッスラーはアメリカ生まれでロンドンを拠点に活躍したが、最初にホイッスラーを知ったのはジャポニスムの大家という記事か何かだった。
新聞にピーコック・ルームの特集記事があり、それを見てホイッスラーを知ったのだ。
それから数年後の93年に新宿伊勢丹でラスキン展をみて、ラスキンとホイッスラーの仲たがいのことなどを知った。

第1章 人物画Portraits

農婦 1855/58年 油彩・板 29.5 × 18 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大附属)  面長の人。地域により、民族により輪郭が変わるのは当然のことながら、農婦で面長というのは案外見ていないように思う。

煙草を吸う老人 1859年頃 油彩・カンヴァス 41 × 33 cm オルセー美術館  赤鼻のじいさん。若いころから今まで飲みたおしてきたか、あるいはアイリッシュ系なのか。

エッチングが再ブームになった。ホイッスラーはその技法で作品をたくさん生み出す。

『12点の写生エッチング集』(「フレンチ・セット」)のための表紙  1858年
・陽光の下で エッチング、ドライポイント 10 × 13.6 cm アメリカ議会図書館  ヴィクトリア朝に流行った髪型の女。日傘をさして座る。エッチング自体はゴヤぽい感じがする。
他にもいろいろあるシリーズ。

銅版画はまだまだ続く。
ラルエット坊や エッチング、ドライポイント 22.7 × 15.2 cm メトロポリタン美術館  割と髪の毛くるくるの坊や。傍らにはおもちゃ。なんとなくほのぼの。

アニー エッチング 11.8 × 7.9 cm メトロポリタン美術館  ベラスケスの「マルガリータ王女」に似た顔の幼女。これは一種のオマージュなのかな。

腰掛けるシーモア・ヘイデン・ジュニア 1857/58年 エッチング13.5 × 9.7 cm 大英博物館  スカートにチェックの靴下のオカッパ坊や。パリではこの時代、幼い坊やに女の子の服を着せていたそうだが、英国の風習もそうだったのかな。

ジョー 1861年 ドライポイント 22.7 × 15 cm ニューヨーク公共図書館  愛人をモデルにした。彼女はファム・ファタールとして扱われていた。赤褐色の髪にすらりとした女性。なるほどそんなイメージがある。
なぜかファム・ファタールは赤系統の髪か黒髪が多い。

倦怠 1863年 ドライポイント 9.7 × 13.2 cm フィッツウィリアム美術館(ケンブリッジ大学附属)  そのジョーが倦怠感に満ち満ちて、だらりと椅子に沈んでいる。ホイッスラーとの関係に疲れたのか、人生のやり直しのきかない状況に入っているのをみつめているのか。

習作 1878年 リトグラフ27 × 20.5 cm シカゴ美術館  椅子からこちらを見る女。ジョーとはまた別な女。

姉妹を描いたものがある。どちらもハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)
フローレンス・レイランド 1874年 ドライポイント 21.3 × 13.7 cm  おとなしそうな少女。膝上のスカート。 
エリノア・レイランド 1874年 ドライポイント21.4 × 13.9 cm  両手を腰に当て仁王立ちする気が強そうな女。

灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像 1872-73年 油彩 171.1 × 143.5 cm グラスゴー美術館 やや疲れたような感じがする。落ち着いているというのとはまた別な。
漱石「カーライル博物館」橋口五葉の扉絵が並ぶ。
あのカーライルさんなのか。わたしは漱石の英国関連の作品がとても好きだ。

黒のアレンジメント No.3:スペイン王フェリペ2世に扮したサー・ヘンリー・アーヴィング 1876年、1885年(加筆)油彩・カンヴァス215.3 × 108.6 cm メトロポリタン美術館  すっきりしたハンサムだな。それでコスチュームが16世紀までの人みたいなカボチャパンツスタイルなのだった。
こういうのをみるとエーベルバッハ少佐の家に伝わる「紫を着る男」を思い出すのだった。

黄色と金色のハーモニー:ゴールド・ガール-コニー・ギルクリスト 1876-77年頃 油彩・カンヴァス 217.8 × 109.5 cm メトロポリタン美術館  イメージ (17)
縄跳び。美少女の芸人さん。

アナベル・リー 1869-97年頃 油彩・カンヴァス 74 × 50.7 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  足を交差して立つ女。海が遠くに見える。
ポーの詩「アナベル・リー」を元にした絵。「海際の王国」にすむアナベル・リーへの鎮魂と追憶の詩。

このあと「こんなのばっかり」が続く。
パラソルをもった裸の少女 1886年頃 水彩 25.4 × 17.2 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)
ボウルと裸の少女 1892-95年 油彩・板 51.4 × 32.2 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)
小さな赤い帽子 1892-96 年頃 油彩・カンヴァス 73 × 49.8 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)
なんだかね。

ライム・リジスの小さなバラ 1895年 油彩・カンヴァス 51.4 × 31.1 cm ボストン美術館  市長の娘さん。赤いエプロンの美少女。なかなかしっかりしてそう。
リリー:楕円形の肖像画 1896年以降 油彩 60.5 × 48.8 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  この女も赤褐色の髪。しかしジョーとはまた違うのかしら。

トリクシー(ビアトリス・ホイッスラー夫人) 1892/94 年 ドライポイント8.6 × 5.3 cmハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属) 54歳の時に結婚した24歳下の妻。彼女自身も芸術家だったが、なかなか可愛い丸顔。
リトグラフの作品もあった。

赤と黒:扇 1891-94年 油彩・カンヴァス 187.4 × 89.8 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属) 赤いドレスに黒い毛皮、そして黒扇。素敵。

黒い帽子-ロザリンド・バーニー・フィリップ嬢 1900-02年 油彩・カンヴァス 61 × 47 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属) 黒目がちで生き生きした女。

庭 1891年 トランスファーリトグラフ 17 × 18.5 cm シカゴ美術館  みんなでお茶の時間を楽しむ。

庭での内緒話 1894年 トランスファーリトグラフ21.2 × 16 cmハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  二人の女のひそひそ。それを遠くから見る。

デュエット 1894年 トランスファーリトグラフ24.6 × 16.5 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  妻とその妹エセルのピアノ。

妻やその妹らのいる光景が続く。和やかな日々を送っていたのだろうか。
楽しそうなアフタヌーンティーの様子を描いたものもあり、幸せな感じ。
しかし…

バルコニーのそばで 1896年 トランスファーリトグラフ シカゴ美術館  妻、療養中。

イメージ (13)

第二章 風景画

オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後 1862年 油彩・カンヴァス 61 × 78.1 cm ボストン美術館  橋の架け替えを描く。この橋への愛着が深いようで多くの絵がある。

テムズ・セットの連作は港湾物で働く人々が描かれている。いずれもエッチング。1859年。絵としても面白いが、当時の記録としても価値があると思う。

肌色と緑色の黄昏:バルパライソ 1866年 油彩・カンヴァス 58.6 × 75.9 cm テート美術館   チリに行ったらしい。ゆっくり広がる灰色の空。ちょっとびっくりした。

ヴェニスの連作もある。1879-1880年。
戸口 『ヴェニス、12点のエッチング集』(「ファースト・ヴェニス・セット」)より 1879/80年 エッチング、ドライポイント・紙
29.4 × 20.2 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  細かい描きこみ。綺麗なグリッド。異国風にも見えた。
イメージ (33)

ノクターン:溶鉱炉『26点のエッチング集』(「セカンド・ヴェニス・セット」)より 1879/80年 エッチング 16.9 × 23 cm 大英博物館  ずっと奥に白い空間が見える。そこに一人の男がいる。白い中にいるのがどこか不思議な感じもする。それぱどこなのだろうか。

第三章 ジャポニスム

紫とバラ色:6つのマークのランゲ・ライゼン 1864年 油彩・カンヴァス 93.3 × 61.3 cm フィラデルフィア美術館  ジョーが日本風と言うより清朝風な衣を着て、綺麗な青花の瓶を眺める。磁器の部屋。彼女はかんざしも挿している。なんとなく満足そう。

白のシンフォニー No.2:小さなホワイト・ガール 1864年 油彩・カンヴァス 76.5 × 51.1 cm テート美術館  白いドレスのトージョーが暖炉にもたれながら鏡に顔を写している。どこか悲しそうな感じもする。手には日本の渋団扇。染付の瓶の柄は蝶々。ホイッスラーの好きな蝶々。

白のシンフォニー No.3 1865-67年 油彩・カンヴァス 51.4 × 76.9 cm バーバー美術館(バーミンガム大学附属)  二人の女がくつろぐ様子。一人は白いドレス、一人は黄色いドレス。けだるいような良さがある。というより、もうこれは完全にヴィクトリア朝時代の絵画になっている。

《肌色と緑色のヴァリエーション:バルコニー》のための習作 1864/65年 水彩、グアッシュ・紙 62.8 × 50 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  清長の品川の遊郭をの絵をモデルにしたらしい。並べてあるのを見て納得する。
バルコニーでくつろぐ女たち。三味線を弾いたり…

青と金色(両面作品:表) 1871-72年 チョーク、パステル・紙 28.3 × 12.3 cm フィッツウィリアム美術館(ケンブリッジ大学附属) イメージ (15)
青木繁が描きそうにも見えるが、ギリシャ風にも見える。

三人の女性:ピンクと灰色 1868-78年 油彩・カンヴァス 139.1 × 185.4 cm テート美術館  薄物の三人の女。桜ではなくアーモンドの花木のようなものが見える。日傘。牡丹もある。

ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ 1872-75年頃 油彩・カンヴァス 68.3 × 51.2 cm テート美術館  これはとても惹かれたが、構図が広重「江戸百」のかと思うとほほえましい。
イメージ (14)
この画像には額縁も紹介されている。そしてそこにはホイッスラーの大好きな蝶々も。
綺麗な綺麗な絵。

ノクターン:ソレント 1866年 油彩・カンヴァス 50.2 × 91.5 cm ギルクリース美術館   水灰色。不透明な空間。海も空も分かちがたい色。ぼんやりと灯のつく舟。
とてもときめく。

青と銀色のノクターン 1872-78年、1885年頃(蝶の加筆) 油彩・カンヴァス 44.5 × 61 cm イェール英国芸術センター
  夜、灰色の空にもう光が消える。小舟とかすむ灯り。怖いような感じが素敵。

ノクターン 1875-77年 油彩・カンヴァス 55.5 × 39.4 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  真っ暗な時間。

ノクターン『ノーツ』より 1878年 リトティント・紙 17.1 × 25.9 cm 大英博物館  背後にかすむのはヴェニスの街か。
手前の小舟は何を取ったのか。深い謎が漂う。
イメージ (16)

ノクターンシリーズは「船舶」「宮殿」などがたいへんよかった。蜃気楼のような舟、水面に浮かぶように見えて沈むような舟。
このあたりの絵はいずれも非常に魅力的だった。

ダンス・ハウス:ノクターン 1889年 エッチング、ドライポイント・紙 27.3 × 17 cm ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)  アムステルダムの歓楽街の裏手の運河。街灯が立ち、裏窓に灯り。外は闇に包まれている。
アムステルダムではあるが、眠り男ツェーザレが、ジャック・ザ・リッパーが徘徊するような風景に見えた。

浮世絵が所々に配置され、ホイッスラー芸術を理解するのに手助けをしてくれたようだった。

最後にピーコック・ルーム。
これは映像で紹介されるのだが、あの長身の婦人の絵のある左下に眠り猫の置物があるとは知らなかった。可愛い
井戸茶碗、梅瓶などが並ぶ棚。とても魅力がある。

ああ、よいものを見た。
3/1まで。
関連記事
スポンサーサイト



最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア