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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

よみがえるバロックの画家 グエルチーノ

国立西洋美術館に「よみがえるバロックの画家 グエルチーノ」展を観に行った。
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バロック絵画に詳しくはないので、学びと鑑賞に力を入れることにして、開館早々に入っていった。

16世紀末の宗教改革の余波がバロック絵画を作ったようである。
新教vs旧教。
偶像崇拝を否定する新教に対し、対抗宗教改革という形で「わかりやすい、リアルな」方向へ向かった旧教。
ドラマチックな画が多いのはそうした理由があるのだった。

グエルチーノはかつてゲーテやスタンダールから賞賛を受けていたが、時代の変化で忘れ去られてしまった。しかし20世紀半ばから再評価の動きが出たそうである。
そしてサイトにこんな紹介分がある。
「出品作品の多くはチェント市立絵画館からお借りします。実はチェントは2012年5月に地震に襲われ、大きな被害を受けました。絵画館はいまもって閉館したままで、復旧のめども立っていません。本展は震災復興事業でもあり、収益の一部は絵画館の復興に充てられます。」
日本の文化財も大変な目に遭ったがイタリアもそうなのだ。
出来る限り多くの人々がこの展覧会を見に行けば、と思った。

I 名声を求めて
グエルチーノと先人たち。

ルドヴィコ・カラッチ 《聖家族と聖フランチェスコ、寄進者たち》1591 年
チェント市立絵画館  赤い衣のヨハネがいる。左側には聖フランチェスコとこの絵の依頼人とその親族。幼子は動く。二人の天使が話し合っている。
絵の依頼人も聖人たちと一緒に描いてもらって満足だろう。親族もむろん。
こういうところに時代性を感じる。

スカルセッリーノ(本名イッポリト・スカルセッラ)《聖カタリナの神秘の結婚》
チェント、クリスティーナ&ジャンニ・ファーヴァ・コレクション  ちびイエスに指輪をはめてもらう聖カタリナ。彼女はイエスとの神秘の結婚を夢見る。それで俗世の婚姻を拒絶し、それがために殉教することになるのだが、理想の結婚では嬉しそうである。聖カタリナと赤服に青布のマリア。二人はにこにこしている。闇の中にヨセフがいる。

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さてここからはグエルチーノ
《祈る聖カルロ・ボッロメーオと二人の天使》1613-14 年 チェント、サン・ビアージョ聖堂  赤いケープを身にまとう聖カルロ・ボッロメーロ。上空にはちび天使たち。一方二人の美青年天使は背後で話し合い中。立派な足首。

《ゲッセマネの園のキリスト》1613-14 年 ボローニャ、ウニクレディト銀行  下弦の月、ユダたちが来るのが遠くに見える。近景では天使の足が数本に見える。これは経年のせいらしい。

《聖カルロ・ボッロメーオの奇跡》1613-14 年頃 レナッツォ、サン・セバスティアーノ聖堂  赤いぐるぐる巻きのミノムシのような男。赤子は目を開けている。光が奇跡を起こす。それに気づいているのは幼女で、叔母の袖を引く。またその様子を見ているのはキジ柄の白足猫だけ。
奇跡というものは難しいものです。

《聖カルロ・ボッロメーオのいる聖カタリナの神秘の結婚》1614-15 年頃
チェント貯蓄銀行  左に指輪を持つ幼子、右に王女の様子の聖カタリナ。足元には彼女のアトリビュートの車輪がある。

《聖母子と雀》1615-16 年頃 ボローニャ国立絵画館 サー・デニス・マーン遺贈  本当は鶸らしいが、ここでは同じ小禽でも雀。雀にしたことで聖母子から普遍的な母子像にもなる。ママの指に止る雀さんを見る坊や。雀は糸でつながれている。

II 才能の開花

《聖三位一体》1616-17 年頃 ボローニャ、ウニクレディト銀行  左にイエス。ピンクの上に青を塗ったので光っている布。中央に白鳩。右に地球儀を持つピンクの神。その足が踏むのは顔だけ天使!!ううむ、邪鬼か…ちがう。

《幼児キリストを崇める聖母と悔悛の聖ペテロ、聖カルロ・ボッロメーオ、天使と寄進者》1618 年 チェント市立絵画館  この地では聖カルロ・ボッロメーオが特に人気なのだとこのあたりで気づく。上空の聖母子、左のペテロ、右のカルロたち、そしてこの様子をガイドの天使たちが「ほらほら」と言うていそう。

《トラパニの聖アルベルトにスカプラリオ(略肩衣)を与えるカルミネの聖母》
1618 年 チェント市立絵画館  この略肩衣というのは臨終の時にかけてもらうと地獄の業火から逃れられるらしい。
火鼠のチョッキとか、アスベストのベストとかそういうのではなくて、振り分け荷物の小さい版みたいなのを肩に乗せている。そして左に煉獄が。

《キリストから鍵を受け取る聖ペテロ》1618 年 チェント市立絵画館  大きな絵。パンケーキのような冠を持つ天使が控えている。イエスに指示される椅子。天国の鍵、どちらもブラシのようにも見える。上空には可愛い天使。
この絵にゲーテやスタンダールの言葉をかぶせるのは巧い。
ところで個人的には「聖☆おにいさん」のイメージが強いので、イエスとペテロがちゃんと鍵を持っている絵を見てドキッとしている。
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《マルシュアスの皮をはぐアポロ》1618 年 フィレンツェ、パラティーナ美術館  サチュロスのマルシュアスとの音楽対決を制して、アポロが望んだのは生きながらマルシュアスの皮を剥ぐこと、か。
えぐいね。転がる男は木に手首をつながれ、絶望的な顔をみせる。その木の上にはバイオリンが。そしてアポロは肌は白くてハンサムだけど「さぁ!」と無残な微笑を浮かべていて、この様子をのぞき見る二人の羊飼いを震え上がらせている。
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《聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス》1619 年 ボローニャ国立絵画館  矢で射られても死ななかった聖セバスティアヌス。手当してもらう様子。
旧教の対抗宗教改革の時代に生まれた絵。こうした構図がよく流行ったらしい。
聖セバスティアヌスは結局は撲殺されるのだった。
ちなみにイレネの手にはスポンジとしての海綿。

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《巫女》1619 年 ボローニャ国立絵画館 サー・デニス・マーン遺贈  聖イレネと同じポーズ。

《巫女》1620 年 チェント貯蓄銀行財団  ぐいぐいくる女。凄い肩幅と胸。

《聖フランチェスコの法悦》1620 年頃 チェント、クリスティーナ&ジャンニ・ファーヴァ・コレクション  バイオリン弾く天使の光を腕で遮る。背後にはイオニア柱。もう聖痕がはっきり…

グイド・レーニ《聖フランチェスコの法悦》1606-07 年 ボローニャ国立絵画館 サー・デニス・マーン遺贈  ライバル・レーノの仕事を見てみる。髑髏がある。
構図や表情も違うので、比較しても全く別物に思える。

《アポロとマルシュアス》1619-20 年頃 モデナ、エミリア・ロマーニャ人民銀行  白と黒。美しい若者と醜いオヤジと。この二人の近づき方にドキドキ。妙にヤラシイ感じがある。そしてアポロの無邪気な顔の下には悪意が集まっているかのように見えた。

III 芸術の都ローマとの出会い

《聖母被昇天》1622 年頃 チェント、サンティッシモ・ロザリオ聖堂  チラシの頭上に星の冠がついてる女の人。ぷりぷりした天使たちも可愛い。大きな大気を感じる。迫力がある。
そういえばイタリアでは聖母被昇天のお祭りをにぎやかに行うらしい。
山本鈴美香「七つの黄金郷」にそんなエピソードが描かれていた。

《聖マタイと天使》1621-22 年 ローマ、カピトリーノ絵画館  完成した福音書を開く天使と筆者マタイの「なんですか、あんた」な顔つきがいい。美青年と爺さん。文中を指す天使。福音。エヴァ…

《放蕩息子の帰還》1627-28 年頃 ローマ、ボルゲーゼ美術館  これは5年前に「ボルゲーゼ美術館展」で見たね。その時の感想はこちら
そう、兄の割り切れない思い。カインもこの長男も気の毒なのよ。

《聖母のもとに現れる復活したキリスト》1628-30 年 チェント市立絵画館  なかなか立派な体のイエス。傷に触ろうとする聖母。気持ちはわかるがそんなことをすれば痛くなるに違いない。
この絵にゲーテは「イタリア紀行」で頌をよせている。
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IV 後期① 聖と俗のはざまの女性像 グエルチーノとグイド・レーニ

グエルチーノの女たちは皆バストアップで目が上を向いている。
《クレオパトラ》1639 年 フェラーラ国立絵画館(個人より寄託)  蛇に噛んでもらうところ。パールのピアスがきれい。絶望的な表情。

《ルクレティア》1638 年頃 ロンドン、個人蔵(サー・デニス・マーン義捐基金管理) 自殺直前。やはり目は上を向いている。

グイド・レーニ 《ルクレティア》1636-38 年頃 国立西洋美術館  刺した後でも胸に血はなく、シーツも白く胸も白く、肉付きよろしい婦人。

《スザンナと老人たち》1649-50 年 パルマ国立美術館  えろじじいたちをその場で殴ってやればいいのだ。
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《サモスの巫女》1651 年 ボローニャ貯蓄銀行財団  色の取り合わせがはっきりしている。緑のターバン、青のマント、赤衣の女。
このころは巫女さんを描くのが流行っていたそうな。

グイド・レーニ 《巫女》 1635-36 年頃 ボローニャ国立絵画館 サー・デニス・マーン遺贈  生成りのターバン。ぽってりしていて、舞妓によさそうなタイプ。可愛い。

対の作ではないかというが、確かにそんな感じがする。
《狩人ディアナ》1658 年 ローマ、ソルジェンテ・グループ財団
《エンデュミオン》1657-58 年 ボローニャ、マリチェッタ・パルラトーレ・コレクション
左から青年をじぃっ と見つめる。それを見る猟犬。そして眠る美青年。

V 後期② 宗教画と理想の追求

《聖フランチェスコ》1634 年 ローマ、ベヌッチ画廊  頭巾をかぶる。外にいる。髑髏が見える。肩の糸のほつれが清貧を示している。

《洗礼者聖ヨハネ》1644 年 ボローニャ国立絵画館  ハンサム。この絵速攻で描かれたそうだ。技術力の高さを示すエピソードがある。

《説教する洗礼者聖ヨハネ》1650 年 チェント市立絵画館  大きな絵。赤布と毛皮だけを身にまとう。手を挙げたポーズ。イエスに似ている。

《ゴリアテの首を持つダヴィデ》1650 年頃 国立西洋美術館  この絵でこの作家を知ったわけだが、とてもドラマティックでいい絵が多かった。
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《隠修士聖パウルス》1652-55 年 ボローニャ国立絵画館  烏がパンを運んでくれるそうだ。山の中で隠れ住む。

《悔悛するマグダラのマリア》1652-55 年 ボローニャ国立絵画館  山の中で赤い布をまとうだけの素肌。やはり綺麗な女だと思う。

見ごたえのある、いい展覧会だった。
久しぶりに肉の圧力を生々しく感じられた。
5/31まで。
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