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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

生誕110年 海老原喜之助 エスプリと情熱

横須賀美術館で「生誕110年 海老原喜之助 エスプリと情熱」展を観た。
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エビハラ・ブルーの美しさ、その魅力は深い。
ジョット、川瀬巴水と並ぶ世界三大ブルーの創造者だと思う。

わたしはどうしても1930年代のその時代に愛情がわくけれど、帰国してからの戦後作品を数多く見ていることに気付く。
先鋭的な作品だと思った。というよりも戦前の海老原・ブルーの抒情性を真っ向から否定しないと戦後は生きてゆけなかったのか、となにかしら傷ましいような思いがわいたことも事実だ。
実際のところ画家本人がその変容のことをどう思っていたのかは知らない。


海老原喜之助がまだ地元にいた頃の作品を見るが、どうも色が暗い。
「表現主義の影響」というが、萬鉄五郎そっくりな雰囲気もある。

さてそんな彼が1924年パリにつきました。
大人気のフジタのところへ弟子入り。藤田からパリでの処世術を学んだという。
これはとても大切なことだと思う。
もしかすると絵を学ぶとかそんなことより重要なことかもしれない。
都会で生きぬいて自分の芸術を問うのなら、やはり処世術をここできちんとした先達から学べたのは、本当に良かった。
それがうまくゆかなくて異国の地で疲れ果て、傷心のまま帰国するならまだしも、時には自殺する人もないわけでもないのだから。

妻になったアリスとその周辺を描く。
ボーイッシュな姿、赤毛の姉妹が眠るもの、ピンクの肌を見せて眠るものなどなど。
アリスとの間に男児二人を設けたが、のちに離婚し、子らは海老原が親権を取って日本へ伴う。
アリスはこの後どうなったのだろうか。

カンヌ 美しい青。イメージ (12)

状況的に面白い絵が二枚。
漂流 1929 板に乗る母子三人。白馬らの目が優しい。
なぜ漂流しているのかはわからないまま。

樵夫と熊 熊が来たぞ!!それ登れ登れ!!!
しかしヤバいよな、この状況はーーーっ
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雪と馬の時代とでもいうか、それらを描いていた時代の作品を観る。
スケート 真っ白な平原に青の世界がひろがる。胸がすくようだ。

雪山と樵 大きな山と近景に仔犬などを配する。日本画の山元春挙の山岳図のタイプとよく似ている。

雪中行軍 ロングで捉える。青と白の美。八甲田山を思い出すわ…

雪渓 ブリューゲル風な情景。うねるような雪山、柴をまとめて担ぐ人々。裸の木立、働く馬たち…
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群烏 これはもうシュールな絵で、妙に静か。青空に黒色の無数の鳥たちが浮かぶ情景。

ポアソニエール 最初に見たのは97年の「洲之内徹 『きまぐれ美術館』」展でだった。深くそして鮮やかな青に惹かれた。
そして同じ『きまぐれ美術館』に住まう長谷川りんじろうの「猫」タローは次回の横須賀美術館での展覧会に出演するのだった。
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曲馬 チラシ。この青の世界の中に後年のエッセンスもまた含まれている。

この時代の青の美しさを堪能する。青と白、そして雲。

西瓜売り 緑の縞なし西瓜をさくりと切る。露店のパラソルと買い物客の洋傘と。青と白。いずれも顔が見えない。

ここから戦争になり、海老原の作品は出てこない。
次には熊本居住時代の1950年代へと移る。

友よさらば これは神奈川近美で見た。馬もまた家族であり、友人であったが、死んでしまって、みんな悲しんでいる。

船を造る人 船の木枠の隙間から青空が広がるのが見える。
そして人は木屑のような色となっても働き続けるのだった。
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人吉時代は宗教的なテーマの作品が多い。理由は知らないが、絵から様々な想像をする。

この絵を一晩で描いたというのは驚異だ。
蝶 イメージ (21)

色が濃くなり、もうエビハラ・ブルーはどこにも見当たらない。

群馬出動 てっきり群馬県かと・・・不思議な絵。
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逗子へ移り住む。
古墳装飾のような色彩の作品が多くなっている。絵陶器もある。
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雨の日 △の笠に簑を付けた人が行く。バウル・クレーのテルテル坊主顔の絵を思い出す。
あれとは魂の双子かもしれない。

海老原は最後にパリへ戻る。
その頃の絵はもう私にはわからない。

そして彼の膨大なスケッチなどを見ながら途方に暮れる。
だが、彼がかかわった雑誌の展示は興味深かった。
「セルパン」「日本談義」など。

1939年の「コドモノクニ」はよかった。
草野心平の詩「虫の楽隊」に海老原の絵。
軍用犬のコンテストなどなど。
確かな腕が絵本でもいかんなく発揮されていた。

最後にもう一度パリ時代の絵を見る。
やはりエビハラ・ブルーは胸がすくようだった。
その時代はとても短かったというのに、いつまでも心に残っている。

展覧会は4/5まで。
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