FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

見つめて、シェイクスピア!

滋賀県立近代美術館で「見つめて、シェイクスピア!」展を見た。
これは練馬区美術館からの巡回で、こちらで見ようと待っていた。
イメージ (2)

シェイクスピア作品を描いた絵画や挿絵などは無限にある。なにしろ四百年前から今に至るまで人気が続いている。西洋だけでなく東洋でも必ず毎年何かしら上演され続けている。
わたしはせいぜい「リチャード三世」くらいしか見ていないが、それでも「オセロー」「ハムレット」「ロミオとジュリエット」の話の概要くらいは知っている。
映画でなら「ロミオとジュリエット」「テンペスト」は見ていた。

二十年ほど前「描かれたシェイクスピア」展を近鉄奈良店で見ている。
あれはとても良い展覧会で、本は今も大事にしている。
今回の展覧会にはそこで見た作品も出ている。
ほかに先年三鷹美術センターで妖精を扱った「フェアリー・テイル」展が開催され、うつのみや妖精ミュージアムから出てきた作品を見た。
今回はそのうつのみや妖精ミュージアムの作品も出ていたので、懐かしい気持ちが湧いている。

シェイクスピアの16枚の肖像画が並ぶ。これは早大の演劇博物館所蔵で、現地で見たような気もする。
同時代にシェイクスピアを名乗る他の作家がいたとかいないとかそんな話があったな、とかそんなことを思いながら見て歩く。

・四大悲劇 ハムレット、オセロー、リア王、マクベス
特に人気が高いので作品もとても多い。

ベンジャミン・ウエスト ハムレット 点刻彫版法 発狂したオフィーリアが王の前につれてこられる。凄い目つきになっている。その狂気の有様を見て、その場の人々の様々な反応が描かれている。うつむく王妃、目を背けるもの、身を引きたそうな王、一人だけ冷たい目で全体を見るのはハムレット。オフィーリアをつれてきて皆の様子を見ている。

こういうのがほんと、殴ったろかコイツは、と思うところ。わたしはそもそもハムレット本人が嫌いなので、可哀想ともなんとも思えぬどころか、殴り倒してやりたいキャラの上位に常に入っている。

ドラクロワのハムレットのリトグラフが並ぶ。
1834-1843年の作品。
わたしはこのうちの何点かを20年ほど前に雑誌の付録で見知った。
話はともかく、場面場面がとても好きだ。

黒髪でショートカットのハムレットは正面から斜めくらいの顔はいいが、横顔がイマイチ。
辛気くさいのは本人の性格として仕方ないにしても、やることなすこと全てに苛立つ。
16点が並んでいた。
ドラマチックで緊迫感あふれる画面が続く。
わたしが好きなのはオフィーリアの死。河に半ば沈みつつ植物が絡む姿。
イメージ (7)
そして最後のハムレットの死。みんながみんなカタストロフィーを迎え、あちこち死体まみれとなる情景。
ハムレットが親友ホレイショーに抱かれながら死ぬのにフジョシ心が刺激されるのであった。

ジョン・オースティン 1922「ハムレットデンマークの王子」 本の装丁がいい。この時代ではあるがアールヌーヴォー風の絵で、ハムレットの剣の柄がニケのような羽根を持つ三人の裸婦で構成されていた。魅力的な剣。

多くの人がシェイクスピアの翻訳に携わっているが、わが偏愛の塚本邦雄も1972年にハムレットの本を出していた。
どのような詞での脚本だったのだろう。とても気になる。
塚本の詞の魔術に溺れる身としては気にかかって仕方ない。
絵はアントン・レームデン。ウィーン幻想派の画家。段々の地層をピンク色で描いた表紙だった。

次はオセローである。

ジョザイア・ボイデル オセロー 眠るデスデモーナ 1803 点刻彫版法 もうすっかり疑いに囚われてしまったオセローが妻の寝室で苦悩する。顔を手で覆うムーア人オセロー。剣を手にしている。デズデモーナの白、オセローの黒の対比。

シェイクスピアの作品の中でもオセローは気の毒だと思っている。妻を疑うオセローの根には自分がムーア人である、ということがある。
イアゴーはキャラとしてはとても面白い。
わたしは悪役がいいのが好きなので、イアゴー、リチャード三世、マクベス夫妻はファンなのである。

テオドール・シャセリオー オセロー 1844初版 1900刊 エッチング、ドライポイントなど 16点の連作。
半分ずつ展示換えをしていた。

冷え冷えとした憎悪がひしめく中、最初はデズデモーナとの恋を貫くために堂々としたオセローがいたが、話が進むにつれ、その長身で立派な体格がかえって惨めに思えるほど、だめになってゆくオセロー。
とうとう殺害を実行する。
枕落としで妻を窒息死させるオセロー。デズデモーナの長い髪がだらりと垂れている。
やがて全てのカタストロフィー。二人の女の死とオセローの死、そして悪人たちの逮捕。

ドイツロマン派らしいドラマティックさがいい。
それにしてもムーア人のオセローの気の毒さ。
妻を疑うのも男としての特性のためよりも、そこに人種問題が絡んでいるので、よけいに激しくなっている。

オラーフ・グルブランソン オセロー 1918 リトグラフ かっこいい一枚。オセローが顎を上げ目を閉じる顔のアップ。かっこいい。

リア王へ。
これを翻訳した黒沢明の映画もあった。
どうもリア王も好きではない。

チャールズ・リケッツ リア王 舞台装置原画 1909 5点の水彩画がある。王室、伯爵邸、原野、小屋の場、崖の場。なにやらストーンサークル風な背景画である。
石の家に藁葺きの邸宅なのである。

フェリックス・メゼック リア王 1918 エッチング 山本容子の作品を思い出した。ちょっといびつな人物造形である。

最後にマクベス。
マクベスは小学生の時に知り、かっこいいなと思ったが、途中で夫人がだめになるあたりでがっかりした。
「悪で始めたことは悪で踏み固めねばなりません」なかなか難しいものです。

ヘンリー・フューズリ マクベス 荒野 1798 点刻彫版法 肉体に鱗をつけたような薄目の甲冑を身につけたマクベスと中空に浮かぶ魔女たち。
いかにもフューズリらしい大げさな目つきをしている。

ドラクロワ 魔女たちに相談するマクベス 1825 リトグラフ 武将という風情が強いスタイル。

トーマス=テオドア・ハイネ マクベス 1918 エッチング マクベス夫人がまるで赤塚不二夫えがくお巡りさんのように両目がつながった顔で描かれていた。不眠でふらふらしているところ。

リケッツ マクベスの悲劇 1923 夫に身を乗せかけてささやく女。かっこいい。緑色の幾何学的な文様のドレスをまとっている。


・喜劇 
夏の夜の夢から。
わたしはこの話は「ガラスの仮面」で知ったのだった。

フューズリ 夏の夜の夢 1803 点刻彫版法 目覚めたティターニア。周りには小さな妖精などがいっぱい。オベロンがとても良い身体。

リチャード・ドイル ティターニアとボトム 1845 インク これは前から好きな絵。ティターニアが少女ぽいのがいかにも世紀末な感じ。コナン・ドイルの父だったかな、この画家は。

ジョン・シモンズ パックや妖精たちに囲まれたハーミア 1861 水彩 チラシ。この絵は前述の「描かれたシェイクスピア」で知った。今はうつのみやにあるのか。
小さな妖精たちも一人一人綺麗な目鼻立ちをしている。
細部まで丁寧に描かれている。

シモンズ 憩うティターニア 1872 水彩 楕円形の中にバラを中心とした花の中で眠る。綺麗な絵。

ジョゼフ・ノエル・ペイトン オーベロンと人魚 1883 油彩 頭に蝶の羽がついた妖精王。人魚は凶悪顔の海豚に乗っていた。王の横にいるパックは悪魔顔で笑っている。海は月光で道がついていた。

ジョン・アンスター・フィッツジェラルド マッシュルームに座るパック 水彩 ビリケン風なパック。

アーサー・ラッカムの本が出てきた。
いつみても本当に綺麗。ラッカムの絵は1981年に新書館から出た画集の宣伝で初めて見て、それからずっとファン。どこかでラッカムの展覧会があれば嬉しいのだが、いまだにない。

ヒース・ロビンソンの装丁本もある。平板な構成だが、アールヌーヴォーとモダニズムとが同居していた。ちょっと面白い絵だと思う。

あとウィンザーの陽気な女房たち、ヴェニスの商人などもあった。

イメージ (3)

・様々なシェイクスピア

テンペストから始まった。
わたしは映画「プロスペローの本」でジョン・ギールグッドのプロスペロー、ピーター・ガブリエルのキャリバンをみている。
あと蜷川の演出した舞台もみたが、これがたいへん不満な出来で、それが原因で舞台をみにゆくのをやめるようになった曰く付きの演目なのだった。
 
フューズリのキャリバンは妙にえろい。

チャールズ・アルタモンド・ドイル 五尋の海の下 水彩 海底であの魅力的な歌をピアノで演奏する人魚。ライブ風な即興演奏ぽい。魚たちが聴客。
イメージ (4)

シャガールの墨絵のような連作50点が並ぶのは壮観な眺めだった。シャガールは「ダフニスとクロエ」もよかったが、こちらもいい。

ウィリアム・クレインの挿絵本もある。
モノクロで繊細な作品と、カラーの美麗な作品とがある。

ほかにロミオとジュリエット、リチャード三世などがある。
リチャード三世に殺される幼い王子二人の特集をすればいいのになあ。

エリック・ギルの木口木版による挿絵がいい。
ベッドから出る裸婦を引き留めようとする相手が女なのか男なのかわからない。それがなかなか魅力的。

リケッツ シェイクスピアのヒロインたち 1926 たぶんマクベス夫人だと思う女がいる。ジャポニスムの影響を受けた文様のドレスを身につけている。それが宝相華文様で金色、白地にいくつかばんばんとついている。

リケッツは以前の展覧会で非常に魅力的なマクベス夫人を描いていた。
ここでもこうして見ることができて本当に嬉しい。

私がマクベスを知ったのは大和和紀「KILLA」だった。
そこで主人公キラはマクベス夫人を演じ、リチャード三世を演じた。ピカレスクロマンのこの物語で、キラが最初に栄光を掴むのは悪人の役なのだった。
そしてキラは演劇界での成功を足がかりに実業界に入り込み、ついには軍需産業の社長の地位を得る。
破滅が常に寄り添う中での栄光。
やはりそこにはマクベス夫人、リチャード三世の影がある。


第二部として現代作家たちによるシェイクスピアのイメージによる装丁本が百冊近く並ぶ。
中にはエドモン・デュラックの挿絵を使った本もある。
世界各国の凄い本の展示だった。

4/5まで。 
関連記事
スポンサーサイト



最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア