FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

若冲と蕪村 第三期

サントリー美術館の「若冲と蕪村」展は画期的な展覧会だと思う。
副題にまずはっ となる。
「生誕300年 同い年の天才絵師」
この二人が同い年で、しかも蕪村が京都在住の頃はごくご近所さんだった、というのは、案外どなたも考えたことがなかったのではないか。
ううむううむ、とうなりながら見に行く。
イメージ (76)

正直なところ近年の若冲ブームにはちょっと辟易している。
奇想奇想とばかりで、奇想に非ずんば絵画に非ずとでもいうのか、と思うくらいのその勢いに疲れている。
近所に若冲の襖絵を持つ寺があり、トコヨノナガナキドリがニガテなわたしは子供の頃から若冲を「鳥オヤジ」と呼んで忌避していた。
若冲の良さが沁みるようになったのは版画の小鳥たちや仏たちの集まるアイランドとかそんなのを見てからだった。だから相変わらず通称四文字のあのトリの絵はニガテ。
こういうので「…ええやん」となったのだ。イメージ (77)

一方与謝蕪村についても子供の頃からなんとなくニガテだったが、これは逸翁美術館、柿衛文庫のおかげで今ではすっかり大好きになった。
歳をとらないとわからない美というものが確かにあり、俳画や文人画、そして墨絵全般はその範疇にあるように思う。

さて、この展覧会は実に大充実しているがために、数期にわたる展示替えがあり、首都圏に住まうならともかく、関西人のわたしでは全部を見るのはムリなので、行ける日にだけ行って、その時に見れたものを喜ぼうと思う。
わたしが見たのは4/10だから3期目、4/8-4/13の分だった。明日の4/15から4/20までは4期目なのでまたガラリと展示が変わるようだった。


第 1 章 18世紀の京都ルネッサンス

弄翰子 編 『平安人物志』小本一冊 木版墨刷 明和 5 年(1768)・安永 4 年(1775)版それぞれ 京都府立総合資料館  洛中在住の芸術家紳士録兼評判記。

伊藤若冲、与謝蕪村ほか 諸家寄合膳・諸家寄合椀  京の人々の楽しい手すさびですかな。朱塗りに絵師たちがそれぞれ好きなものを描いている。蕭白もネズミに水仙を描き、池大雅や森派の手もある。楽しそう。

与謝蕪村、円山応挙 合筆 「ちいもはゝも」画賛 一幅 紙本墨画淡彩 海の見える杜美術館  これを見れたのは嬉しい。なにしろずっと見たかったのにタイミングが悪く見る機会がなかったのだ。
芒の描表装で、猫が踊る横で、しゃもじに目鼻がついて着物を着ている楽しい絵なのだ。
2008年の柿衛文庫展での「蕪村と月溪」展で出たが、その時には展示替えで見れなかったのだ。
その時の感想はこちら

与謝蕪村、円山応挙 合筆 蟹蛙図 一幅 紙本墨画 MIHO MUSEUM  応挙の描いた蟹はシルエット。薄墨。三匹のカエルの背中がいい。喰うか喰われるかではなく、なんとなく一緒にいる。こういうのを見ると「われはわれ、きみはきみ、されど仲良き」という武者小路実篤の言葉が浮かぶ。
四条派と円山派の後の融合は必然だったとも思うのだ。

第 2 章 出発と修業の時代
修業時代というものは誰にしろ魅力的なものだ。
本人はしんどいだろうが。

伊藤若冲 糸瓜群虫図 一幅 絹本着色 細見美術館
伊藤若冲 隠元豆図 一幅 紙本墨画淡彩
どちらもやはりいい作品だと思う。奇想奇想とうるさいのを措いて、黙ってこういう絵を見ると、やはり面白い。構図や線の選び方などに魅力がある。

与謝蕪村 梅石図 一幅 絹本墨画   妙にガクガクしたというか雷鳴を描いたような枝。そして岩がこれまたガクガクしていて、しかも顔ぽくもあり、岩男のようにも見える。

与謝蕪村 三俳僧図 一幅 紙本淡彩  実在の三人の坊さんらを描いている。差し障りがあったようで台詞部分が消されている。別に極端な戯画でも風刺画でもないのだが。楽しそうな三人。うち一人がちょっとなよやかなのもいい。

与謝蕪村 晩秋飛鴉図屛風 六曲一隻 紙本墨画   田の上を五羽の烏が慌てて飛ぶ。びっくりした顔をしている。もとは襖絵だったかもしれないそうだが、空間を切り裂くような羽ばたきが聴こえてくる。

与謝蕪村 風虎図屛風 二曲一隻 紙本墨画淡彩   「フフン」とドヤ顔の虎。牙がはみ出ているのもいい。ヨシヨシとこちらも黙ってにやにやしながら虎の鼻息をきく。

与謝蕪村 天橋立図 一幅 紙本墨画 宝暦 7 年(1757)  やたら賛が目立つ。空間の8割を占める賛。いやもぉこうなると賛ではなく詞か。それに押しつぶされそうになってちょっと歪曲している松並木。

第 3 章 画風の確立

伊藤若冲 月夜白梅図 一幅 絹本着色  南蘋派風の一枚。これは好きです。とにかく数珠玉暖簾のように連続する白梅、その背後に耀く月。
濃い白梅の香りが漂っているような一枚。

伊藤若冲 寒山拾得図 双幅 紙本墨画  にこにこの二人。可愛い。あらゆる寒山拾得図の中でもベスト5に入る可愛らしさ。拾得は顔を見せないが寒山の表情からも想像できる。
和やかないい絵。イメージ (78)


伊藤若冲  桂州道倫 賛 河豚図 一幅 紙本墨画 寛政 5 年(1793)賛  妙に面白い。こういうのを見るとやっぱり若冲は面白いと感心するのだ。

与謝蕪村 維摩・龍・虎図 三幅対 絹本墨画 宝暦 10 年(1760) 滋賀・五村別院  虎はモコモコと固太りしていて、朝鮮の虎絵をお手本にしているようだ。
イメージ (5)
龍が薄暗闇の中にいるのだが、これは何かに似ていると思った。
そうか、ちばてつやが時々使う手法に似ているのだ。「のたり松太郎」「おれは鉄兵」「男たち」にもある、薄暗闇に浮かぶ不気味な薄笑いをたたえる男たちの顔…あれですな。
奇妙に重厚な存在感がある。
イメージ (3)

与謝蕪村 柳江遠艇図 一幅 絖本墨画淡彩 明和元年(1764) 蕪村は絖(ぬめ)が好きだったようで、その布の特性を活かしてモヤァとした絵を描く。

与謝蕪村 黄石公・王猛図 双幅 絹本着色 明和 7 年(1770) 張良に軍略を授けた黄石公が侍童と共にいる。既に裸足。張良に拾わせるための沓流し。
王猛も名宰相だが、ここにいるのは変な顔つきをしてるおっちゃん。

第 4 章 新たな挑戦

伊藤若冲 梅荘顕常 賛 寒山拾得・楼閣山水図 三幅対 紙本墨画   これまた可愛らしい二人。寒山が黙って拾得を見る。普段考えたこともないが、この絵だけ見ているとちょっとBLぽくもある、と妄想が湧く。

伊藤若冲 梅荘顕常 賛 烏賊図 一幅 紙本墨画  墨吐いてるーっ灰黒な背景。二匹のイカがおる。
軸の上下が何やら重々しい。

伊藤若冲 双鶴・霊亀図 双幅 紙本墨画 MIHO MUSEUM  鶴もヘンだが亀はもっとヘンですな。モグラぽくもある。

伊藤若冲 下絵  梅荘顕常 賛 『乗興舟』 一巻 紙本拓版 明和 4 年(1767) 今回開かれていたのは、大塚(家具ではない)、つまり枚方と高槻のバスが通ってるのかな、あのあたり。そこから始まって次に三島。描かれていない手前は枚方の光善寺。まだ高槻市かな。次は摂津の鳥飼、むろん鳥飼大橋のない時代。この辺りが出ていた。
今は淀川の河川敷もこの辺りはかなり整備されていて、スポーツが出来るようになっていたりする。
いつ見ても日本手ぬぐいにほしいなと思うのだった。

蕪村の俳画を楽しむ。黙ってかみしめるうちになんとも言えん味がわく。
与謝蕪村 「ぬけがけの」自画賛 一幅 紙本墨画淡彩
与謝蕪村 「鳥羽殿の」自画賛 一幅 紙本墨画淡彩
与謝蕪村 「五月雨や」自画賛 一幅 紙本墨画
与謝蕪村 「澱河曲」自画賛 一幅 紙本墨画淡彩
与謝蕪村 「澱河歌」自画賛 一幅 紙本墨画淡彩
与謝蕪村 「花の香や」自画賛 一幅 紙本墨画淡彩MIHO MUSEUM
ほのぼのとした絵や味わいのある文字に和む。

与謝蕪村 盆踊図 一幅 紙本墨画淡彩 愛知県美術館(木村定三コレクション) こちらも楽しそう。特別美男美女などいない絵ばかりだが、愛嬌というものが常にある。

与謝蕪村 若竹図 一幅 紙本墨画淡彩 愛知県美術館(木村定三コレクション) 俳句がある。「若竹や 橋本の遊女 ありやなし」。八幡の橋本は近年まで遊郭があった。
蕪村は今の都島の毛馬あたりの出身だそうだが、竹西寛子の「わたしの古典」などで彼の母はその橋本で働く人だったのではないかとある。
小さな家が描かれているが、それは女のいた家かもしれない。

与謝蕪村 「又平に」自画賛 一幅 紙本着色 逸翁美術館  赤い頭巾のご機嫌な又平。これは千鳥足の浮世又平。逸翁のほかにも別なバージョンの絵があり、いずれも可愛い。

与謝蕪村 「涼しさに」自画賛 一幅 紙本墨画淡彩  ウサギの杵つきの俳画。出羽の宇兵衛さんとのからみでウサギ絵にしたそうな。「涼しさに麦を月夜の卯兵衛かな」ですな。
「涼しさに」と来るとわたしなどは小西来山の「涼しさに四ツ橋を四つ渡りけり」をすぐに思うが、こちらはウサギさんで、つくのは麦ですわ。

与謝蕪村 奥の細道図巻 二巻 紙本墨画淡彩 安永 7 年(1778) 京都国立博物館  つくづくよろしいなあ。那須の玉藻の前の古墳から鶴岡への道のり辺りが出ていた。

第 5 章 中国・朝鮮絵画からの影響

伝 李公麟 猛虎図 一幅 紙本着色 朝鮮中期 京都・正伝寺  これがぺロ虎ちゃんの本歌。以前に高麗美術館の「朝鮮虎」展で若冲のと並んでいるのを見ている。
その時の感想はこちら10012002.jpg

わんこがぞろぞろ。
李巌 花下遊狗図 一幅 絹本墨画着色 朝鮮・16 世紀 日本民藝館  可愛すぎるねー!そういえば「いぬ・犬・イヌ」展には朝鮮のわんこ絵がなかったような気がする。

与謝蕪村  仔犬図襖 四面 絖本淡彩   ゾロ・シロ・チャの三匹が可愛すぎるがなーーーっ

伊藤若冲  無染浄善 賛  仔犬に箒図 一幅 紙本墨画 細見美術館  この絵も好きで。禅語の意味があろうとなんだろうと可愛い。箒で掃かれるわんこ、その目つきがいい。手も可愛い。

伊藤若冲  栗柯亭木端 賛 箒に狗子図 一幅 紙本着色   こういう可愛さってもぉ…!!!  

伊藤若冲  要中通玄 賛 仔犬図 一幅 紙本墨画   丸くなってるわんこ。顔を見せようとしない、そこがまた可愛い。

わんこ特集でしたな。そういえば「百犬図」は出ないのだろうか。

与謝蕪村 春景漁夫図 一幅 絹本着色  小舟で魚を売る男。表に出ず窓からこれがいいあれがいいと指さすのは女ではなく侍童らしい。なかなか可愛い。

階段を下りるとそこには近年になり世に出た白象と鯨の屏風があった。
こういうのを見るとやっぱり可愛くてよいなあと思うのだ。墨絵なのに象の牙が虹色だと気づいたり。

伊藤若冲 象と鯨図屛風 六曲一双 紙本墨画寛政 9 年(1797)MIHO MUSEUM  可愛いなあ。
イメージ (81)
イメージ (80)

伊藤若冲 蔬菜図押絵貼屛風 六曲一双 紙本墨画 寛政 8 年(1796) 「ダブルインパクト」でも野菜の涅槃図がありそこでも大根がお釈迦様だった。どちらの作品が先か、それとも大根は野菜の主役なのかどうか知らないが、まぁやっぱり大根涅槃図が落ち着くか。レンコン、シイタケ、サトイモ、ナス、ナンキン…片っ端から食ったらさぞやさぞや。

与謝蕪村 山水図 一幅 絹本着色 天明 2 年(1782)  銀屏風に描かれた山水図。ところどころに人がいる。寂しくはない山水図。いいなあ。
イメージ (84)

ところでここで一つ話を入れると、蕪村は娘が婚家で苦しんでいるのを知ると離縁させて連れ戻したが、その蕪村が死んだ後、かれの弟子たちは娘さんを再婚させるための資金繰りに奮闘したそうで、それで作られた作品を「嫁入り手」というそうな。
師匠と弟子のいい話。


第 6 章 隣り合う若冲と蕪村―交差する交友関係

伊藤若冲 無染浄善 賛 蟹図 一幅 紙本墨画 京都国立博物館  これまた凶悪なカニですな。悪党面してますな。食べにくそう。

伊藤若冲 伯珣照浩 賛 猿猴摘桃図 一幅 絹本着色  ああ、なるほどなあと納得。しかし猿の顔つきがやっぱり若冲なのだ。
イメージ (79)

伊藤白歳 歌仙豆腐図 一幅 紙本墨画 寛政 3 年(1791) 黒主と小町で田楽づくり。後の四人はどうしたのだ。カタキ同士の二人が仲良く田楽拵えて、みんなに供するのかな。

第 7 章 翁の時代

与謝蕪村 筆 蜀桟道図 一幅 絹本着色 LING SHENG PTE. LTD  これが90年ぶりに世に出た絵か。…「アギーレ 神の怒り」冒頭シーンを思い出すなあ。軍隊がマチュピチュを上ってくるシーン。実際には映画の撮影隊なのだった。蜀への道は厳しいというものなあ。
イメージ (83)

蕪村は何十年ぶり発見というのが多い。
逸翁でもそんなのがあった。

与謝蕪村 武陵桃源図 双幅 紙本墨画淡彩 安永 10 年(1781)  どちらも変な顔の人ばっかり。約束してるわけだが、この顔つきは大丈夫かいなと心配になるね。

与謝蕪村 郭子儀図 一幅 絹本着色 天明元年(1781) 広島・海の見える杜美術館  けっこう大人な孫子たちやな。

与謝蕪村 鳶図 一巻 紙本墨画  これは絵巻で横広がりになっているが、次に現れる絵の親戚だな。鋭い眼をしている。

与謝蕪村 鳶 ・ 鴉図 双幅 紙本墨画淡彩 北村美術館  この絵は本当にタイミングが合わなくて、これまでチラシなどでしか見ていなかった。
こうして観ることが出来て非常にうれしい。
この展覧会が始まる直前に所蔵先の北村美術館でも展示されていて「見に行かねば」と思いながら行き損ねたので、本当に良かった。
雪の中でじっと耐える烏たち。鋭い線で描かれ、質感までが伝わってくる。
雪の中の烏と言えばユーリ・ノルシュテイン「話の話」に坊やの幻想シーンがあり、そこでは雪の中で坊やが烏たちと仲良くリンゴを分け合っていた。
イメージ (82)

鳶の鋭い眼にもドキッとした。風の中で耐えている。
「とんび」と書くとのんびりした風があるが、「とび」となるとやはり崇徳院の眷属とかそんなことを思いもする。
イメージ (85)

与謝蕪村 薄に鹿図 一幅 絹本墨画淡彩 愛知県美術館(木村定三コレクション) 一頭のシカが軽く見上げる様子。目が寄ってるよね。肉付きもよろしい。

伊藤若冲 五百羅漢図 一幅 紙本墨画  ずらーっと並ぶ。ロングで捉えているが米粒のようでもある。

ああ、面白かった。
蕪村の良さ・若冲の良さ。それぞれ交差するところはないようにも思うが、とても楽しく眺めて回れた。

明日からのまた違う展示。わたしは今度は6期目に行く。
追記:8/1にMIHO MUSEUMで巡回展を観た。
ほぼ同じラインナップだったが、見ていないものもあったのでこちらにあげる。
イメージ (2)
関連記事
スポンサーサイト



最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア