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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

マグリット

国立新美術館で「マグリット」展を見た。
わたしはマグリットとポール・デルヴォーは好きだ。
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有名どころの作品しか知らないので、今回の「回顧展」はたいへんよかった。
知らない作品や思いがけない画風の変遷なども見て、いよいよ好きになった。
展示数があまりに膨大だし、あまりごちゃごちゃ書くのもなんだし、さらりと感想を挙げたい。

初期の作品群、未来派だったりキュビズムぽくもあったりして、オシャレな感じがする。

風景 1920年 テンペラ/板
女たち Femmes 1922年 油彩/カンヴァス
未来派の影響が強いね。そしてそれとは無関係に「エロティシズムが心にある」マグリット。意思の表明は大切だ。

心臓の代わりに薔薇を持つ女 La femme ayant une rose à la place du cœur 1924年 油彩/カンヴァス   裸靴下の女。なるほど納得。

水浴の女 Baigneuse 1925年 油彩/カンヴァス  寝そべる女。時代を感じるモダンな時代を。

さてシュールレアリスムに向かいました。

彼は語らない Il ne parle pas 1926年 油彩/カンヴァス  仮面の男(ディカプリオでもシャア少佐でもない)、スケキヨですな、これは。奥にその顔がある。
思えば「犬神家の一族」のポスターと言えばスケキヨが湖でシンクロナイズドしてるのがメインだが、このポスターはすごく「犬神家の一族」の本質に近くないか。
「彼は語らない」二人の良く似た男。偽物が大けがをして仮面をかぶり、本物は負い目があるので何も語ろうとしない。
横溝ファンのタワゴトかなあ。

天才の顔 Le visage du génie 1926年 油彩/カンヴァス  こちらもよく似た構成で、似たような仮面だね。あとは橋とか木々とかがある。その意味は分からない。

女盗賊 La voleuse 1927年 油彩/カンヴァス  見事な▽形の肉体。それが黒ずくめ。なんとなくイスラムぽいような…

一夜の博物館 Le musée d’une nuit 1927年 油彩/カンヴァス  四コマに区切りの箱か棚かのようなところにそれぞれ手首、切り絵、トマトなど。
シュールはシュールだけど、どこか子供の集めた宝箱にも似ている。不気味な宝箱。

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発見 Découverte 1927年 油彩/カンヴァス  裸婦の身体のところどころに木の年輪が入り込んでいる…ながれたもの・うねるものなど。
なにを「発見」したのだろうか。

二枚の「恋人たち」がある。1928年。
恋人たち Les amants ニューヨーク近代美術館
恋人たち Les amants 1928年 オーストラリア国立美術館
布をかぶり顔を隠すカップル。キスする二人と寄り添うものと。
クリスト夫妻の仕事ぽいなあ。

新聞を読む男 L’ homme au journal 1928年 油彩/カンヴァス  こちらも区切りの4コマ。テーブル、皿飾、椅子、一人の男、そして。
この全体を見ると80年代の少女マンガにも同じ構図のものがたくさんあったことを思いだす。

永遠の明証 L’évidence éternelle 1930年 油彩/カンヴァス(5枚組) 問題と解答。
この作品については色々と考えさせられた。対象を問題としてとらえ、答えのイメージを絵として表現する…

呪い La malédiction 1931年 油彩/カンヴァス   青い空に白い雲が浮かぶだけ。それがどう「呪い」なのか。こんな明るさを呪うのか。それともこの温和な空にこそ呪いをかけるのか。

美しい虜 La belle captive 1931年 油彩/カンヴァス  風景を切り取る。それをキャン倍に置き換え、更に切り取った位置に配置する。フェイクの空が本物になる。
こういう発想がとてもかっこいい。

イレーヌ・アモワールの肖像 Portrait d’Irène Hamoir 1936年 油彩/カンヴァス  室内にあるオブジェは家具になるのか。そして室内の純粋階段。かなりこれは面白かった。
 
野の鍵 La clef des champs 1936年 油彩/カンヴァス  風景の柄のガラスが割れる。そこから本当の風景が見える。
これは二重のウソの絵なのだと思った。そして画家の発想力と表現力とを思った。
ウソをつくには細部にリアリティがないと成功しないからだ。

透視 La clairvoyance 1936年 油彩/カンヴァス  卵を見ながら鳥の絵を描く。凄い画家の力。この発想力こそいえば究極の二次創作ですわな。
わたしのいう二次創作とは第一に原作があり、その原作があるからこそ成立する創作ですが、これは厳密にはパロディではない。未来か過去かはわからないが、スゴイ「透視」だということを思った。

この時代のマグリットの作品は本当に素晴らしいし、作品成立のその思想にも大いに惹かれる。

自由の入口で Au seuil de la liberté 1937年 油彩/カンヴァス
旅人 Le voyageur 1937年 油彩/カンヴァス
前兆 Le précurseur 1938年 油彩/カンヴァス
この辺りの作品にはただただ唸るばかり。
わたしには全く思いつかない発想が形になったものがここにある。

炎の帰還 Le retour de flamme 1943年 油彩/カンヴァス  シルクハットに目元のマスクの男が燃えるような空を背に、街を踏むようにそこに立つ。巨大な姿。
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膝に肘をつき、顎を掌で支えてまっすぐ見つめるが、何を見るかはわからない。逆の手には黄色い薔薇がある。
この絵を見て1920-30年代の日本の少年雑誌の口絵を思った。
特に小林秀恒の「怪人二十面相」を。
こちらに詳しいサイトがあるのでどうぞ。


戦時中のマグリットは戦争への自分なりの抵抗を見せて、ルノワールばりの色彩の優しい絵を描いたそうだ。この時代のは確かに色がとても綺麗なのだが、しかしそれが画家本人の本気の絵なのかどうかはわからない。
パロディとしてのルノワール風味なのかもしれない。

稲妻 L’éclair 1944年 油彩/カンヴァス  ルノワール風な色彩。花は灰の塊。ビンや窓が…
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夢 Le rêve 1945年 油彩/カンヴァス
夢 Le rêve 1945年 油彩/カンヴァス
生命線 La ligne de vie 1936年 油彩/カンヴァス
三つ並ぶ。裸婦の色の変化を描いたもの。
 
不思議の国のアリス Alice au pays des merveilles 1946年 油彩/カンヴァス  木に顔が付くのはよくあることだが、横顔になると気持ち悪いな。特に鼻がな。へんな雲もある。
こういう木を見ると美内すずえ「みどりの炎」を思い出す。生きている防砂林の木々たち。町の人々が木になる恐怖…あああ、怖い。

心のまなざし Le regard mental 1946年 グワッシュ、水彩/紙  これは構造的にわるい建物だなあ。黒川記章ぽい。メタボ建物ね、あれをところどころ中抜きした感じ。


観光案内人 Le cicérone 1947年 油彩/カンヴァス デ・キリコぽいなあ。

オルメイヤーの阿房宮 La folie Almayer 1951年 油彩/カンヴァス  石塔や板がある、サーモン色の背景。阿房宮の話はヨーロッパにもよく知られているのだろうか。

赤いモデル Le modèle rouge 1953年 油彩/カンヴァス  足の指がある靴ね。靴が足になった、というべきかな。
これは絵で見たときショックだったけど、50年後に「ロード・オブ・ザ・リング」でホビットの足が現れて、「時代の先取り」だと思ったものです、はい。

ガラスの鍵 La clef de verre 1959年 油彩/カンヴァス  雪山の頂に巨石がある。とても綺麗な色彩。ぱっ と目を見開かされる色彩。

アルンハイムの地所 Le domaine d’Arnheim 1962年 グワッシュ/紙   猛禽型の岩山の上に三日月が出ている。手前には石の手すりがあり、そこに鳥の巣があり、卵が二つ。
こういうのは、目から入る情報が脳に想像力を働かせよと指令を送る、その典型例のような作品ですな。
一方でわたしは魔王ゼノンとかちょっと思い出しもしたが。

空の鳥 L’oiseau de ciel 1966年 油彩/カンヴァス  空模様が鳥の形に切り取られている、というか、鳥の中に空があるというか。
このマグリットの作品以降、マンガでこうした表現も(この20年後くらいだが)出てきている。
そのことを思い合わせると、とてもマグリットに対して親密感を覚えるのだ。
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他にマグリットの資料や広告なども見た。
シメール Chimères 楽譜 1925年  ベリーショートのモダンガールが毛皮をまとう。とてもオシャレ。

何も… Un rien..... 楽譜 1925年  パフを持ち香水もちゃんと支度している女。
こちらもオシャレでかっこいい。

愛のワルツ Valse d ʼamour 楽譜 1926年  ああもぉかっこいい。

プリムヴェール Primevère ポスター 1926年  こちらもカーテンから横顔を見せる女がとてもかっこいい。

マグリットがデザインした広告 Advertisement designed by René Magritte 広告 1928年  クラシックカーが素敵すぎる。

『マグリット展』ブリュッセル、ル・サントール画廊 Exposition Magritte, Galerie le centaure,Brussels 展覧会カタログ 1927年  タイポもとても素敵。

ああ、好きな時代でオシャレな作品が多くて、とても素敵。
ドキドキしたわ。
6/29まで。

なおこちらは京都の最初のチラシイメージ (42)
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