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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

逸翁美術館と湯木美術館とで観たもの

逸翁美術館と湯木美術館が素敵なコラボレーションをしている。
二つの美術館がそれぞれの所蔵する素敵な作品を分け合って展示しているのだ。
場所が変わるとイメージが変わり、なじみのものも新しいものに見える。
いい展覧会だった。
共に今は後期の展覧会が始まっているが、前期を見たのでその感想。

まずは逸翁美術館から。
「器を楽しむ 逸翁の茶懐石」
逸翁美術館の所蔵品は通期、湯木美術館のは前後期に分かれる。
イメージ (55)

逸翁は取り合わせの妙に興趣を覚える人だったと思う。
それは何も茶の湯だけではない。
鉄道を敷いたとき、その沿線に分譲住宅を建ててサラリーマン対象にローンで販売した。鉄道の始発駅たる梅田に大デパートを拵え、沿線住民を囲い込む。
さらにその阪急百貨店ではソーライスを<提供>した。
カレーを食べる金のないお客は白飯しか頼まない。
その白飯だけを売り出すと、客はテーブル備え付けのソース(新しい調味料なのだ!)を白飯にかけて「美味しい美味しい」と食べた。
店側は嫌がったがそれを知った小林は逆にそれをソーライスとして名物にした。

最初に拵えたのは箕面有馬電気鉄道、その次に宝塚線。
終着駅の宝塚には温泉施設と少女歌劇とを備えた。
ソーライスはさすがに今の世にはもう伝わらないが、後はみんな大繁盛している。
阪急電鉄、阪急百貨店、宝塚歌劇、沿線都市…
いずれもそれまでなかったものであり、取り合わせの妙を感じさせるものばかり。
こうしたところに小林一三という実業家の素晴らしさを感じる。

さてそんな逸翁だから茶道具も古いものばかりを喜ぶ風はない。
茶道具にはならないはずのものを持ってきて、見事に合わせている。
ヨーロッパに視察に出かけ、現地で「これは」と思ったやきものなどを購入し、それを茶の湯に使う。
それがまた全くおかしくないのがすごい。

茶の湯のお道具を見ると、和物ばかりでなく唐物のよいのがいい位置を占めていることが多い。
そればかりで構成しようとしたのでは、と思うものも多い。

木葉形蔓手付二重底皿 この字面だけを見れば和物かと思うのだが、実はフランス製である。見れば確かに洋物だというのがわかるが、これが茶道具として機能するところに、逸翁の眼の確かさがある。
イメージ (63)

瑠璃地小鉢 これもてっきり清朝あたりの唐物かと思えば実はフランスのセーブルあたりのもので、とても色も綺麗な上になるほど小鉢として使える。

フランスばかりではない。
ドイツ、イギリス、オランダのやきものが機嫌よく並んでいる。
尤もオランダのやきものは江戸時代から茶道具として使う人もいたから、これはそんなに新奇と言うわけでもないか。

燗鍋がある。中川浄益の拵えた金物。そこに青磁の蓋を付ける。この取り合わせはいつの頃からのものかは知らないが、それを所蔵するのが逸翁だというのが楽しい。

鉄の燗鍋もある。蓋は萌黄地に豪華な文様が入ったもの。チラシの右真ん中である。素敵だ、とても。

乾山の芒文菊形向付も愛らしい。それから絵替の筒茶碗もいい。

歴代の中村宗哲の仕事。それぞれの美質が活きた塗り物もある。
春慶塗の折敷などは一見本当にシンプルで面白味もないのだが、飽きの来ないデザインである。
わたしは春慶塗が好きなので嬉しくもある。

時折見たことがあるがこれはここのではないはず、と思えば大概それは湯木美術館の所蔵品。
それが他の作品と共に仲良く並ぶ様子を見れば、武者小路実篤ではないが「仲良きことは美しき哉」とか「君は君、我は我、されど仲良き」という言葉が思い浮かぶ。

そして最後に茶室の室礼をみる。
逸翁はこまめに茶会記をイラスト入りで残しているので再現が可能なのだ。
昭和21年6月7日の即庵での懐石。
即庵は畠山即翁が名付けた茶室。
こちらは平安時代の色紙、江戸時代のやきものから昭和初期の漆碗、それと宋から元、明、清のやきものが取り合わされている。

実はところどころに湯木美術館の吉兆・湯木貞一さんのお料理の写真パネルがあり、観ているとアタマはクラクラ、口から涎タラタラという状態になるのだった。
前掲のチラシの手元の碗、あれを開けたらこんなのが入っているのだ。
くーーーーーっ

後期もなんとか見に行きたいと思っている。(ただし満腹時に限る)
イメージ (62)


次に湯木美術館「茶道具の創出・再生・世界化」展である。
この展覧会は読み方が難しい。
実はこれは「茶道具のクリエイト・ルネサンス・グローバル」と読まねばならぬのだ。
「湯木吉兆庵と小林逸翁のコレクションから」
イメージ (52)

このチラシ、かなりかっこいいと思う。
というより歌舞いている。
上部はお客さんの逸翁の名品の草花文緑ガラス小壺と五彩蓮華文呼継茶碗・銘「家光公」。
ヴェネツィアガラスと元の茶碗を<呼継>したもの。
下部は仁清の色絵柳橋図水指とノンコウの赤樂がいる。
どちらも派手で愛らしい。

わたしは圧倒的に 長次郎<道入 の人なので、長次郎の黒樂「春朝」をみて「暗いなぁ」と思うが、ノンコウの赤樂「是色」に甘い目を向ける。
やや口厚だけど柿みたいでいい、とかそんな甘いことを言う。

宗旦の作った茶杓がある。「五条橋」と銘がついていて、「力強そう」とメモをつけている。これはあれか弁慶の七つ道具の一みたいな形からの命名だろうか。

光悦の茶杓は飴色で斑入り。織部の「長刀」は銘が納得な、櫂先90度のカッコいい茶杓る漆を塗っているのも珍しい。

仁清の色絵流橋図水指と乾山の銹絵染付流水文手桶が並ぶ。
橋の底板は赤とグレーのシマシマ。上には曇り雲が。
乾山の手桶は逸翁美術館でも人気の1品。今回は蓋が添えられていた。満月を二つにずれて割ったような感じ。
逸翁はこの手桶が好きだったのか、茶会記の様子を描いた資料の中では一際大きくこの手桶が描かれている。

古銅ソロリ花入 利休所持 そこに大山レンゲをいける。清楚でいて華やか。
細いプロポーションの器。

古伊賀耳付花入 …にょろにょろが石筍化したらひうなるのかもしれない。

イメージ (54)

ここで解説に面白いことが書かれていた。
「吉兆は絵画的な作品を好み、逸翁は装飾性の強い作品を好む」
嗜好の違いはそのまま蒐集の違いにもなる。
面白く思い、その言葉に従って、次の作品4つを見た。

嵯峨嵐峡蒔絵中次 湯木 蓋も含めて、満月に雲に桜に鷹に筏師
秋草蒔絵螺鈿聖餅箱 逸翁 イエズス会のマーク入りのものを茶道具に転用。
住吉蒔絵平棗 山本春正 湯木 松が折り重なる様子。
桐文蒔絵螺鈿吹雪 伝・山本春正 逸翁 螺鈿がキラキラ煌めいてとても綺麗。

…納得だ。誘導されたわけではない。それでもその言葉にうなずく。

瑠璃金襴手水指 ローゼンタール製 綺麗な色。芙蓉が金彩で。

五彩蓮華文呼継茶碗 銘・家光公 これは本来のとは違う器体を持ってきて合わせることを「呼継」といい、巧いこと継げてることから徳川三代目の名を逸翁がつけたそうだ。

マイセンの皿、バカラ社の鉢、イランの鉢…これらを茶道具・懐石の器に転用する逸翁。実業家の面目躍如。

チラシにも出ている緑のガラスに金エナメルをかぶせたもの、花はリラとパンジーなのだそうだ。
いつみても愛らしい。

最後に茶席をみる。
釜が姥口尾垂らしいが、中に入ってたら尾垂ちゃんかどうかわからんのが残念。
大樋波絵扇面 大きいな。リアリズム嗜好?

この取り合わせの妙を見ていると、吉兆・湯木貞一さんの目指した料理のカタチが少しだけわかってきた気がする。

いいものをとりあわせたものをみて、とてもきもちよかった。
共に6/7まで。
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